『冷たい校舎の時は止まる』 辻村深月著 人の心からの脱出劇は、動機の描写との相性がいい

冷たい校舎の時は止まる(上) (講談社文庫)

評価:★★★★4つ
(僕的主観:★★★★★5つ)


今回の香港出張の空港待ち時間や移動時間で読了。なるべくその行った先に関係ある本を読もうと思うのだが、どうも急遽だと用意ができない。LDさんが紹介してくれた『旅のラゴス』も探したが僕の行くルートの本屋には、なく断念。とはいえ、辻村さんの作品があるので、暇をすることはついぞなかった。・・・が、移動の記憶は、あまりに引きづり込まれたのでほとんどない(苦笑)。それが本を読む欠点なんだよなー。記憶があいまいになってしまう。


とにかくね、とても面白かった。小説としての完成度も、内面描写の深さも、とにかく期待を裏切らないもので、僕は凄い好き。きよさん紹介本当にありがとう。と、なんども書いているが反応ないので、きっと僕のブログは見てくれていないのだろう(苦笑)。それにしても、この人は、小説がとてもうまい。どの作品(3作同じ傾向ならば、経験からいって、もう全作といって間違いないだろう)も、人物の内面描写は深く鋭いし、かといってちゃんとその内面の「えぐりだし(=そのキャラクターの自分探し)」が、物語の展開にそっているので、読むストレスが非常に少ない。というか、ない。

下記が、あらすじなんですが・・・・ミステリーとかスリラー的な謎解きの緊張感など、物語の構造が凄くしっかりしているので、ものすごぉーくながいし、しかもそれぞれのキャラクターの過去や性格の描写が多くて、普通なら苛立つところ、それがない。ようは、小説が上手いってこと。自分の得意な部分(=人間観察の深さ)が、よくストーリーの本筋に馴染んでいる。決して、マクロの話があるわけでもない、日常の関係性を描く系統の人であるにもかかわらず、僕にこれだけ読みたいと思わせるのだから、こういうのが好きな人には言わずもがなだろう。


大学受験を控えた高3の冬、雪の中集まった8人の生徒たちは、無人の校舎に閉じ込められる。

クラスの学級委員達8人以外の姿が見当たらぬ中、学園祭で自殺したクラスメイトの名を、どうしても思い出せないことに気付く。

自殺したというクラスメイトがこの状況に関わっているのか。

この8人のうち、1人が死んでいるのでは…? 

疑心暗鬼はふくらみ、彼らは追いつめられていく。


迫る5時53分の恐怖と戦いつつも、過去の闇に立ち向かい、彼らは文化祭で自殺したクラスメートの名を探し続ける。


http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%B7%E3%81%9F%E3%81%84%E6%A0%A1%E8%88%8E%E3%81%AE%E6%99%82%E3%81%AF%E6%AD%A2%E3%81%BE%E3%82%8B


ちなみにこの設定って、まんま『レベルE』の高校野球地区予選編と同じ話だよね。系統としては、森生まさみさんの『7人目は笑う』も同じ。そしてどちらも、短編としては驚くべき完成度を誇る傑作というのも同じだと思う。少年漫画と少女漫画というテイストの違いはあるけれども。同時に3冊読んでみると、いろいろ共通項が見えて面白いかもしれません。単純にいえば、ある空間に閉じ込められて、そこから抜け出すためには、なぜそうなったかを・・・・閉じ込めた犯人の心理を読み解いていく・・・言い換えれば、この作品でいいえば、自殺にまつわる自分との関係をを徹底的にえぐることになるという作劇です。「なぜ閉じ込められたか?」という物理的な脱出劇の部分と、「その謎を解く」という心理的な追及の両方を重ねることで、ともすればウザくなりがちな、内面の奥底まで深く潜っていく追求をしていく・・・ああ、、、考えてみると、ハーレムメイカーや並行世界の物語も、結局とのところ「どこかへ脱出する」という作劇の構造になっていたな・・・・。この1)脱出劇と2)心理探究という二つは相性がいいのかもしれない、物語類型として。

レベルE (vol.3) (ジャンプ・コミックス)


7人目は笑う (花とゆめCOMICS)
7人目は笑う (花とゆめCOMICS)


中身についてはいろいろ思うところがあるが、まずはとりあえず記事を上げてみる。