『ココロコネクト プレシャスタイム』 庵田定夏著  本当に好きでした。作者に感謝を!

ココロコネクト プレシャスタイム (ファミ通文庫)
 

楽しかった。


本当に楽しかった。


作者にありがとうです。


本当に好きでした。



・・・・それにしても、ラストのこの小説も、本当に上手くなったなー。1巻の最初は、とてもいいけど、うまく感情移入させるには、文章的になんとなくあれっと引っかかる感じがしてた気がするんだけど、まったく、いっさい、まったくそういうのこの最後の単行本にはなかった。ひたすら、過ぎゆく青春の時の哀切で、おわってしまうのかぁ、、、と、読めてうれしいのだけど、寂しい気持ちを抱えながら、なめるように読んでいました。



うん、この小説は、本当によかった。本当に好きでした。



批評的?にいえば、なんというか、最後の話って、物語としてなんか特異なことがあるわけでもないし、まぁラストエピソード(アスランダムネ)のあとの短編集的というか、関係者のその後的なものなんで、これをどうのこうのっていうもんじゃないと思うんだよね・・・ようは、この作品が、このキャラクターたちが好きかどうか?ってことに尽きると思う。


僕は、とってもとっても好きだったので、すごく凄く堪能しました。


・・・・すごくすごくよかったって、、、形容詞の過剰な繰り返しって、中身がない文章の典型だなぁ、、、(苦笑)。でもなんというのかなぁ、、、物語に出会うって、そういうことじゃない?って思う。別に批評して、新規性や構造の凄さを競い合っているそれで価値を決めているわけじゃなくて、、、、そういう価値基準の部分もあるんだろうけれども、


そうでなくて、その物語が好きかどうか?没入できたかどうか?キャラクターたちの人生が、胸に迫るほどに感情移入できたかどうか?


そういうことが、良い物語との出会いだろうと思う。そういう意味で、久々に、もう舐めるようにゆっくり読んで、文章が終わるのが切なくて切なくて、たまらない感じでした。



・・・・・こう書いていると、、、おれ、この小説シリーズ好きだったんだなぁ、、、となんか感心します(笑)。この小説は、僕の物語三昧の考える材料してもとっても良かったし、うーん、なんというか、とても時代性にあっていたような気がします。時代性というのは、


友達との絆の構築


とか「新入生よ、大志を抱け」で描かれている、一歩踏み出して当事者になるための「あっち側」と「こっち側」のラインの踏み越えの問題(=これはつまりは内発性と主体の問題だよね、最近の僕の言葉で言うとリーダーシップ)。



という2点。


ライトノベルをめぐるテーマは、このあたりを追及していると思う。それは、ラブコメが多様化して、ハーレムメイカー化して、その流れで友達との絆って流れになっていくことと、


その基調低音として、内発性が生まれないこと、、、ぼっちであることとか、1億分の1であるどうでもいい「個」であることの恐怖、実存の喪失、日常の退屈、高度成長の喪失による社会的に共有できる目標の喪失のような、ライノトベルの読者層である中高生の青春の不安をとっても良く表現していたと思う。


そして、ようは、青春モノの物語なんだよねっ、と括ってしまえば、それはすなわち、とても普遍的な物語だったということだろうと思う。ラブコメの解体からの変遷で僕らは見ているけれども、僕とかLDさんは、すでに40台の年齢の大人であって2-3週目の過去に経験した出来事だけれども、、たぶんこれを見ている若い世代にとっては、これは、初めての出来事、初めての物語なんだろうね。そう考えると、一周まわって、とても普遍的な青春のものなんだ、とふと思いました。ガジェッド、テーマの展開、背景などはとても同時代的で成熟しているけれども、問われているテーマ自体は、とっても普遍的。


普遍的な、どこにでもある物語を描くときには、重要なことが一つあります。


それは、そこにいるキャラクターたちが、本当に「生きているかどうか」ということ。


精確に言えば、作者や読者にとって、他者として存在しているかどうか?だろうと思います。僕は文学ではなくて、物語を愛する人なので、物語は世界の再現だと思っているので、そこに真の意味で他者が存在していると思えなければ、それって無意味じゃんと思います。まぁそんなおうぎょうな言い方せんでも、ようは、まるで、自分の友人や家族のような近しい人のような実在感があるかどうか、ということ。僕にとっては、ここに出ている登場人物は、とっても・・・なんというか、なんかどこかにいるだろう?というような感じがする、自分はこんなすごいドラマチックな高校時代は送りませんでしたが、なんか、自分の青春のノスタルジーを感じるような、そういう感じでした。ここまで、ぐっと感情移入するのは、そうはありません。好きだったんだなぁ、、、。



まぁ、ということで、僕はとっても、、、、、実は、藤島麻衣子さんの大ファンでした。



実は、自分でも、彼女が幸せになりそうなったら、驚くほど、なんかめちゃめちゃうれしくてウキウキしてしまって、、、あれ、、、おれ、藤島さんのこと、こんなに好きなんだ!と感心してしまいました(笑)。なんか、うーん、、、なんか、僕の理想の人なんだよね。この超大胆で強いのに、弱くてみじめで、図太く悪辣なのに繊細でかわいいところとか。あの、物凄い大物感と小物臭の同居するところとか(笑)。そんでもって、身の丈に少しあっていないけれども、マクロのことがよく分かっている戦略眼に行動力。・・・・全然違うけれども、Fateの遠坂凛が僕ってばめちゃめちゃ好きなんですが、同じような感じの、、なんというか、すげぇ共感するというか、生きるならこうでなきゃ、、、、見たいな、、、、。


彼女の未来が、凄い凄い楽しみです。


いやーほんとうに楽しかった。読んでいて幸せでした。


■参考記事

ココロコネクト』 庵田定夏著  日本的ボトムアップの世界でのリーダーというのは、空気の圧力を結集する特異点
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20130930/p1

ココロコネクト』 庵田定夏著 自意識の病の系列の物語の変奏曲〜ここからどこまで展開できるか?
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20121003/p1

ココロコネクト ミチランダム』 庵田定夏著 伊織の心の闇を癒すには?〜肉体を通しての自己の解放への処方箋を (2)
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20121126/p1


『コロコネクト ユメランダム』 庵田定夏著 あなたには思想がない〜Fate/staynightの衛宮士郎のキャラクター類型と同型(3)
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20121030/p2


やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』 渡航著 (2) 青い鳥症候群の結論の回避は可能か? 理論上もっとも、救いがなかった層を救う物語はありうるのか?それは必要なのか?本当にいるのか?
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20130603/p2

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』  渡航著 (1)スクールカーストの下層で生きることは永遠に閉じ込められる恐怖感〜学校空間は、9年×10倍の時間を生きる
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20130406/p2

ヒミズ』 (2012年 日本) 園子温監督 (1) 坂の上の雲として目指した、その雲の先にいる我々は何を目指すのか?
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20130419/p1

ロマンチックラブイデオロギー解体の視点で恋愛を描いた物語を眺めてみる(1) あなたにキラキラはありますか?
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20130405/p1

第12話 「僕は友達が…」  そうか、恋人じゃなくて、友達が欲しかったんだ!これはびっくり目からうろこが落ちた。
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20130329/p1

マリア様がみてる ハローグッバイ』 今野 緒雪著 ついに祐巳・祥子編の終わり、大好きだが一点不満があります!
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20090110/p1

モテキ』 久保ミツロウ著 本質のコミュニケーションか・・・
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20110611/p6