最後のまとめ方がとてもきれいだった。

NGライフ 9 (花とゆめCOMICS)

読了。全体の評価は、★3つ。物語としては、平凡だろう。特に光るものもなかった・・・。けれど、たぶんほとんどアイディア勝負で読み切りを書いて、その後全体の構想がほとんど練られていない中で話をだらだら伸ばしながら、、、、それでも、9巻の過去編まで話を繋げきった、なんというのかなぁ「丁寧さ」と「その世界のいるキャラクターたちへの愛情」に、とても感心。このレベルだと酷評してしまいかねないのに、物凄く読後感がいい。そして、読んでよかったという感覚が残る。・・・まぁ僕ごときただの消費者が偉そうに高みから言うのは、不遜といえば不遜なのだが・・・そういった客観的な評価を超える、温かいものが感じられる丁寧な作品だった。これなー9巻の構想を最初の時点でちゃんと持っていれば、もっともっと深い作品に仕上げられたと思うんだよなー。たぶん、9巻まで来る過程で、少しづつキャラクターの「ありうべき姿」を深掘りしていって、こういう「結論」を生みだして行ったんだと思う、、、読んでいると、過程でキャラクターを愛していくことによって、世界が少しづつ深まるのが、じわっとわかる。それだけに、これだけの設定、もっと料理をしてほしかった気はする。。。。でも、スタート地点が低すぎるので、これが限界だっただろとも思う。この作者は、この作品で、きっと物語の作り方というものを、深く学んだ気がする。きっとこの次の作品は、格段にレベルが上がる気がする。・・・まぁそういう成長のステップはさておき、このキャラクターへの真摯さが、僕には非常に良い印象だった。

・・・・・「この設定」何かすごく引っかかるものがある。なんだろう?。もちろんこの作者がとても愛情を作品に注いでいて真摯に仕立て上げた、質のいい作品であるということを除いて考えるべきだろう、、、、そこではなく、なにか「ひっかかるもの」がある。前世モノという構造に何か、あるような気がする。そうでないと、『ボクラノキセキ』にせよ、この『NGライフ』にせよ、物語の構造や質的にはそれほどでもないのに、こういう風にぐっと胸を打ったりしないはずだ。・・・この作品に物足りなさがあるとすれば、やっぱりマクロの設定が「最初の時点から作りこまれている」ことができなかったことだと思う。フツーの少女漫画にそれは必要ないものかもしれないが、とびぬけた作品になるには、やはり「それ」がいると思う。

前世モノというのは、そもそも、どっかの新興宗教とかで言われそうな、普通の現実の人にはいかがわしいといった部分も、ちゃんといれないと、現実感覚も失われて悪い意味でのファンタジーに見えてしまう。なんというかそういう緊張感のもとで、「何が現実かわからない」、、、そもそも「現世で転生した意味は何か?」「なぜ転生したのか?」という、「理由」のマクロ設計をしないと、やっぱり???となる。この作品には、究極その理由はなかった。事実転生しました、というだけ。たぶんそこらへんの設計の甘さに、残念な感じがするのだろう。

いやーちなみに敬大のイタリア人化(笑)に、たまりませんです。いやー芹沢ちゃん、メロメロなのが、またいい(笑)。ほんとうは、こういうやりとりを、もう少し中盤で入れられるようにしておければ、もっとおもしろかったんだろうなーと思う。うーん、、、芹沢ちゃん、、、、かわいなー、、、、この作品って、究極「ここ」がすべてだった気がするなー。本当は、前世で親友だったロレイウスが、もっとももっと凄まじい形でむくわれない人生を送っている形にしたほうが、この娘の健気さってもっともっと際立ったんだと思うんだよね(←相変わらず考えることが鬼畜)。たぶん、そうすることでドラマが飛躍的に大きくなるはず。まぁ典型的な少女漫画だし、そこまでぶっ飛んで世界の残酷さを描くという覚悟はなかっただろうから、それは難しかったかもしれないが、9巻の行き着いたポンペイの物語は、そこまでもう一歩であって、おしいと感じるよ。

・・・うん、、、、たぶん、僕は現実を、現実としてみるのではなく、ある種のフィルターを通して、「覚悟」を確認するような生き方に、非常に興味を抱くようだ・・・。つまり、何かの「覚悟」というか哲学を持っている人間は、世界を体験する時その「覚悟」なりをフィルターとして現実を再解釈する。覚悟や哲学の部分が、「前世」という「物語の形をとる」と、非常に強い結晶化が起きて、なぜその人がこの無味乾燥な現実で、何かの行動を起こすかの理由になる・・・・ああ、やっぱり「動機」の部分か・・・・。つまりは、動機を物語の形で見れること、その物語がもう一つの世界という形をとることで、強い衝動を与え・・・・って、並行世界モノの仕組みと同じなんだ、これ。


NGライフ 8 (花とゆめCOMICS)