『47 Ronin』 監督Carl Erik Rinsch 2013年 米国 ファンタジーにしきれなかったところが、だめな点かも

47RONIN(キアヌ・リーブス、真田広之、柴咲コウ、浅野忠信 出演) [DVD]

客観:★★☆星2つ半
(僕的主観:★★★星3つ)

これは、売れないだろうな、という感じだった(苦笑)。何がダメかって言うと、2点。

1つ目は、ファンタジーにしきれなかったこと。最初と最後のドラゴンとのバトルは、なかなか洋風のファンタジーファンタジーしていて、よかった、ドラゴンのデザインが、東洋的でなくて、いかにも邪悪そうなトカゲっぽいのがいいんだろうと思う。けれども、オリエンタリズム的な、外部から見た日本・・・ジャポネスク様式っぽい何か、というのは、それはそれでエキゾチズム(異国趣味)で僕は悪くないとは思うけれども、これが、洋風の今やっているホビットとか、ロードオブザリング系の洋風のインフラと背景設定を持った西洋ファンタジーなのか、それとも、東洋風なのかが、凄くぶれてしまった気がする。日本とか中国とか、たぶんオリエントをオクシデントから見るようなオリエンタリズム様式、もしくは、アメリカのような移民が疑似的に故郷の世界を今あるもので再現してしまう「似て非なるもの」だとこういう感じの雰囲気になるんだけれども、いまいちだったなぁ。ヘンにファンタジー分が入るから、おかしくなっているのかなぁ?。僕はこの、アメリカ的というか、ごった煮感覚の「似て非なるもの」から新しい何かが見えるって言う、クレオール的な感じは嫌いじゃないんです。本国からはバカみたいに見えるけれども、これは、異なる文明というか文化なんで、似ているけど違うものなんですよ、そう見ないといけない。決してバカにしているわけじゃないんです(ものによりますが)。


ちなみに、このオリエンタリズム様式とアメリカから見た日本の文化みたいな「そのものではない」感じの映画で成功していると思うのは、ロブマーシャル監督の『SAYURI』とエドワード・ズイック監督の『ラストサムライ』だと僕は思う。ちなみに、この2作品も、えっと、それは日本じゃないよ的な、本場の人からすると突っ込みたくなるシーンの連続なのですが、どちらも、渡辺謙チャン・ツィイーと同じく渡辺謙トムクルーズという超大御所級というか、スターとして注目を集める人がいて、その人にシナリオの中心が集中しているので、脚本として、シンプルでわかりやすい、、、わからないと、この手の背景が消えてしまっている映画は、本当に意味不明になりやすい。だから成功していた気がする。

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というのは、この作品の忠臣蔵というシナリオのポイントは、武士道と徳川政権下の特殊な倫理背景を理解しないと、何をやっているのか意味不明なんだろうと思うんですよ。それを脚本で表現するのは事実不可能だろうと思うし、かといって、観客はアメリカ人なわけだからまったく意味不明だろうと思うんですよね(見ていて周りの反応は????って感じだった、やっぱり。みんな隣の人に、あれはどういう意味?とか話している感じだった(苦笑))なので、主人公の動機にそのあたりの意味を練りこんであげないと、、、???ってなる。『SAYURI』の芸者の上昇志向は、ツィィーのキャラにすごくあっていたと思う。トムクルーズの異民族を殺した悔恨というのは、アメリカ人には非常に理解できる設定だったと思う。けど、今回のキアヌ・リーブスって、、、、何のためにいたかちょっと意味不明だった。この作品の主人公は、確実に真田広之になってしまって、それに匹敵する存在感はキアヌには、全くなかった。これは彼の俳優の力というより、脚本がすごく甘かったんだろうと思う。あとは、、、なんだろうなぁ、渡辺謙が俳優としてすごいのかもしれないなぁ、、、。あの人がいると、なんか、日本的な何かが背後に透けて見える感じがするんだよね、、、。真田広之は、素晴らしい俳優なんだけど、そういう存在感はない。何の差なんだろう…。


先ほど書いたように、日本の倫理背景を抜きにすれば忠臣蔵は、復讐劇にしかなりません。なら、シンプルでわかりやすい復讐劇にすべきだった。けれども、復讐劇ってもっと、たぶん、能天気にやられたからやり返すぜって風に映画的には作るべきなんだろうと思うんですよね。描き切れていないのに、忠臣蔵の持つぐっとこらえてみたいな感じを映像だけで作ろうとするので、なんだか、???というか、陰気くさくなってしまっている。超デブのキャラクターの脇役が、たぶんか怪力食いしん坊キャラだと思うんですが、中世ファンタジーの盗賊とかの仲間によく出てきそうな感じで、これは凄くキャラが立っていた、、それは、これがテンプレートでわかりやすいキャラクターだからなんだろうと思う。もっとテンプレートにすべきだっただと思う。


でなければ、Keanu Reevesの動機の部分をもう少し設計すべきであった気がする。彼が、怪物?とのハーフブラッドなのはまだわかるんだけれども、ミカ(赤穂のお城のお姫様)を好きになる理由も、復讐に参加しようとする理由も、微妙なんだよね。もちろん、愛するミカ(柴咲コウ)を救い出したいって動機はシンプルなんだけど、、、ならば、もう少しかこの二人のシーンをうまく作って、フラッシュバックさせるとか、ミカの存在が重いことを描くべきだったと思うんだが、、、しかし、赤穂浪士の物語に、ラブシーンというか恋愛の話が入ると不純になるんだよね。それで、描きがわからなくなったんだろうと思う。


映像も、、、、これどこでとったんだろう、、、またお約束のニュージーランドかな?。なんだろうなぁ、、、『ラストサムライ』は、おいおいそれは日本じゃないだろうといいつつも、確かに明治期の日本の「何か」があったんだが、、、これにはいまいちなかったなー。パイレーツオブカリビアンか、ディズニーの海賊のライドって感じで、やはり中途半端だったのかなぁ。

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