魔王「この我のものとなれ、勇者よ」勇者「断る!」

女騎士「世界の半分。だったな……。
 答えるよ。確かに魅力的なお誘いだけど
 半分じゃ、少なすぎる」



大主教「……少ない?」



女騎士「ああ、お断りってことさ」



大主教「貴様……」

 キンッ! キンッ! ジャキンッ!! ザシュ!!



女騎士「判らないだろうなッ!
 好きな人がいるって事が。
 大事な人を思うと云うことがっ。
 敬慕、忠節、至誠、そして誓約。
 騎士の持つ全てがお前には理解できないだろうっ?
 そして、何よりもこの胸に咲く思いがっ。
 勇者といると暖かいんだ。
 まるで春の芝生の昼寝みたいに。
 雪の日の暖炉の前のうたた寝みたいに。
 勇者と話すと楽しいんだ。
 年越し祭りの朝目覚めた子供みたいに。
 友達と駆け出す草原のようにっ。
 勇者に微笑まれると嬉しいんだ。
 この世界で何よりも大事なものに触れたみたいにッ」



大主教「なっ!?」



女騎士「わたしは“世界の全て”を持っているっ!!
 勇者を思っているから。あいつに微笑んでもらったから。
 あいつを思い出すだけで。
 勇者の拗ねた子供みたいな笑顔を思い出すだけで
 勇者の癖っ毛の黒髪を思い出すだけでっ。
 この胸には風が吹くんだ。
 魂の内側に“世界の全て”を感じるんだっ。
 勇者を思うだけで、わたしは“世界の全て”を
 簡単に手に入れられる。
 騎士としたって、1人の女としてだって。

  そんなわたしに、たった“半分”で褒美を語るなんて
 お前みたいに貧しい大魔王は願い下げだっ!!」


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読了。1スレ一冊と考えると、13冊分。半分でも6-7冊分。この量を、息もつかせないで読ませるこの構成力、展開の面白さ。・・・しかも、物語で語るに難しい宗教的概念やマクロの経済、並行世界を全て書ききるこの凄さ。物凄い傑作です。絶対読め、と言いたいです。後でもっと記事を書きます。この女騎士と魔法使い(この後の)のセリフは、号泣しました。物凄いです。もうびっくりの大傑作でした。おどろいたのなんのって。