2020/3/3スーパーチューズデー後の雑感。民主党は、セントリスト(中道派)に力を結集できるのか?

2019年3月3日。Super Tuesdayが終わった。といいつつ、もうサクッと時間が過ぎ去って、書いている今は、3/9なので、色々話は進んでしまっている。けど、せっかくだから、「その時」の感覚を日記として残しておきたいので、メモメモ。本当はラジオというかYoutubeに残そうと思ったんですが、、、買ったばかりの新品のマックが壊れて!(なんで!)いま修理中。なので、対応できないー、、、、(涙)。相変わらずの誤字脱字は、無視して、、、

www3.nhk.or.jp


■何がイシューか?

3月の時点で、何が最も民主党予備選での、イシューはなにかと言ったら、やはり中道派に意見を集約して、分裂傾向の民主党を収集できるか。内部的には、バーニーサンダースを、どうするのか?どうなるのか?という点。それを対共和党的に言い換えるならば、トランプさんがのっとってしまっている共和党の一致団結具合、現職の大統領として経済の好景気、失業率の改善等々に支えられた彼にどのように対抗するか?という点ですね。

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■3/3の結果

事実を言えば、セントリスト、中道の穏健派、ピート・ブーティジェッジさんやベト・オルークさん、エイミー・クロブシャー(Amy Jean Klobuchar)さんらが、一貫してバイデンさんをエンドース。サウスカロライナアフリカ系アメリカ人の票を手堅くとってから勢いづいて、バイデンさんがかなりの復活(アイオワコーカスでの失敗から)を遂げた、という感じ。しかし結局のところ、デリゲーツ(delegates)がたくさんいるカリフォルニアをサンダースが獲得したので、代位議員の数自体には大きな差がないように見えるので、構造的には何も変わっていないように見える。えっと、「変わっていない」というのは、ヒラリーさんとサンダースさんの戦いの、前回の選挙からの構造的な民主党のねじれ(disjointed)のこと。


Mayor Pete Buttigieg suspends presidential campaign | ABC News

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Elizabeth Warren delivers remarks after ending presidential campaign

ちょっと変わった感じがするのは、以下3点が印象的。

一つ目は、バイデンさんが、テキサスで勝ったこと。ここは、サンダースさんが勝つんじゃないかなって思っていたんです。けれども、たぶん、ベト・オルークさんが支持したことが効いたんじゃないかなという印象。

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えっとなんで、驚いたかというと、テキサスのヒスパニック系の支持が、サンダースさんに向かうと思ったいたので、そうするとバイデンさん勝てないな、ぁと思っていたんです。ちなみに、前回の対ヒラリーさんとの戦いでは、サンダースさんは、ヒスパニックに強い印象はなかったんですが、最近強い。これは、ヒスパックに支持が熱い、アレクサンドリア・オカシオ゠コルテス(Alexandria Ocasio-Cortez)さんが、サンダースさんの背後にいるからだと思うんですよね。けど、結果として、バイデンさんが勝った。サウスカロライナのバイデンさんの勝利を見て、なのかなぁ、と思います。

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これ、ベト・オルークさんに注目した時と同じなんですが、、、、長期的な「構造にどう影響があるの?」がいつもの僕の視点なんですが、テキサスって、圧倒的に共和党が強いはずなんですね。伝統的に。まぁ、そりゃ、そうだよね。オイルインダストリー!カウボーイ!とか考えると、白人のエスタブリッシュメントが強くて当然。けど、その「構造」がどんどん変わっている。まぁ、分かりやすいですよね。メキシコからヒスパニックの移民がたくさん押し寄せているからですよね。なので、凄く注目しているのは、、、今後、テキサスが、スイング・ステート(swing state)になってしまうんじゃないか!ということ。そうすると代議員の大票田であった共和党の牙城が崩れることになるんドえ、大統領選挙の重要ポイントに変る。今回は、その兆しを感じたのでした。なので、テキサスがとても興味深い。まぁ、僕は映画とか歴史を理解したくていろいろ注目しているので、だいぶテキトーな感覚ですが(笑)。

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二つ目は、エリザベス・ウォーレンさんの撤退。さすがに、自分の本丸であるマサチューセッツで負けたのは、大きかったと思う。女性の候補が、たくさん出ながらも早々に退場してしまっているのは、非常に残念ですが・・・。このこと自体は、まぁ、勝つのは難しいよね、と思うのですが、、、、前回のヒラリーさんの選挙の時に比べると、時期が早い。これがどんな長期的なイシューというか構造的な視点とかかわるかといえば、民主党内部の極左志向、分裂志向をどうするか?に関係してきそうな点。えっと、民主党の中には、若手と年寄りという軸と、極左と中道という軸があると思うのですが、ここでいう若手、ジェネレーションZ(ジー)とかミレニアル(Millennial)世代とかになるのかなぁ、まぁ、おおざっぱにとらえられればいいので、ざっくり行きますが、若者は、強くAOCやサンダース、ウォーレンの方向性を支持している。なので、よく大学無償化の話がよく関連されるけど、それはあんまりイシューじゃない気がする。やはり、ここのポイントは、ヘルスケアの問題だと個人的には感じる。けど、とにかく、既得権益層、金持ちなどを守る従来の政治家に対しての不信感が根強い。Anti-establishmentの傾向ですね。この分裂傾向(disjointed)を、どうにかしなければ、結局のところ、トランプさんに負ける。これが、どう動くのか注目。ちなみに、サンダースさんの勢いは、カリフォルニアをちゃんととっているし、ヒスパニックなど新しい層にリーチしているし、決して勢いが衰えているわけではないと思う。なので、民主党の構造的な、ねじれ、分裂傾向は、全く変わっていないと思う。仮に、バイデンさんが、7月に大統領候補になっても、ヒラリーさんの時と同じ世に禍根が十分居残るのは間違いない。いまのところ。何も構造的な問題が変わっていなんだもの。しかし、エリザベス・ウォーレンさんって、撤退した時に、凄い惜しまれているふうだったのに(構造的には、早く撤退したほうがいいのに)この人根強い人気があるんだなーと驚いた。しかし、現時点(3/9)では、誰をエンドース(支持)するかは、不明。サンダースさんとは、とても似ている主張だが、仲が凄い悪くて、お互い言い争ってきているので、どうなるのだろうか。しかしながら、彼女は、Anti-establishmentの傾向の民主党最左派なので、この人が中道に、つまりバイデンさんにエンドースすれば、かなり状況は変わる、、、かもしれない。ということで、副大統領を天秤にかけて、裏取引をしているとか、散々な言われよう。。。。まぁ、この後のステージは、誰を副大統領に指名して、新しい層を取り込むかが勝負なので、そういう風に見られますよね。ちなみに、世代間分裂といえば、若手の中道である、ブーティジェッジ、クロブチャー(若手かな?)、ベトオルークなどが、きちっと早期撤退後、中道派のバイデンさんを支持して、一致団結を見せたのが、どこまで本質に響くかが、興味深い。これって、民主党の重鎮(既得権益層)から圧力をかけられたといううわさが絶えない(そう見えちゃうよねー)けれども、この部分の分裂----つまりは、いまの候補者って、トランプさん、バイデンさん、サンダースさんにせよ、年齢が行き過ぎてて、ここの分裂も常にくすぶっているはずなので、どうなるのだろう、と思う。ということで、あまり深く考えないで、いまの軽い視点は、

1)スィングステイツ化していくテキサスの行方
2)サンダース・AOCの勢いはどこまで行くか?世代間分裂は、どうなっていくのか。
3)副大統領はだれか?

この辺かなー見るべき視点は。ちなみに、Anti-establishmentの傾向がとても強いのは、大金持ちのブルームバーグさんが、一瞬で消え去ったのも、やっぱりその感覚強いんだろうと思う。もちろん、あまりにイレギュラーな登場だったと思うけど、それ以上に、CAとNY、あとビジネスマン以外知名度がほとんどないことが、これほどお金にかかわらず聞くというのは、なるほどなぁって感じがした。

ちなみに、個人的な感覚ですが、民主党の構図的ねじれを解決するのは、不可能じゃないかと思います。でも、これ、なら一度、大統領やらせてみればいいじゃないか!というおもいっきりにふれる極端さは、あるかなーと思います。極端な話、トランプ大統領になってさえ、議会がねじれるので、なかなか米国クラッシュしないじゃないですか(苦笑)。ねじれって、「現実をいったん見せないと」いつまでもくすぶって、おかしなことになる。それこそ、サンダース大統領が誕生して、めちゃ議会がスタックして、もうこれじゃだめだ!というのを経験しないと、人は「次」への具体的な想像力がわかないんじゃないかなぁ。そこの不満を昇華させなければ、ねじれがいつまでも、、、、という気がします。ここまで根強いと。

バイデンさんの副大統領は、カマラハリスなんじゃないかなー。。。

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ただ個人的には、昨年のオフ会で話した通り、米国の基礎を変えるのは、大統領よりも、むしろ最高裁判事。そっちの方が、物凄く気になります。ギンズバーグさん。。。。

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雰囲気を残してお切ったかったので(日記メモなので)。写真を添付。

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■トランプさんを交えて大統領選挙を貫く構造的なイシューは何か?

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さーて、そろそろ民主党じゃなくて、トランプさんに勝てるの?って話になってきたんですが、、、ちなみに、いまの現状で見る限り、圧倒的にトランプさん有利と感じます。空気的に。まぁ、僕はカリフォルニアに住んでいる(しかも保守的なオレンジカウンティの限られた交友関係)視点からなので、めちゃバイアスあると思いますが、、、僕の交友範囲では、トランプさん以外、好き嫌いはともかく、ないなという圧倒的な印象。というのは、現職の何よりの強みとして、米国が好景気だから。経済運営は、めちゃくちゃうまくいっている!というのが肌感覚。とにかく、僕の周りには、オバマ大統領への酷評と根強い嫌悪感が、多くて仕方がない(しかも特に移民で非白人こそが特にそうというのが、、、、驚き)。驚くほど。それほど、当時の米国内政が悪くなったというイメージが強いのだろうなぁ、、、と驚く。人としては、素晴らしい人なのだが、、、。まぁ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によって、めちゃくちゃ世界は動揺しているし経済はやばい感じにシュリンクしているので、今後さっぱりわからないんですが、「この前」まではそういう印象。それと、仮に、COVID-19でめちゃくちゃになっても、米国のファンダメンタルは、揺らがないと思う。超中期的には。一つは、人口が長期トレンドで増えていること。もう一つは、エネルギーが構造的に低位安定で調達できること。ここは、上記の本で、なるほど!と思った点。ちなみに、トランプ政権は、というか米国は、最近移民の数を凄い押さえ始めているので人口上昇は緩やかに下がるとはいえるし、今日の原油価格は、シェールガスの損益分岐下回っているし(笑)、真逆のことが、今まさに本日起きているけど、まぁ、長期トレンドは、個別の事情で考えても仕方がない。少なくとも、経済運営的には、めちゃくちゃいい、というのが僕の肌感覚。。。。。「にもかかわらず」だとおもうのだけれども、これだけ経済運営がうまくいっている「感じ」(長期的にはどうか?という議論は別)がするのに、これだけ並外れて低い支持率の大統領というのも、けっこう驚きで、、、そういう意味では、好き嫌いが物凄く分かれる大統領なのだなぁ、というのがよくわかる。それだけ、あれはないわ、と思う人が多いというのもまた事実のだろう。でもねぇ、意外に友人のFBのポストとか見ていると、シェアしている記事とか傾向を見ると、こりゃどう見てもトランプさんが好きなんだなぁ、という人がなんと多いことか、、、。ああいうの隠せないよね。はっきり言わなくても、、、。

www.businessinsider.jp


彼は、ポストトゥルースの、申し子のような大統領で、ウクライナゲート問題とかも、むしろバイデンさんに不利な方向で話が落ち着く(息子のハンターバイデンさんの問題ですね)とか、結構、こんなところに落ち着くんだ!と驚きのことが多くて、米国の受け手の「受け取り方」の構造が凄く変わっているがよくわかる。なんというか、本当に単純じゃない地殻変動が起きているんだろうと思う。従来の視座では、とてもとらえきれないほどのね。

petronius.hatenablog.com


もちろんこれ(エネルギーの問題)だけに還元できないと思うのだけれども、2019年に世界最大の産油国になっていて、環境規制を、共和党、トランプ政権が、物凄い気負いで撤廃していることは、米国の未来のロングスパンに凄い影響を与えるし、構造的な変化を引き起こすことなので、陰謀論的なことを含めても、ここの構造がどうなっているかは、コツコツ追っていきたいなーと思う今日この頃。それこそ、シェールガスによってできた大きな町が、自身でぶっ飛んだりする可能性がないわけじゃないし、またエネルギー問題で有利になれば、アメリカの孤立主義の傾向は一層に進むと思えるので、そのあたりの長期の方向性が興味深い。

www.foxnews.com

Saudi Arabia puts the squeeze on US shale producers
America will be hardest hit in oil price war with Russia
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【AzukiaraiAkademia2020年2月ラジオ】新世界系の先はどこに向かっているのか?『鬼滅の刃』に見る前提としての絶望は、人をオポチュニストに変える?


Academia

AzukiaraiAkademiaの2月の放送です。1月の内容とかなりかぶる気がします。でもマインドマップで見る物語の物語の(いまのところ)最終章は、新世界系と脱英雄譚の解説なんですが、ここでテーマになっている先に、昨今の特に週刊少年ジャンプの作品があるという流れで観察しています。『鬼滅の刃』『約束のネバーランド』『チェンソーマン』『Dr.STONE』などなのですね。この辺りは、新世界系------この世界に希望はなく絶望に満ちていることを、人は主人公になれないことを、痛切に突き付けてくる作品群として、代表作は『進撃の巨人』をあげていましたが、まだこれは未完ですが、、、、「その先」に何が来るのだろうという問題意識が、最近ガンガン展開しているような気がします。


『鬼滅の刃』公式PV


簡易にロジックを追うと、『鬼滅の刃』の特徴に、世界が「残酷(一話のタイトル)」に満ちているのに、「それが前提」となっていて、「世界が残酷なことそれそのもの」に絶望を感じない。なぜならば、既に主人公たちが、「残確な世界」というのを、所与の、既に与えられていて疑問に思うことのない前提として受け入れているから。

その中で、最も重要なことは、過酷な環境の中で、「生きる気力」をどう調達するか?というのが旧世代のテーマ。たぶん今の20代後半以上の世代は、そう感じてしまう。少なくとも、今40代半ばの団塊のジュニアの僕にとって、日本のサブカルチャー歴史(1980-2010年代くらいまでの)の重要なテーマは、「生きるモチヴェーションの調達」だった。いいかえれば、20-30年は、ずっと、この世界が残酷なことに対する怨嗟の歴史であった。しかしながら、少なくとも、「世界が残酷」なことを外部環境の基本としていながらも、昨今のキャラクターたちは、楽観さを失わない。これはおかしい。


なぜ絶望に満ちた「残酷な世界」をなぜ嘆かないのか?。


先に言ったとおり、どうも若い読者も、物語の登場人物も、残酷な世界を「絶望」とはとらえていない。それは、「余裕がある世界にそもそも生きていない」し、「将来が良くなるという希望も生まれた時からそもそもない」から、絶望(現実との落差)落差がないからではないか。いいかえれば、僕等年寄りの受け手、消費者は、絶望が足りなかっただけの、甘ちょろい発想で世界を見ていたので、「生きる気力がない」などという甘えたことが言えたのではないか。もっといいかえれば、高度成長期から、そのストックで生きれるほど、余裕がある世界に生きていたので、「生きる気力がない」などといったとても(今から見ると)甘すぎる問題意識がテーマになっていたのではないか。少なくとも、2010年代後半からは、こんな毎発想は、物語の世界から消えている気がします。


そして、そもそも、いつ死ぬかわからないのが前提で、嘆くような希望もそもそもない中では、実は、人は、楽観主義者になるようだ。ちなみに、このことは、絶望と希望というキーワードをずっと考えてきた時に、下記で考えたことの連想です。


先進国の持つ病〜社会が成熟していくと失われるモチヴェーションー希望がなくても頑張れるか? - 物語三昧~できればより深く物語を楽しむために


なぜ楽観的になるかというと、世界の残酷な真実が突きつけられすぎると、甘ちょろい自我の幻想(自意識のナルシシズム)に逃げ込む余地がなくなるため、世界のリアリティが人に迫ってくる。そのリアリティというのは何かと問えば、ほぼすべての新世界系的な物語群の答えはすべて同じだった。


世界は残酷だ。けれど美しい。


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残酷でいつ死ぬかわからないし、自分の夢や希望や思いは、突然死のようにあっさち消え去るけれども、それ以上に「この世界を生きるリアリティの強度」というものが、美しすぎて圧倒されるので、「生きててよかった」と感じるようなのです。ようは、唯我論や、自我のナルシシズムを超えて、世界(他者)と出会ったという風に考えられますね、哲学のワードでいうと。


いってみれば、「新世界系」の物語群は、「これ」が到達点であった。


しかし、「その先を描く物語」は、「これがスタート地点で、疑うこともない前提」として始まるようだ。


炭治郎の心理描写、敵対する鬼との関係、取り扱い、強化などのドラマトゥルギーの取り扱いから、この辺りを検証しています。


ちなみに、ここでLDさんが主張する坂本ジュリエッタ理論(『エアマスター』の登場人物)のドラマトゥルギーとしての類型は興味深いです。

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坂本ジュリエッタ理論

エアマスター 1 (ジェッツコミックス)



僕のブログのテーマで善悪二元論御超克を扱ってきましたが、その主軸の発想は、


悪にも理由がある!


でした。これらの系譜や積み重ねを踏まえて、炭治郎は、すべてのエピソードで、時にはそこまでわざわざ必要もないのに過剰に、敵の鬼に共感してシンパシーを感じています。


が、結論は、すべて同じです。


「だが、死ね!」


(笑)です。悪を為したものは、許されないというまぶしいくらい鮮やかな、信念が繰り返されます。いや信念とか甘ちょろい感じじゃないな、当たり前のように、どんな理由があろうとも、悪を為したら、許されることはないんだ、という「世界観」が、「前提」として空気のようにあります。


これは、とても興味深いです。



そして、この「世界は美しい!」という感覚でもう一つ連想したことを。


セカイ系や新世界系の突破の一つとして、『嫌われ松子の一生」を、LDさんといつもあげているのですが、この評価が、まさにこれですね。人生は残酷で地獄で、いいことは何一つないけれども、、、、、そのすべてをまとまって眺めていると、そのリアリティの強度の「美しさ」に圧倒される。


映画「嫌われ松子の一生」


ちなみに、最近、息子が大好きといって見ている『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』のアニメを今ある奴全部見たんですが、これが、『転生したらスライムだった件』と同じ感覚を受けるんですよ。ドラマトゥルギー的には、実際の起伏が全然ない。俺強ぇぇや強くてニューゲームみたいな感じなのですが、なんというか、そういう「くさみ」すらもない。ただ平坦にいろんなことが起こるのを眺めているだけの感じがする。これは、仮に、成長物語=主人公がドラマのエピソードの連なりによって変化していくというものを物語の基本形に置くと仮定すると、非常最低な、だめな、評価に値しない物語になります。だって、主人公の動機が駆動しないし、エピソードの連なりがカタルシス(LDさんのいう結晶点)がないものになってしまうので、「物語」の体をなさない。小説家になろうの昨今の作品に、これが多い。


TVアニメ『痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。』ティザーPV


2019-3-24【物語三昧 :Vol.12】『転生したらスライムだった件』2018 菊地康仁監督 この素晴らしい世界に祝福を!と同じ文脈を感じました。


ただ「現実」を描いて、その「連なり」を、ロードムービーのように眺めているだけでは、なんの感情的起伏も生まないじゃないか、という評価です。ただこれを、どうも様々な感情的起伏、生きる動機の悩みの果てに、「世界自体は残酷だけど美しい」という強度を「眺めたい」という欲望の系譜で考えると、もしかして、だから今は受けるのかな?という気がします。この文脈で考えると、物語のカタルシス的には、ほとんど起伏を感じない、『転生したらスライムだった件』が、でも、いいのはなぜだろう?と不思議に思ったときの上記のラジオの分析がつながってくる気がします。



さて、前に進んできた感じがします。楽しいです。ちなみに、2月は、記念すべき、小川一水さんの『天冥の標』が読み終わった時で、けっこう熱く語っています。めちゃ傑作なので、みんなも読もう!。

天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ(上)