『15×24 link six この世でたった三つの、ほんとうのこと』 新城カズマ著 

15×24 link four Riders of the Mark City (集英社スーパーダッシュ文庫 し 5-4)15×24link five―ロジカルなソウル/ソウルフルなロジック (集英社スーパーダッシュ文庫)15×24 link six この世でたった三つの、ほんとうのこと (集英社スーパーダッシュ文庫 し 5-6)

評価:★★★☆星3つ半
(僕的主観:★★★★★5つ)

面白かった。物凄く。これもはし君お薦め、ありがとう。手法はまんま『24』。ある少年の自殺を止めるというために集まったやつらの24時間を追った物語。この物語は構造とアイディアが凄く素晴らしかった。この一作だけで、新城カズマという人が面白い物語を書く人かどうかは判断しかねるが(構造とアイディアに依拠しすぎているので判断できない)、とにかく「この本」は凄く面白い。通常のライトノベルという範疇じゃない。なんというかカテゴリーを決めるのが難しいオリジナルな作品。読書好きの人は、読むのお薦めです。構造は、24時間リアルタイム、15人の多視点(文体で描き分けているのが見事)で物語が展開していくという手法。もう一つは、テーマ。「死を巡る抽象思考」と「死を止めるというアクションの並立」。うーん、凄くリアルタイム性があるので、これが10年後に残っているかどうか微妙な気がするんで、星が少ないんだけれども、個人的感想ではすごい面白かった。傑作!と思う。


何が面白いって、この作品は作者もあとがきで書いているけれども「死」を追った物語であること。この「死を追う抽象的な思考」が、かなりいところまで展開している。けれども、通常の作劇上では、死を扱うのは非常に難しい。というのは、「死が実感の対象物のない概念」だからだ。えっと、たとえば、気持ちいいという「快感」には、たとえばSEXとか、「おいしい」には食べ物とか、具体的な体験と感覚が、言葉の背景にはべたっと張り付いていますよね?。けれども「死というもの」は、その圧倒的な存在感と現実の割に、体験や感覚という対象物が、われわれのうちにない(=感覚再現をできない)ものなんですよ。だから、言葉や概念と積み重ねることでしか表現できない。それもかなり難しい言葉で。抽象志向に慣れていない人は、もうこれだけでアウト。言い換えればエンターテイメントにして大衆に訴求することのしにくいものであるってことです。ところが、それを24時間タイムリミットを設けた、「死(=自殺)を止める、もしくは止めないアクション」の物語というハラハラドキドキの「行動」の次元で表現していること。だから死についての抽象志向が難しくてわからなくても、止まっていないでどんどん話が展開して引き込まれる。この構造は凄く相性がいいのだ。


ちなみに、東京に住んでいる人ならば、ああ・・・・と思う観たことのあるシーンばかりの連続で(バリバリに東京という都市が縦横無尽に舞台だから)、凄い既視感覚があった。これ東京に住んでいる人とそうでない人とではすごい差が出るだろうな読んだ感覚として。ちなみに、作者の住んでいたところとか育ちは僕と似ているんだろうと思う。だって行動ルートや知っている場所がほとんど重なる感じがするもの。そうそうアキホとホノカは、僕の後輩になるわけで、ホノカの目線とかすっげー自分に重なるもの。徳永が、東京タワーまで歩いて行くところとか、ああーうんうんあのルートだよねーと思わず目の前に現実が浮かんじゃったよ。やっぱり自分の知っている場所が舞台だと、感情移入の仕方が全然変わるんだなーと思う。M・シェイボンの『ユダヤ警官同盟』とか読んでいてさっぱりわからなかったが、ユダヤ人問題や移民の問題に敏感なヨーロッパ人やアメリカ人が観ている「肌感覚」があると、全然違うんだろうなーと思いつつ。ああ、、そう思うと、もっともっと『経験』がほしいなー。世界中を回って、世界中を経験したい・・・・「何のために?」と問われたら、もっと物語を味わうためにって、答えが直感で浮かんでしまう、、、、(苦笑)、小説や物語を楽しむために、現実を消費するのかよって突っ込みたいくなるが、、、、それが僕のスタンスだもの。まっいっかー。