『犬神家の一族』 市川崑監督 あげればきりが無い美学に貫かれた作品

犬神家の一族犬神家の一族
石坂浩二, 高峰三枝子, 三条美紀, 草笛光子

角川映画 2000-08-25
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評価:★★★★★5つマスターピース
(僕的主観:★★★★★5つ)


鬱屈した陰影の美学に貫かれながらも軽い感じがする。文句なし星5つです。ちなみに、その後作られたリメイク作品を否定はしませんが、比較になるものではないと思います。


市川崑監督と横溝正史原作の美学が相乗効果を生んだ傑作ですね。


庵野秀明監督がオマージュとして多用するタイトルクレジットの演出など細かい演出の冴え。


絶大な存在感を誇る大滝秀治草笛光子坂口良子加藤武三國連太郎ら名優。


2時間半を超えながら飽きさせないテンポ


ハリウッドでは出せない日本的家屋と風景の光と闇の強烈なコントラスト


横溝原作の土着的因習と複雑な日本的大家族の血の縛り、



もう80年代も見える頃に作られながらほぼセットなしに「戦前直後の昭和の空気」を演出しきっている雰囲気



・・・・あげればきりが無い美学に貫かれた作品です。僕が見たのは、大好きな岩井俊二監督が、絶賛していたからです。



不思議なのは、これほど湿っぽいほどの日本の土着的因習を強調した作品でありながら、主演である石坂浩二演じる金田一耕助が飄々として、作品全体に軽い感じを与えることだ。



脚本が



「すべては犬神佐兵衛の手のひらであった」



という日本的家族の血の呪いを主軸にしているため、本当の主人公は最初の数分で死亡してしまう佐兵衛であって、金田一は道化にしか過ぎないという設定はわかる。しかしそれ以上に、ビジネス的に拡大路線を歩む企業・角川書店角川映画の第一回作品であり、エンターテイメントと質を両立させえたプロデューサー角川春樹の非凡さと影響を感じるのは僕だけであろうか。