逆ハーレム・乙女ゲームの悪役に転生してしまったという物語類型の終着点はどこにあるのか?

ジュディハピ!〈3〉


ふと気になって、検索したんだけど、あれ『ジュデイハピ!』の人、新刊出てるんだねー。これ、もうウェブの方は掲載していないんだっけか。凄い読み直したかったんだけど。。。


けどなぁ、僕は数が読みたいと思う人なんで、読んだことある書籍を、1冊1000円を超える金額で提示されるとさすがに、そうとう好きでも手を出せないんだよなー。もちろんほんとうに思い入れがある作品は、リゼロのようになんでも購入しちゃう(=お布施、一票)んだけど、ちょっとこれは買えないよなーって。僕はこの、絵をつけて一冊1000円以上ぐらいの価格帯にしている本の売り方って、市場として形成できているのか?と一度プロの人に聞いてみたい気がするなー。自分だったら、買えない…。買わないではなくて、買えない。。。やりたいことたくさんあるうちの一つだから、価格がフィツトしていないと、やはり優先順位がると思うんだよなー。なので、マーケットの裾野は絶対に広がらないはずなんで、どこをどう取りたくやっているのかが、僕には全く分からない。。。でも結構書籍化されていますよね、、、どうなんだろう凄いしんどそうな市場に見えるんだが…。エンターブレインのものはほとんど、あのログホラですら掲載したものはそのままなんで、あの売り方はわかる気がするんだよね。ただその代わり、売れるものを凄く厳選している気がする。どっちにせよ、僕にはなんか、よーわからんん市場です。まぁ、好きな本が商業化されたり、絵師さん付きでリメイクされるのは、ファンとしてはそりゃーうれしいんだけどね。

ジュディハピ!〈2〉


さてさて、なぜ『ジュディハピ』が気になったかというと、風邪で寝込んでて(寝込んでないじゃんとか言わないで!)精神がもうろうとしていたので、苦しくて『謙虚、堅実をモットーに生きております!』を読み直しちゃったんですよね。かなり速読でしたが。凄い量です(苦笑)。やっぱ面白いはこれ。でも、これも、途中から更新ペースが鈍って、話が進んでなくなっちゃっているんですよね。というのは、この逆ハー、乙女ゲームの悪役に転生してしまったという物語類型でちゃんと終わらせているメジャー作品がいまだないんですよね。


謙虚、堅実をモットーに生きております! ひよこのケーキ著
http://ncode.syosetu.com/n4029bs/

たとえば、この乙女ゲー世界へ転生する系統は、『謙虚、堅実をモットーに生きております!』は、少女漫画の主人公の意地悪をする典型的な悪役お嬢様、吉祥院麗華の視点に生まれ変わったという物語です。ようは、通常にみられる少女漫画のパターンの第三者、それもいじめをする敵の視点に入ってしまったというメタ的視点を料理しているわけです。『攻略なんぞされてたまるか!』は、ベーシックな奴ですね。前世に男だった人が、どうもギャルゲーの女の子の視点に入り込んでしまった、という。ただ、この子は、女の子としての人生が楽しくなってしまったようで(笑)、まったくゲームの主人公としてのメタ的視点を失って自分磨きに精を出す日常になってしまって、、、、という(笑)、そんで『ジュディハピ』は、乙女ゲーの世界に閉じ込められている主人公(これも第三者)が、あれ、、、なんかこの世界繰り返していないか?と気づき、すべての男を攻略する乙女ゲーの主人公の姿に戦慄して、この世界から抜け出せないか?と考え始めるメタ的な視点を構造脱出劇にした物語ですね。


http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20131110/p1


この作品もそうなんですが、ジュディハピ!で初めて読んだ時も感じたんですが、これって典型的なループというかゲームの世界からの脱出劇なんですよね。けど、僕が見ている作品の中で、この問題点を鮮やかに解決して終わらせたものが一つもない。というか終わっているのすらほとんどない気がします。始まりや過程は凄く面白いんですが、まだ最終地点を鮮やかに見せた人はいないんですよね。なので、ここ書けば、絶対面白いし売れると思うんだよなー。


というのはね、先日下記の作品を読んだんです。これ、完結しているんですよね。


乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった… 作者:山口悟


頭を石にぶつけた拍子に前世の記憶を取り戻した。私、カタリナ・クラエス公爵令嬢八歳。
高熱にうなされ、王子様の婚約者に決まり、ここが前世でやっていた乙女ゲームの世界であることに気付いた。
そして自分が主人公と攻略対象との恋路の邪魔をする悪役令嬢になってしまっていることに…
主人公がハッピーエンドを迎えれば身一つで国外追放、バッドエンドならば攻略対象に殺されるって…
…私にハッピーなエンドなくない!?バッドオンリーなんですけど!?
なんとか破滅エンドを回避して、穏やかな老後を迎えたい!!

http://ncode.syosetu.com/n5040ce/

そして、まさにこの類型の物語の指し示すノーマルエンドが完璧に示されている。中規模の作品ですが、凄い面白いので、この類型が好きな人にはお勧めです。んでね、ネタバレなんですが、どういう風に終わるか?というと、転生したカタリナ・クラエス公爵令嬢(乙女ゲーの悪役)が、悪役にならないように頑張って生きているうちに、攻略対象の王子たちやその相手役のヒロインズをみんな骨抜きにしちゃうんですね。骨抜きって、あまりにクラエスちゃんがいい人すぎて、みんな籠絡されて惚れこんじゃうんですよ。これは構造的に言えば、本来は乙女ゲーの中にある物語的なマクロな内在ロジック(=主軸のドラマトゥルギー)によって、クラエス嬢(=悪役のわき役)を貶めていこうとするエピソード構造がセットされているの、それをキャラクターが自覚しているが故にメタ的に回避の積み上げを行っていくというものですよね。これって、この作品を読んでわかったんですが、どうしても、みんな大好き!のノーマルエンドになりやすいんですね。それは、主人公が悪役の脇役で皆に嫌われて破滅するという主軸のドラマトゥルギーが設定るために、その対置として、メタ的に主人公が自覚して行うのは「皆に嫌われないようにしよう」という行動になるからです。誰かを好きになって、その人を落としたい!という目的が発生するよりは、どちらかというと、保身で自己防御を選択するストーリーがメインなんですよね。その最もシンプルな型を、この『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』で見た気がします。短く鮮やかに終わらせてくれたので、それが際立ってはっきり見えました。


この類型、、、、逆ハーレム・乙女ゲームの悪役に転生してしまったという物語類型には、様々な可能性があります。まだ終わっていないのですが、一番複雑な構造を示しているのは最初期の『ジュディハピ!』ですよね。これは設定がものすごく複雑で見事でした。なので、解決の片鱗というか兆しもいろいろ作中に出ていましたが、、、まだ終わっていないので、その先が僕にはわかりませんし、やはり初期の作品なので、僕は途中から複雑になりすぎて、失速感がありました。そこが面白い!ともいえるので、完結まで見てみないとそれを、中だるみのステージのためなのか、本当に複雑つまらなくなっているのかは評価できないのですが、、、。たとえば、『ジュディハピ!』は、主人公が、悪役の仇でも、ゲームの主人公でもないモブあって、そのモブ(わき役)が、ずっと繰り返される逆ハーの世界に違和感と気持ち悪さを感じて、脱出しようと試みるというすり小説のような脱出劇がその根幹にありました。誰か、物凄い悪い奴がこの世界をループさせているので、そいつに見つからない!というスリル感は素晴らしいものがありました。また、ループの謎を解くという世界の謎解きもスリリングでした。単純になぜ転生したかわからないけど、それは前提、ではなくて、ループした理由が明らかに物語にセットされていて謎解きの対象となっていました。また、その大きな物語のマクロ構造をすり抜けながら、各キャラクターたちと本来関係のない、脇役が、関係性を積み上げるという背徳感というか、出し抜いてやったぜ感も、たまらないものがありました(笑)。けど、まだ予感だけで、この作品完結していないので、これがどこに向かうのかが何とも言えません。そもそも、この物語類型は、ほんとうにおもしろいもので、もっと様々なものが出てもいいのでしょうが、、、なんか、いい作品を見ないんですよねー。


終わらない物語はだめな物語だと僕は思うので、『ジュディハピ!』は、失速したなーと思うので、残念です。この類型のフロントランナーでしたが、、、、。『謙虚、堅実をモットーに生きております!』も更新スピード落ちていますよね、、、これって、勢いがないと書けないと思うので、残念だなーと思うのです。勢いを失うというのは、最新話ぐらいまで来ると、もうこの世界で吉祥院麗華を悪役におとしめるのは、構造的に難しいですよね。それくらい子供時代から吉祥院麗華は物語のエピソードを積み上げてきました。そしてもうすぐ卒業です。そうなると、もうこれって、上記の『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』のノーマルエンドしか普通に考えて、物語は向かわないと思うんですよ。だって、主人公を落とす若葉ちゃんは、麗華ともう親友の域の友人じゃないですか。ならば、若葉ちゃんが、皇帝を選ぼうがどうしようが、麗華自身の進退にはもう影響ががないはずです。もうそこが見えているならば、そこに向かってきっぱり物語を終わらすべきなんだと思うんですよ。それ以外の伏線がないので、もう終わりが見えていると思うんです。けれども、そうじゃないもうひとひねり!をするならば、こっから作者が凄い密度で伏線含めて考えて走らないといけないはず、、、できないわけではありませんが、、この物語はよくできているし、可能性もあるので、、、でも勢いが必要ですよね。今の更新頻度のテンションだと、たぶん無理じゃないのかなーとっておもったんですよ。人気や作品のレベルからいってこの系統の現在の頂点ってこの作品なので、ということは。この類型の物語まだ金鉱が埋まったまま、全然前に進んでいないってことなんだと思います。一番構造的に良かった『ジュディハピ!』が止まったてるからでもあります。



なので、この先が見たいです。。。。もし、これ以外にこの系統の面白いものがあるようでしたら、ぜひとも読者さん、twitterで教えてくださいー。超みたいです。



最後のいつものしめですが、吉祥院麗華さん、僕の中ではいつも食蜂操祈さんの外見です。


とある魔術の禁書目録外伝 とある科学の超電磁砲 (9) (電撃コミックス)