『俺の妹がこんなに可愛いわけがない』 伏見つかさ著 

俺の妹がこんなに可愛いわけがない (電撃文庫)

1時間で読めてしまった。うーん、悪くない、悪くないっすよ?。完成度は高いし、とてもさわやかな読み応えで。・・・でも、読む価値があるかっていうと、もう皆無としか言いようがない(苦笑)。あっ、僕は本を読む時に、1)自分の思索や内的な糧になるか、もしくは、2)心の癒しに読むか、ってので二つのカテゴリーを分けているようで、まったく思索の糧にならなくても、心の健康のために、そういった癒しを提供してくれるものは、大好きだし、意味はない、人生には役に立たない・・・と思いつつも、やっぱり好きなんで、読みます。これは、ストレートど真ん中に、2)の癒しのためだけorネットで話題だったので、とりあえず気分転換に読んだったものです。ちなみに、やはりネットで話題になるモノは、基本的に質は高いなぁといつも思う。みんな見る目はあるよね。ただ、完成度が高くて安定しているからと言って、なんらか心をひきつけて、後に残るような強度があるかっていると、まぁ薄いよね。アイディア一発勝負。素直に、自分の妹の自己肯定を助けてやる、いい兄貴っていう青春のビルドゥングスるロマン。


たぶん、魅力というかこの作品のコアは二つあって、


1)妹系の記号


妹って、なんというか、非常に類型化されたシンボルですよね。そのパターンの一つで、たぶんこういう系統を、エロゲーとかアニメとかも含めてよく体験していて見ているそのうちの一つという風に見ないと、より面白くはならないのだろうなって気がする。まぁこの話は、なんというか微妙に普通の視点だよな、と思う。というのは、兄貴と妹の「仲が悪い」ってのは、まぁ普通だよね。兄貴が薄くて、妹が派手で社交的な場合、こういう風に口も利かなくなるものらしいしね。高校の時の同級生の女の子が、すっごいかわいい社交的な子がいて、その子の兄さんが暗くて地味で・・・まぁ秀才タイプだったんだが、あまりに見てくれに差があり過ぎて、、、それで、仲が悪いので有名だった(笑)のを思い出した。・・・けど、久しぶりにその先輩にあったら、とっても妹と仲良くなっていて、なんでだ?って思ったんですが、その先輩はとっても頭のいい人で、かなりいい大学に行って、凄い頼れる人となってたんだよね、、、受験時代は暗くてあか抜けない自信なさげな人だったけど、大学に行ったら、それは落ち着きに変わっていて・・・地味な風貌の兄貴が嫌いだったんだけど、世間に出てみるとそういう一方向の評価では測れないってのが、わかったのかなぁ・・とか思ったのを覚えている。関係ない話だ・・・(苦笑)。


2)ヲタクの自己肯定


あとね、なんとういか、これ『ドージンワークス』の番外編でも感じたんですが、これって「自己肯定されたい」というヲタク側(ってカテゴライズするの難しいけど)の欲望が透けて見えるなーって思うんですよね。これって、下もそうですが、中学生の女の子(たいてい美少女)「が」、ヲタクのダークサイドに落ちている、いやむしろ積極的に制覇しているって、設定ですよね。この『おれの妹がこんなに可愛いわけがない』も、妹系のエロゲー好きな、完璧美少女の妹って設定じゃないですか。これは、やっぱり「自分が世間から自己肯定されたい」という自己の仮託に思えてしまいます。自己を仮託する場合は、その自己を最も否定する相手に投影すると倒錯が起きて、コメディになるんだよね。この場合は、ヲタクの少年・青年がっ最もほど遠い女の子に投影すればいいわけだから。この手のカテゴリーは、ライトノベルエロゲー的なものとしては、とても需要がある金鉱だと僕は思うな。即、落差がコメディになる部分も、構造上優れている。ああ・・・『らき☆すた』も同じものといえるかもしれないなー。まぁ、そのへんが、妙に病的ではなく、普通に落ち着いて安定しているのが昨今の自己肯定で、こういうさわやかで落ち着いた感じは、僕は好きですねー。

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ただ、そういった欲望が基礎にあるのは別にいいんだけど(逆も成り立っているしね)、それ以上の物語のエネルギーがないだけに、いかに上手に物語をつくっても、個人的には、うーむ、、、なんとなく透けて見え過ぎて、気持ちが良くないなぁ。実際、現実として、こういったサブカルチャーの領域を女性が、どのように享受しているのかは、僕はよくわからないし、ましてや世代の低い層がどうか?なんて、娘が育ってくれる過程をつきあうとわかるだろうけれども、まぁ今のところは全然わからないんで、こういう現実が少しでもあるのか?ってのはわからないですがねー。まぁコメディとして、最もほど遠い人種に、ある種の属性を付与させて、その落差を楽しむというコメディとしては、この手のジャンルは、まだまだ可能性があるなーとか思いました。きっと、すぐ2巻も出ますよ。でも、申し訳ないけれども作者に才能がなさそうなので、、、まぁあまり期待できないかなぁ。

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