『軍靴のバルツァー』 中島三千恒著 19世紀近代の始まりにおける戦争の進化、という文脈を前提に読む〜近代国家の建設と地球規模の拡大は砲兵の運用に始まる

軍靴のバルツァー 1 (BUNCH COMICS)

評価:未完のため未評価
(僕的主観:★★★★★5つ)

僕には珍しく、始まったばかりで、先も全然見えないし、他の作品も見ていないけれども、主観評価で★5つです。素晴らしく面白かった。けど、万人に面白いかどうかまでは、まだ何とも言えない。けど、ひさびさに、これは、いいって思う表紙買いでした。まったく事前情報なしで、これだけ、おっ!と思うのは珍しい。


どういう風にお勧めか、というと、僕がずっとい追っているテーマの一つに、触れていそうという匂いがしたからです。僕の「物語読み」の文脈として、大きな塊のテーマである「近代国家の建国はどのようになされるのか?」という系統(言葉は今適当に作った)に合致しているのでは?って思ったからです。『琉球処分』とか、下記の記事でこのテーマを、追っていますね。ここの問題意識にがっとぶつかって、まさに、そのもの!!!という感じで、しかも、にもかかわらず(こういうテーマをは難しくなって面白くなくなりやすい)、非常にエンターテイメント的に分かりやすくしあがっているところが素晴らしい。これは注目の作品です。まぁ、ちょっと男臭すぎるので、もう少し萌的な要素とか、そういうものも入っても、、、これだけ柔軟な感じがするのならば、と思うのですが、コミックバンチっぽいので、そういうことは必要なく、「言いたいことだけ」でやれるのかもしれません。もっと分かりにくくて単純すぎる感じのナポレオンの漫画も、15巻ぐらいまで行きましたから、その層には安定して売れるのでしょう。ということで、さらに、注目な感じです。一番怖いのはこういうマニアックなのは(笑)、途中で打ち切られるのが怖いものですから。

近代国家を作ることの面白さ〜フロンティアを前にした時の商人の高揚感
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20110114/p3

国境を駆ける医師 イコマ』 高野洋著
http://ameblo.jp/petronius/entry-10008994917.html

『国境を駆ける医師イコマ3』 高野洋著 昨日までの隣人に射殺される恐怖
http://ameblo.jp/petronius/entry-10022151369.html

『EDEN―It’s an Endless World』9〜10巻 中央アジアジャンヌダルク
http://ameblo.jp/petronius/entry-10010876581.html

『小さな国の救世主2〜3 おざなり将軍・いまどき英雄の巻』 部族が殺し合う世界で①
http://ameblo.jp/petronius/entry-10058228931.html

『小さな国の救世主2〜3 おざなり将軍・いまどき英雄の巻』 部族が殺し合う世界で②
http://ameblo.jp/petronius/entry-10058244959.html

蒼海訣戰〜GOD SAVE THE EMPRESS』 納都花丸 壱代陛下のどじっ娘ぶりにKO!
http://ameblo.jp/petronius/entry-10025350961.html

蒼海訣戰〜GOD SAVE THE EMPRESS』 納都花丸 坂の上の雲を目指す少年たちの夢
http://ameblo.jp/petronius/entry-10034489593.html

蒼海訣戰〜GOD SAVE THE EMPRESS』 納都花丸著 善悪二元論の克服へ
http://ameblo.jp/petronius/entry-10043130159.html

後藤新平/外交とヴィジョン』北岡伸一著/植民地経営・近代文明化のスペシャリスト①
http://ameblo.jp/petronius/entry-10003885748.html

後藤新平/外交とヴィジョン』北岡伸一著/植民地経営・近代文明化のスペシャリスト②
http://ameblo.jp/petronius/entry-10004001497.html

後藤新平/外交とヴィジョン』北岡伸一著/植民地経営・近代文明化のスペシャリスト③
http://ameblo.jp/petronius/entry-10004002821.html

小さな国の救世主―なりゆき軍師の巻 (電撃文庫)
小さな国の救世主―なりゆき軍師の巻 (電撃文庫)


あっちなみに、『小さな国の救世主―なりゆき軍師の巻』は、僕はとても面白かったです。ぜひぜひお勧めです。


というのは置いておいて、僕は近代国家を建国する、ということで最も重要なのは、合理的な近代戦争を理解している軍人を育成することだと思っていまして、さらには、その中で特筆して重要なのは、砲兵の育成と、それを機動的に動かす機動部隊をどう形成できるか、だと思うのです。近代国家が、全地球規模で拡大したのは、この組み合わせが、従来の戦争観をめちゃくちゃにするくらいの大進化だったからです。ナポレオンのフランス国民軍の育成もこれの始まりですよね。またナポレオン自体が、砲兵の出身です。また砲兵部隊の軌道展開には、当然のことながらこの時代の最先端テクノロジーの粋を集めた大は罪である「鉄道!!」の敷設や運営が必死になっていきます。そういうものの総体の組み合わせの軍隊の育成と運営能力が、近代国家の「強さ」を支えています。逆にいうと、他の国々との圧倒的な軍事テクノロジーの格差がなければ、ヨーロッパと資本主義が、これほどまでに全地球を覆うことはなかったともいえます。あっちなみに、鉄道!のすごさがよくわかる物語だとパッと思い浮かぶのは、小川一水さんです。これも、物語としては単純ですが、鉄道という技術の持つ「力」が見事に描かれていてお勧めです。

疾走!千マイル急行 (ソノラマノベルス)

そうした問題意識から、19世紀ヨーロッパのナポレオンの時代か、もしくは、砲兵の教育などを中心に近代的な軍人が生まれ始めた、、、まだ機関銃が生まれるちょっと前の時代の、なんらかの物語が見てみたい、とずっと思っていました。とくにそのへのテクノロジーやさまざま雑多な知識の造詣が深い人が書いたもので、、、、。下記のナポレオンの話は、面白かったのですが、、、、いまいち、近代国家を形成するための「軍事力」という部分の知識が弱く、破天荒なナポレオンのただ単に男臭いだけのストーリーが主軸で、それは、ちょっといまいちだったのですが、、、この『軍靴のバルツァー』は、用兵や軍事知識、果てまた、この事態の政治的背景(これはドイツ・プロイセンですね)や何よりもビールや食べ物などの小物がすごく博識な感覚を受ける。こういう人は、面白い物語書くと思うよ!!!絶対楽しみ。



ナポレオン獅子の時代 15 (ヤングキングコミックス)