日本を社会改良しようとする時に最も起きやすい誤謬は、問題を逆に見ることだと思う。

このポスターをみると、民主党はなぜボロ負けしたのか、いまだにわかってないようだ。たぶんこのコピーでいう「民主主義」とは、「強行採決しない」とか「憲法を守る」とかいう意味だろうが、そんなものは政策ではない。民主党政権が壊滅したのは、選挙で約束した政策を何も実行できなかったからだ。

彼らは問題を逆にみているが、日本の統治システムはきわめて民主主義的にできている。役所の課長補佐が起案し、課長が関係各省と調整し、局長が政治家と根回しした法案が事務次官会議に上がったときは、すべて決まっている。閣議はそれにハンコを押すだけの儀式だ。この過剰なデモクラシーを変えないで「政治主導」などというスローガンだけでは、何もできない。

憲法の建て前とは違って、国会は「国権の最高機関」ではなく、政策は役所がボトムアップで決める官僚内閣制だ。本来はこの統治システムを変える必要があるが、民主党政権は閣僚や政務三役が官僚に命令するだけで政治主導が実現できると考え、概算要求の変更や特別会計の削減などをやろうとしたが、役所の抵抗で何も実現しなかった。

むしろ問題は、長期にわたる自民党政権の中で形成された過剰なデモクラシーを是正し、意思決定を官邸に集中することだ。そのためには官邸スタッフを増やし、局長級も政治任用にするなどの制度設計が必要だ。そういう地味な努力を省いて、岡田代表が街頭デモに参加して「反安倍」を叫んでも、何も変わらない。

http://agora-web.jp/archives/1668413.html
民主党はなぜ嫌われるのか
池田 信夫


ずっといろいろな本を読んできて、考えてきて、日本の意思決定や制度改革、、、、大きな意味での社会改良が、なぜできないのか?、なぜ致命的な失敗に終わりやすいのか、というのは自分なりに、ここだと思っている点があります。それは、社会改良を目指す人々、、、特に反権力側に立とうとするときに、問題点を逆さに解釈するんですね。そこで致命的にすべてを間違える。


反対というのは、日本は、過剰に民主的過ぎて意思決定がボトムにあるという事実が認識できていないという意味です。


物語にも、ラスボスにこだわる構造があるようで、誰か悪いやつがいて、そいつを倒せば、すべてがうまくいくというような物語類型が刷り込まれているようなんですよね。


なので、処方箋が、独裁者の○○を倒せ!とか、そういう話になる。なんというか、二元論による相手の悪魔化合戦が始まるんですよ。でも、それって日本を良くする為には、むしろ逆効果を生むんですよね。日本は意思決定は下部にあってかつ重層的に隠れてしまい、一旦決まってしまったことが、どんどん転がる雪だるまのように膨れ上がって、誰も止められなくなる。この隠蔽と強制力を支えるのは、空気の醸成システム+権力が並列なムラ社会システムですよね。アメリカとの戦争とか、誰もが戦略的におかしいと思っていたのに、止められない。


政府が悪いとか、軍部が悪いとか、そういうのは歴史を見ると、僕はそうは思えません。さまざまな侵略行為も、そういったことがうっかり(苦笑)起きてしまうことは、あってはならないことといったところで、いくらでもある。けれど、問題を悪化させないために、現場の暴走を許さず、一元的に収拾を図ることができれば、たいていは、それなりに収束するんですよ。


戦前の軍部の暴走は、みんなが知っていること(=共有している)なんですよね?。少なくとも、戦前は軍部の若手中堅将校が暴走したのを、止められなかったわけです。というか、止めるどころか、マスコミも国民も議会も軍上層部すらも、自分たちの権力を保持するために、サポートしたわけです。なのに、社長が悪い、総理大臣が悪いとか、何でそうい処方箋なる?っていう様なことばかりいわれています。これって、事実が認識されていないんですよ。日本の害悪は、そういったボトムアップに何十にもあるコンセンサスのシステムであって、問題の解決は、権力がちゃんとした一元的な権力を持っていない!ということにあるんですよ。なのに、権力に歯止めをかけることばかりするんです。そうすると、暴走を抑えるメカニズムがなくなってしまうんです、日本は。。。


そんなことを、思いました。



いまの幸・不幸は誰によってもたらされたのか知りたければ、善悪の基準を排除して歴史を振り返って考えなければならない。それが自己責任的な、すべての問題を個に押し付ける無限ル-プからの脱出もたらす。
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20150522/p2

戦前の日本の何が問題だったのか?悪かったのか?をちゃんと見据えないとだめだと思う。
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20150604/p1

まさに、ここだな
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20150708/p1

俺はまだ本気を出していないだけ!って、能力と実力の違いが混同されているんだね。
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20160203/p2


ちなみに、民主党のことを思うと、いつもこの小説の才国の統治について思い出します。ああ、命令したり、正しいことを言えば、世界が動くと思っている人って、確かにいるよな、、、と。


華胥の幽夢 十二国記 (新潮文庫)