転生とは自己救済のテーマの環境初期値を変える物語手法

ボクラノキセキ 11巻 (IDコミックス ZERO-SUMコミックス)


この2つのメモの続き。
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20141220/p2


この2点は、物凄い今までの疑問をたくさん解消してくれるようで、僕は、この『ボクラノキセキ』が物凄い好きで好きでたまらないんですが、凄い傑作だとは思うんですが、いったい「どこ」がそうなのか?という言葉が自分では全然持てなくて、ブログの記事でも、「なにかいいですよ」とか「個人的になんか好きなんですよ」みたいな、奥歯に物が挟まった言い方をしていました。


けど、やっと、、、10年以上たって、なんでこの系統が僕は好きなのかが、よくわかりました。それは、1)の内発性の無い人間は、アダルトチルドレンはどうやったら救われるのか?という問い(=自己救済のなされ方は?)に関連することだったのです。僕は前回の12月のラジオで答えを言っています(ちょこったとだけ)。なので、その展開を、まだメモレベルですが、ちょっとつらつらと考えてみます。


上記で僕は「次世代を育てること」でしか自己は救済されない、と。Fate/Zeroのキリツグを見るまでもなく、これは子供を生まなきゃいけないとかそういう動物的な話ではなくて養子でも何でもいいんですが、自分自身の



(A)子供時代の追体験=もう一度人生をやり直す=自分のトラウマは消すことはできない



(B)次世代にマクロ的構造を変える契機と種を残す(=自分のような人間を量産するシステムを変える可能性を育成する)=救済には最低でも30年単位レベルの時間が必要ということ


ということでしか自己の救済はありえないと、と断言しています。救済というテーマにおいて、これは、僕の中で物凄い大発見でした。これも詰めなければいけないものだとは思いますが、長い思考の履歴の果てのものなので、表現や文脈はまだまだ未整備ですが、かなりいい点をつているのではないかとおもっています。


Fate/Zero全6巻セット BOX付 (星海社文庫)


僕は、過去の言動で、大人になるということ、成熟するということは、続いてしまう親から子への伝わってしまう「負の連鎖」を自分の代で断ち切ることだ、といつもいってきましたし、これは僕の倫理の大きなポイントでもあります。なので、僕は体育会系だったにもかかわらず、伝統的なしごきとか、先輩からやられたんだから、ストレス解消で(=自分が生き延びるために)後輩に同じことを繰り返すということが、大嫌いだったんですが、それがなぜか?ということが、よくわかりました。それは、「負の連鎖を断ち切る」ことが、自己救済の第一条件だということに気づいたからです。韓国映画の『息もできない』で、こういった暴力の連鎖は、止まることなく続いていっているのだ、というようなことを書きましたが、この「連鎖」を断ち切る(=自分が救われることはないという覚悟を持つ)というのが、真の大人になることだ、という思い込みが僕にはあったのでしょう。



ここにおいて、物語評価的な文脈では、「自己救済というものは、次世代によってなされるものである」という定義というか発見が、、、、なるほど、輪廻転生で異なる外部環境(=設定の初期値が違う)を挿入した時に、その人の持っているトラウマなり問題の構造が、どういう解決になるか?という思考実験がなされ、かつ、30年以上次世代でないと救えないというのは、「そのような自己」が形成された外部環境の構造が、時間の経過によって根本から変わっていなければ、同じ結果になってしまうという縛りがあるからこその、一世代なんだ、ということがわかりました。


このことは、ずっとこのブログで話している、LDさんが、ガンダム00のスメラギさんらソレスタルビーイングのテロ行為を指して、自分が生きているうちに世界が救われないと駄々をこねるわがままな子供だ、指摘したことに僕が凄まじい共感をしたことがベースになっています。あの時の話は、マクロ的には世界は正しい形に向かっているのだけれども、それを破壊するような行為は許されるのか?という話でした。もちろん、地球連邦政府の形成に向かいつつある歴史的趨勢の中で、それに打ち捨てられた少数者が絶望的な状況に置かれているという事実は、テロを誘発して、世界へのルサンチマンのために世界の破壊を志す人間はある一定数確実に形成されるという問題点をどう捉えるか?という政治問題は残ります。とはいえ、歴史のマクロの大きな流れは、大多数を救済する方向へステージを進めて行くことになるでしょう。無視できない重要問題とはいえ、袋小路ではなく、緩やかに安定する方向へ動いていくわけです。そこでの問題の解決は、いま、すぐ、ここ、で解決されるものではありえないんですよ。残念ながら、少なくとも、30年以上世代を超えて変化させて変えていくものなんです。それ以上のことは、個人レベルやミクロレベルではできないんですよ。それを性急にやろうとすると、ほとんどすべては「善意による意図せざる最悪の結果」になるんでしょう。



さて、「自己救済というものは、次世代によってなされるものである」、、、この言い方だと、じゃあ、子供を育てないとだめなのか、もしくは次世代を育成するシステムづくりに参加しないとだめなんだな、と端的には考えてしまいがちです。ちなみに、『ココロコネクト』の長瀬伊織の話で、もう一つの自己救済の方法を肉体からアプローチをする話をしていますが、それは、長くなるので、ここでは省きます。けれども、これしかないように見えて、この中身を抽象的に考えると、実は違うアプローチもあることがわかります。

ココロコネクト』 庵田定夏著 自意識の病の系列の物語の変奏曲〜ここからどこまで展開できるか?
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20121003/p1

ココロコネクト ミチランダム』 庵田定夏著 伊織の心の闇を癒すには?〜肉体を通しての自己の解放への処方箋を (2)
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20121126/p1

ココロコネクト ヒトランダム (ファミ通文庫)

次世代でしか救えないのはなぜか?と問うと、、それは、30年ぐらいたつと、今の環境と全く異なる環境変数にステージというか構造が変わっているので、同じ自己救済のテーマにおいても変数が変わるので、異なる結末になる可能性が高くなるからなんですよね。これはいいかえれば、同じ自己でも、異なる世界や時間に移行すれば、この外部環境の初期値が全く変わってしまうことから、異なる解決の可能性、終点の可能性が見ることができる、ということがおきるわけです。僕が『マブラブオルタネイティヴ』でメイヤが現代日本ではただのバカにしか見えなかったのに、同じその同じバカさが、滅びにひんしている時の世界においてはたとえようもなく気高く見えたかに感動したといった、その「感動」も全く同じ構造を持つわけです。

マブラヴ オルタネイティヴ(全年齢版)

いいかえれば、自己救済問いテーマに当たって、次世代でしか救えないという、その裏(抜け道)を考えて、こうした輪廻転生の設定をもってきているわけです。どんな転生ものでもいいかといえばまったくそうではありません。その場合には、たとえば、(1)この物語の主人公である皆見晴澄とベロニカ王女は同一人物ですが、はっきりと、晴澄の中には、「晴澄という新しい自己」と「ベロニカという自己」の葛藤が存在し、かつそれぞれが別物であるという描写が、構造が強く見られます。これがないとだめなんですよ。『無職転生』の僕が言い、といったポイントも同じでした。ようは、過去の自分と今の自分が同じであっては、それはたんにナルシシズムの檻の中を移動しただけで、「今の自己」であるに変わらないので、救済ができないという前提に戻ってしまうのです。もう一つは、(2)過去の自分が折ったトラウマの課題設定を、異なる環境で強烈に同じように満ち続けるということが必要です。自己救済のテーマは、変わらないので、同じ問いが繰り返されて告発されなければなりません。Fate/ZeroのキリツグとFate/Stay nightのシロウの関係も、同じ構造といえます。次世代に引き継いでいる、異なる環境で同じ問題設定を解決しようとする?というありかたは一緒でしょう??。また『無職転生』では、ニート引きこもりであったであった時の恐怖が強烈にハーレム順風満帆転生後人生でも意識されているし、かつ、その才能と俺ツエェーの条件をもってしても、父親の問題や家族が試算してしまったことなど人生の悲劇は何ら回避できません。なので、彼の事故は、安楽をむさぼることができません。テーマが継続しているからです。『ぼくの地球を守って』の次世代編の後の方の巻で、シオンの戦災孤児としてのトラウマが、前の話で不幕終わったように見えてまったく解決されていないことが告発されて、その解決が迫られてきます。その途端物語に輝きが宿るよういなったと僕は思います。もともと、輪とありすの夫婦は大好きなんですが、彼らの関係が切ないほどの美しさと素晴らしさを帯びるのは、前世の自己救済の問題点、トラウマ、人生の課題が、異なる環境によってどう展開したのか?しえたのか?ということが、重ね合わせで見えるので、その重さが深く深くなるのです。


ボクを包む月の光 -ぼく地球(タマ)次世代編- 14 (花とゆめCOMICS)



まぁここまでメモということで。最近の気づきでした。ちなみに、漫画の『無職転生』、素晴らしい出来です、これはぜひとも、読む価値ありです!。



無職転生 〜異世界行ったら本気だす〜 1 コミックフラッパー