ルルーシュは、ユーフェミアの思想を乗り越えられたか?〜第一期はスザクの物語だったのだと思う


ユーフェミアの政治的天才〜帝国の皇女にしてその戦略的妙手は、やはり皇帝の娘だったんだな…と今は思う

ふと思う。ユーフェミアの思想というのは、本当に革命的だったんだな、と思う。政治的には、圧倒的な妙手。少なくともエリア11の・・・植民地統治の問題を、体制内改革に一気に封じ込めてしまうその手法は凄まじい戦略的な手段だった。・・・・能天気な王女様に見えたが・・・凄かったんだな。

こうしてR2の2期を見ていると、少なくとも1期でルルーシュが何を間違えたか?というと、このユフィの政治的な戦略に対して「真の意味で有効な対策」を打ちえなかったためにすべてがおかしな方向に行ってしまっている。逆にいうと、R2で、物語のドラマツゥルギーを進め、過去を乗り越えるために最も重要なのは、まずはユフィの体制内改革の思想を、いかに超える思想と政治的手段を、戦略として打てるか、ということに尽きるのだと思う。この「ユーフェミア(そしてスザク)の政治戦略に対する真に有効な打ち手が打てない」ことが、イコール、覇王としてのルルーシュが「自分以外を信じていない・他者を駒としてしか見ていない」というナルシシズムにとらわれている状態で人を指導しているという究極の欠点と重ね合わせて、彼に失策・失敗を起こさせていくという脚本は、なかなかに見事なものだったと思う。政治的なマクロの問題点と、それを担う「人間個人のミクロの心理状況」がリンクしているからだ。これは、人間と世界が理解していないと書けない演出だもの。



ただ、考えてみれば、このドラマ構造上のポイントがわかっていたんだから(わかっていないはずがない!)、100万のキセキは、もう少し演出上やりようがあった気はするなー。まぁ中身はやはりあれでいいと思うので、おかしいとまでは思わないけれども。



□マクロの外部環境の前提〜強大な帝国は、圧倒的に強大でなければその存在理由を失う

ちなみに、非常に大きな前提だが、この少数民族の独立問題と帝国内部で体制内改革という対立のドラマツゥルギーは、このアニメの世界では、かなり現実の社会と異なっている点が一つある。それは、世界がほぼ3分割に分割されて、それ以外の政治勢力がほとんど存在しないという状況だ。はっきりいって、このレベルの国家が争っているときに、小国が独立して生きることは、非常に難しい。経済学的には、1億人を超える人口が存在しないと内需だけでの経済の資本主義へのテイクオフがほとんど発生しないため、地理、政治、金融などの非常に特殊な要因(シンガポール・香港を想定)がない限り、基本的に内需マーケットをもたない国家は、独立国家として存在するだけ疲弊して、外資に食い物にされてボロボロにされる場合が過半である。資本主義のテイクオフな、本当に難しいのだ。バングラディツシュ、ミャンマーやアフリカ諸国を見るとね、よくわかると思う。

独立したら食っていける・・・というのは、嘘だ。もちろん、国際競争という凄まじい弱肉強食に100年単位で戦っていける資本主義精神とリンクした強烈な誇りと気概(エートス)、それによく教育され文化的統一意識の強い国民がいてはじめて、なんとかなる「かもしれない」レベルだ。・・・我々の住む世界はグローバルな弱肉強食の世界で、独立して優しくして無菌状態に置いてくれるなんてことはほとんどなく、独立しているだけで、常に内部と外部から資本主義の獰猛な洗礼を受け続けることになる。それが、独立の真の意味だ。独立は、かなり怖いのだ。民族自決の幻想と外資を追っ払って手に入れられる民族資本の目がくらんで(そんなの一部の特権階級が儲かるだけで経済植民地として収奪されるだけだ)、独立にかかるコストの巨大さを無視しているのだ。


僕も仮のこの物語の世界のように、政治勢力がほぼ三極に収れんされている状況がなかったら、1億以上の人口があり、かつ統一意識の強い日本は、独立すべきだろうと思う。それでも十分食っていけるのだから、、、、下手をすれば鎖国してもやっていけるのだから、そこで他者に支配される必要性はない。ましてや世界統一政府が程遠いのならば。基本的に、今の現実の僕らの世界は、なぜ地域ごとの経済ブロック制や、安全保障についても現実的な多国間安全保障条約によるグルーピングが起きるのかといえば、まだまだ現在の世界は、地球連邦政府にはほど遠いということだから。その場合は、現実路線は、生き残れる単位での独立は効率的な地域開発には避けられないと僕はお思う。



□第一期はスザクの物語〜ユーフェミアに見出され何もなかった空っぽのスザクが理想を見出してゆく物語

・・・さて、話は戻るが、、、僕は第1期の物語は、ルルーシュ自体がナルシシズムの奴隷に捉われており、非常に限定的な・・・覇王になりきれない覇王であったため、王道の中の王道を歩んでいた、、、、しかも、それが全く身分も立場も人としての誇りすらないなかで戦い抜いていたこともあって、スザクこそが真の主人公であった気がする。それゆえに、突きつけられる課題が、スザクに偏って、厳しいものが多かった気がする。登場したての彼の強烈な捨て身の発言は、いまでも胸に焼き付いている。明らかに出来レースの裁判に、それでも真実を明らかにする場所だと信じて、、、いや、それがまやかしだと知っていても出頭し、、、


「それでダメなら、自分はこの世界に未練はありません」



と言い切った彼の強烈な自己犠牲の、、、なんというか、結果(=目的志向に生きる)を完全に拒否する過程のみを遵守するその強烈な捨て身さは、本当に凄いエネルギーがあった。あのある種のオーラは、3軸のグローバルな政治戦略闘争になるはずのR2の今後では、なかなか見えないかもなーと思う。だって、もう既に彼は、帝国最高位のナイトオブラウンズのNO7だもの。立場がある人間には、なかなかあれほどの捨て身感は演出できないと思う。


ちなみに、スザクがユーフェミアに対して過剰な思い入れがあるのは、何もなかった彼の情熱というか志というか内的なポテンシャルに、さまざまな形を与えて見出してくれた人・・・初めて自分自身の内的な本質を見抜いてくれてそれを、世界に表現する方法を与えてくれた人だからなんですね。ああいうのって、魂の同志、だと僕は思います。

コードギアス 反逆のルルーシュ volume02 (Blu-ray Disc)コードギアス 反逆のルルーシュ volume02 (Blu-ray Disc)

バンダイビジュアル 2008-09-26
売り上げランキング : 426

Amazonで詳しく見る
by G-Tools