南極1号という都市伝説〜こういうの好きですか?

南極1号伝説 ダッチワイフからラブドールまで-特殊用途愛玩人形の戦後史南極1号伝説 ダッチワイフからラブドールまで-特殊用途愛玩人形の戦後史
高月 靖

バジリコ 2008-04-05
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南極1号について私が知っている二、三の事柄/mmpoloの日記
http://d.hatena.ne.jp/mmpolo/20080429/1209419815

南極1号・・・そういえば、ダッチワイフとイコールのこの名称、子供の頃に何かで聞いた記憶があるのだが、なんとなく覚えていた。これって、南極越冬隊員のための国家プロジェクトだったんですね・・・。初めて知りました(って、ほんとなの?とし伝説ではなくて?・・・なんか、こえー。)。僕には人形愛の嗜好はないのだけれども、こと感情移入という対象としては、興味深く思っているので好奇心から、HPへアクセスしてみたのだが・・・・。


オリエント工業
http://www.orient-doll.com/top.html



いや、すげぇな、これ。なんというか、、、、言葉にするのが難しい・・・(苦笑)


僕にはこういう性向や嗜好がないからかもしれないが・・・・うーむなんか物凄く不健全な香りがする。もちろん、不健全な香自体が悪いんものだとは思わないのですが・・・こうやって記事に書くのも何となく躊躇するような、感じ。でもまーそれは、僕が正常・・・というか、ある人方向の視覚から眺めているだけで、単純にそれを不健全とか正常とか見る視点というのは、多数者だと思われる「常識」による圧政的な視点なんだろうなーとか思ったりもする。なんとなく、河合香織さんの『セックス・ボランティア』とかそういう本を思い出した。あの本は、売る気満々であまり好きではないのだが、、、本当は目をそむけている点を暴露しているという面では、これもやはり現実の一つなんだろうなー。世界ってのは本当に多様性に満ちているよなー。

セックスボランティア (新潮文庫)セックスボランティア (新潮文庫)
河合 香織

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四谷シモン―人形愛〜YOTSUYA SIMON  PYGMALIONISME
http://www.simon-yotsuya.net/


ちなみに、すぐに渋澤龍彦四谷シモンを連想したんですが、うーむなんというか、これって実際に売られている汎用品なわけですよね?。そう考えると、なんか、凄くさびしい気がするなー。だって、人形愛は、それは究極のナルシシズムだし完璧なワンウェイコミュニケーションの象徴のようなもので・・・・。あと、どうしても、SFの『マトリックス』や徳弘正也さんの『狂四郎2030』のような、ヴァーチャルッセックスによる人間管理とかそういうものを連想してしまうなー。ただ、いろんなことは凄く思う。


狂四郎2030 1 (1) (ジャンプコミックスデラックス)狂四郎2030 1 (1) (ジャンプコミックスデラックス)
徳弘 正也

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エロティシズム (中公文庫)エロティシズム (中公文庫)
澁澤 龍彦

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ちなみに、この本は、できれば読んでみたい気はするなぁ・・・。というのは、読売新聞4月27日の書評欄に春日武彦さん書評が掲載されていたのですが、この春日武彦さんって、とても好きなんですよね、その壊れたマッドサイエンティストのような思考体系が。この人が注目するのは、キッチェでなかなか興味深いものが多いのだ。読んでいると深淵にのぞきこまれるので、精神衛生上はよくないのですが。たしか春日さんを知ったのは、漫画家の吉野朔美さんと仲がよくて、エッセイで書いていたのを見たのがきっかけだったような気がする。

「狂い」の構造 (扶桑社新書 19)「狂い」の構造 (扶桑社新書 19)
春日 武彦/平山 夢明

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ロマンティックな狂気は存在するか (新潮OH!文庫)ロマンティックな狂気は存在するか (新潮OH!文庫)
春日 武彦

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ラブドール誕生への道
書名の南極1号とは、少なくとも中年以上の男性にとっては伝説と化している名称である。第一次南極 越冬隊が、若い隊員のため性欲処理人形=ダッチワイフを携え、しかもその開発は国家プロジェクトで あったというものである。

このまことしやかな話と、ポルノショップで見かける風船式の異様かつキッチュなダッチワイフの外観から、 いったい特殊人形を相手にセックスを行うことは異常なのか、またどんな人がユーザーなのかといった 素朴な疑問が、しばしば艶笑話やエロ漫画における揶揄といった形で男性諸氏の好奇心をくすぐってきたのだ。

現在では、ダッチワイフはきわめて精巧なフィギュアへと変貌し(それに応じて名称もラブドールとなった)、 キッチュがシュールへと移行した趣がある。そしてその背景には、ネットの普及が大きく関与しているらしい。

評者にとって風船式の安っぽいダッチワイフから連想される言葉は「孤独」である。寒々とした、惨めさと切実さと 鬱屈とを内包した孤独である。しかし今やユーザーたちはネットを通じてメーカーへ細かい注文をつけ、 またユーザーの反響がすぐにアップされるためにメーカーもいい加減なことはできない。職人としての情熱を 傾けたメーカーがいくつも出現し、リアルなラブドール制作にしのぎを削っている。

ユーザーたちはネット上で語り合い、ときにはオフ会までもが催されるという。古典的なダッチワイフの 時代は過ぎ去ったのである。だがOLふうの、本物の眼鏡をかけたラブドールのハイパーリアルな 姿を見ていると、所詮(しょせん)は性欲処理の用途に供されることを思い起こすにつけ、虚ろな気分に 陥らずにはいられない。

南極1号の顛末はもちろん、開発者やユーザーへのインタビュー、多数の写真、行き届いた調査と 「痒いところに手が届く」項目立てが、本書をまさに快著にしている。小手先の仕事ではないところが 清々しい。 

評・春日武彦精神科医

(2008年4月28日 読売新聞) http://www.yomiuri.co.jp/book/review/20080428bk02.htm