『けいおん』 山田尚子監督 かきふらい原作 

映画 けいおん!  (DVD 初回限定版)

評価:★★★☆星3つ半
(僕的主観:★★★★4つ)


■「日常のたゆたう関係性と風景」が過不足なくTVシリーズと一貫性を持って

僕は、『けいおん』のアニメーションに対する評価は非常に高い。アニメの全体で考えるならば、主観客観ともに★5つのエポックメイキングな作品で、しかも何度も視聴に耐えうる素晴らしい作品だと思う。アーカイブ(自分の限りあるスペースしかない本棚ね)に残したいと思わせるようなアニメーション作品というのは非常に珍しいので、これは大傑作なのだろうと思う。それにしては映画の評価は少し低くなっているのは、これが何も映画ではなくてよく、毎週のアニメーションの延長線上で作られているものだからだ。だから特別な映画体験というものはない。なので評点が低くなっている。が、、、この路線の選択は正しかったと思うし、そもそも「日常のたゆたう関係性と風景」にフォーカスしているコンテキストが一番本質なこの作品において、ばっちり過不足なく見事に完成されている。この山田尚子監督というのは、職人だなぁと感じました。この作品の凄いなって思うのは、通常のアニメーションと映画とクオリティがさほど変わらない感じがするのが、すげぇと思う。さすが京都アニメーションだ。もちろん、映画としての繊細な技術が所々に入っているんだけど、まぁーそれは本質ではないので解説は割愛。原作からアニメーションを経て、女子高校生の青春時代にある「空気の質感」みたいなものをずっと完全に再現、キープされているところに、並々ならぬ才能を感じました。この監督、もう一つ逆方向の作品を作る作るができたら(たとえばSFとか)作家主義的な映像作家になれると思うな。凄いうまいもの。これは僕の思い込みで、自分の分野と反対方向のものを作れる人は、一気に幅が広がって、もともとの「本質」の選択肢の幅、演出の幅が一気に広がるように思えるから、そう思っています。


■部活は、勝つことが重要なのか?それとも仲良くチームでやることが重要なのか?って命題

さてさて、単純に、テレビアニメと一貫性があってよかったねーという表面だけの評価だとつまらないので、日常系統の物語を追うというときの僕の評価ポイントをもう少し深めてみたいと思う(できるかな?)。最近、前回ラジオをルイさんとLDさんとした時に、かなりこの話が深まったと思う。ラジオが終了した後、5時間ぐらい(笑)朝の3時まで話していたので、もしかしたら録音が残っていないかもしれないが、『TARI TARI』のルイさんの考察を追って、さまざまに発見したものがあって、どこまで追えるかわからないが、この辺の話にからめて、話してみたい。ちなみに、『TARI TARI』の考察とルイさんの考察の話は別途記事にしているので、そっちでも見てもらえるとこの系統の話が、追えると思う。

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僕は記事を、書き溜めているので、もしかしたらこのブログへの掲載の順序が逆になるかもしれないが(気分で出しているので)、まぁそのへんは、ご容赦を。とにかく、自分の思考の履歴を、ストレートになにも交えず、出し続ける、たれ流しにこのブログのスタイルがあるので(笑)。さて、『けいおん』を最初見たときに、凄く好きで大好きで見続けていたが、一つ、ふと思った(あまり本気ではなかったが)ポイントがある。それは、あずにゃん問題だ(笑)。この「見るべき視点」というのは、僕が日常を観察したり分析する時に、実は常に「付きまとっている」視点で、すべてのことをこの視点、この評価軸で見ているようだと発見したポイントでした。ここを、少しもう一度考えてみたいと思います。


あずにゃん問題(笑)〜日常をたゆたい「いまこの時の幸せをかみしめる」か、それとも志と夢を持ってつらく茨の道をかけのぼるか?
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20090628/p1

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部活漫画には二種類ある。/Something Orange
http://d.hatena.ne.jp/kaien/20090617/p1

日常ものを描こうとすると、『学園』がステージに選ばれることが多い。そして、その流れで「部活もの」というものが選ばれることが多い。『放課後ウィンドーオーケストラ』という少年漫画が、この辺の際を扱っていてとても面白かったのですが、僕はこの手の作品を見る時に、

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部活は、勝つことが重要なのか?それとも仲良くチームでやることが重要なのか?って命題。


これは、組織を運営するときの重要な命題で、、、、別に会社などの規模の大きなものでなくとも、特に部活動で集団でやる時に、部長とかを経験した人ならばこのことの難しさと重要さを何度も話し合って、それこそ部員と喧嘩したり仲直りしたりの経験があると思うんですよ。これ部活動でやる時に一番もめる点ですからね。

という命題というか類型の見るべきポイントが隠れているといつも思っています。この舞台とテーマを選ぶと、この構造に対峙しないわけにはいかないからです。だから「これ」にどうこたえているのか?ということは、重要な「面白さを評価する見立て」となります。もちろん、このテーマを決然と取り上げることだけが正しいというわけではなく、いかにこれをうまく無視できるか?というのだって重要な演出になります。ただ構造的に舞台にビルトインされているものなので、どうしても意識しないと、物語の脇が甘くなってしまうポイントとなります。


では、全シリーズを見て、あずにゃんは、では本当に駄目になったのか?と問えば、それはわかりません(笑)。確かにこの物語は、そもそもそれがテーマではないし、仮にそういったテーマがあったとしても、あずさが、高校生活を忘れられない記憶として、けいおん部のことを心に刻んだのは間違いなくて、その記憶は、彼女の人生にかけがえの無いものを残したと思います。まぁいってみれば、物語のテーマとして、ここを、この作品の論点としてあげることは、あまり意味がないってことです。


だから、この視点を見る時に、前回のルイさんとのラジオでも話したのですが、どういう風に評価できるかを一歩ロジックを進めてみたいと思います。


放課後ウインド・オーケストラ』 宇佐 悠一郎著 何かにコミットするときとは?
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20081109/p1


・・・と思ったけど、疲れたのでまた今度、、、。