『2人のローマ教皇(The Two Popes) 』2019 Fernando Ferreira Meirelleska監督 対立の中に、苦しみの中に、罪の中に、おかしみが、余裕が、愛があること


The Two Popes | Official Trailer | Netflix

客観評価:★★★★4つ
(僕的主観:★★★★4つ)

ネットフリックスオリジナル。こうしてみると、フランチェスコ教皇教皇の座に就いたことそれ自体が、バチカンの強いメッセージなんだな、と思う。改革派が、保守派を押さえたし、しかもちゃんと宥和している。事実なのかどうかはわからないが、こういうメッセージが世の中にあふれることは、なにがしかの真実を表しているのではないかなぁ、と部外者であまり知識がない自分は思う。

これは、第266代ローマ教皇フランシスコと、その先代ベネディクト16世のお話。ヨハネパウロ2世より2005年に教皇を引き継ぎ、2013年に、実に719年ぶりに自由な意思で退位し名誉教皇になった。その引継ぎの期間の2人の対話が物語になっている。何がベネディクト16世の決断を促したのか、フランシスコは、どうして受け入れ、そして何を目指すのか。この話は、日本の天皇家にも言える話なので、「横のつながり」というか視点で見るには、同時代に、宗教的権威の頂点に立つ伝統的存在が、自由意志によって退位した話は興味深いと思う。


アンソニー・ホプキンスベネディクト16世、ジョナサン・プライがフランシスコ演じるのだが、プロの俳優の凄みをこれでもかと感じる、見事な出来栄えでした。


映画として物語として、みるべきポイントは、僕は2つ。


一つは、ブロマンスかよっ!ってくらい、二人のおじいちゃんが、いちゃいちゃしていること(笑)。


でもね、保守派と改革派の旗手だけに、最初は口もきかないくらいお互い避けあっているし、なによりも、ずっと政治的対立は、激しくて、話せばすぐ論争になっているんですよね。「にもかかわらず」、終始、お互いへの尊敬と愛にあふれている感じがするのが、とても不思議な映画。この「感覚」を演技で来ている、二人の熱演ぶりには、脱帽。特に、ベネディクト16世は終始堅物の厳しく偏屈な人であるのに、それが、じつは、ジョナサン・プライのフランシスコに深く心を開いていて、好ましく思っているのが、全編に伝わってくるのが、素晴らしいなぁ、とずっと見ていて、すがすがしい気持ちになりました。


これはメッセージです。


対立があるものでも、愛し合うこと、尊敬しあうこと、お互いが共存できるということを示している。いい物語です。


そしてさらに奥深く、ぜひとも『ローマ法王になる日まで(Chiamatemi Francesco - Il Papa della gente)』(伊2015)を同時に見たい。そうすると、背景がより詳しくわかると思うのですが、この二人の悩みの骨子は、



二人が許されない罪を背負っていて、それに自覚的であること



なんです。これは、人間的な物語だし、神ではない!(この言葉にどれくらいの重みがあるだろう、、、教皇として言うんですよ)人間なんだ!と言い合うシーンは、胸が熱くなりました。この映画単体でも十分わかりますが、フランチェスコ教皇のアルゼンチンの独裁政権下での苦悩は、ぜひとも下の映画も見たいところ。

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  • 出版社/メーカー: Happinet
  • 発売日: 2017/12/02
  • メディア: DVD


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ベネディクト16世の方も同じであまりにセンシティヴで、映像までには出なかったが、司祭の未成年者への性的略取が問題になっていて、これを見過ごしたことに対する罪を告白するシーンは、いろいろ思いました。人の上に立つのは難しい。マクロの責任をすべて引き受けなければならないし、なんだかんだ言って現実に悲惨な目にあった人々からすれば、甘えたこと言ってんじゃねぇ、と許せなくなって、対立が深まり、より激しく分裂していくのは、世の常であり、、、何よりも、それこそが「今の時代」です。宗教的にというか、物語として「許し」が必要なのはわかります。でも、許せるほど人の傷は、虐げられた人の傷は、甘く話、浅くはない。だからこそ、殺し合いが続く世界なんですよね。それが現実の過酷さ。


でも、この作品を、コメディというのは、とてもいいと思うんです。フランシスコが、終始、人生を楽しそうに生きているの。ごはんしそうだなーと、ふらふら庭を散歩したり、ハーブを見つけて喜んだり、ビートルズが好きだとハミングしたり、サッカーで一喜一憂したり。…最後のシーンで、ワールドカップの試合を二人で見ていて、決勝がアルゼンチンとドイツなんですよね。二人が、めちゃ、盛り上がっている姿を見て、、、、ああ、こういう宥和と対話が、許せない罪を背負いながら、それでも、話し続けて、そして人生を楽しんで肯定的にとっていけたら、いいだろうなぁ、と凄い前向きの気持ちになれる映画でした。


僕は素晴らしい映画だと思いました。おすすめです。


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『ザ・クラウン(The Crown)』  Peter Morgan監督 君主制の中身の比較、歴史を考えると類似性に驚く

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客観評価:★★★★★5つマスターピース
(僕的主観:★★★★★5つマスターピース

凄い。素晴らしすぎる。自分の中で断片的だった近代英国史、特に、現代史(1945年以降)が急速につながってきて、驚く。そういった歴史の「点と点がつながる」接続感覚だけでなく、物語としても、とんでもなく面白い。傑作だ。さすが、としか唸りようがない。ほんの数日で、シーズン1すべてを一気に見てしまった。続きを見るのが楽しみすぎる。

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自分の気になった点のメモメモ。


1)1945年以降のイギリスの歴史が急速につながっていくこと、いまにつながらダイアナ妃の話とか断片で知っていたことが背景も含めて、そういうことだったのか!とつながっていく感覚が凄い。これ、凄い教科書みたいな、素晴らしいドラマ。そもそも、おもしろいし。若くして王座に就いたエリザベス2世(リリベッド)の視点を軸に描くので、単純な成長物語にも見えるし、その中のでの彼女の人間としての、ロイヤルファミリーの人間関係の葛藤を中心に描かれるので、とても入りやすい。実際は、背景に大きな歴史の流れがあるので、背景知識があればあるほど面白いとは思うが、そんなの抜きに文句なしに面白い。物凄く保守的な時代に、家長として、元首として、職業人として自立を要求された「女性」の葛藤の物語と「だけ」考えても、成立しているので、めちゃ面白い。つまりはマクロではなく、ミクロの視点のみで描けている。

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2)それと、立憲君主制は、日本の皇室と凄く似ているイシューを持つのがこれでもかと感じた。第四話の"神の御業(Act of God)は、まさに立憲君主制において、君主が政府に対してどこまで言うのか、どういう関係になっているのかの、まさにまさにという話。昭和天皇の問題になった話と、同じ構造。こんなに同じなんだ!と驚いた。第7話の "知識は力なり(Scientia Potentia Est)も、そうなんだけれども、政府と君主という二つの権力の「関係性」。バランスオブパワーを、どのようの具体的に達成するか、という話なんですよね。エリザベス2世も、老練なチャーチルやソールズベリーに、いいようにあしらわれて、自分の影響力行使に、凄い苦労している。実際に、スモッグのためロンドンが非常事態に突入した時に(戦時と同じように考えればいい)、そのままでいいのか?それは、神から与えられた責任(国民へ奉仕するわけではない)に背くのではないかと葛藤するところは、こんなに同じなんだ、と驚いた。縦軸と横軸ですが、類似の他の国はどうなんだ、ということを詳しく知らないと、本当に何も見ていない井の中の蛙になるんだ、とめちゃくちゃ思いました。それと、チャーチルが極端な例でしたが、保守的な老人の、権力に固執する「老害」のこれでもかという、やばさに、どうにもならなさに、、、どこも同じなんだ、としみじみしました。最近下記のツイートのようなことを、とみにマクロでもミクロでも感じていたので、、、、。もちろん、歴史が古い国だからこそ、こういう老害問題が激しく出るというのもあるんだろうと思う。古いことやお年寄りが、伝統や保守の名目で、リスペクトされたり求心力を持ちやすいからだろう。

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3)ロイヤルファミリーの問題は、個人の中に「君主」という国家の代表と、「その人個人」の二つの相貌があって、それが激しい葛藤を起こす。抽象的に言えば、ロイヤルファイミリーに人権はないって話。日本の皇室についても後継者問題、男系天皇問題は、即、人権問題に結びつく。国民ではないため、人権がめちゃくちゃ制限されている生活をしていることをどう考えるのか、という問題。皇室の問題しか考えてなかったので、これが常に君主制にはついてまわる問題だというのに驚いた。イギリスの場合は女性の王位継承が認められているので、日本とは形は違うが、あれほど開かれた、個人が認められているように見え王室でも、これほどの強い制限がのしかかって、重荷を背負って生活しているのか、と驚いた。『英国王のスピーチ』という傑作の映画があるのですが、これは、エリザベス2世のお父さんのジョージ6世(George VI)のお話なんですが、この時の大きなテーマは、本来の王は、兄のエドワード8世(Edward VIII)であって、彼が離婚歴のある平民のウォリス・シンプソンと結婚するために王位を退位していきなり王にならなければならなくなることでした。

英国王のスピーチ (吹替版)


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この話自体は、王冠をかけた恋として、知っていましたし、この映画でも何となくは知っていたのですが、このことが君主制の存続を危うくし、ロイヤルファミリーにイギリスに、凄まじい影響を与えていて、、、もちろん直接の家族に、激しい憎悪と不和をもたらしているというのは、全然わかっていませんでした。1952年にエリザベス2世は即位しますが、これ以降も、王室の義務と結婚(好きな人と結婚する)が、こんなに重くのしかかっているとは全然わかっていなかった。妹のアン王女の恋もそうだし、なによりも、王配のフィリップとの関係は、常にこの義務と自分自身の葛藤が主要なドラマになっている。

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とにかく、めちゃくちゃ面白いです。とりあえずこの年末は、シーズン2-3を見ないと。いまイギリスやアメリカの最前線が、女性の権利や自由について、凄まじくセンシティヴになっている、まさにドストライクの話で、いやー時代だなぁ、としみじみ思います。アメリア・イアハートのお話を同時に見たいところです。

アメリア 永遠の翼 (字幕版)

『心が叫びたがってるんだ。(The Anthem of the Heart)』 2015 長井龍雪監督 超平和バスターズ原作 抱えたリグレットとトラウマに向き合う時

心が叫びたがってるんだ。


客観評価:★★★★★5つ
(僕的主観:★★★★★5つ)

オルフェンズを見たのがきっかけで、超平和バスターズ長井龍雪岡田麿里田中将賀の3人によるアニメーション制作チーム)が、自分に中で個別認識というか、この人たちが見ているものは何なんだろう、なぜこれを描くのだろうかというのが、凄く盛り上がってきて、ずっと追わなきゃとこつこつ見ている。岡田麿里さんつながりで『さよならの朝に約束の花をかざろう』(2018)、篠原俊哉監督の『凪のあすから』(2013-14)とか見ていくうちに、全然認識なかったけれども、『あの花』(2011)も『『とらドラ!』(2008)、『DTエイトロン』(1998)とかとか、単体で気になっていて、うまく言葉にできないけど、ずっと心に残っている作品はめちゃ関係してて、おおこれはテーマで追わなきゃいけない!というか、とにかく見たい!と思って、いまこつこつ見ています。


心が叫びたがってるんだ。』。昨日見たんですが、、、、途中で、というか開始数分で、あ、これ傑作だという環境が沸き上がってきて、最後までそれが消えませんでした。素晴らしい作品です。見ている最中も、1日たった今日も、こういういい話に出会えて、ありがとうという気持ちでいっぱいです。なんというか、キャラクターたちがとても等身大。


とにかくいいものを見た、よかった。それが言いたかった。



ちなみに、新作は見れていないのだが、新海誠監督がここで指摘してて、ああ、やっぱり何か大きなテーマというか文脈があるよなぁ、としみじみおもっている。ちなみに、まだ全然言葉になっていないんだけど(笑)。まぁ、好きなんです、ということ。


脚本構造は、『あの花』と同じ。幼少期に抱えたトラウマを、数年が過ぎ去った後、なにがしかの契機をきっかけに、主人公らティーンエイジャーがそのトラウマと向き合う。青春群像劇といってしまえばそうなのだが、この喪失と再生を喚起させる絶妙な脚本は、さすがの超平和バスターズ


『劇場版 あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』予告編


素晴らしい作品は、最初の数秒、数分の「入り口」で目が離せなくなる。この作品も、最初の幼少期の成瀬順が、おしゃべりで、明るく元気な女の子というのは、見ていればすぐにわかる。そして、ちょっとテンション高いその子が、山の上のお城(ラブホテル)を見てて、そこから見知らぬ女性と出てくる父親を見てしまう時点で、もうこの家庭がめちゃくちゃになって、この子が呪いをかけられることになることは、誰にでもわかるはずで、もうドキドキして目が離せなく引き込まれる。全編、この絶妙なシナリオの構成は、さすがとしか言いようがない。どれくらい売れたかはわからないが、この見事な引き込みを見ても、仮に宣伝が弱くても口コミで広がりそうな、素晴らしい出来だった。これは、、、売れたんじゃないかなぁ、と思う。どうなんだろう。


ちなみに雑感で取り留めないが、この順の父親はクズにもほどがあるな、、、とちょっと見終わった後も、驚きすぎる。でも、そんなものなんだろう。なにげなく発せされた言葉が「呪いのトラウマ」となり、子供を、人を縛っていくものなんだろうと思う。父親は去り際に、「全部お前のせいじゃないか」という無慈悲な言葉を投げつけるのですが、それによって、主人公の順は、自分のせいで家庭が壊れたと落ち埋められて、言葉がまともにしゃべれなくなります。これ、成瀬順という少女が、おしゃべりで、感情が駄々洩れになるような、元気いっぱいの女の子であるのが、体の動きや雰囲気から、声がしゃべれなくなってさえもわかるので、その子にかかっているトラウマの深さが、切実に迫ってきて、胸が痛かったです。


物語としては、言葉が出なくなっている彼女が、好きな人と、友達と出会うことで、言葉を取り戻していく物語になります。心が叫びたがっている彼女が普通の言葉はしゃべれないけれども、ミュージカルの歌ならば声が出せるというのは、うまいシナリオだなぁ、と唸りました。


映画『聲の形』DVD


ふとこの作品を思い出しました。どっちも傑作ですね。


なんというか、「声が出ない・気持ちが伝えられない、伝わらない」「まだティーンエイジャーであるにもかかわらず深いトラウマと喪失を抱えている」「抱えたリグレットを抱きしめて前に進んでいこうとする時にそばにいる友人がいる」みたいな、この感じ、、、、彼らの作品を見ていると、共通の何か、いまの時代の空気を凄く感じて、見ていて叫び出してしまいたくなるような、むずがゆさを感じました。

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『響け! ユーフォニアム』を見た時にも、なんでこんなに若いのに、既に「自分が許せないようなリグレット」をかけているんだろうと、不思議に思ったんですが、この抱えている後悔を、何とか次に超えていきたい、というのは、共通の青春テーマなんでしょう。この感覚は、『青空エール』とかでも感じたなぁ。

「響け! ユーフォニアム」Blu-ray BOX


まだ、正直、超平和バスターズについて語る言葉がまとまっていないので、「良かった」くらいしか言えないけれども、本当に素晴らしい物語でした。なので、書いておきたかった。


うーむ、最近凄いアニメとか映画を見れている。オルフェンズをがっつり見たおかげかもしれない。


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あらためて『とらドラ!』見直したくなった。見ないと。

とらドラ! コンプリート DVD-BOX (25話, 625分) アニメ [DVD] [Import]

『バイス(Vice)』 2018 Adam McKay監督 共和党の側から見えるアメリカの直近の歴史

バイス (字幕版)

客観評価:★★★★4つ
(僕的主観:★★★★★5つ)

さてさて、今は2019年の12月。注目していたベトオルークもカマラハリスも、ドロップアウト。ブーティジェッジに注目の民衆党レース。サンダースとウォーレンは、人気を維持で、バイデン元副大統領がレース首位を走る。共和党は、なんといっても、ナンシーペロシによる下院の弾劾調査が、進んでいる。もともとバイデンの息子さんのハンターのウクライナでの問題を、トランプ大統領が軍事援助を餌に調査している言うようにウクライナの大統領に圧力をかけたという、ウクライナゲートは、やればやるほど、バイデンさん側に不利なんじゃないかということもあって、ペロシさん決断だった。でも、ハンタ-バイデンのウクライナゲートは、彼のスキャンダルとしては、大きくならなかった感じ。なので、弾劾のプロセスが進んでいる。もちろん上院を共和党過半数を占めているので、意味がない行動ともいえるわけで、その辺りはまだ混迷といった感じ。というのを総合すると、トランプさん優勢かなーと思う、今日この頃。

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ディック・チェイニー(Richard Bruce "Dick" Cheney)の半生を描いた伝記映画

第43代アメリカ大統領、ジョージ・W・ブッシュ( George Walker Bush)の副大統領として知られるディック・チェイニー(Richard Bruce "Dick" Cheney)の半生を描いたAdam McKay監督のブラックコメディ。2010年代は、ポストトゥルースの時代で、アメリカにおいてはどんな物語でもドキュメンタリーでも、党派性を帯びてしまうので、プロパガンダとしかとられないというバイアスがかかるので、なかなか難しい。この映画の最後のエンドロール以降に、一般市民の反応をマーケティング調査しているシーンが描かれていて、民主党プロパガンダ映画だろう!と叫ばれているが、全体的な位置づけは、そうなるだろうと思う。なので、マイケル・ムーアのドキュメンタリーと同じように見るといい作品だと思う。ドキュメンタリーとして生真面目にしてしまうと、プロパガンダ臭が強くなってしまうので、ブラックコメディ側に振って、ディストピアの物語的印象を創るのは、たくさんの人に受け入れてもらうには基本になっている手法だ。とはいえ、2019年の現在で、78歳で存命だが、まだ生きているうちにこのような風刺が描かれるところが、そうはいっても、アメリカはさすがだなぁとも思う。

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■影の大統領と呼ばれたディック・チェイニー副大統領は、なぜイラク戦争を起こしたのか?

この物語を理解する基本ラインは、チェイニーがなぜ、イラク戦争を起こしたのか?という謎を追い続けるという補助線を持つと理解しやすい。明確に「そのライン」で物語が作られているので、シンプルだと思う。しかしながら、ドラマ性がほとんどなくて、チェイニーがどんな人物なのかの内面は少なく、ひたすら世界を説明する道具というか記号になっている。いっそすがすがしいぐらい。

むちゃくちゃ面白いぞ、これは。
映画のスタンスは、基本的に前作の「マネー・ショート」と同じ。
あの映画では、ウォール街に生きるマネーのプロフェッショナルたちの群像劇を通して、リーマンショックはなぜ起こったのか、拡大し続けけたバブルが弾けるまでの仕組みを、詳細かつ分かりやすく描いてみせた。
ドラマというよりは、ジャーナリズムとしての映画であり、登場人物は観客を感情移入させつつ、情報を届けるための駒に過ぎない。
本作でも、ディック・チェイニーの人物像をディープに描くのではなく、酒に溺れたクズ野郎が、いかにして影の大統領に上り詰めたのか、そのプロセスとメカニズム、米国と世界に与えた副作用を描く。

ノラネコの呑んで観るシネマ バイス・・・・・評価額1700円


マネー・ショート華麗なる大逆転 (字幕版)


ドラマ性がないので、では実際に、チェイニーがなぜイラク戦争を起こしたかは、明示はされていないが、彼がこれでもかと権力を追及されているさまが、これでもかと描かれている。彼に政治を教え込んだドナルド・ラムズフェルドとの会話の中で「理念は?」と問いかけて冷笑されるシーンが出てくるが、彼らの目的(手段ではなく)が「権力の維持と顕示」であって、何らかの達成する目標があるわけでも、理想の何かがあるわけでもないことは、描かれ続けている。権力を維持するために権力を追求するという場当たり性は、日本の安倍晋三政権でも僕は同じ印象を受ける。時代性の類似性をととても感じる。悪いというわけじゃないんです。これには、必ずしも善悪で判断するというよりは、民主党的な、リベラリズム的な、大きな政府的な、「何かのきれいごとの理想的目標」が実はそれ自体も権力を獲得するための道具であり手法であって、理想なんてものの方が最悪なんだという嫌悪感も、同時に伝わってきてしまう。この感覚は、時代だなぁ、と思う。やっぱり、高度成長期と、分厚い中産階級に支えられたリベラルで公正と正義が主題になる社会が、持たなくなっている。そして、その時代に掲げられた理想が、既に現実に適用しない絶望と無力感が覆った後の、「次の時代」というのが、こうしたプロパガンダ映画でさえ、伝わってきてしまうのが、驚きだった。民主党プロパガンダ的な構成がこれでもかとされているのに、逆の感覚が僕にはビンビンと伝わってきて、時代なんだなぁ、としみじみ感じてしまった。ブッシュ政権は、2001-2009だけれども、ポストトゥルースの2010年代に続く香りがこれでもかと感じられる。

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僕は、トランプ政権というのは、時代の要請なんだなといつもしみじみ思うのは、こういう物語を見た時です。


チェイニーは、ネブラスカ州リンカーン生まれ、ワイオミング州のキャスパーで育ったんですよね。最初のシーンが、イェールをドロップアウトして、酒浸りでおかしくなって人生を棒に振りつつあるクズ男になっているシーンから物語ははじまります。テイラーシェリダン監督の『ウィンド・リバー』でも、『ヒルビリーエレジー』でもいいのですが、一つボタンをかけ間違えれば、チェイニーが、ヒルビリー、レッドネック的なプアホワイトで、人生が終わってもおかしくないギリギリにいたところから物語はスタートしているんです。本当かどうか知らないが、母親をDVで殺している可能性があるような父親が出てきてとにかく家庭がめちゃくいちゃだったことは感じ取れます。

ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち


何が言いたいのかというと、トランプさんが出てくるまで、プアホワイトやラストベルトなんて、全く出てこなかったと思うんですよね。意識にも上らなかったし。でも、それが無視できなくなって、めちゃくちゃ表に出てきて、様々な主題で取り上げられるようになってきた。これらの人の打ち捨てられ感が凄かったこと、無視されすぎたことが、様々な反動を生んでいるのですが、それがどんどん透明化というか、目に見えるようになって注目され続けている。問題を無視できないからなんですが、そういう意味では、それこそ政治だよなぁ、としみじみ思ってしまいます。この映画もそうだし、さまざまな報道もそうですが、打ち捨てられた人々の、どうしようもなくボロボロになっている状態の反動と、苦しみ、なんというか人としての厳しさ汚さみたいなものを、無視していると、全体に帰って来るのだな、というのがこれでもかと見せつけられている感じ。

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最近、下の本を読んだんですが、めちゃよかった。

記者、ラストベルトに住む トランプ王国、冷めぬ熱狂



ジョージ・W・ブッシュ政権のディストピア的なイメージを描いたプロパガンダ映画・・・・?

この作品を党派性を帯びて、やっぱり民主党の牙城のハリウッドでつくられている、「いつものやつね」と言い切るのは、たやすい。けれども、イラク戦争を、自分の権力の追求のために理念もなく起こしたチェイニー副大統領の半生を描きながら、僕は、ディック・チェイニーはこんなにも深みのある人なのか、と感じてしまった。物凄くシンプルなところで、共和党ネオコンの巨頭でありながら、次女が同性愛者なんですよね。レズビアン。これ致命的で、娘を切り捨てたり、徹底的に娘を洗脳して操ったりとか、そういうことしてもいいんじゃないですか、、、ましてや、ネブラスカやワイオミングなんて、超保守的な土の出身で、、、、でも、自分が大統領になれるかもという状況で、「娘がレズビアン」だというなら、それは否定できないと受け入れてしまうんですよね。たぶん、これによって大統領の道とかは消えたと思うんですが・・・・なんというか、この決断がめちゃくちゃ印象的なんですが、なんというか「理念なき権力と利益を追求」する人にしては、人格が複雑すぎるんですよね。それが、伝わってきてしまう。民主党的なプロパガンダ「にもかかわらず」というのが、僕はこの作品の凄さだなぁ、と感じました。正直な話、同じようなプアホワイトの、父権主義者で、娘のことを切り捨てて、抑圧するセリフ吐くものだとばかり思いましたよ、、、。それが、どうであれ愛している、とそれを隠しも否定もしないというのは、懐深いなぁ、と感心しちゃいました。


知識がないと、さまざまに挟まれているポイントの深みがわからないのですが、それはまぁ必要ないと思うんですよね。ブラックコメディとしてみるには。でも、共和党新自由主義的な経済政策の要として、高額所得者(ここではコーク兄弟など重要な人々の名前があっさり出ていますね)の減税をずっと狙っていること、また、ハリウッドを中心としてメディアがリベラル側に支配されていたのを、FOXの登場や法律の変更で自陣で育て上げて、対抗軸を作っていくところ。メディアを通して人を訴えかけるときに、ポストトゥルースにおける表現やメッセージの伝え方にとても戦略的になっていることなど、共和党、極右、保守主義者、小さな政府志向を目指す側も、大きな政府を目指す、民主党、リベラルサイドと同じように、草の根から深く様々な試行錯誤を繰り返して、現在の構造を作り上げていているさまが感じ取れます。そういうのが一気通貫で、物語で見れるというのは、それが批判的なものであれ、なるほど、という透明感を与えるので、僕はこの映画を見れてよかったと思う。

ウインド・リバー(字幕版)


追加で、町山さんのインタヴュー。メモメモ。

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『サトラレ~嘘つきたちの憂鬱~』(2018)伊鳴優子/佐藤マコト 絵柄が好きすぎて、めちゃ好きです。

サトラレ~嘘つきたちの憂鬱~(1) (イブニングKC)

客観評価:★★★☆3つ半
(僕的主観:★★★★★5つ大好きすぎる)

■とにかく感想

サトラレ、何度も見直すぐらい好きなので、スピンオフを見つけて、偶然読んでみた。でもスピンオフが面白いことってそんなにないので、期待していなかったんだけど、とんでもなく面白かった。まず最初に、客観評価★3なのは、誰にでもすすめられるわけじゃなくて、そもそも佐藤マコトさんのオリジナルを読んでいないと、サトラレ(=自分の意思が外部の人に筒抜けになる+しかし本人は気づいていない)という世界観を知らないと、すぐには入れないかも、という危惧なのと、自分が好みすぎるので、感情的に好き!!!という好き嫌いしか思いつかないので、客観的な評価が出てこない。個人の評価としては、めちゃくちゃ★5体験。サトラレが好きだった人は、裏切らない物語だと思う。ちなみに、佐藤マコトさんのオリジナルの方は、僕は、どちらかというと人情味のある見事な描写に積み重ねられているが、全体的にテレパシーができる人間・・・・人間というよりは新人類が社会に生まれ始めたら、マクロ的なSFニュアンスがとても強い作品だったと思う。サトラレの才能が、エネルギー問題など人類の化学などの発展にどう寄与するかという部分が常には背後に流れていたから。そういうテイストで僕も読んでいた。このスピインオフ作品、原作は佐藤マコトさんになっているのだけれども、どの程度、関与しているのだろう…。というのは、伊鳴優子さん、絵柄がめちゃ気に入ったので、すぐにほかの作品も全部読んだのですが、やっぱり断トツに『サトラレ~嘘つきたちの憂鬱~』が面白い。他の伊鳴優子さんの作品は、まだごちゃごちゃしててシナリオが、円熟味を感じない。

10th 1巻 (デジタル版ガンガンコミックスONLINE)

いや、好きなんだけど(ちゃんと、全部買いました!)。。。それに比べると、『サトラレ~嘘つきたちの憂鬱~』の各エピソードのシナリオの秀逸さときたら、、、、読んでいて何度ももだえる。何が言いたいかというと、やはりこのサトラレのテーマを、各エピソードに展開する力は、佐藤マコトさんのテイストを凄く感じるんですよね。たとえば、2巻の先輩のベースの話とか、読んでいて鳥肌が立った。こんな物語なかなか見れないだろう!というような、ぞくぞくするものでした。でも、このスピンオフ作品、最初読んだとき、全く原作は、佐藤さんだと思わなかったんですよ。だって、SF色がゼロなんだもの。まさに、青春もの、少女漫画!というフンにしか感じられないで、そういう風に読んでいて、原作が彼だって最後に気づいて、えっ!と驚いたんですよ。そんで、絵柄が変わるとこんなにもテイストが変わるのか、、、テイストというか世界観そのものが変わるのか、と驚嘆したんです。なんというか、小畑友紀さんの『僕等がいた』とか、河原和音さんの『青空エール』とか、マーガレットコミックスの的な、そういう感じでずっと読んでいたので、これ佐藤さんの原作なのか!と納得しつつも、めちゃ驚いたんですよねー。このお二人の組み合わせは、素晴らしかったんだろうと思います。

サトラレ(1) (イブニングコミックス)


■最近青春ものに、はまっている自分がいる。

最近、なんでか篠原俊哉監督の『凪のあすから(2013)』『色づく世界の明日から(2018)』が、めちゃ自分のなかで熱くて、あれ青春ものが、自分の中で来ているのか!?と、マイブーム。新世界系とかを超えてくると、世界が群像劇になりやすいので、そういった流れなのかとも少し思うのですが、まぁ、そんなことはどうでもよくて、とにかく青春ものが、いい。ああ、増井壮一監督の『青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない(2018)』とかも、岡本学監督の『ゲーマーズ!』もそうなんですが、、、、何だろう、やっぱりなんでこんなふうに偏っているのか、ちょっと気になる。ちなみに、ここで上げたのどれも素晴らしいので、全部めちゃおすすめです!。『凪のあすから(2013)』は、ちょっとSF色あるけれども、明らかに描きたいのは、「そこ」じゃないので長井龍雪監督の『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(2011)的な気持ちで見る作品だと思う。

凪のあすから コンプリート DVD-BOX アニメ P.A.WORKS [DVD] [Import] [NTSC]

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ちなみに、俺ガイル、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(2011-2019)の最終巻を読んで、非リア充vsリア充の問題意識とそれに接続されている日本的学園カースト、日本的空気の問題、2010年代のテーマが、一段落して、次のステージに言っているような気がして。『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』(2013-)もそうだけど、この辺のことが、どこに向かっていて、どこに抜けたのかを、考えたいからかもしれない。特に、『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』(2015-2017)の長井龍雪監督と脚本家?だけでなく毛監督もだよね、、、の岡田麿里さんの目指していたところが、何かあるんじゃないかと、悶々と考えている。。。

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (14) (ガガガ文庫)


■自意識の問題

ちなみに、ナルシシズムの地獄のテーマで、自意識の空転の話を考えるときに、サトラレって興味深いと思っているんですよね。これ、もこっちの自意識の空転みたいなものが、外にすべて駄々洩れして共有されたら、どうなるかって話だから。


まぁ、とかとか。本日の日記でした。もうすぐ2019年も終わりかー。時がたつの早いなー。


最後に一言、2巻のベースの先輩の話は、本当に本当に良かった。素晴らしいエピソードだった。


サトラレ~嘘つきたちの憂鬱~ - 伊鳴優子/佐藤マコト / 第1話 海崎千景の場合 | コミックDAYS


サトラレ~嘘つきたちの憂鬱~(4) (イブニングKC)

『ゲーマーズ!』 8巻 葵せきな著 空気を読まない方が、ちゃんとした関係を構築できる

ゲーマーズ!Blu-ray BOX

客観評価:まだ8巻まで
(僕的主観:★★★☆3つ半)


面白かった。LDさんや伯爵に勧められて、アニメを一気見したら、止められなくなった(いつもほんとうに、いまさら(笑))。めちゃ面白かった。


亜玖璃&ケータが、僕の中では、一押しです!。
(ほんと、リアルタイムとずれている発言ですね(笑))


漫画も買って小説も全巻買って、いまこつこつ読んでいます。いま、8巻まで到達。たぶん全部読み終わってしまうと、途中で感じた感慨がなかなか描写できないので、途中の感想を。


あのね、ケータくん、いい男だよね。確かに惚れる。全キャラクターの中で、一番惚れる(笑)し、かわいいと思う。


ハーレム構造の、女の子がみんな主人公の男の子を好きになってしまうというのは無理があって、ちゃんと理由がないとダメと思うんですよね、ずっと言っている話ですが。で、彼の理由というのは、「1本筋が通っている」とでもいおうか、とにかく「空気に流されない自分の意見があって」それを「はっきり主張する」ということができるというところに、魅力がある。基本的に、天道さんにしても、上原祐にしても、「空気による同調圧力に屈している」人で、この作品のテーマが、リア充対非リア充の対立構造の物語なのがわかる。空気に屈する人は、どれほど恵まれている人でも、不安定になりやすいって何度も繰り返しているように思える。


僕らのアズキアライアカデミアのラジオや、マインドマップで語る物語の物語を追ってくれている人はわかると思うけど、俺ガイルで、この「リア充と非リア充の対立構造」というドラマは、既に終わって解決されていると僕はおもってます。この『ゲーマーズ!』は、2014-2019まで連載というか書かれていて、既に完結しているんだけど、2014年のライトノベルの古い問題意識が、このリア充と非リア充の対立構造から抜け出すこと、、、非モテの問題を追っているのが凄くよくわかる。


でね、なんというか、、、、非モテリア充爆発しろ!という言葉に代表されるような「充実するにはどうすればいいのか?」というか、自意識の空転を追い続けると、どうしても、


一番大事なのは友達


という結論に向かう圧力を凄く感じるんですよね。


いま、小説の8巻なんですが、なんで素直に恋愛の両想いの状況から、「みんなでいられる」状況に行こう行こうという圧力が働くのが、とても不思議。けれども、登場人物の「自意識の空転による不遇感」「居場所がない感」は、恋愛では埋まらないというか、「友達への誠意」とでもいおうか、、、そういうものが大事というのが、切々と訴えてくる。なんというか、恋愛のキラキラよりも、友達に誠実で、居場所(うまくいえないなぁ、、、)を維持したいという感じを凄く感じる。そのためには、ケータが、天道花憐、星ノ守千秋、桜野亜玖璃の誰も選ばない方向で、話が進みすぎる感じがする。


でもとても素敵な話だな、と思うのは、やっぱり、雨野景太くん、いい子だよね。彼だけじゃないんだけれども、


空気や思い込みに流されないで、自分自身で考えて、自分自身の軸で、はっきりと対応する


ということが、基本のキャラクターの姿勢ですよね。このすべてのハーレム系の難聴(笑)主人公とか、そういう問題意識にメタ的な対応しているのが、エピソード毎で分かって、それがまたたまんなくかっこいい。すれ違い・勘違いラブコメでドツボにはまるのはお決まりなんだけど、それにちゃんと、空気を読まないで、誠実にみんな動くところが、ええ物語だなーと思う。


天道花憐、上原祐ともに、「空気を読みすぎてうまくやりすぎる」ことによって、自分の大事なものを失ってしまいやすいという悩みは、まさに、この同調圧力問題の基本の問いなんだと思うんですよね。


だから、「空気を読まない」「空気を読めない」、、、言い換えれば非リア充の方が、ちゃんと自分の信念を貫徹できる、、、誠実さを持てた方が、人との「ほんとうの関係」においては、うまくいくというのがなんどもモチーフで出てきているように感じるんですよね。


この問題意識の構造って、やっぱり「リア充に対する強いルサンチマン」の構造が背景にあるように思える。えっと、この話は、俺ガイルのヒッキーと葉山君の話しで、結論がついたよね!と当時の僕は考えてて、『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(2011-2019)だから、2014-2019くらいが『ゲーマーズ!』だから、やっぱり同じ時期だなぁ。2010年代ですね。


僕ね、、、まだ最終巻まで読んでいないんですが、この構造を見ると、問題意識を見ると、もうどう考えてもカップルになれるような関係を持っているのに、うまくそこにはまってしまえないじゃないですか。。。これって、絶対に恋人よりも友達の方が、価値が高いって、感じているようにしか思えないんですよね。これって、『私がモテないのはどう考えてもお前らが悪い!』(2011-まだ継続)でもそうなんだけれども、、、やっぱりリア充に対するルサンチマンをから発して、リア充対比非モテみたいな構造になると、重要な目的というかテーマが「居場所を得ること」になって、この居場所って、恋愛の対幻想の世界じゃないみたいなんだよね。これって、ほんとうの友達が欲しい症候群の文脈の一つなんじゃないかなーって、とても思う。


LDさんは、ハーレムメイカーからは、友達が欲しいという方向に、類型が接続しやすいみたいなことをおっしゃっていて、なるほど、と思います。


まぁ、まだまとまっていないので、何言っているかわからん感じですが、ケータ君かっこいいので、読んでいてドキドキします。


[まとめ買い] ゲーマーズ!



やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。8 』 渡航著 ヒッキー、それは確実に間違っているよ
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20131129/p1

ココロコネクト』 庵田定夏著 自意識の病の系列の物語の変奏曲〜ここからどこまで展開できるか?
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20121003/p1

ココロコネクト ミチランダム』 庵田定夏著 伊織の心の闇を癒すには?〜肉体を通しての自己の解放への処方箋を (2)
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20121126/p1

『コロコネクト ユメランダム』 庵田定夏著 あなたには思想がない〜Fate/staynightの衛宮士郎のキャラクター類型と同型(3)
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20121030/p2

ココロコネクト』 庵田定夏著  日本的ボトムアップの世界でのリーダーというのは、空気の圧力を結集する特異点
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20130930/p1

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』 渡航著 (2) 青い鳥症候群の結論の回避は可能か? 理論上もっとも、救いがなかった層を救う物語はありうるのか?それは必要なのか?本当にいるのか?
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20130603/p2

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』  渡航著 (1)スクールカーストの下層で生きることは永遠に閉じ込められる恐怖感〜学校空間は、9年×10倍の時間を生きる
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20130406/p2

AzukiAraiAcademia Monthly Radio

www.youtube.com

前回、知らない人がいたようなので、僕ら4人の月間ラジオはこっちにチャンネルを作りました。AzukiAraiAcademiaと名前を変えてみました。ちなみに、12/7の土曜日16時ぐらい(JST)から12月分のラジオ予定です。たぶん全員が、俺ガイルの最終巻読んでいるので、その話かな。

2019年度末総まとめラジオは、12/28の土曜日16時ぐらい(JST)を予定しています。

Youtubeの規約が変わったので、いつまで残るのかはわからないのですが、とりあえず過去のアーカイブもまだ少ないながら、あります。

ちなみに、過去のアーカイブは、LDさんの漫研チャンネルのなかにあります。

www.youtube.com

『ミッドウェー(Midway)』2019 Roland Emmerich監督 米国万歳の映画と思いきや、意外や意外日本の大艦隊がかっこいい。

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Midway2019

客観評価:★★★★4つ
(僕的主観:★★★★4つ)

家の近くの映画館(AMC)で見てきました。語れるほど知識があるわけでもないので、印象のショートレヴュー。

一言でいうと、いってよかった。面白かった。映画としての出来は、さすがのローランド・エメリッヒ監督。そもそもミッドウェーが題材の時点で米国万歳で、完膚なまでに日本が叩きつぶされる物語だし、資本はメインが中国だしこの戦争で中国(蒋介石でしょうが・・・)と米国の関係を描くならば同盟国の友邦として描くのが当然になるので、日本人にとってあまり気持ちよくないはずになるはずと予想されるので、「だからこそ」見に行かなくちゃ!!!と(笑)。レアな体験を探して。最初は、さすがに日本公開はやんないかなーと思っていたので、これは見ておかないとと思って。結局、日本公開が決まったそうだけど。


MIDWAY trailer 2 (2019)

このサンクスギビングの休みで行ってきた。近くの席のおばあちゃんが、日本側の空母に、米艦爆隊が何度もぎりぎりで失敗するたびに、「当たってー」みたいにハラハラドキドキしていて、こんなに感情移入してもらえたら映画として感無量だろうなと思いました。とはいえ日本側でも見ている自分は、微妙な気分をになるところが、なかなか興味深い映画体験でした。いけてよかった。なんというかいつもより比較的高齢者が多かった気がするが、若者も多かったし、必ずしも白人ばかりでもなくて多様な人が見てたんで、やっぱりエメリッヒ監督の冒険活劇というかそういう『インディペンデントデイ』的なもので見に来ているのかなーと思った。

アルキメデスの大戦 Blu-ray 通常版

ちなみにこの夏に日本で見た山崎貴監督の『アルキメデスの大戦』の大和轟沈のシーンもそうだったけど、現在のCG技術で見せられると、なんというか感無量。空母を軸とする大艦隊って、やっぱりスケールが違う。日本の空母赤木や加賀の映像ってやっぱりとんでもなくかっこいいよなーとしみじみ。あと、米爆撃部隊の、空母に雷撃するためにほぼ垂直降下で、弾幕が張られている中を突っ込んでいくシーンが何度も繰り返され、パイロットの視点で描かれるのだけれども、命知らずにしてもめちゃくちゃすぎて、こんなことしていたんだ、いやーなんというか、すげぇ勇気だよな、と感心。


あと豊川悦司さんの山本五十六長官、浅野忠信さんの山口多聞少将、國村隼さんの南雲忠一中将などなど、日本側がちゃんと日本語で丁寧に描かれているのが驚きだった。ローランド・エメリッヒさん、かなり調べ上げたし、決断したのだなぁと。そもそも中国資本メインなんだけど、意外に、日本を悪魔化するというか、ダメダメ、よわよわにする視点が少なくて驚いた。ここの場面ではいろいろあるけど、それは本筋じゃないし。結局のところ、『Tora! Tora! Tora!』でもそうなんですが、アメリカ軍をカッコよく強く描こうとすればするほど、日本がそれに値するくらい強かったと、物語力学上、描かざるをえなくなるので、そうなるんだろうなぁと。

トラ・トラ・トラ!  (ニュー・デジタル・リマスター版) [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]


とはいえ、イアントールさんの『太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで』に読んだときに、短期の状況では、日本海軍の太平洋での戦力差は少なく、実戦経験も含めて帝国海軍とは拮抗していたので、対等に戦争をしているので、戦争映画としては、見ごたえがあった。日本映画は、戦略上完全に負けてしまって戦力が壊滅してからの戦争を描くことが多いので、その場合は、ほとんど戦争しているというよりは、一方的に掃討されているだけなので、戦争映画とは言えないよなぁといつも思うので。

太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで 下 (文春文庫)

米軍は、日本の通信をすべて解読していたのだが、それを信じる信じないは、最前線で決断するチェスター・ニミッツ大将が、情報の信ぴょう性を確認するために現場にプロセスを聞きに行くことや、真珠湾での諜報(インテリジェンス)の失敗を、ミッドウェーで生かそうと必死になっているくだりと、南雲中将の傲慢で情報を確認しない態度は、対照的だった。これは史実としても、命運を分けた点なので、こういうのがエンターテイメントになっているのは、時代が過ぎたのだなぁ、としみじみ。構造的には、真珠湾では奇襲でやられたけれども、ミッドウェーで奇襲をし返した、というドラマの構成ですね。

激動の昭和史 沖縄決戦


いやー個人的にはとても面白かった。ちなみに、日本と米国がちゃんと戦争をしているという意味では、クリントイーストウッドのこれおもいいと思うなぁ。おすすめ。

硫黄島からの手紙(字幕版)