まさに、ここだよな。

選択と捨象 「会社の寿命10年」時代の企業進化論

特徴的なのは、著者が産業再生機構という部外者の立場で、しかも自力再建がにっちもさっちも行かなくなった段階の企業についての話がほとんどだということだ。こういう目で見ると、普通のサラリーマンが見るのとは別の「日本の会社」の像が浮かび上がってくる。

現場は優秀で技術力もあるのに、会社としてはボロボロになる。その原因は経営がだめだからだ、とよくいわれるが、著者のイメージは違う。そもそも経営者に情報が上がっていないのだ。つぶれるかどうかという瀬戸際になっても、資産査定に必要な数字が出てこない。現場が隠しているわけでもなく、日常的な「貸し借り」の中で曖昧に決めているので、事業のボトムラインが黒字か赤字かもわからない。

だから再生ファンドが資産査定すると膨大な時間がかかり、厳格に査定するとJAL債務超過だった。それでも飛行機が飛んでいるのが、日本の会社のすごいところだ。なぜかといえば「現場主義」が強いので、経営者に全体が見えないからだ。彼らは業務は技術者にまかせ、資金ぐりはメインバンクにまかせ、たまに問題が起こると「足して二で割る」調整能力で生きているので、数字を見てもわからない。


「文系オヤジ」を捨てる経営 『選択と捨象』
池田 信夫
http://agora-web.jp/archives/1646820.html


日本のまさに大問題点って、ここだと思うんだよ。こういうトップがコントロールできない、不透明なものにのっかって、空気によって現場が暴走して、取り返しがつかない惨事を生む。ぼくは、日本の経営者が、その他の国に比較して、極端に劣っているとは感じないんですよね。いろいろ見てても。過去の将軍とかを見ても同じ。なのにこれだけ大きな差になるのは、何か構造的に大きな穴があるとしか思えないとずっとおもっていてきたが、最近なんとなくこのもやもやがわかってきた気がする。池田信夫さんのこのへんの話は、とても自分の長年思っていた問題点に光を投げかけてくれて、とても面白いです。経営者がダメだからだ!という現場の声は、ずっとずっと、、、、日本の大組織にいる限り、聞きまくっていると思うんですが、でもなんかずっと納得いかなかったんですよね。もちろん、希代の経営者とかと比較するのは意味がなくて、いつでも比較は平均値や普通と比較すべきなんだと思うんだよね。そうすると、日本の近代国家としての歴史的実績を見ても、そんなひどいはずないはずだと思うのに、、、なぜか?という問いは、いつもあるのですが、やっと少しづつわかってきた気がします。日本の場合、現場主義とかいうキャッチフレーズは、現場の下剋上とアウトオブコントロールを助長させてしまう、むしろやばいものなんだとか、通説とは逆のことがいえるんだな、とか、いろいろ常識とは全然違うことがわかってきます。そりゃ問題点の把握が間違っていれば、よくはならないよな、、、、。