『下僕の俺が盲目の超わがままお嬢さまの性奴隷な件』 長谷川蒼箔著  佐助くんの覚悟が凄く美しいお話でした。

下僕の俺が盲目の超わがままお嬢さまの性奴隷な件
作者:長谷川蒼箔
http://novel18.syosetu.com/n7126cq/

評価:★★★★星4つ
(僕的主観:★★★★★5つ)

■春川財閥の一人娘琴乃は、九歳の時に事故によって光を失った。絶世の美少女だが、超絶わがままで変人の彼女が唯一心を許していた同級生、温井(ぬくい)佐助は彼女の下僕に任命され、生活の全てを支配されることとなる。そして八年後。美しく成長した琴乃の身体に悶々とする佐助は、彼女のベッドでオナニーをすることでなんとか理性を保っていた。
しかしクローゼットに隠れていた琴乃にばれて、なにをしていたのかを白状させられてしまう。そして彼女は無情にも佐助にこう命じるのであった。「お前がしていたことを私の前で、私に分かるようにやってみなさい」と。スーパーハイスペックでわがままでツンデレなお嬢さまと、実は隠れSな下僕との、純愛ストーリーです。■2015.10.3 完結しました


美しい物語でした。


タイトルからはわからないと思うけど(笑)、本当に終わった時、泣きそうでした。たぶんこれは、女性側から見ても、ぐっとくる話だと思う。単純に男側からのファンタジーになっていないと思う。ハーレクインに入っていても、おかしくないんじゃね?と思うぐらいです。


北海道の別荘のシーンは、僕は栗本薫さんの『真夜中の天使』の長崎のシーンをスゴイ思い出させたんですが、、、僕がこのシーンを思い出すってことは、そこに真の愛があるんだ!(笑)って思う時なので、ああ、この作品、すごい好きなのだなーと、しみじみしちゃいました。僕の愛の最も美しいあり方はの理想は、あそこにあるんですよねー。中学の時に読んで、それ以来忘れられないのです。まぁ、BLなんですが(笑)。


それにしても、この作品って、ノクターンなんというか、Hな漫画とかの定番じゃないですが。このシュチュエーション。もう手垢にまみれるほど、ただセクシャル場描写のためだけの類型パターン。どっかのポルノやHな漫画にすぐ開けば出てきそう。でもちゃんと描くと、こんなに美しい物語になるんだ、と感動しきりです。まぁ結局、僕は男女は平等でなければならな!という思いが凄くあるんですが、凄い功利的な理由があって、対等だと、なんというかHが凄い気持ちいいんですね!。肉体的な満足感だけではなく、精神的な充足がもうすっさまじい。これ、自分の立場が強いと(もしくは弱い)と、どうも強度が下がる感じがするんですよね。現実でもそうなら、物語でなんて、当然すっよ。


栗本薫さんが、というか評論家の中島梓さん(同一人物)が、いっていたんですが、恋愛は、権力ゲームにしかならないっていうのを言っていたのを思い出します。どっちが上か下かの権力がどっちによっているか、そのゲーム。ただまれに、永遠ではないが、刹那に、それがバランスを保ってしまう時がある。それが、僕がいう上記の長崎のシーンですね。そういうのって、凄くありえないからこそ、美しい。


最近、なんだか、SMのテーマをエンターテイメントでよく見るような気がするのですが、結局、これって、権力の状況がはっきり目に見えるので、それがうまくバランスを保ったり、極端に寄ったりするのが、わかりやすいからじゃないかなぁと思うんですよね。物語的に。実際に、SMってのは、強度なんで、これ以外のもっと激しい要素が体感的にあるような気がするんだけど、僕には悲しいことに、セクシャルの偏りがほとんどないつまらん人なので、うまく説明できませんが、、、、。まぁ、ぼくのSMの知識なんて、超名作を描く、山本直樹さんの作品とか、小池田マヤさんの『聖★高校生』くらいですから。てへ。あっ、この二人は、必須ですよ!!最高レベルの物語ばかり書く人なので。山本直樹さんは、『ありがとう』がおすすめです。家族の崩壊、父権の解体、アダルトチルドレンの在り方とその後、とか、もすべてが入っている凄い作品です。『聖★高校生』も、青春ストーリーとして、美しいのですが、、、その過程で知る世界の厳しさが、凄まじすぎて、もう。。。。まぁ、いいや、超おすすめです。


あっと、話がずれてしまった。佐助くんがね、、、、もう凄いイイよね。なんというか、もう覚悟が小学生に置いてできている。この人だ!と選んで、もうそれに人生をかけちゃっている。僕は、人間が最も美しいなと思うのは、この覚悟が見える時だと思うんですよね。出来るかどうかとか、意味があるかとかそういう、よわっちいこと言わないで、決然とそれを選ぶ!という覚悟。それが有ると無が、人生の意味とそして、その後を分ける、と僕はいつも思います。そして、たぶん、それがあまりに自然なので、読んでいて違和感がないんだけど、、、、佐助の主観で書かれているので、あまり大したことにように見えないんだけど、よくよく考えると、この子、狂っている。そんなに琴乃のことが好きなの?って、読んでいるとジワーって感じる。おかしいんだよ、小学生から住み込みで、目が見えなくなった女の子の世話をするとか、よくよく考えると、物凄いおかしいから。最初は、Hな話に進んでいくので、まぁシュチュエーションだなと思うのですが、、、、話がリアルに展開していくと、よくよく考えると、佐助くんって、すげぇんじゃない?って思えてくる。いやはや、そりゃ、お嬢様も惚れるし、Hなご褒美ぐらい運よくあっても、それぜんぜん釣り合ってるよと思う。しかも、彼最終的に春川財閥のトップまでなるわけでしょ、、、、この状況で、こんなに人生制限されて生きてて、琴子ちゃん好きなだけで、そこまで突き抜けていくのは、いやはや、、、、スゴイよ、彼。読んでいて、感心したというか、感動したよ。その本気の愛に。しかも、まったくもって自覚ゼロなんで、ただの薄い人のように見えるところが何ともまー凄い。


もううろ覚えだけれども、たぶん前世で恋人だったかそういう設定を作ろうとしたみたいで、そういう描写がほんの少しあるんだけど、、、その伏線は全然膨らまなかった。でも、それはないほうがいい、と僕は思う。この佐助くんの特別感の根拠を合理的に説明したいんだろうけど、いいじゃないの?、初めて小学生の時であって、それでもう心奪われたって、ことで。それで十分成り立つよ。その後の彼の振る舞いを見ていると、おかしい暗い琴子に忠実だけれども、そのおかしさは、僕はとても自然に見える。その振る舞いの積み重ねと強度だけで、他にわざわざ、特別感を作る必要はないと思う。それくらい、佐助くんは、頑張ったと思うよ。本人は、頑張った意識ないと思うけど。


セクシャルなもの、ぶっちゃけポルノというかSEXを描くのって、本当に難しいのだなーと思う。そもそも、読者がそれが目当てなんで、それを描かなければならない。けど、その強度だけで描けば、シュチュエーションがエスカレートするだけになって、物語じゃなくなってしまう。かといって、物語ればいいわけでもない。それなら最初から物語を作ればいいわけで。Hにどう文脈的な意味をつけるか、また文脈的意味がなくてシュチュエーションがエスカレートしないでHを描くにはキャラクターが良くよく描けてなければならず、しかも、Hシーンがメインでなければならない制約の中で、恋愛的な関係性の快楽線を安定して積み上げなければならない。うーん、、、物凄い職人でないとできない技なのかも。前回、『セカンドトリップと私の7人の夫達について』についてハーレクインロマンスの典型だって思ったんだけど、あの一大ジャンルって、たくさん読むとどれも同じなのがすごくよくわかるんですよ。類型が決まっている。けど、たくさん読んでいると、物凄く心動かされるものがたまに出てくる。別に内容に何のケレン味もな、ないのに。それって作者の才能なんですよね。


この作者、凄く物語がうまく、美しかった。伏線も素晴らしい。ぬいぐるみの話、それかよ!!!って、僕は感動しました。ぜひ他の作品も読んでみたいです。で切ればもっと自由で普通の作品で。書く才能は十分すぎるほどある人だと思う。


最近、ノクターンとかミッドナイトノベルとかムーンライトノベルとか、読んでいます。なろう、かなり読みまくってたんで、新しい鉱脈見つけて、しあわせです。