アーロン・ルッソの「ロックフェラーの友は、911を事前に予告した」を見て、陰謀論について思うこと


"from freedom to fascism"Aaron Russoについて

「ロックフェラーの友は、911を事前に予告した」 アーロン・ルッソ (1 of 2) - YouTube
http://jp.youtube.com/watch?v=EeWqlJHzcSo
「ロックフェラーの友は、911を事前に予告した」 アーロン・ルッソ (2 of 2) - YouTube
http://jp.youtube.com/watch?v=f0PDhMZf6Yc


「1/2 『アメリカ:自由からファシズムへ』 字幕付き」http://vision.ameba.jp/watch.do?movie=731004
「2/2 『アメリカ:自由からファシズムへ』 字幕付き」http://vision.ameba.jp/watch.do?movie=731009

ニコラス・ロックフェラーとの会話
『America:Freedom to Fascism』が話題となった後、ルッソはジャーナリストのアレックス・ジョーンズのインタビューに答え、その中で旧知の友人ニコラス・ロックフェラーとの会話の内容を披露した。ルッソによると、ロックフェラーはアメリカ同時多発テロ事件の11ヶ月前の時点で、米国でアフガニスタン侵攻やイラク戦争のきっかけとなる事件が起こることを、すでに予告していたという。そしてロックフェラーは同時に、その事件及び後に起こる米軍侵攻の全てが、「巨大なでっち上げ」であるとも語ったという[1]。ルッソの語ったこの内容は、かねてよりあったアメリカ同時多発テロ事件が国際金融資本の自作自演であるとの説に一定の裏づけを与えるとともに、エスタブリッシュ層の独善的な世界構想の一部をも伝えることとなった。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%AD%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%AB%E3%83%83%E3%82%BD

これ、感想を聞かれたので、ご返答を。


前に書いたのですが、僕は、陰謀論は、情報としてはとても興味深いけれども、現実へのアクションや自分の思想の糧としては、まったく信じません。少なくとも、世界で公に公式に事実だと認証されたもの以外の、裏の情報やあるかもしれない人間関係などをベースに、想像力で物事を語ることは、基本的に害悪である、と思っています。えっともっと精確に云うと、陰謀論は、それが自明の根拠を伴っていない妄想が多く、本当の意味での他者・歴史への動員力にならないと思うのです。


たとえば、ユダヤ資本による陰謀が、、、とかいう話も、僕には神様でないの、本当のところの真偽はわかりません。ユダヤのネットワークがないわけではないので。けれども、普通の頭で考えれば、ユダヤ資本以外に、資本家のネットワークというものは、たくさあって、華僑財閥も日本の財閥も、南部の白人も、、、なんでも考えれば十分対抗勢力になるほどのモノがたくさんあります。なのに、ユダヤ資本だけ、といっただけでそれがどんなに世の中に流通しようとも、僕には信じられません。パワーが他軸である場合は、ある種の自由競争状況が発生するので、一部の陰謀が世界を形づけることはありえません。


前に、人間というのは、この世界が何か裏で支配されているという「実感」を感じる生き物である、という記事をSFの評論で書いたことがあります。それと同じで、基本的に人間は、なんらかの「馴致されない現実」に対して、秩序を見出そうと足掻く生き物です。現実は、、、生の現実は、それだけで、なんの意味もつながりもなく生起するという恐ろしい強度をもったもので、それに人間の意思は耐えきれません。だから、そういった陰謀説は、世界に秩序を探す人間のロジック的な精神の在り方の、ある種の負の面だと思っています。


まっ、すべてが嘘とはいえないので、僕も、911を具体的に計画したかはともかく、ある種の世界新秩序(笑)のために、大きなパワーシフトを戦略的に考えている層がいて、それが、あの事件をある程度予想しても黙認したり、そういう出来事が起きた瞬間に徹底的に利用した、、とか、あるパワーシフトを起きるための計画シナリオを十全に練っていたというところなのではないかな、と思います。はっきりいって、キリスト教世界のロジックや戦略の「あり方」には、聖書やユダヤ教の「預言」のコミュニケーションシステムが内包されているし、そもそもアメリカのシンクタンク集団は、そういった世界の秩序をたくさん、、、それこそ世界政府から帝国の形成まで数限りなく出していて、なんというか、わざわざびっくりするほどのことかな?とも思います。



仮に、911が政府なり、資本家集団なり、なんらかの裏組織が動いていたとしても、「それだけ」の単独による現象は起こせません。僕の理解では、ある種の米国の覇権の失墜に合わせて、米国を監視社会化したい政治勢力や、もしくはもう一度国内に回帰する・・・つまりは、アメリカの孤立主義的な伝統を保守して、世界の他軸化を行おう、、、また市場として飽和しつつある北米市場から資金の還流を、経済発展が著しい国にシフトさせようとという「戦略」は、べつにロスチャイルドや銀行屋の陰謀をもちだすまでもなく、資本というナショナリティーを超える運動法則が発生した瞬間からのある種のイデオロギーであり資本の理想とするところです。というか、普通考えれば、世界中のグローバル企業やファイナンスに関わる企業は、みんなこれを目指しているに決まっているじゃないですか。


これは、別にロスチャイルドでなくても何でも、普通の資本家はそう考えるはずです。世界国家というやつですね。それというのは、インターナショナリズムの一形態で、ある意味、コミュニズムと同じ運動形態で、地域性やナショナリティをズタズタに引き裂くものなので、基本的に、ナショナリズムインターナショナリズムイデオロギーは、この200年地球の最大の思想的な対立です。


そして難しいのが、この二つの側面が、同じ人間や集団の中に「同時に存在する」ことです。だから、誰がどちらか?という二元的な分け方が出来なくて、事実が良くわからなくなるのです。


単純にいえば、仮にユダヤ資本の銀行でも何でもいいですが、そういう「個人」がいたとして、彼らは世界の統合市場を当然目指すのだけれども、イスラエルアメリカなどの地域へのナショナリティーの忠誠が、いろんな状況に合わせて出たりひっこめたりするもので、どっちが本当?というのは、分からないはずです。たとえば、仮に僕が、日本の大財閥の裏の支配者であったとして、戦略的には、当然、テロを起こしてでも黙認してもで、世界統合政府を目指しますよ。資本家としてはそれが当然。フロンティアの成長率の高いところへ、渡り鳥のように資本を自由に動かすのが資本家の信条。けど、同時にその資本は、日本のナショナリズムを支える重要なリソースでもあるわけですよ。それは、たぶん状況によって、仮面を使い分けるという形にならざるをえません。そういう仮面的な曖昧な振舞いを、陰謀論である種のデーモナイゼイション(悪魔化)して、他者を動員しようとする陰謀論は、僕は心底嫌いです。仮面的な振る舞いは、資本という無色透明の存在の本質であって、それを訴えることに意味はありません。


また、税金の話が延々とあるのは、非常によくわかります。この人はアメリカの思想的基盤である、州権論・・・・権力の偏在主義を強く持ったアメリカのナショナリスト・・・それも強烈に右の、土俗的な、南部的な感じな人なんだと思うのですよ。この話も、長くなるので端折りますが、ようは、アメリカ社会には、統一的な権力(=連邦権力!)をとても嫌う思想的土壌があって、そのもっとも大きな攻撃目標は、連邦権力を支える税金システムです。そもそも、税金を、ある統一的な権力に集中させるは、合衆国憲法からいえば、明らかな憲法違反行為で、その苦渋の選択た修正条項は、憲法の歴史を見ると非常によくわかるのですが・・・・・。ほんとうにアメリカの中央銀行創設にまつわる話には、泣ける、苦渋に満ちた話があって、アメリカも悩み抜いたのだな・・・と調べるにつれて感心します。


そういった連邦という統一権力を許さない土俗的なアメリカの思想的な土壌からすると、資本の無色透明な「世界統一市場」を目指す発想は、許し難い罪悪になるんですね。だって、統一権力を強化することになるわけですから。これは、アメリカ人が、徹底的に個人の、またはローカルな人間集団の自由を深く深く愛偏執的に愛する人々である、という伝統を抜きには語れない話だと思います。統一的な権力、、、正確にいうと、アメリカ独立の際のイギリス帝国の国王への巨大な恐怖などですが・・・そういった支配されることが死ぬほど嫌いな人々なんですね。アメリカの田舎の人は。


・・・また、二元論的に「敵」を作りたがるアメリカ人の具体性は、すぐ、ユダヤ財閥!とか銀行!とか言いだしますが、精確に云うと、僕はこういう資本の持つ無色透明な傾向を、人格化(=ある種の意思がある世にしてシンボライズ)するというのは、嘘だと思うのです。資本というものは、その存在の在り方から、インターナショナリズムで、世界政府、世界統合市場的な性格をもつもので、、、それは、「運動傾向」とも呼ぶべきもので、それをある種の権力者が、人格化して統御できるものではない、と僕は考えています。


という風に、これを見て、僕は思いました。


いろいろ細かく書きたいところですが、おおざっぱにこれを見て思うのは、そういうことです。


まぁアメリカの連邦権力への嫌悪感は、知っている人にはとてもよくわかるもので、この感覚は、普通にすると日本人では絶対にわからないと思います。明治政府による統一権力を強固に作って、しかも天皇制というある種の熱狂的宗教イデオローグ似て、徹底的に洗脳(皇民化)された日本の現代人には、まず理解できない感覚のはずです。徳川家康という日本を奇形化させた偉大な古だぬきが出る前の、戦国時代の日本人ならば、非常によくわかる感覚でしょうが。