『七姫物語』 高野和著 異世界を構築する時はマクロを徹底的に構築してレベルの高い人物像を作成するか、ライトノベル的に処理するか、、、

七姫物語 (電撃文庫)

表紙がよくて、てれびんに貸してもらったんだけど、、、なんか、、、一言でいうと、惜しい。設定は、非常に典型的で、まぁありがちだよね、とは思うのだけれども、そのありがちさが「異世界ファンタジー」を志向するって骨太の感じで、良かったんですが・・・。いまの異世界ファンタジーってのは、「まったく別の世界を構築する」というよりは、現在の日常と地続きの異なる世界を行ったり来たりとか、そういう系統が多いのですが、それはそれの面白さがあるのですが、上橋菜穂子さんの『獣の奏者』とか、田中芳樹の『銀河英雄伝説』『アルスラーン戦記』とか、まったく架空の世界を、ゼロから構築するというようなそういうファンタジーのほうが、僕は究極的には好きなんで、そういう匂いを感じて、いいなーと思い読みましたが・・・・


なんというか、、、、まぁ嫌いじゃないんで、全部読むとは思いますが、ちょっと中途半端だなーと思いました。まず何と言っても、文章がとても下手。結構読むのがつらい。それに、たぶん異世界の構築がしっかり堅固にできていない。だから、物語がすごく軽い。そして、軽くて、文章力がないのならば、せっかくの絵が素晴らしいので、ライトノベル的キャラクターにしたいところだが、そういう「萌え」的な構築は出来ていない。出来ていない、というか、そういうのを志向していないんだろうと思う。けど、それにしては骨太な世界間の構築が甘い、、、、まぁ中途半端なんだよねぇ。そういう意味では、いまいちだなぁ。。。。でも、まだ1巻だから、そこまで期待してはだめかぁ、、、。


ただ、設定は、非常に普遍的な、、、7つの都市国家が、争いあっているんだけれども、外圧の問題もあり、外に攻め滅ぼされたくなければどこかで統合をしていかなきゃならない、、、というこの設定は、とてもおもしろい。それをしようと考えた、二人の男が、孤児院?の小さな女の子を見つけて、この子をお姫様に仕立て上げるかー、と国の統一を目指していく物語。非常に類型的だけど、類型的が故に、表現に幅が出るし、もしかしたら化けるかも、、、と、祈りつつ読み進めてみます。だって、7巻ぐらいまで描かれたんだから、それなりに人気があったと思うんですよねー。


ちなみに、この設定を考えると、僕的には朝鮮半島の歴史だよなーとバックグラウンドは感じてしまいます。この系統の話を描くのならば、韓流ドラマとかの歴史ドラマをたくさん見ると、そっちの広がりが描けるかもなー、と思います。韓国の歴史物は、自分の国の物語リテラシーというか、慣れている物語でない分、超おもしろいです。中国の歴史は、結構知っているんだけれども、韓国の歴史ってさっぱりだもんね。ああ、時間があれば、『イサン』とかああいうのを、ゆっくりじっくり見たいんだよなー(涙)。韓国のエンターテイメントは、物語の新しい(日本人にとって)類型の宝庫ですもん。これをたくさん見て育った世代は、きっと、もっとすごい広がりのある物語を書くようになるんだろうなーって思います。東アジアの異世界ファンタジーは、上橋菜穂子さんのように、文化人類学的なバックグラウンドがあると、とてもつもなく面白くなる傾向が大ですからねー。あれって、遊牧民の文化や、高原のチベットの宗教感とか、朝鮮半島の歴史や家族、宗族構成や地政学的条件とか、そういうのを味付けに入れると、格段にユーラシア的というか、オリエンタリズム的な味付けで物語が広がりを持つからなんだろうと思う。中国の歴史や日本の歴史は、ある意味、日本人には慣れすぎているし、オリエンタリズム(=異世界の香り)というほど遠いものではないからねー。



ちなみに、ライトノベル的な『売れ線』を、とってもよく表現しているのは、↓で、これとても面白い。いまコツコツ読んでいます。

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