やっと昭和史の全体像がつかめてきました

半藤一利 完全版 昭和史 第一集 CD6枚組

最近やっと半藤一利さんの昭和史の講演録(戦前編1926-1945)の後半のCDを手に入れることができたので、毎日の通勤でコツコツ聞いて、先日とりあえず一気通貫異すべてを視聴できた。1945年の最後の話が終わった後に、昭和天皇による玉音放送を聞いたときは、物凄い大きな感慨があった。何度も聞いたことはあったが、やっと全体像が理解できて、集中して講義を聞いた、そのあとであったが故に、だと思う。巨大な歴史の物語を聞いた感じだった。いや、本当に音声データがあるのはうれしい。本を読むよりも、もっと頭に刷り込まれる。特に後半が手に入らなかったので、前半部分の226までの回を、何回も擦り切れるほど聞き返したので、それで頭に色入りマップができてきたのも、最近の理解の進み具合に関係しているような気がする。勉強するときには、インプットとアウトプットの繰り返しが重要で最近通勤時の空き時間を利用して友人とほぼ毎日話すんですが、それでいろいろなアウトプットが進んでいるというのもあるんだろうと思う。あと、インプットも、本を読むだけではなくて、繰り返し音声で聞いて覚えるのも効果的だなーと思います。・・・・僕は日本史専攻ではなかったですが、当時の受験にこれがあったら、物凄い意味があっただろうなーとしみじみ思います。歴史は流れなんで、重要な年号や出来事、人物を暗記して、「それぞれのつながり」の関係性をある程度網羅した、「流れ」が理解できていないと、まったく手におえないんですよね。統制派の永田鉄山皇道派の小畑敏四郎など、そもそも整理ができていなくていつも???って思いながら流して読んでいたが、ばっちり理解できてきた。そのおかげで、いまいちピンと来ていなかった片山杜秀教授の『未完のファシズム』の意味が、ぐっと理解できるようになってきた。

片山さんの『未完のファシズム』の話がYoutubeであるのを見つけて聞いていたら、これは池田信夫さんの昭和史について講演?というか勉強会?の一部というかそういうもののようですね。いいなー日本にいれば、絶対行ったのに、、、。有料でいいので、ネットで見れるようにできないのかなぁ、、、。まずは「流れ」を押さえるには、こういう全体像をわかっている人のたこつぼにならない話を、音声で聞けるとすごい手掛かりになるんだよね。特に、いくつかネットに上がっているyoutubeを見たんだけど、目から鱗の視点が多かった。


池田さんの最近の昭和史の記事は、面白いのが多いですね。特に、おもしろかったのは、これ「日米戦争は、アメリカにとっても全く得るところのなかったものだった」という視点。こと冷戦と対ソ連コミュニズムという観点からすると、東アジアにおけるルーズベルトの世界戦略デザインは、結果としては収支でマイナスであろうという話。


物事は、自分がほんとうに理解できて、事実を押さえて、自分の意見を持つまでは、がんがん受け入れても、盲目的に信じてはいけないので、これがほんとうかどうかはさておき、、、これは重要なポイントだよなと思うのです。というのは、僕自身も日本の教育を受けているので、日本は1945年ですべてががらガラポンとまっさらになっているので、ここで一つの大きな物語が終わっている、と感じちゃうんですが、、、、たとえば、アメリカから見ると、そんなことは全くないんですね。「連続している」感覚があるわけです。そうすると、日本を非武装にして、農耕国家にでもするかという感じでやっていた占領政策が、あれよあれよというまに、日米同盟に変わっていく様は、そもそも、東アジアにおける戦略としては、日本と同盟を結ぶ方がアメリカにとって非常に効率がいいんですよね。というか、双方にメリットがあるからこそこんなに深い同盟が長く続く。世界戦略上非常にいいわけです。半世紀を超える、本気の同盟ですよ。そうであれば、そもそも戦争しなかった方が、アメリカにとって、もっと効率よかったのでは?というのは、よく考えれば、そりゃーそうだ、と思うんですよ。アメリカが、大西洋(イギリス)と比較して、太平洋にそれほど大きな既得権益やりがいがあったか?といえばほとんどないんですもん。そういう意味で、ルーズベルトのWW2のグランドデザインと、特に東アジアの戦略は、かなりアメリカの国益アメリカを中心とする未来の歴史に対してマイナスだったというのは、僕も、なんとなくそういう風に考えていたので、エウレカ!!!と思いました。だって、地政学上というか、日米同盟が、戦後こんなに機能しているということは、相性がいいわけでしょう?。日本は歴史的にアングロサクソンと相性がいいといえると思いますが、ようは海洋国家で、海軍で世界をバランスさせる国家との相性がいいというわけで、アメリカにとってはイギリスと日本は、常に相性のいい同盟の相手なんですよ。ライバル国家だったので、なかなか難しかったかもしれませんが、大日本帝国海軍にアジア圏のシーレーンの安全保障をさせて、がっつり同盟を結べれば、それでアメリカとしては、十分だった気がします。日本は、本質的にヨーロッパ文明、資本主義の列強国と同じ価値観を持つ近代国家ですので、共産主義やアジアの封建主義に比べて、明らかに同盟しやすいというか、できる唯一の相手だったはず。そうすれば、世界の赤化に対して、もっと楽に対処できた気がしますし、こんなに世界が混乱しなかったかもしれません。日本側も、アメリカに勝てないのはわかっているんだから、そこは謙虚になって、対ソ連、、、というよりは伝統的に対ロシアなんですよね。そう考えて、アメリカと権益を分け合うべきだったんですよ。別に対してアメリカは、東アジアに権益ないんだから。

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それと全面戦争するのは、結局は、東アジアにおけるソ連コミュニズムの影響力と支配を広げただけの結果になりました。国際経済上ほとんど影響力のないソ連が、冷戦という形で世界のヘゲモニーを握ったのも、原爆、核ミサイルの技術流出が故ですもんね。


それで、アメリカは、事実上、もっとも欲していた中国大陸における市場の参入を奪われたわけです。それだけではなく、蒋介石政権(超ウルトラ親米政権ですよね)がちゃんと中国を支配していれば、もっと早めに中国が資本主義でテイクオフしていたと思うんですよ。しかも、めちゃくちゃ親米の国家として。・・・・まぁ、ちなみに、なので、日本の最大のアホ決定は、中国に侵略したことだと僕は思いますねー。満州国までは、かなり国際社会的にグレーとはいえ認められているし、それ以前は、そもそも国際法上合法だし。アメリカも上海事変のころから物凄い硬化していますからね。中国は確実に、統合に向かって国としての力を上げつつある時に、それを無視して統治能力がない政権みたいな扱いをしたのが日本の戦略眼のなさだったと思います。中国へのなんというか、傲慢さは、結局国を亡ぼしていますね。アメリカにしても、中国の市場かが物凄い遅れて、参入も難しくなって、本当にアホな決定だったと思います。僕は、東アジアにおける戦略は、大日本帝国だけが馬鹿だったのか、と思っていたのですが、なるほど、アメリカもそれに輪をかけて馬鹿でまったく先が見えていなかったのか、、、と最近感心しています。


まぁ、歴史にIFはありませんが、「この視点」は、物凄い興味深いです。なんというか、歴史的にありえたかもしれない、そしてその潜在的構造はまだ残っているものですから。


ルーズベルトの開戦責任: 大統領が最も恐れた男の証言

ちなみに、よく日本のWW2の戦争を自衛戦争だといって、アメリカにしてやられたという議論がありますが、、、、この本なんかもそういう文脈でよく読まれていますよね、、アメリカのルーズベルトによる陰謀論。僕、この意見、さっぱり理解できません。アメリカにしてみれば、自国の国益のために何でもやるのは当たり前で、何が悪かったか?と問うならば、それを見抜けなかった日本が悪いのであって、なにが言いたいのかさっぱりわかりません。日本だって、いろいろ策略に謀略しているわけで、なので、日本が悪くなかったとかそういう議論に全くつながるようには思えません。というか、そんなことも見抜けなかった日本のダメさ加減を、さらに宣伝するようなもので、、、、うーん、本質的に何が言いたいのだろうか?って、、、わけわかないんですよ。


日本の自衛戦争で日本は悪くなかった!とか言いたいのでしょうけれども、それが通用したのは、日露戦争ぐらいまでで、そこまでは日本が安全保障中心の自衛戦争の物語を徳川幕府中期からずっと生きていることは『風雲児たち』を読むとよくわかります、、、、、よくわかりますが、、、

風雲児たち 幕末編 23巻


日露戦争以後は、もう国構造が変わっていると思うんですよ。日本は、もうすでにこの時点で『持てる国』になっていると思うんですよ。その自覚が、なかったというのが最悪でしたね。なのに、いつまでも被害者ぶっている。下記の本を読んで、ずっと最近考えているのは、もう当時の大日本帝国は、「持てる国」であったし、世界大恐慌をいち早く抜け出ているのも日本なんですよね。なのに国内の問題点を、自分たちが世界からいじめられているとか勘違いしたのか?それが、ダメだったと思うんですよね。なんでも、わがままがきくわけではなく、そりゃーアメリカのような恵まれ過ぎた国に比べれば、日本がひどく思えるのはわかりますが、、、スイス人の友人が、「日本は勘違いしているよ、君らは資源がないからとても弱い国なんだとかいうけど、スイスなんか山しかないぜ!あってもチョコレートぐらい(巨大なチョコレート市場がスイスにはある)だぜ」といっていたのを、覚えています。そうなんですよねー日本は、すぐアメリカと比較したがるんですが、、、、それは、、、ちょっとうぬぼれすぎです(苦笑)。


持たざる国への道 - あの戦争と大日本帝国の破綻 (中公文庫) 高橋是清暗殺後の日本―「持たざる国」への道



未完のファシズム―「持たざる国」日本の運命―(新潮選書)