『うた恋』 カサヰケンイチ監督 恋って、愛って、いいですね。

超訳百人一首 うた恋い。 四(完全生産限定版) [DVD]

評価:★★★★★星5つ
(僕的主観:★★★★★5つ)

よかった。素晴らしかった。久々にストレートな恋を描いたものを見た気がする。というのは、ライトノベルやアニメーションって、中学や高校生が、、、も少し引き延ばしても大学生ぐらいがターゲットのエンターテイメントだとして、恋愛の描き方が、とても初歩的なんだよね。初歩的という言葉がいいのかわからないが、なんだか初々しいというか中二病的というか、、、、それはもちろん、とてもピュアだし、幼い欲望でキラキラしてて、とても好きなんだけれども、実際、愛する人がいて、濃い恋愛を経験したおっさんとしては、もう少し濃いというかディープなやつが見たいんだよって思うんだよね。けど、文学作品とか、もう少し大人向けの小説なりになると、今度は、すぐにドロドロ深くなっています。意外に、幼い恋とか未満からドロドロのディープな愛憎劇の間の、ちょうど真ん中のところって、エンターテイメントではあまりないような気がするんだよね。


たぶん、需要がないじゃないかなぁ、と思う。


というのは、この辺の恋愛って、、、何で一番経験するかって言うと、実体験で経験するところなんだよね。若いころは、まだ彼女がいなくて、もしくは彼氏がいなくて悶々と妄想するので、エンターテイメントに需要があるのはわかる。あとは、年齢を経てくると、いろいろあきらめてきたり、夫婦仲が平坦で飽きてきたり、とか、またもっと非日常を求めるってのもよくわかる。


けど、実体験で経験して現在進行中の恋愛を生きている人は、、、年齢的にも、それなりに大人の恋愛になると、大学生以上で結婚とかが射程距離に入っている時には、「阻むむのがない」状態なので、とても短い期間で、大人の階段というか、恋愛のステップをどんどん進めて行ってしまう。この「恋愛という物語」のリアルタイム性は、10代後半から20代後半ぐらいまでかなー。このあたりって、まだまだ恋愛経験が浅いし、繰り返しになっていないので飽きも来ていない、性的なもの、肉体的なものの経験も浅いので、、、SEXとか、そこまでいかなくとも手とか握ったり、ちょっと激しいキスとかしただけでも、おうっ!この世界にこんなものがっ!こんな感触がっ!!って(笑)って、物凄いサルのようにはまってしまいやすいんだよね。仮に異性慣れしていても、いざ、本当に恋に落ちたり、相手のことがめっちゃ好きになったりすると、えっ、、、これって、こんな風に感じるのか???と、あまりの差に驚いたりもするので、まぁ、やっぱりこのへんは、インプロヴィゼェーションのセンスオブワンダーが詰まっている時期なんだよね。なので、「恋愛という物語」のリアルタイムライブ性が強すぎて、このあたりにマーケットとしての需要は少ない気がするんだよね。妄想が要求されないってこと。この時期のヴォリュームゾーンは、かなりのレベルこれを体験しちゃうので、わざわざ物語栄養分を補給する必要がないのかもしれない(苦笑)。文学とかライトノベルって、シュチュエーションじゃないですか?。文学はドロドロの不倫とか、ライトノベル空から女の子が降ってきたり、女の子が宇宙人だったり、、、、けれども、たぶんこのあたりの恋って、感触と感情なんですよね。


あれ、話がそれた。『うた恋』って、なんか、ライトノベルや文学のどっちにも拠らない感じのまんなか当たりの感触で、、、僕は、とても自分が、妻と恋愛していた時のことを強く思い出しました。ああ、年齢層高いなーって。誰がこれを見るんだろう?って。基本的に悲恋ばかりだし、大人な駆け引きや問題意識が強くて、中学生や大学生ぐらいだと、わかんねーだろこれ、って感じがする。小野小町のストーリーとか清少納言の話とか、自分の好きな子が才能があって仕事で自分よりも優秀だった時に、、、けど、籠の鳥として自分で飼っておきたいし、しかも彼女自身もそれを望んでいるとか、、、凄い難しいシチュエーションで、、、これって共働きの家庭には、ものすごくよく起きるパターンなので、あー重い話だなーけど、、、そこに愛があるからこそ、悩むんだよなー、、、愛だけではなく、男のほうにとても見る目があるからこそ起きる話で、、、ぐっと来ましたねぇ。男が、身を引いて、元奥さんが宮中で高い評価を受けるくだりは、、、そこに本当の愛があったからこそ、彼女の真の幸せを願ったからこそ、一緒にいられなかった、、、なんていうのは、ほんとうにぐっときます。これ、奥さんが働いている人は、わかる悩みですよね。女性も、、、、何というのだろう特に難しく考えたり強烈な動機がなければ、パンピーだったら、好きな男性に仕えて優しくしたいって気持ちと、世界から評価されて自立していきたいって言うのと、どっちもあるもんだと思うんですよ。男性だって、同じ。みんな、いろいろな思いが、これって決められるものでもなくあって、生きているもんですよね。


感覚なので本当かはわからないが、時代考証や人間関係が、凄くしっかりしている気がする。こういう「人間関係性」やキャラクターを理解して、見るとこの平安期の古き日本の美しい文化が見えやすくなります。いやーーーほんと、日本って素晴らしい国だよなって思います。なんか、こういうのが熱く積み重なった果ての文化だもんね。こういうことがわかれば、古典も凄く面白くなると思う。アニメも素晴らしかったけれども、ぜひとも漫画も見てみたいなぁ、、、この作者大したもんだと思う。ここまで、「この世界」の中のキャラクターや関係性をリアルに感じられるようにあぶりだせるのって、素晴らしいと思う。



堪能しました。



恋って、愛って、いいですね。


超訳百人一首 うた恋い。 三(完全生産限定版) [DVD]