『入社3年目までに勝負がつく77の法則』 中谷彰宏著 新入社員へ贈る名著〜シゴトをする時の姿勢ってこれくらいキビシイものなんだ

入社3年目までに勝負がつく77の法則 (PHP文庫)入社3年目までに勝負がつく77の法則 (PHP文庫)
中谷 彰宏

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この本を、僕はちょうど入社3年目に手に取りました。いま思い出してもいい時期に出会ったと思います。それ以来、


「シゴトをする時の姿勢」


として座右の書です。できれば、新入社員に手を取って欲しいです。いまから思うと、もう3年も経ったら・・・取り返しがつかないかもしれませんし。それに、スタートが早い人には、本当に追いつくのが難しいんですよね。

ちなみに中谷さんは、似たような本が「多すぎる」ので、軽んじてしまう人もいますが、これは傑作だと思います。実際、商社に入社した友人が、上司から読めと配られたと言っていました。結構企業で上司が配ることが多い本のようです。本当にいろいろなところで聞くので、本当に名著なんでしょうね。・・・・さすが皆さん見る目がある。この本は、シゴトのイロハであり同時に奥義でもある「シゴトへの取り組み方の姿勢」を描いた本です。ある意味、精神論の本かもしれません。

ロジカルシンキング等の「頭」の部分を鍛えることは技術論ですが、これはある程度は努力によりどうにでもなるものです。しかし「マインド=心構え」は、人格や個性に絡むので、なかなか技術的に積み上げるのが難しい。しかし、魑魅魍魎の人間社会で、「結果」を出すためには、合理的であったりロジカルであるところを超えた部分が非常に意思決定に影響を及ぼしており(人知を超えるとかそういう話ではない)ここで書かれている


「信頼感のある雰囲気」


というのは、たしかに「デキル人材」には共通して感じ取れるものです。なんというか「したたかで、愛嬌のある」とでもいおうか。


いっていることは電通鬼十則*1を思い出させる



「長期の目標を持って、周りの人間関係を常に気を配り、理不尽な現実と妥協することなくコツコツと信頼を積み重ねてゆく」


ということ。


もっと合理主義的でスマートな書き方ですが、フランクリン・コヴィー『7つの習慣』も似ていると思います。ちなみにコヴィーさんのこの本も、一時期はやったためか、かなり読んだことがある人が多いと思いますが、本当にいいですよ。ちなみに、深く理解するには、リクルート社で2日間くらいのセミナーコースがあるので、、、たしか20万位すると思うが、それも僕は良かったです。僕は会社の金で、タダで行ったけれどもね。ちなみに、僕のシステム手帳は、フレンクリンプランナーを自分なりにカスタマイズして使って時間とスケジュール管理をしています。


http://www.franklincovey.co.jp/

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さて、中谷さんの著書に戻ると、日本の大企業(博報堂)の経験者であるからか、非常に苦行というか修行っぽい表現になるところは、日本の会社文化をよく分かってらっしゃる(笑)と思いました。日本の大企業での成長って、なんかこんな感じが僕にも、とっても重なるイメージです。シゴトというのは、独りではできないものなんので、多くの理不尽な重荷が降りかかってきます。人間関係は、本当にしんどい。隣の派遣社員や部下が口をきいてくれなかったり、頭のおかしい上司に陰湿にいじめられることなんか、ありふれてあると思いますよ(それはいいすぎ(笑))。この本は、そんな中で折れることなくしたたかに、行動することを教えてくれます。


しかしこういった粘り強く打たれ強い「姿勢」は、どうやって学べるのでしょうか?。


3年を超えると、もう同期でも取り返しがつかないくらいシゴトの「デキるレベル」に差が、はっきりと分かってしまいます。似たようなことをしているのに、不思議ですが。

僕は、キーの概念は、


「厳しい(それもおかしいくらい)上司」



だと思いました。中谷さんの人生体験の中で博報堂の「裏研修所長」によるシゴキの日々は、よく出てきますが、結局、


人生で初めてのシゴトの「目指すべき基準」


がそのメチャメチャ厳しい上司に喰らいつくことによって洗脳されたからなんだと思います。

洗脳とは穏やかではないですが、人格をアップグレードするのは、学ぶのでは不可能だと思うんです。生き方や生活習慣や極限状態での基準を書き換えるのに、「学ぶ」というような座学的な発想ではできないのだと、僕は考えています。優秀な経営者を輩出するマッキンゼーコンサルタントでは、メンターといわれる師匠に「付き従う」ことによって(これは上司ではなく、組織を超えるようです)いわば、直弟子への口伝スタイルでOJTをするそうです(今もあるのかは知りませんが)。文化人類学でも、チベット仏教の伝授なのでは、無批判の絶対的な一対一の師弟関係でないと「叡智」は伝えることができないといわれたりしていることと似ていますね。いわゆる、グルですね。この言葉も、手垢について酷く汚されましたが、もともとはチベット仏教の奥義の中の奥義の言葉です。

とにかく、壁にぶち当たっているひと、内定者や新入社員、そして仕事の基礎をもう一度思い出した人には、最適です。個人的には、技術論ではない「シゴトの心構え」は、コヴィー氏の『7つの習慣』と中谷氏のこの『入社3年目までに勝負がつく77の法則』が、非常に役に立っています。まぁどちらかというと、『7つの習慣』は、時間管理の手法のようにとらえる人が多いと思いますが、これは、



人生にとって最も大切なものは何か?


というPriority(優先順位)の議論をベースに組み立てられた手法なので、その最大の眼目は、生きるには、優先順位がある、ということを頭にたたき込んで、目的から行動レベルへリンクさせるというふうに僕は考えています。小さいものは、シゴトの毎日の優先順位付けから始まるのですが、あなたは、一度しかない人生を、いったい何を最大の価値として、優先順位として生きていますか?その目的から逆算して、あなたはもう時間がないんじゃありませんか?という問いかけだと僕は思う。


そう、人生に時あり、だ。

*1:単体では世界最大の広告代理店である「電通」には4代目社長吉田秀雄によって1951年につくられた電通社員、通称「電通マン」の行動規範とも言える「鬼十則」と呼ばれる有名な言葉。いわく、

1. 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
2. 仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
3. 大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
4. 難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
5. 取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
6. 周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
7. 計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8. 自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
9. 頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
10. 摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。