『カラミティナイト・オルタナティブ』 高瀬彼方著 残念・・・これは残念だった

カラミティナイト-オルタナティブ- (GA文庫 た 6-1)

評価:★★星2つ
(僕的主観:★★☆2つ半)

ふーむ、『ディバイデイッドフロント』の人だけに、凄く期待していたのだが、、、、2巻で打ちきられたのは、非常によくわかります。これは、売れないし、話題にならないだろう、と思います。一言でいうと、暗い、重い、物語の始まりが遅い、です。ディバフロ級の作品を書ける人が、こうもダメになるとは思えないんだが・・・つまらないとは言わないが、売れないだろうなぁ、と思った。

■売ろうとする意志わかりやすくしようとする意志と自分の伝えたいこととのバランスがエンターテイメント
いや、実は、ああ、、、これはディバフロの宮沢さんの志向だな、とか、、、、トータルでは文章もうまいし、話も引き込まれるんですが、そもそも「売れる要素がなさすぎる」なんですよ。しかも、これかなりの長期連載を前提に書かれているので、2巻になって後半ぐらいになってやっと物語のスタート地点にはいる。これは演出が悪い。しかもそれまで聞かされるのが、主人公の女の子である智美の暗いいじめの過去と引っ込み思案(=物語が動かない)ぐじぐじとした反復ばかりで、カタルシスが全くなし。いやもっというと、「売れる要素の部分を排除」している感じがして、、、これは、ちょっと「売り方の戦略」が舐めているなぁと感じてしまった。文章中でも、WEBでナルシーな小説を書いていた智美を糾弾する箇所があるんですが、、、いや、それこの小説にも十分当てはまるから、と思ってしまいました。もちろんもともとの構造があったのかもしれないので、それを上手くいじれなかった、というのはあるのでしょうが、マイナー志向というか、「わかりやすくわからなくてもいい」という驕りを僕は感じてしまったなぁ、この作品には。ディバフロの時は、それが、、、ああこの人は誠実だ、、、と深く感動したのに、ほぼ似た姿勢でも内容によっては全然感じることが違うんだーと思ってしまった。


川原礫さんの『ソード・アート・オンライン』や『アクセルワールド』を読んでなるほどと思ったんですが、これは、まず読者が分かりやすいように思いっきり割愛するところをするんですね。『ソード・アート・オンライン』は、たぶんもっとボリュームがあったのを、かなり潔く割愛している感じが読み終わったときしたので、、、潔いいなーと感心したんですよ。また、1巻の最初の出来事(=イベント)で話をものすごく進めてしまい、読者を引き込むというエンターテイメントの構造(ハリウッドのシナリオ脚本的な)をよく踏まえている書き方をしています。だからメリハリがあって、読んでいて場面が物語がサクサク進んでいくのでとても読みやすい。ライトノベルというものの前提として、解釈したり内面にどっぷりつからなくとも、物語を軽く追っていけるという部分が重要な媒体の特徴で、それにしては、あまりに高瀬彼方さんの今回の作品は重すぎる・・・。重いというか、「その描写」が長すぎる。そうでなくとも、グジグジ悩む人は、話を前に進めないので、それが主人公である必然性を僕は感じないよ。基本的に、ディバフロの時のように、あの手の「考え過ぎるキャラ」の宮沢さん的なポジションは、脇に置いて観察させるべきで、物語を前向きに切り開く人を主人公に置かないと、そもそも低年齢層・・・・いいところ中学から大学生が相手の文庫なんだから、感情移入できないと思うんですよね。

にもかかわらず、結構一気に読ませられたので(途中で読み捨てはしなかった)、文章が下手でもないしいいたいこともディバフロを知っていれば分からないでもないが・・・こりゃだめだなぁ。個人的には残念でならない。一度あのクラスの作品を書くと、普通はレベルが下がらないものなのだが・・・。好きな作家だけに、とても残念だった。skerenmi くん、これは駄目だったよ。ディバフロは、勇気がほしくて、なんか見も読み返している素晴らしい作品なのになぁ・・・。

『ディバイデッド・フロント』 高瀬彼方著 「世界が絶望的な状況にあること」と「世界に絶望すること」の違い
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20080720/p1

ディバイデッド・フロント〈1〉隔離戦区の空の下 (角川スニーカー文庫)