AzukiAraiAcademia Monthly Radio

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前回、知らない人がいたようなので、僕ら4人の月間ラジオはこっちにチャンネルを作りました。AzukiAraiAcademiaと名前を変えてみました。ちなみに、12/7の土曜日16時ぐらい(JST)から12月分のラジオ予定です。たぶん全員が、俺ガイルの最終巻読んでいるので、その話かな。

2019年度末総まとめラジオは、12/28の土曜日16時ぐらい(JST)を予定しています。

Youtubeの規約が変わったので、いつまで残るのかはわからないのですが、とりあえず過去のアーカイブもまだ少ないながら、あります。

ちなみに、過去のアーカイブは、LDさんの漫研チャンネルのなかにあります。

www.youtube.com

『ミッドウェー(Midway)』2019 Roland Emmerich監督 米国万歳の映画と思いきや、意外や意外日本の大艦隊がかっこいい。

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Midway2019

客観評価:★★★★4つ
(僕的主観:★★★★4つ)

家の近くの映画館(AMC)で見てきました。語れるほど知識があるわけでもないので、印象のショートレヴュー。

一言でいうと、いってよかった。面白かった。映画としての出来は、さすがのローランド・エメリッヒ監督。そもそもミッドウェーが題材の時点で米国万歳で、完膚なまでに日本が叩きつぶされる物語だし、資本はメインが中国だしこの戦争で中国(蒋介石でしょうが・・・)と米国の関係を描くならば同盟国の友邦として描くのが当然になるので、日本人にとってあまり気持ちよくないはずになるはずと予想されるので、「だからこそ」見に行かなくちゃ!!!と(笑)。レアな体験を探して。最初は、さすがに日本公開はやんないかなーと思っていたので、これは見ておかないとと思って。結局、日本公開が決まったそうだけど。


MIDWAY trailer 2 (2019)

このサンクスギビングの休みで行ってきた。近くの席のおばあちゃんが、日本側の空母に、米艦爆隊が何度もぎりぎりで失敗するたびに、「当たってー」みたいにハラハラドキドキしていて、こんなに感情移入してもらえたら映画として感無量だろうなと思いました。とはいえ日本側でも見ている自分は、微妙な気分をになるところが、なかなか興味深い映画体験でした。いけてよかった。なんというかいつもより比較的高齢者が多かった気がするが、若者も多かったし、必ずしも白人ばかりでもなくて多様な人が見てたんで、やっぱりエメリッヒ監督の冒険活劇というかそういう『インディペンデントデイ』的なもので見に来ているのかなーと思った。

アルキメデスの大戦 Blu-ray 通常版

ちなみにこの夏に日本で見た山崎貴監督の『アルキメデスの大戦』の大和轟沈のシーンもそうだったけど、現在のCG技術で見せられると、なんというか感無量。空母を軸とする大艦隊って、やっぱりスケールが違う。日本の空母赤木や加賀の映像ってやっぱりとんでもなくかっこいいよなーとしみじみ。あと、米爆撃部隊の、空母に雷撃するためにほぼ垂直降下で、弾幕が張られている中を突っ込んでいくシーンが何度も繰り返され、パイロットの視点で描かれるのだけれども、命知らずにしてもめちゃくちゃすぎて、こんなことしていたんだ、いやーなんというか、すげぇ勇気だよな、と感心。


あと豊川悦司さんの山本五十六長官、浅野忠信さんの山口多聞少将、國村隼さんの南雲忠一中将などなど、日本側がちゃんと日本語で丁寧に描かれているのが驚きだった。ローランド・エメリッヒさん、かなり調べ上げたし、決断したのだなぁと。そもそも中国資本メインなんだけど、意外に、日本を悪魔化するというか、ダメダメ、よわよわにする視点が少なくて驚いた。ここの場面ではいろいろあるけど、それは本筋じゃないし。結局のところ、『Tora! Tora! Tora!』でもそうなんですが、アメリカ軍をカッコよく強く描こうとすればするほど、日本がそれに値するくらい強かったと、物語力学上、描かざるをえなくなるので、そうなるんだろうなぁと。

トラ・トラ・トラ!  (ニュー・デジタル・リマスター版) [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]


とはいえ、イアントールさんの『太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで』に読んだときに、短期の状況では、日本海軍の太平洋での戦力差は少なく、実戦経験も含めて帝国海軍とは拮抗していたので、対等に戦争をしているので、戦争映画としては、見ごたえがあった。日本映画は、戦略上完全に負けてしまって戦力が壊滅してからの戦争を描くことが多いので、その場合は、ほとんど戦争しているというよりは、一方的に掃討されているだけなので、戦争映画とは言えないよなぁといつも思うので。

太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで 下 (文春文庫)

米軍は、日本の通信をすべて解読していたのだが、それを信じる信じないは、最前線で決断するチェスター・ニミッツ大将が、情報の信ぴょう性を確認するために現場にプロセスを聞きに行くことや、真珠湾での諜報(インテリジェンス)の失敗を、ミッドウェーで生かそうと必死になっているくだりと、南雲中将の傲慢で情報を確認しない態度は、対照的だった。これは史実としても、命運を分けた点なので、こういうのがエンターテイメントになっているのは、時代が過ぎたのだなぁ、としみじみ。構造的には、真珠湾では奇襲でやられたけれども、ミッドウェーで奇襲をし返した、というドラマの構成ですね。

激動の昭和史 沖縄決戦


いやー個人的にはとても面白かった。ちなみに、日本と米国がちゃんと戦争をしているという意味では、クリントイーストウッドのこれおもいいと思うなぁ。おすすめ。

硫黄島からの手紙(字幕版)

カマラ・ハリス上院議員の大統領選撤退

昨日、カマラハリス・カリフォルニア上院議員が、大統領選撤退を宣言した。ウクライナゲートで、息子の問題がスキャンダルになりかけたバイデンが乗り切った感じがある今日この頃、なかなかレースを飛び出ることができなくて、伸び悩んでいた感じ。まぁ、そうだろうなーと思う。でもこれで、大きなところでは、ウォーレンとバイデン、サンダースになったわけで、うーん、、、ブーティジェッジは、特定の地域だけだしなぁ。何となく、自分の中で盛り上がらない。候補者に新鮮味を感じないんだよなぁ。とにもかくにも、民主党の候補者争いの中では、中間と極左の間をどう泳ぐか、同のように人々に訴えかけるかなので、真ん中を目指していたカマラ・ハリスの方向性自体は、分かるものなんだよね。でも結果が出なければ、どっちつかず、中途半端になってしまうのも、事実。この構造が凄く難しいのがわかる。さてどうなるのでしょう。

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『世界史とつなげて学ぶ中国全史』 岡本隆司著 土地から生み出す生産性の違いが統合か分権かに影響を与えるプロセスが興味深かった。

世界史とつなげて学ぶ 中国全史

客観評価:★★★★★5つ
(僕的主観:★★★★★5つ)

ユーラシア大陸を一つで見る視点、寒冷化、温暖化などの気候の影響が大きな軸として語られている点など、「通史として全体を見通す」ことのできる素晴らしい本だった。この辺の見方は、出口治明さんの著書を読んでいて、大きな歴史学のトレンドはその視点があるのだなぁと思っていたので、こういう専門家による通史、歴史家としての一貫した視点は、非常に良かった。何よりも、驚くほど読みやすい。著者が自分の頭で考えているものを、ざっくりと、一気通貫に描いているからだと思う。学問として専門書としては物足りないかもしれないが、まずこうした「統合の視点」による鳥観図、全体像がないと、何を話しているかさえ失われてしまうので、中国史を、中国を考えるときの良き入門書になると思う。梅棹忠夫先生の『文明の生態史観』的な、人類史、ユーラシア大陸の気候的条件から、大陸の西と東での起きている現象の類似性を比較している、視野が広くてよかった。しかしこういう説明も、そもそもゲルマン民族移動とか、西ヨーロッパの通史を知らないと、比較しても、そうだったのか!という驚きは生まれないのかもしれない。なんにでも教養は必要だなぁ、としみじみ。

全世界史 上巻 (新潮文庫)


そもそも手に取ったのは、岡本隆司先生の『世界のなかの日清韓関係史 交隣と属国、自主と独立』が素晴らしかったので。

世界のなかの日清韓関係史-交隣と属国、自主と独立 (講談社選書メチエ)


東京大学先端科学技術研究センター特任助教の小泉悠さんの『帝国」ロシアの地政学 「勢力圏」で読むユーラシア戦略』でも思ったのですが、中国の歴史的背景から、冊封体制朝貢体制を知らなければ、「見ている世界が違う」「異なるゲームで交渉している」ことがわからなくて、何が問題になっているのかまるで理解できないままディスコミュニケーションに陥るものなのだなぁと、いつも思います。この本は、ロシアの「主権」の概念が、自由主義陣営、西ヨーロッパの1648年のウェストファリア条約(Peace of Westphalia)を基礎とする考え方とまるで違うという原則と理論から説明していて、なるほどと唸ったのを覚えている。というか、むしろ、世界の大国として独自で動けるプレイヤーである中国やロシアがまるでウェストファリア的な理解と異なる主権、外交理解をしているということは、人類史におけるコモンセンスが、決して、それが共通ではないこと示していて、全然わかっていないで歴史書とかを読んでいたのだなぁ、といやはや読んでいて勉強になった。なんというか、何かを考えたりするときには、大元の歴史や背景を深く知らないと、まったく相手のことがわかっていないのだよなぁーといつもしみじみ思う。

「帝国」ロシアの地政学 (「勢力圏」で読むユーラシア戦略)


全体的に大きな鳥観図を描いているので、自分が印象に残った点を、あげておきます。ユーラシア大陸は、乾燥地帯と湿潤地帯に大きく分けられ、文明は、この境界線上に生まれる。なぜならば、それぞれの生活様式、ニーズが全く違うので、交易によって交換、さらに生態系を豊かにすることができるから。当然異なる生活様式の際では争いも起きるし、交渉を記録に残す必要性が上がるので文字が生まれる。この乾燥地帯と湿潤地帯の生活様式やニーズの性、文明というダイナミズムを描いていく原初の点とするところは、非常にわかりやすかった。そりゃそうだよな、と。


しかしながら、寄稿の影響で、この境界線は、いつも上下したりずれたりする。ここでは、寒冷化の減少で、この境界線が南に下がることによって、一度できた中国の統一国家体制がバラバラになっていく過程をまず最初に見るのだけれども、これは西(ローマ帝国の崩壊)でも東でも同じ構造。


またそれだけではなく、寒冷化にって生産性が下がるので、個々の地域に権力が分離独立して、「自らの土地を集中再開発」する必要性が出てくるというのは、なるほどと唸った。厳しい気候条件の中で、生産性を上げるため(技術のブレイクスルーがそれほどなければ)、強制労働、農奴、奴隷が効率がいいため、それを統率する貴族と農奴が固定化していく様も、なるほど、とうなった。僕的には、この力学というかダイナミズムの説明が、とても大きな気づきだった。えっとで、ここで説明されているメカニズムは、寒冷化で「楽に農作物が得られる」状態が失われると、寒くて農作物が得られない土地(しかも寒さが南に来れば北の土地は減っていく)において、同じレベルの人口を支えられなくなる。同じ土地から、高い生産性(の作物)を得ようとすれば、「その土地に縛り付けて集中させる労働力』が必要になる。そのため、強制的に人を働かせるために、指導するもの(貴族)と、強制的に働かされるもの(農奴・奴隷)が生まれる。指導するものが、王(一人=広域を支配するもの)ではなくて、貴族(多人数・各地域にバラバラに乱立している)のは、土地が減少して、狭い土地で集中して監督、労働力投入をしなければならないから。もともと、都市(権力が集中している=統合)があって、その周りに種まきゃ農作物が取れる!と、どんどん農地が広がっていく温暖な時代と、寒冷化が進み、都市が放棄されて個々の狭い地域を軸とする村落(村々が独立して、散在しているので統一権力ができない)になっていくさまは、まさに、統合と分権の振り子。とても興味深かったのは、寒冷化が進むと、貴族と奴隷が生まれて、身分が固定化していくこと。また統合原理が生まれないで、権力が地方偏在すること。言い換えれば貴族が強い力を持つ封建社会ができやすくなる。この機構、土地の生産性で、社会の生産体制が変化していくさま、見ごたえがあった。

中国では、初期条件で南北格差がある。それは、寒冷化、温暖化によって、遊牧民と農民の境目が大きく移動することによって生まれている。このずれが起きやすい北部は、分権化しやすく、南から農作物や富を収奪しなければならないので武力が強くなっていく。しかし生活や文化は貧しい。ズレが起きない南は、最初から統合原理ができやすく、生活が豊かであるが、その代わり過酷な環境で競争している北部の軍事力には常に勝てない。この構造がはっきりわかるのが、面白い。


しかしながら、それが近代に入り、東西格差に変わっていく構造の描写はなるほどと唸らされる。現代の中国では、南北の格差がほぼ消えており、中国の長い歴史が、運河など様々な歴史的経緯を経て、この格差をなくそうとあがき続けた結果、それがすべてなくなっていく様を示している。しかし、今度は沿岸部と農村部の東西の格差が大きくなっていく。現在の中国の根本の苦しみ、構造的な問題も、ここにあって、この構造が克服されない限り、いつまでも同じ不安定な構造は変わらない。これは興味深かった。


他には、ずっと明朝の鎖国、農本位の政権は、最悪の政権だと思っていたが、この時代に形成された支配層と民衆の乖離の構造がデータで示されていたのが興味深い。極端に小さな政府の体制。驚きだったのが、これが、清朝中華民国、そして現在までの中国の構造的問題なっていること。清朝は、もっとマシな政権だと思ってたのが。。歴史的に数百年、極端に多元化が進んだ社会に、統合の原理がもちこめていない。支配の民衆への浸透率のデータ比較をすると、ヨーロッパや日本が、ほぼ一致してネーションステイツが形成しやすい構造なのが一目瞭然。逆に、中国が、多元的で困難なのがわかる。その意味では、それをまがりなりにも達成したモンゴル帝国、クビライカーンの凄さがわかる。いいかえれば、中国は、主権の同一性が、保ちにくい社会であって、ウェストファリア的な主権とは構造が違うというのは、これだけ明示されているデータがあると、なるほどぉと唸った。逆に言えば、日本と西ヨーロッパの同質性が、よくわかる。

本好きの下克上、アニメの放送が始まりましたね!


TVアニメ『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』本PV


放送が始まりましたね。いま4話まで見終わって、毎週じりじり、楽しみ放送を待っています。ペトロニウスは、アメリカに住んでいるので、アマプラで見ています。いやはやいい時代になったものだ。毎週好きすぎて、何回も見直して、また本まで読みはじめちゃたので、アニメ凄い楽しいです。


本郷みつる監督は、ハウス食品の「世界名作劇場」テイストで演出を一貫させると決断されているですね

とはいえ、実は、1話を見た時に、めちゃがっかりしちゃって、「もう見ないかもなぁ」と思うほどでした。というのは、大きく分けて二つ自分の期待と違ったからです。一つは、『本好きの下克上』は、思い入れのある作品で、エピソード自体は、誰もめちゃくちゃ好きなので、映像化されるのならば、いまのリアリティを精度高く上げる感じで、背景の街並みや世界観の描写が、めちゃ凄いレベルになるのを期待していたんですね。まぁ、いまの時代のアニメならば、それが普通だろうし、という思い込みあった。それが、、、、あれ、なんか、かなり背景が普通だぞ、、、と。同じように止め絵での演出ばかりで、人の動きがとても弱い。もう一つは、見てて分かったのですが、マインのキャラクターの理解が、自分とだいぶずれていたんですね。最終話まで見ているというのもあってもっと「上品な感じ」に思い込んでいたんですよね。なんというか、デフォルメの表現や、キャラクターのデザインそれ自体が、だいぶ、大阪のおばちゃん(笑)というか、もっと元気ある感じに作られていますよね。


総じていうと、往年のハウス食品の「世界名作劇場」のころの感触を感じたんですよね。それって、数十年前のアニメの感じです。なので、がっかりしてしまった。あれにはあれの良さがあるんですが、やっぱり最近の描写のリアリズムが追及されている作品と比較すると、がっかりするじゃないですか。


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けど、数話見続けているうちに、なんというか「フレームがあってきた」感じがしたんですよね。自分の中で。えっとですね、この作品は、本郷みつるさんという監督だそうですが、大人の事情があるのかどうかはよくわかりませんが(僕は情報を集めようと一切しないので)、少なくとも、ハウス食品の「世界名作劇場」のテイストで統一する、とはっきり決断していますね。「できなかったから」というのではなく(事実はそうかもしれないですが)、このテイストで、かっちりとまとめてきている。演出として、一貫性があって安定していると、これはこれでありだなという風に、なってきました。これは、監督の力量だなぁと思います。アニメーションって、背景のリアルさとかそういうのではないんだなぁ、というのが、こういう技を見せられると、しみじみ感じます。演出力なんだなぁって。少なくとも、同時に、FGOバビロニア戦線も好きで見ていますが、お金のかけ方、動き、もう同じアニメとは思えない(笑)ぐらい差がありますが、でも、面白さは、下手したら、僕は、本郷さんの方が、好きかもです。というか、好きです、ぶっちゃけ。今シーズン見ているのは、この二つかなー。

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■『本好きの下克上』の面白さのコアって、本を作ろうと試行錯誤する最初の部分なのか、貴族院の学園変なのか、、、、

おしむらくは?というか、悩みどころなのは、話数の進み方と、14話の尺で考えると、これがどこまで行くのかわかりません。丁寧に描かれているので、いいところ、本でいうと第二部の神殿に入ったところで終わりかなぁ、と思う。いっても3部の領主の養女になった貴族編まででしょう。アニメが、めちゃ気持ちを喚起してくれているので、また漫画をすべて読みなおして、小説もコツコツ読み直しているんですが(←内心、仕事しろよって、ほんと自分でもおもう、、、、)、僕は、『本好きの下克上』の何が最も好きなのかなぁ。。。何が一番の魅力なのかなぁ、、、ってふと考え込んだんですよね。というのは、この物語の「完成度」については、下記で言っているんですよね。でも、「そこ」だけが魅力というわけではなくて、異世界転生チートもののの構造的問題点を克服してるってだけで、「僕自身が好きな理由」に到達してないなーと。なにが、こんなに長い物語を何度も何度も読み返すほど、好きなんだろう、、、と。

petronius.hatenablog.com

いつもガツンと読み返すのは、「ローゼマインが貴族院に入学した学園編」と「アーレンスバッハとの戦争編(あれもう戦争だよね)」なので、4部と5部になるんだろうけど、特に4部の、学園編が、めちゃビルドゥングスロマンになっていて、しかも異世界の魔法という「世界の謎」を学校で学んでいくプロセスは、やっぱりハリーポッターの学校に行く話と重なると思うんで、ここが王道というかコアなのかなぁと。おお!と、『七つの魔剣が支配する』で、思ったのも、やっぱり魔法学校って、日常なのに世界の謎、自分が住む世界とは異なるマクロの仕組みに支配された世界の謎を知るというファンタジーというか物語で、これってすごい魅力なんだよな、類型として、と思う。

七つの魔剣が支配する (電撃文庫)


でもなぁ、、、、いやね、これって云いかえれば、僕は1部や2部の「異世界転生して何もないところから本への偏愛を語って、それを何とか作ろうと試行錯誤していく部分」よりも、後半の方が面白いってことを言っているんですが、、、、いやほんとうにそうか?って、アニメの本郷監督の丁寧な演出を見て、めちゃ読みたくなって、1-2部を読み返しているので、どうも、両方面白いみたい(笑)なんで、「本好きの下克上」の面白さのコアには到達していない言説だなぁ、と、うーん、うーん、と唸ってしまって、、、、


自分の中で答えが出ていないのですが、でも、少なくともアニメは14話くらいだそうなので?ほんとうかな???だとすると、2部くらいまでですよねぇ。どこまで、この「面白さ」って一般受けして、新規の層にリーチするのかな、、、と。何が指標になって、2期が決まるのかとかは、僕は全然わからないんですが、、、


というのは、きっと、本郷みつる監督や制作陣にとって、この長い物語の「どこを切り取るか?」、「最初から丁寧にやるか?」って、当然最初に考えることだと思うんですよ。アニメ化しようと思ったら。最初から丁寧にやったら、1-2部しか到達しないのは、自明。だとすると、いまの時代(2019年後半)に「異世界転生して何もないところから本への偏愛を語って、それを何とか作ろうと試行錯誤していく部分」を提示するならば、どんな演出方法が、、、つまり、「その部分のシナリオの面白さのコアはどこにあるのか?」ということを普通考えるじゃないですか。その結果として、背景の精密描写ではなく、動きでもなく、「世界名作劇場」的な演出を選んで、かつ、マインの性格を、だいぶ子供っぽくというか、、、、なんといえばいいのだろう、コミカルに演出しているじゃないですか。あの、デフォルメしたマインが、内心の内語で感想を言う演出って、素晴らしいな!と思うんですが、、、、何が素晴らしいんだろう、、、って。うまい言葉が見つからない。


というのが現時点での僕の感想。


僕は、 井口裕香さんの前の声優さんは聞いていないので、違いは分からないんですが、、、、いやはや、、、声優さんって、めちゃくちゃな凄い技術ですねぇ。マイン、かわいくて仕方がないよ。これ、声の演出っと、なんというか、キャラクターのデザインと性格があっているんだろうと思うんですよねぇ。。。。うーん技術的なことがわからないので、どう表現すればいいのかわからない。


本好きの下剋上?司書になるためには手段を選んでいられません?第一部「本がないなら作ればいい!1」 本好きの下剋上(コミック) (コロナ・コミックス)
本好きの下剋上?司書になるためには手段を選んでいられません? 第三部「領地に本を広げよう!1」 本好きの下剋上 第三部 (コロナ・コミックス)
【合本版 第一部】本好きの下剋上(全3巻) 本好きの下剋上(合本版) (TOブックスラノベ)


これ、小説の挿絵と漫画版の挿絵二つですよね。この3つの差を見ると、書き手の性格の捉え方が全然違うと思うんですよ。ちなみに、それぞれが素晴らしいので、『本好きの下克上』って恵まれた素晴らしい作品だなと思います。明らかに「キレイ」に「おしとやか」に、もしくは「理知的」に描かれていると思うんですよ。見れば、全然違う捉え方なのがわかりますよね?


けど、アニメって、デフォルメのシーンなんかもっと露骨だけど、表情が、凄いゆがむじゃないですか!、この表情の表現のし方って、めちゃめちゃ違うと思いません!。これ、アニメーションの作陣が、考え抜いているからできるテイストだろうと思うんですよね。少なくとも、凄い「マインの性格はこう!」「振る舞いはこう!」という明確な一貫性を感じる。


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マイン1


これって意図して表情を豊かにして、かつ、理知的とかおしとやか、というよりは、なんというのだろう、、、、決して子供っぽいとは思わないんですよ、、、なんといえばいいのかなぁ、、、、ちなみに、「動き」が凄い少ないアニメなんですが(笑)、それをマインの声のトーンと表情の変化で、深みを与えるところは、やるなぁ、、、と本と思うんです。だから引き込まれる。この目のしわとか、マンガ的には、徹夜の時に現れるような、極度に疲労した目のしわみたいなのが、がっつり描かれていて、表情の変化が凄い動く気がするんですよね。精密というよりは、性格をそういう落差があるように設定している。


僕は、「貴族院の時」の「アーレンスバッハの時」の貴族として、領主候補生として、リーダーとして、指揮官として、経営者としてのローゼマインが好きだと、そこが魅力だと思っていただけに、もちろん1-2部というステージもあるのですが、だいぶとらえ方が違うのが最初、違和感になったんですよね。ようは「キレイ・スマート」みたいなコンセプトから「ドタバタ・泥臭くて」みたいな感じかなぁ、、、まだうまく言葉がない。。。なんというか、演出からして「マインの性格をこう捉える」と確固たるものが、制作陣あるんだろうと思うんですよ、、、、なので、あれ、、、この子、かわいくないか?って、、、(笑)。自分と解釈が違ったんですが、いやむしろ、こっちの方が魅力的かも、、、、と、少なくともそう思わせる何かがある。現代のアニメーションとしては、だいぶ、なんというかなぁ、安っぽいのに、たぶん、書いてて分かってきたけど、マインの捉え方が、凄くしっかりしてて、それに基づいて、「やれるところ」がものすごく深堀されて一貫性があるんで、いい、とおもえるのかもしれない。。。


まぁ、、、、どうでもいいこと(笑)、ダラダラ考えているんですが、、、、何がこの物語の「僕自身が好きなところ」なんだろう、、、と、つらつら考えています。既に連載が終わって、何度も読み返しているのに、またこんな新鮮な感覚を味わえて、アニメ化というか、他の媒体で見せてもらえると、やっぱり幸せだなぁ、としみじみです。今期は、毎週、まだかまだかとじりじり待っているアニメがあると、生きる意欲わきますよねぇ。


ちなみに、OPの最初のシーンは、ほんと絵とか何もないのに(笑)、見てるだけで泣ける。。。。これ、素晴らしい監督が演出しているんだなぁ、としみじみ。でき売れば、、、2期も、続きもみたいですよ、、、これ。



TVアニメ『本好きの下剋上 司書になるためには手段を選んでいられません』キャラクターPV:マイン

『もっこり半兵衛』徳弘正也著 2015- 個人が世界を救うことはできないあきらめと、それでも可能な限り・・・と思う人情噺が美しい

もっこり半兵衛 1 (ヤングジャンプコミックスDIGITAL)

客観評価:★★★★★5つ
(僕的主観:★★★★★5つ)

いつものごとくヤマカムさんの記事を見ていて、面白いマンガ買おうかーと思っていたら、徳弘正也さんの『もっこり半兵衛』を紹介していて、このレビューが素晴らしすぎて、これは読まなきゃと即全巻購入。まぁ、徳弘さんの作品は、買って損ないし。読んでいる最中ずっと、ぐっときっぱなしだったが、まさに、下記でヤマカムさんがいっている部分が、まさに僕が感じている、この人の作品のすばらしさのコアだと思う。いやはや素晴らしいマンガだ。連載で結構苦労しているようなコメントが書かれていたが、こんな剣客人情ものの時代劇を、書こうと思うのも凄いし、しかもそれが形になって、しかも傑作だったりするところが、いやはやさすがだ。びっくりしたのだが、もう還暦だそうで、いやはやマンガを描くのが好きでたまらないんだ、となんだか、コメント欄を読んでいて胸が熱くなった。

ちなみに試し読みができるそうだ。

www.s-manga.net


さて、ポイント。

個人的には『もっこり半兵衛』が特に面白くなるのは2巻からです。1巻は、徹底的に「弱きを助け強きを挫く」熱いヒロイズム満載でしたが、2巻からはもっと深く考えさせられるテーマが満載で重厚だ。

悪い奴を倒して「めでたしめでたし」では決してない。むしろ良かったで終わるハッピーエンドの方が少ないぐらいです。例えば8話では、近所の仲良かった娘(お玉ちゃん)が父親に遊郭へ売り飛ばされます。

普通なら、金をどうにかしたり、売っぱらった父親をどうにかしたり、遊郭自体をどーこーするってのが正義の味方じゃないですか。しかし、一個人では出来る事と出来ない事があるのです。個人で出来るヒロイズムが『もっこり半兵衛』の人情噺をよりブラシュアップさせてくれる。

お玉ちゃんを遊郭に売られるのは、もうある種仕方がないことで、ならばそれを踏まえて救ってあげるという。お玉ちゃんが遊郭で出世できるように教養を身に着けさせる。おかげで禿から花魁にまでなれた…が…(´・ω・`)

「めでたしめでたし」では決してないものの、半兵衛が出来る精いっぱいだったのが尚泣けます。『狂四郎2030』ラストの後書きでもあったけど、個人で国のシステムどうこうとか転覆はできないって、ある種のリアリズムとそれでも個人で可能な限りで救う。その辺が徹底されててグッとくるんだよなぁ。

yamakamu.net

yamakamu.net



余すところなく、よさが説明されているので、ヤマカムさんのレヴューを読んで!と言ってしまえば終わるのだが、、、、『狂四郎2030』でもそうなんだけど、全体に漂う


一個人で世界を救ったり変えたりすることの不可能性という諦観


が、凄まじいディストピア(『狂四郎2030』)を描いても、江戸の普通の日常を描いても、何を描いても、その背景にべったりと張り付いているところ。いってみれば、物凄く暗く、苦しく、過酷で、厳しい。世界は、そういった残酷さに満ちていることが、大前提で、、、何よりも、個人がそれをどうにかすることはできない「という無力感」がこれでもかと埋め込まれている。


しかし、、、、にもかかわらず、主人公たちは、明るく、やさしく、ドスケベなんですよ(笑)。


無理して明るくしてるわけでもなく、その残酷な現実で生きていのを、当たり前に受け入れている。そして、、、、なんというか、この半兵衛って、なんというか、ほんとうに汚いおっさんで、ドスケベで、なんというか、かっこいいところがないですよね。そして、彼は世界を救うヒーローでもなんでもないし、ほとんどは誰も救うことはできない。「にもかかわらず」、彼の気高き魂に胸が熱くなるんですよ。『狂四郎2030』と同じ構造だって、胸が熱くなりました。人情噺的な、時代劇の定番構造を使いながら、人間理解が深いと、こんなに深い話になるのか、、、と驚きます。


いやはや、素晴らしい出来で、よかったです。


ちなみに徳弘正也さんの『狂四郎2030』は、日本エンタメ史上、ディストピアものの最高傑作のひとつといってもいい出来で、何度読んでも驚くほど背筋が寒くなり、深く深く感動するので、めちゃくちゃおすすめです。ペトロニウスの名にかけて傑作です。これは、読んでないと人生損なレベルだと僕は思います。


絵柄による好き嫌いがあるだろうし、特に下ネタによるコメディが基本なので、人を選んでしまう可能性は凄くあると思います。でもね、『狂四郎2030』は、僕の審美眼にかけて(なんか偉そうですね、、、)、そういうものをすべて飛び越える傑作中の傑作です。主観的な評価も客観的な評価も、日本におけるディストピアものエンタメでは、最高峰に位置するものです。ちょっと長いですが、これは読むに値するものなので、ぜひぜひ、おすすめします。

狂四郎2030 全14巻セット (集英社文庫―コミック版)

『家康、江戸を建てる』 門井 慶喜著 武官ではなく文官、テクノクラートの目的意識は、生涯は、個人を超えるスケールで

家康、江戸を建てる (祥伝社文庫)

客観評価:★★★★4つ
(僕的主観:★★★★★5つ)


華々しい武官に歴史は焦点が当てられがちだが、江戸という大都市を作り上げた文化、テクノクラートたちを描く小説。豊臣秀吉のにより関東へ国替された徳川家康が広大なフロンティアである低湿地を開拓し徳川260年の礎を築く姿を5つの短編エピソードで描く。非常に短くて、数時間で読める。軽めの小説なので、読みやすいので歴史小説まで行くと重いなーと思う人にもおすすめ。僕は門井さんの作品はこれしか読んでいないけど、目のつけ所から言って、この人の外の作品も読んでみたいところ。誰に紹介されたか忘れてしまったけれども、友人の紹介で買ってあったのだが、積んでおいてよかった。


全体としての構成もいいのだが、特に自分的に印象に残ったのは、利根川の東遷を手がけた伊奈忠次の話がにとても感銘をうけた。ちなみに、目で見たほうが、sあらにわかりやすいし、関東に住んでいる人はすぐ実感できるので、下のYoutubeの映像なども同時に見るといい感じ。低湿地帯であった江戸を開拓するために、巨大な河川を捻じ曲げるという大治水事業。伊奈家の4代に継続して行われる大プロジェクトなのだが、「世界の基礎構造を変える」というものが、「数世代を超えてかかる仕事」であって、個人の思いや英雄願望、「自分の代で何とかする」などというエゴを超えたものであるのが、まざまざと感じられる。これは、「家」をベースに、軽いテンポで世代を超えている小説だからできる「視点」で、個人の視点ではなかなか描けないだろうなとしみじみした。単純に言えば、物語にしにくい。個人の動機と体験を超えた話になるから。

www.youtube.com


ちょうど今、物語の最前線を考えて「脱英雄譚」と「新世界系」のテーマを再整理しているのだけれども、その中で分かってきた共通する文脈として、「殺し合いが続くような残酷な現実」というものを変えるには、


「自分が生きているうちにはできない」(自分はあきらめなければならない)


「自分を超えたレベルの世界の変化にバトンをつないでいくしかない」(自分の世代では成し遂げられないことにコミットする)




というの前提なのだというのがわかってきた。これは、ネガティブとポジティブの角度から、2010年代の大きな物語類型の基調低音だったと思われる。


ネガティブには、何も報われない低成長且つパイの分配がない(リソースがない)既得権益の奪い合いの社会背景から、未来に希望がないので、「自分は成長できない=主人公ではない」という自意識が広がった。世界を救う方法が「全くない世界」というのは、言い換えれば主人公である可能性は確実にないという世界。そういう世界で、成長が!とかビルドゥングスロマンの王道を語られても、誰も共感できなくなっていたのだ。その逃避行動として、成長がない世界でチートでハーレムを目指したり(男の子)、女の子だけの関係性の世界で戯れたり(日常系)して、世界の救済や成長をあきらめるという選択肢も発達しました。とりわけ、男の子は、冨野由悠季さんのガンダムのテーマで、特にカミーユ君の発狂で、心を折られてしまっていて、なかなか成長しよう頑張ろうという気力が生まれなくなったみたいです。それくらい、心折られ方が大きかった(笑)。男性が「世界を救う」主人公特権を一心にになっていた既得権益者だっただけに、責任が重すぎてその絶望も深くなった模様です。そのかわり、セーラームーンプリキュアのように、女の子の方のまだ戦う動機を持っていて、そういった物語が展開するのですが・・・・『結城友奈は勇者である』『魔法少女育成計画』『魔法少女まどか☆マギカ』のルートで、ひたすら残酷な世界に直面させて女の子を苛め抜いて、世界の残酷さを悟らせる系統が発達しました。女の子は、それでもなかなか折れないのは、男性と違って主人公特権の既得権益者じゃないので、そもそもアドバンテージない存在なので、打たれ強いのだろうと思います。時代的に、女の子の方が世界を救う勇者に向いているので、、、それ以上に世界の残酷さを感じさせるために、悲惨な目に合わせる度合いがエスカレートしていったんだと思います(苦笑)。


ただ、ポジティブな視点もあります。主人公にはなれないという個々の絶望ではなく、逆の発想で「一人で責任を背負おうとするから、世界は救えなくなっているのじゃないか?」という視点です。これもガンダムサーガや僕の好きなのでは『魔法先生ネギま』『UQホルダー』、『ガッチチャマンクラウズ』などで明確に出ているのですが、ようは、主人公という超絶パワーの個人で解決できることを超えたレベルの解決方法ならば、世界は救えるんじゃないか?。


この場合は、ガンダムのテーゼでは、「戦争を止められる」んじゃないかという形で表れていきます。答えは出ていて、バランスオブパワーが成り立つ3つ以上の勢力によう勢力均衡、その後、地球連邦政府(統一政府の樹立)、その過程でリソース、既得権益の奪い合いにならないように、軌道エレベーター、太陽光エネルギーの人類レベルでの設置によるエネルギー不足の解消、土地の不足に関する争いを避けるためにフロンティアの設定として、スペースコロニーテラフォーミングによる他の惑星への開発、、、、等々の人類の成長(=リソースの奪い合いによる内ゲバの回避)に軌道を乗せる技術の大イノヴェーションと、それを社会に実装する長く、広く、深い展開。「これをすれば」、人類は、前に進める。残酷で苦しんでいる現実を「変えること」ができるのはわかってきました。

ちなみに、ガンダムのテーゼには、もう2つ「人類の革新(分かり合えれば殺しあわない)」と「個人が最後に帰るところがどこにあるのか?」という3つを僕は想定しているんですが、その話も長いので、また今度。

劇場版 機動戦士ガンダム00 -A wakening of the Trailblazer-


が、ここで重要なのは、「閉じ込められて抜け出ることができない」過酷な現在という現実は、「自分一人では為せない」だけでなく「自分の生きているうちには終わらない」というマクロの大事業になります。


いいかえれば、主人公としての特権、、、、自分が勇者に、英雄になって、「世界を救う」ことを断念しないと、「英雄を排してみんなで新しい世界を建設する物語」が始まりません、「英雄を排してみんなで新しい世界を建設する物語」がすなわち、脱英雄譚の本質だと僕は考えています。


長くなるので、この話は、また。


なので、この江戸の町を建設したテクノクラートたちの、「世代を超えて」自分が生きているうちに「完成を見ることができない」物語にコミットすることに僕が感動したのが理解していただけますでしょうか。



個人的には、囲碁棋士で天文暦学者の渋川春海を描いた冲方丁の『天地明察』や、『風雲児たち』の会津藩保科正之(秀忠の実子にして徳川幕府の基礎を作った男)のエピソードを同時に見たい感じです。

天地明察(特別合本版) (角川文庫)

petronius.hatenablog.com


何もなかったフロンティアであり、土地が有効利用できな湿地帯であった江戸が、現在の成長し続ける「東京」に作り替えられていくさまが、素晴らしかった。東京に住んでいれば、「あの地名」はそういう意味だったのか!と、既視感がビシバシある。『風雲児たち』の「薩摩義士の宝暦治水」の話を同時に読みたいところです。


風雲児たち 第30巻 外伝宝暦治水伝 (希望コミックス)


戦国小町苦労譚 1 邂逅の時 (アース・スターノベル)


ちなみに、どうでもいいというか枝葉のことなのですが、なろうの『戦国小町苦労譚』が好きで、こつこつ読んでいるんですが、こういう内政チートものってのも、やっぱり視点は、文官のテクノクラートの視点が面白いんだよね。物語としてはダイナミズムが弱いので、なんで好きでこんな量を読むのか、自分でもわからないんですが、こういう内政チート物のおもしろさって、やっぱり「世界を変える」には、構造の基礎から変えないと変わらないという「気の長さ」が、やっぱりそれだよなーとしみじみ実感するからだろうと思う。


https://ncode.syosetu.com/n8406bm/

『その着せ替え人形は恋をする』福田晋一著 やっぱりなー女の子がかわいいのが際立つのは、男の子がかっこよくなきゃダメなんだと思う。

その着せ替え人形は恋をする 1巻 (デジタル版ヤングガンガンコミックス)
   
客観評価:未評価
(僕的主観:★★★★4つ)

なんか絵柄が好きだなと思ってみたら、大当たりで、めちゃ好き。『桃色メロイック』もすぐ全巻買ってしまったよ。なんなんだろう、全編、Hな感じ満載だし、女の子のかわいいところが見たいんだよね!的な感じがするのに、、、なんか作者が男性っぽくないんだよね。この人もしかして女性なのかな、名前からするとだ男性なんだけど、なんだろう視点が女性に思えるなぁ。なんでだろう。


まぁそれは置いておいて、『桃色メロイック』読んでて、ああ、これ、なんというか「設定がもったいないなー」と凄い思ってたんですよね。これ、お兄ちゃんが、実の妹まじで好きっていうヤンキーマンガじゃないですか。そのまじぶりが、シリアスすぎてギャグになるという構造なんですけど、これって、ヤンキーだから、本気度合いが凄いんだよね(笑)。


でも、妹ちゃんの魅力って、「そういうこと」が全然わかっていない天然のところにあるから、関係性が前に進みようがない。案の定、何も進展しないで、10巻?くらい長く続いているのに終わってしまった。めちゃくちゃ絵柄も関係性も好きだったので、これ「前に進みようがない」というのが、ずっと残念で、、、。次の作品は、ちゃんと「恋愛が前に進む」やつにしてほしいなーと凄い思っていたんですよ。ようは、『桃色メロイック』ってギャグマンガのアイディア勝負の構造を超えられてないんですよね。でも凄いのは、そういうのって、要は絵柄の可愛さとシュチュエーションコメディだけなので、2-3巻がやっとなんですよね。ふつう。そこで賞味期限が切れる。なのに10巻ぐらいまで、引き伸ばして引き延ばして、続くじゃないですか。構造凄い悪いのに。これって、それだけ読者の支持があって、シュチュエーションを超える魅力を作者が描けるからなんですよね。なので「次」が見たくて仕方がなかった。


桃色メロイック (1) (ヤングキングコミックス)


『その着せ替え人形は恋をする』!これ、1巻読んだ時に、稲妻が走った(笑)んだけど、もうね、主人公の五条新菜くんがめちゃいいの!。人形職人を得目指している内向的な男の子なんだけど、もう、なんか見てて、めちゃ応援したくなる。女の子のかわいい姿が見たい!というのがひしひし伝わってくるのに、主人公が朴訥な男の子なところが、もうめちゃいいの、、、。いやね、相変わらずとびっきり女の子がかわいいのは変わらないんだけど、、、、やっぱりね、「男の子がかっこよく」ないと、「女の子の可愛さも」際立たないんだなーと、しみじみおもったよ。「男の子に都合がいいだけ」のハーレムを描くのって、やっぱダメなんだなーとしみじみ。そういう場合って、男の子が典型的過ぎて、魅力的じゃないんですよね。感情移入しやすいように、あまり特徴を作らないんだろうと思う。これって『恋愛ラボ』でも思ったけど、、、結局関係性だから。


いやだからね、もう絵柄とエピソードとか性格だけで、この作者さん、めちゃくちゃ素敵なので、「それだけでいいんだよ」的に思えてしまうくらいなんだけど、やっぱり、これ、恋愛が前に進む構造になっていて、着々と、進んでいく感じが、なんかこう、、、、、悶えるんだよねぇ。なんというのかなぁ、ほんと新菜くん、朴訥で、内向的で、付き合い下手で、、、、たぶん表面だけ見たら、友達いない暗い変なやつなんだけど、一歩奥に入って、「好きなこと」「本気になれること」を通してみたら、めちゃめちゃいい子なの、もう、おじさん惚れちゃうよ、彼に。それくらいいいなーと思うと、ヒロインが彼を好きになる理由が、物語の都合じゃなくて、それはそうだよなー、うんうん、という納得があって、なんか見てて幸せな気分になるんだよねー。僕ねぇ、、、不器用な彼が、勘違いした日時に間に合わなくて、いろんなことが押し寄せてキャパいっぱいいっぱいになって、精神的にまいって追い詰められてしまうシーンで、それでも泣きながら、服を作るシーンで、胸がつぶれるような思いだったよ。ヒロインのまりんちゃんが、これがわかった時に、そのプロセスをすぐ気づいて、ボロボロ泣きながらありがとういうシーンとか、いや、もう「お腹いっぱいです!」みたいな幸せな気持ちになったよ!。「好きなことを通してみる世界」のキラキラ感があふれてて、もうぐっとくるですよねー話的にも。まぁそれ以上に、キャラクター超好きすぎる。


その着せ替え人形は恋をする(3) (ヤングガンガンコミックス)