『獣の奏者』 漫画:武本糸会 原作:上橋菜穂子 武本さんの描くエリンが凄く魅力的 

獣の奏者 2 (シリウスコミックス)
 
漫画のエリンが、凄くかわいいんです。素晴らしい書き手に出会えて、この小説は非常に幸せ、と思います。この作品は、小説、アニメ、漫画ともに同じクオリティが維持されているという非常に稀有な作品で、どれを見てもいいと思います。

とはいえ、、、小説は、エリンという女性の「気真面目で真摯な」人生をすべて描きつくしたって感じがするんですが、どうしても、最後の読後感で、これ以外の道はなかったのか?って思ってしまうんです。ただ、やっぱり「あの厳しい世界観」ではないだろうな、と思ってしまう。そしてエリンという女性は、最後の最後まで非常に厳しき世界を眺めつくしていて、余裕というかそういうものを全く感じない。一直線に「滅びに向かう世界」を直視している。けど、この物語の完成度から言って、それは必要のないことだとは思うのだが・・・僕は、2点もしあれば、と思うことがあります。一つは、この世界は、この世界で完結しすぎていて、本当は他の地域の国との関係でもっともっとひろい世界が描けたのではないか・・・と思う。そうれすれば、もっと異なる世界の破滅の回避の仕方が見つけられたかもしれない、と思う。・・・けれども、それではこの小説の最初のテーマから外れるから、いってもせんないこともかもしれないんだけれども・・・。もう一つは、エリンの気真面目さ。こういう気真面目で一直線の一点集中突破型だかこそ、世界を救えたんだとは思うんですが・・・・実際に、ソヨン(母親)よりも、エリンは、育ちもあるんでしょうが、とっても抜けている人なんですよね。ある種、なんという優等生だけど抜けているみたいなキャラのはずで、もっと思いっきりに受けて萌キャラっぽく表現しても、本当はおかしくないんじゃないかって気がするんです。集中力天才型は、基本的に天然でぬけぬけさんですから。そして、そういう「ぬけているところ」が、世界を違った角度か眺める余裕につながるんじゃないか・・・と思うんですが、それもこのキビシイ世界観の中では、構っていられない部分でした。そういう意味では、これも言っても仕方がないこと・・・・なんですが、この漫画の武本さんのエリンの造形は、その天然の部分が非常によく出ていて、僕はとても好きなのです。「この」エリンであれば、もっと異なった解決方法を見つけ出せたんじゃないか?って・・・思ってしまうほどに。