福沢諭吉の脱亜論とアングロサクソンとの同盟の歴史をどう考えるか?

つまり中国が全域を統合する大統一国家だとすれば、ヨーロッパは主権国家を単位とする中統一国家の連合であり、日本は地域ごとの小統一国家の連合である。大統一国家は政治権力のスパンが大きすぎるため、トップダウン専制国家になるしかない。中統一国家トップダウン君主制ボトムアップの民主制の組み合わせだ。小統一国家の日本はボトムアップしかなく、君主としての天皇は空席である。



こう単純化すると、中国・韓国と日本は対極にあることがわかる。13億人以上の膨大な人口を一つの「華夷秩序」で統一するには、民主政治などというコストの高い制度はとりえない。韓国のような周辺国家は、いずれ中国に飲み込まれるだろう。日本はヨーロッパ型に近いので、その一員になることが賢明な選択だろう。


織田信長は「全国統一」をめざしたのか
http://agora-web.jp/archives/1616105.html


この辺りはものすごく面白い問題だ。池田信夫さんは、なんというかブログをずっと読んでいると、テーマがしっかりしていて、そこについてじわじわと論を進めて行くし、歴史をさかのぼって、ゼミみたいな塾を昭和史に関してやっていたみたいなので、日本にいたら、参加してみたかったなー。日本が世界史にかかわる時には、アングロサクソンとの関係をどう考えるか?、と中国との関係をどう考えるか?に行きつく気がするんだよね。ようはね、福沢諭吉の脱亜論のテーマと同じなんだ。そしてそれが、たぶんあからさまになったのは、南欧グローバリゼーション、、大航海時代と同時期に当たる日清韓の関係史を読み解くとここらから如実に出てくるみたいなんだよね。


僕は物語的に東アジアは、この時代(16世紀ごろ)が一番ダイナミックで面白いと思っていたんだけれども、中、韓、日の東アジアの大国が秩序がめちゃくちゃになってそれを再形成し直す時期なので、この地域のバランスが崩れると何が問題になるか?があからさまに浮き出ている気がするんだ。何が問題か?って最近僕はわかってきたのだけれども、まぁ、学問的には当たり前のことなんだけど、やっと腑に落ちてきたというか、、、これは、(1)ヨーロッパ型の個々の国を独立国と見做して主権国家同士の対等な秩序によって国際関係を形成する秩序の在り方(現在のヨーロッパ、アメリカ型国際秩序ね)と、中華的な東アジアの伝統的な宗藩関係というか朝貢冊封的な国際秩序との矛盾なんだよね。どっちを選ぶか?という話。日本は、ほぼ完全に明治維新によってヨーロッパ型を選び、朝鮮半島華夷秩序を選んでいる。しかしながら、東アジアにおいて、中国の国力はそれが歴史的な平均値に復帰しただけで、近隣諸国との相対的な規模の差は圧倒的になるので、たぶん地政の構造的に、朝貢・事大的な国際秩序は、成り立ってしまうものなのかもしれない、と最近の中国と韓国を見ていると思う。なので、単純にヨーロッパ型が正しいとはいえるものではないし、主権を絶対化して法治をすることを基本とするヨーロッパ型の国家観と、東アジアの自然な秩序の形成の在り方(=要は国家の出来方ね)はかなり根本的に違う。どっちに親和性があるか?という話になる。福沢諭吉は、日本は、どうも中国型の秩序形成に合わないらしいと喝破したわけだ。もう一つは、(2)アングロサクソンの戦略の教科書的に言えば、ランドパワーとシーパワーのぶつかり合いのところになるのだけれども、日本は、島国で辺境という地理的条件から、ほぼ自然とシーパワー的な「海から」の安全保障や思考をするし、中国やロシアはまさに大陸的なランドパワーの戦略思考をする。その場合ペニシュラ的な位置づけである朝鮮半島は、非常に運営を苦しむことになる。


この歴史的な、地理的な構造が、この地域の歴史の中には深く深くビルトインされている。そして、そんことを考えるときにまず最初に歴史的にクローズアップされるのは、16世紀のこの時代なんだよね。世界的な大航海時代の中で、銀が重要な位置づけになり、貴金属が産出される日本列島の位置づけが激しく勃興し、それとの交易が、朝鮮半島、旧満州、中国本土の交易の増大で経済がダイナミックに活性化していることに対して、明朝が激しくそれを抑制したことから北虜南倭、倭寇、、、日本に限らず、中国から日本列島周辺の海域に、民族を超えた武装海洋商業共同体集団が現れて、秩序が塗り替わっていくことにあるんだよね。この辺りは、勉強するに足る場所だし(現在の問題が最初に現れ始めた時代でもある)、なによりも、この辺の理解が進めば、物語がめちゃくちゃ面白くなる。コツコツ勉強しています。

世界のなかの日清韓関係史-交隣と属国、自主と独立 (講談社選書メチエ)


南欧グローバリゼーションを僕が意識し始めたのは、下記の二冊の本が最初かなぁ。


信長と十字架―「天下布武」の真実を追う (集英社新書)

クアトロ・ラガッツィ―天正少年使節と世界帝国