ブッシュ、ティーパーティー、テッド・クルーズ、ドナルド・トランプと続く共和党の右旋回現象の本質とは何か?(1)


この記事が非常に面白かった。渡辺将人さんの『見えないアメリカ』を読んだときに思った疑問を思い出しました。新しい物事や知らないことを知ろうとするときは、大きな仮説や手がかりとなる大きな問いを持って望むと、少しづつそれが、統合されてきて全体が俯瞰できるようになりやすい。僕が昨今の現代アメリカを見る上で、よくわからないと不確かに思っていたのは、Abraham Lincolnの時代に北部=共和党VS南部=民主党の構図であったはずなのに、現代のブルーステイツとレッドステイツの構図は、まったく逆なんですよね。これが、僕にはどうしても腑に落ちなかった。この本では、既に現在、特に46代ブッシュ大統領から共和党が、非都会型・農業地帯の州をメインとし、宗教右翼やプアホワイトなど白人労働者のハートをがっちり握っている事実はよく指摘されます。でも、どうしてそうなったのか?、また、それがどんなメカニズムになって現在に影響しているのかが、いまいちすっきりしなかったんです。

なんちゃってアメリカウォツチャーとしての解釈の大前提として、アメリカという国は強烈な統合と分裂への行ったり来たりの振子のような形でまとまっている運動体である、という視点で僕は見ているので、この類の、やれアメリカはバラバラになるとか、いやアメリカは一枚岩で世界支配をしている帝国だのという、片方に偏った言説は、そもそもアメリカを論じる上で最もやってはいけない視点であるということを、僕は大学で学びました。アメリカがアメリカである所以とその強みは、そのありえないほどの多様性を囲い込みながら統合の原理が強烈に働いていることだからです。なので、偏った部分の濃い部分があるからといって、「そこだけ」を見ると、非常にアメリカ理解はおかしなものになります。アメリカを見る、分析するとき最もやってしまいやすい罠だと思われます。特に、通常ありえないような反対意見が同時に統合されて存在するのは、歴史の長い国においてはありがたいので、日本のような対立軸が弱い国においては、アメリカ理解が非常に歪みやすい。


分裂している傾向に注目するのはいいとして、では、その中身は何なのか?ということは当然知りたいわけですし、同時に、ずっと当たり前すぎてなかなか理解するチャンスがなかったのですが、大きな疑問がありました。それは、そもそも、僕が大学でアメリカを勉強した時に、当然のことながらアメリカの運命を決めた南北戦争を学んだのですが、その時の大前提として、北部=共和党 VS 南部=民主党という対立構造であったはずです。アメリカにおいてこの図式はそもそも基本構造のようなものであって、南部と民主党は切っても切り離せないはずだったと思ういます。それは、映画『リンカーン』を見ても、はっきりわかります。リンカーン(1809-1865)は、当然ながら共和党の大統領です。なのに46代大統領ジョージ・ウォーカー・ブッシュ(George Walker Bush 2001年-2009年)と民主党のジョン・フォーブズ・ケリー(John Forbes Kerry)2004年やアル・ゴア(Al Gore)2000年の時の選挙での分裂の様子は、とてもよく覚えているのですが、あのあたりから(そういえばあのころ仕事が忙しくて勉強とか全くしなくなっていたよなぁ・・・・)????って思っていたんですが、民主党が北部を基盤にしていて、南部はすべて共和党なんですよね。


つまり、アメリカは南北戦争のころと現代では、二大政党の基盤が全く逆になっているんですよ。ちなみに現在は、民主党の強い都会型・工業地帯の州を「ブルー・ステイツ」、共和党の強い非都会型・農業地帯の州を「レッド・ステイツ」と呼ばれています。現象としては、いろいろ説明が付与されるんですが、どういう過程でそうなっていったのか、とかそういうことが全然わからなくて、なんで?ってずっと思っていました。その疑問がこの本で、ようやく解けました。共和党が、南部の宗教右翼やプアホワイト、白人労働者のハートをがっちり握っているのはよくいわれるのですが(ブッシュ大統領を支えた層の一つですね)、なんでそうなったのかが不思議でした。そもそも南部は、民主党の牙城だったはずなのに。このあたりの部分は、現代アメリカを読み解くにあたって必須のものなので、ただ単に分かった!だけではなく、暗記して、詳細に理解して、反芻して、ちゃんと自分の腑に落としていきたいと思いました。


渡辺将人 渡辺将人著 選挙を通してみるアメリカの多様性と統合
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20150408/p1

見えないアメリカ (講談社現代新書)

でも今回のトランプ(Donald John Trump)旋風の解説や彼の主張、またそれに対抗しうるのが事実上テッドクルーズ(Rafael Edward "Ted" Cruz)のような極右のTea Partyだけであって、主流派といわれるような人、たとえばオハイオのジョン・ケーシック(John Richard Kasich)候補などのRepublicanの主流派といわれている人々が、何もコントロールできない様を見ていてだいぶわかってきた気がします。GOP presidential front-runnerを、主流派は明らかにコントロールできていませんよね。それだけではなく、Democratic Partyにおける サンダース(Bernard "Bernie" Sanders)への熱狂的な支持によって、明らかな主流派であるHillary Rodham Clintonが脅かされるという構造も、極右と極左というまったく違う思想であるように見えながら、その本質とそこに流れる基調低音は、とてもよく似ているように僕には見えました。



アメリカ大統領選、やじうま観戦記! 渡辺由佳里
https://cakes.mu/series/3628


やはり画期的なのは、カールローヴ(Karl Christian Rove)の選挙戦略なのだろうと思うのですが、共和党は、積極的に南部を支持基盤とし獲りにいこうとしてきた流れがあります。その時に、いわゆるプアホワイトと呼ばれる白人低所得者層や宗教右翼などを煽り立てること、彼らの不満を身のうちに取り込むことで、権力を獲得してきたんですね。これは、流れとしては、非常にわかるんです。プアホワイトとか宗教う右翼とか、そういった名称で囲い込むと、非常にとんでもないやつら的に見えてしまうんですが、本質的にはそうじゃない、と僕は思うんです。これは、グローバリズムの中で、先進国の中産階級が持っていた特権既得権益が解体されて、世界に富が平等化していく過程で、解体されていく中産階級からこぼれ落ちていく人が大量に出てきて、自助努力ではどうにもならない貧困のサイクルの中に閉じ込められて行くことへの恐怖と怒りが、人々を極端なものへ走らせているんですね。その逃げ口が、右翼的なものであった、というだけです。


僕はこのあたりの人々の怒りが、どこへ向いているかというと、(1)1%の富を握る長富裕層(既得権益の構造)と、(2)自分たちの仕事奪った移民です(移民を平等に扱おうとするリベラリズム)。なので、Donald Trumpの最も評価されている部分が、(1)現状の構造を維持する既得権益から一切お金を受け取らない自由な立場であること、(2)メキシコ政府に金を出させて国境に万里の長城を作って、新移民、イリーガルな移民を排除しようという部分であること見れば、まさにダイレクトにここにつながっていることがわかります。

伝統的な孤立主義の政策に回帰することで、たとえアメリカの世界の警察官的な既得権益を捨ててでも、アメリカの外の国の問題点には、一切介入しないでコストをかけないというのも、この(2)にかかわる話だからです。いってみれば民主党的な人権外交は一切しない。外の国で虐殺が起ころうと、難民がめちゃくちゃな目にあおうと、それは自己責任なんだから関与しないという風に考える。これをマクロの国際的なもので考えると少し???となりますが、たとえば、自分の家族が貧困や苦しい問題があるのに、それを無視して、外国とか関係無いところの人権や保護活動ばかりしていたら、優先順位がおかしくないか?と思うのは非常に普通の感情だと思うんです。ただ、アメリカはもっとも豊かで民主主義が進んだ国のひとつであり、世界を支配する帝国であるわけで、またその富は自由貿易と世界の平和をパックスアメリカーナとしてアメリカの政策に都合がいいようにコントロールして介入しているから起きることなので、その責任から逃げていいものなのか?というのはまたこれもまっとうな問いで、であるから、国内も国外も等しく同時に干渉してきたわけです。

けど、そんなのこんなに苦しい状況なんだから、気にしてられるか!!というのがDonald Trumpの主張なわけです。これは、国際的な人道主義リベラリズムの進んだ先進国の倫理道徳基準から言っても、リアルポリティクスのパワーゲームの中で既得権益を持っている現体制の擁護者たちにとっても、許されざる発言になるわけです。ふつうは、軍産複合体とか、お金を出してくれる人に、さすがに言ってはいけない線引きがかなりあるんですが、どこからも金を受け取らないで、ポピュリズムに依拠したら、逆に、反対のことを言えばいいわけです。そこが、おお、この人はわれわれの感情の代弁者だ、となる。



トランプ氏がKKK元幹部からの支持拒否せず、選挙集会で黒人団体が抗議
トランプ氏は抗議をする人々に「メキシコ出身なのか」と発言。聴衆同士も対立し騒然となるひと幕も
2016年3月2日(水)10時38分
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/03/post-4611.php



これはそうした極右的な、、、ここでいうのは、反移民的な保守的思想の極論と考えていいのですが、背景にあるのは、新興国への富の標準化(台頭)による中産階級の解体が、やはりポイントなわけです。こうした中産階級の解体で生まれる低所得者の未来の無い絶望感こそが、共和党が新しく見出した支持基盤なわけです。そして、この誰も代表しない層を代表しようとすることは、政治的には普通のことだと思います。プアホワイトなどの白人層に偏るのは、保守的な思想を核とする共和党によって、リベラリズムによって保守的なもの、伝統的なもの、過去にあった秩序、既得権益が解体されていくことは、理念から許されず、自然にそうなっていくしかなかったのでしょう。ちなみに、ポピュリズムを煽る保守層が、既得権益や既存の秩序を維持しながら生き延びようとすると、こうしたなショナリスティツクで、一時代古い保守的な価値観を打ち出して、そのあたりの貧困層を取り込んでいくのが世の中の流れのようです。日本の自由民主党の安部政権が、アベノミクスのような基本的に左に寄っているばら撒き政策を続けているのにもかかわらず、どうかん考えても一時代古い極右としか言いようのない層を身のうちに取り込んでいるのも、似た構造に見えます。「ここ」を取り込まないと大衆を操作して、支持を得るポピュリズムが動かないのが、現在の先進国なんです。


また、Sandersさんの指示も同じ構造から出ているといえます。(1)も(2)も同じですね。彼の主張は、(1)の1%の富を握る長富裕層とこぼれ落ちる層との格差の広がりについての攻撃です。先日書きましたが、ワシントンポストが、Sandersさんの基盤支持者である、白人の若者層が、非常に差別主義者的な振る舞いをしていて、クリントン候補への攻撃がすさまじいというのは、この層が、そもそも民主党リベラリズムアファーマティブアクションの優先順位の最も下にいる人たちが、自分たちの取り上げられた既得権益を、元に戻せ!!と感情的になっていることが、ベースだからんでしょう。ヨーロッパの左翼の進展状況を見ると、彼らがうまく反移民のなショナリスティツクな感情を、既存体制への攻撃に転化接続することによって、若者の支持を得ていることが見て取れることからも、同じことなのだろうと思います。なので、一見理想的で美しいサンダースさんも、その支持基盤を見ると、僕には非常に怪しい人に見えてしまいます。彼自身の誠実さは、明らかだと思うのですが、、、。でも、これだけははっきりと認識しておかなければならないのは、サンダースさんの極左純化した部分が受け入れられているからといって、彼を理想化するのはありえません。支持基盤を、見ればすぐわかることです。


Bernie Sanders’s most vitriolic supporters really test the meaning of the word ‘progressive

https://www.washingtonpost.com/news/the-fix/wp/2016/03/10/bernie-sanderss-most-vitriolic-supporters-really-test-the-meaning-of-the-word-progressive/?postshare=2701457633048177&tid=ss_fb

「大学の学費を無料にする」というサンダースの政策に対して、ヒラリーは「私とバーニーが求めることは同じ。けれども、私は現実主義者。できることしか約束しない」と反論するが、サンダースの支持者は許さない。理想主義者の彼らは、少しでも「体制」の臭いがするものを徹底的に攻撃する。

 女性で民主党全国委員長のデビー・ワッサーマン・シュルツがスピーチを始めると、すぐにあちこちからヤジが飛び始めた。私は偶然サンダース応援側の席に座っていたのだが、大声でヤジやブーイングをしているのは、私の周囲にいる若い男性たちばかりだ。

 席を2つ挟んだ右手の男性は、サンダースの名前をネオンのように光らせたプラカードを胸に掲げ、「You suck!(おまえは最低だ!)」とひっきりなしに大声で叫び続けている 。

 これがメディアで噂の「Bernie Bros(バーニー・ブラザーズ)」だ。

 サンダース支持者のなかには、ソーシャルメディアやニュースメディアのコメント欄に人格攻撃に近いヒラリー批判を書きこみ、それに反論する女性がいれば、「自分のほうが正しい」という独善的な態度でその女性まで攻撃する若い男性が増えている。彼らは「Bernie Bros」と呼ばれ、インターネットでは以前から話題になっていた。

 メディアでは「そういう人がいても、少数だけ。それで苦情を言うヒラリー陣営は大げさ」と捉えていたが、このイベントでヤジを飛ばす若い男は少数ではない。

 元女性州知事で現職上院議員ジーン・シャヒーンがヒラリー支持表明のスピーチをしている最中も、ブーイングや大声のヤジは続いた。

 60歳くらいのサンダース支持者の女性が、見るに見かねて前に座っている若者に注意したところ、彼は顔を真っ赤にして「憲法修正第1条で保障された表現の自由を知らないのか? 僕には発言の自由がある!」と、注意した女性に向かって怒鳴り始めた。

 共和党候補のトランプのイベントでも、応援にかけつけた政治家に悪態をつく支持者がいたが、態度の悪さでは、サンダース支持者はトランプ・ファンと同等だ。

 Bernie Brosを見ていると、どうやら「革命」を口実にして、「体制」を象徴するヒラリーやその支持者を血祭りにあげることで自己満足に浸っている若い男性が少なくないようだ。

 一般論では「若者が政治に関心を抱き、参加するのは良い事」なのだろうが、Bernie Brosを目撃した今は、疑問を感じずにはいられない。



サンダース旋風の裏にある異様なヒラリー・バッシング
実現困難なサンダースの公約に共感してヒラリーを敵視する「バーニー・ブラザーズ」とは
2016年2月17日(水)15時30分
渡辺由佳里(エッセイスト)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/02/post-4539.php


僕は、共和党が支持基盤を南部に軸足を移していくことによる変質は、まさに現代人類社会の最先端で、世界的に共通する構造なのだ、とわかり、非常に納得しました。



ちなみに、モーリーロバートソンさんが、下記の記事で、この差別の政治手法を、南部のポピュリスト政治家だったジョージウォレスから系譜として分析していて、これも素晴らしく面白いです。

そして1968年。人種問題やベトナム戦争など社会的な対立が最大限に達した中で大統領選が開催される。ジョージ・ウォレス知事は再び独立系候補として出馬。黒人の公民権に強く反対し、保守的な南部白人有権者たちの怒りを代弁する扇動戦術をとった。その年、南部の投票率は異例の50%に迫った。ウォレスは北部の若い白人男性にも強く支持され、当初は破竹の勢いがあった。しかし共和党ニクソンと競り合う最中、副大統領候補に選んだ元空軍大将が記者会見に不慣れなせいで、
 「ベトナム戦争終結させるためには核戦争の使用も辞さない」
 と発言。いっきに支持者がドン引きしてしまい、そのままジョージ・ウォレスは泡沫候補へと転落、露と消えた。この年はリチャード・ニクソンが勝った。

 ニクソン及び共和党はウォレスが群衆の情緒に訴えかけ、怒りの感情を誘導するテクニックを見逃さなかった。それまで民主党の得意技だった「差別の政治」をそっくり吸収し、共和党の味付けで再構築する。ニクソンはウォレスが「州の権利」というフレーズで主張した公民権への反対を「サイレント・マジョリティー=沈黙する多数派」という表現に言い換えた。

 公民権に反対する派閥を切り離した民主党は、二度と差別的なアメリカに戻らないことを謳う政党へと変貌した。人種問題に保守的な見解を持つ多くの白人有権者民主党から共和党へと亡命、二度と戻ることはなかった。結果、「差別の政治」は共和党陣営の専売となる。

 公民権法が実現して15年が過ぎた頃、アメリカ社会では人種平等の認知が進み、世論のせめぎあいは男女平等を求めるフェミニズムや性的マイノリティーの権利を求めるゲイ・ライツなどへと移った。差別は大っぴらに口にできなくなった。しかし人々の心の中に歴然と残っていた。



George Wallace "Segregation Forever" Speech


Selma to Montgomery March


モーリー・ロバートソン
点と線
「トランプ現象」を掘り下げると、根深い「むき出しのアメリカ」に突き当たる
2016年03月11日(金)16時30分
http://www.newsweekjapan.jp/morley/2016/03/post-2_1.php

グローリー/明日への行進 [DVD]

このあたりのことは、この映画がいいですね。


あと、薦められている以下の記事も凄く面白い。

Trump was one of the most persistent “birthers.” Going all the way now, he’s cynically waffled on distancing himself from David Duke and the Ku Klux Klan. And on Monday, he ecstatically accepted the endorsement of Alabama Senator Jeff Sessions, who, according to The New Yorker’s Evan Osnos, was rejected from a federal judgeship in 1986 after saying he thought the Klan was “O.K. until I learned they smoked pot.” (On Monday, even Sessions said Trump “needs to make [it] clear” that he disavows the Klan.)

Wallace, who recanted his racist past in the early 1980s and begged forgiveness from Alabama’s blacks, must be groaning six feet under.

Wallace “laid the foundation for the dominance of the Republican Party,” Dan Carter said in a 1998 obituary. “He was the master teacher, and Richard Nixon and the Republican leadership that followed were his students.” And now Trump is the prize pupil.



Trump and the racist ghost of George Wallace(Newsweek)
http://www.newsweek.com/donald-trump-george-wallace-racist-ghost-432164

これは、アメリカの二大政党制による独裁という構造と、予備選において共和党民主党というそれぞれのカラーの違う政党の中で代表者を決めるという予備選挙の構造から、それぞれの思想等のカラーを純化て絞り込んだの人間を選ぶというシステムになっており、長期間にわたるdebateや予備選挙を通して見続けていると、全体構造がわかるようになってきます。さまざまな問題に対して、それぞれの意見を戦わせていくことで、その候補者がどんな意見で、その過大に除くのかが360度ではすまないレベルで評価され続けます。まさに、大統領にふさわしいかどうかの面接が、国民的なお祭り騒ぎとして、1年以上継続するわけです。こういうのをじっくり観察していると、具体的なことが次々わかってきて、本当に面白い。このように権力が変わり現実に接続するエンターテイメントがあるということは、僕は素晴らしいことだと思います。これこそが、曲りなりにもアメリカをアメリカたら占めている仕組みのひとつなんだなぁ、としみじみ思う今日この頃です。


以下、最初の記事の抜粋ですが、おもしろいですよ。ぜひすべて読むのをお勧めします。

共和党「南部戦略」の罠

かつては奴隷解放リンカーンを戴いた共和党が、ついに激しい移民排撃のトランプを大統領候補に祭り上げる一歩手前まで来た背景をたどっているのは、英紙『ガーディアン』の3月5日付の大型記事「アメリカの岐路――レーガン、トランプと南の悪魔」だ。読ませる。【American Crossroads: Reagan, Trump and the devil down south, The Guardian, Mar.5】

米国南部は、かつては「堅固なる南部」と呼ばれ民主党の牙城であった。そこで南部民主党は人種差別体制を維持し、奴隷解放の政党・共和党を寄せ付けなかった。その南部を戦後、共和党が制していった過程が描かれる。貧しい白人たちの差別意識に巧みに取り入る「南部戦略」でニクソンレーガンは南部を攻略、ついに南部での攻守は逆転する。

「州権(州の自治権)」「強制バス通学」「減税」......これらの言葉の裏には常に「黒人をいためつける」(レーガン時代のアトウォーター共和党全国委員長)という意味が潜んでいた。「州権」は黒人差別の州法を守るための権利を意味した。通学バスを使って学校の人種統合を図ることを南部の白人は「強制だ」と批判し、抵抗した。「減税」とはすなわち福祉切り捨てを意味し、黒人貧困層への攻撃であった。

ニクソン時代以降、共和党はこうした言葉を操りながら、黒人票獲得を犠牲にして白人票に狙いを定めてきた。その共和党「南部戦略」の鬼子のようにして生まれたのがトランプだ......。しかし、アメリカはますます人種的多様性を増していく。南部を得ることが長期的に共和党にどんな代償を強いるか。

当欄筆者は、オバマ大統領当選直後、月刊誌当時の『フォーサイト』2009年1月号に「南部に着目して読むアメリカ政治地図の変動」を寄稿した。ガーディアンの今回の大型記事と併せ読まれたい。共和党は「南部戦略」の罠に自らはまり、逆襲を受けている。それが拙論の趣旨だ。そこから逃れ出ようとしたあがきが、2008年マケイン、2012年ロムニーといった大統領候補であり、2人はいま共和党「内戦」でトランプ排撃の急先鋒に立っている。【Mitt Romney and John McCain Denounce Donald Trump as a Danger to Democracy, NYT, Mar. 3】

「右旋回」の果てに現れたトランプ

戦後の長期にわたる共和党の変貌という意味では、高級書評誌『ニューヨーク・レビュー・オブ・ブックス(NYRB)』2月11日号の歴史家・ジャーナリスト、ギャリー・ウィルズの論考「強硬右派の勝利」も興味深い。「南部化」とも並行した動きだが、戦後共和党史は穏健派・中道派が衰退し、強硬右派が台頭していく歴史だ。その右派は常に「自分たちは裏切られ続けてきた」という意識を抱いているのだという。

共和党右派にとって、ブッシュ前大統領も、レーガン大統領でさえ非難の対象だ。前者は老人医療保険制度拡大など、後者は「小さな政府」を標榜しながら実現できなかったことなどで、強硬右派に批判されている。そうした右派の批判を受けて共和党は右旋回をずっと続けてきたとも言える。その果てに現れたのがトランプである。【The Triumph of the Hard Right, NYRB, Feb. 11】


「トランプ現象」の深層:「長期経済停滞」と「大衆の怒り」
投稿日: 2016年03月09日 15時29分 JST 更新: 2016年03月09日 15時29分 JST
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