『翠星のガルガンティア』(2014-2015) 監督 村田和也 シリーズ構成 虚淵玄  スターシードになる人類の覚悟を描いた物語

翠星のガルガンティア:コンプリート・シリーズ 北米版 / Gargantia: The Complete Series [Blu-ray+DVD][Import]

評価:★★★★星4つ
(僕的主観:★★★★☆4つ半)


ずっと見たいと思っていたのだが、時間がなくて見切れていなかったのを、クランチロールで視聴終了。素晴らしい出来。

一言でいうと、良作のSF作品。現代アニメーションの水準を示すかのような、ハイクオリティの完成度で、ほとんど文句なしに★5レベルなんですが、少し減点してあるのは、SFのセンスオブワンダーとしては、あまりに典型的で、SFに慣れている人からすると、それほど目新しい話ではない、という点を差し引いて。ただし、そういう評価は、これだけSF作品が、物語の基盤として常識化している現代において、本当はフェアではないんですけどね。だって、この状況下で、物語の類型として「新しいものを示す」センスオブワンダーなんか、まず作れっこないもの。だから評価は、どれだけ、脚本構成、アニーメーションとしての画像風景の作り込み、キャラクターデザインと、そのキャラクターの関係性の深掘り、どれをとっても素晴らしくてレベルが維持された作品でした。


特に、LDさんが強くおっしゃっていましたが、銀河同盟から離れてガルガンティアに着た途端、船内の生活感あふれる描写は、対比が素晴らしく。あの映像だけで、脳内トリップするほど感動的だった、というのは僕も同感です。映像が素晴らしいですね。鳴子ハナハルさんのキャラクターデザインとか、わかってるなー感があって。そうであるにもかかわらず、エロい話やサービス的なのが全くない感じなのが、上品でいいなーって凄い思う。


それと、LDさんが話していたのは、これスターシードの物語なんですね。宇宙に進出した人類の「人類銀河同盟」と、宇宙生命体「ヒディアーズ」と争いを描いているんですが、これどちらも、人類なんですね。最大のネタバレですが、まぁSF好きな人には、見た瞬間連想するくらいのレベルの話なので、まぁこのブログはネタバレ基本なんで。


そんでもって、どちらの選択も、見事な覚悟があって、よし!!!とLDさんは喝破している。チェインバーという戦闘機械が人型であるのも、戦うためにデザイナーズベイビーや極端な全体主義国家の形態を選んでさえも、人類銀河同盟は、「人型であること」を貫いているんですね。やつらには、どんなことになっても、人類である!ということに殉じたんですよ。かっこいいやつらです。同時に、宇宙生命体ヒディアーズ(自発進化推進派イボルバーの共生体)も、宇宙で生きていき繁殖できるために、人であること捨てた人類ですが、そうして全宇宙に大繁殖していくわけです。これも、覚悟がいけてますね。


旧地球において、自発進化推進派イボルバーとコンチネンタルユニオンの争いがあるのは非常にわかるんですよ。人類が人類でいることはどういうことか?という線引きは多分に感覚的なもので、こうした感覚的に相いれない戦いは、宗教戦争のよなものですものね。際限がない。僕はこういう基本的な理念の奥にある感情的なもの、底の基底まで行くと、人間って、コンサヴァティヴがリベラリズムか、はっきり分かれる気がします。これって、理論や論理じゃなくて、感情なんじゃないかって。自発進化推進派イボルバーとコンチネンタルユニオンは、LiberalismとConservatismの究極の対立な気がします、その帰結も、そうなるよなーって感じが凄いします。ガンダムSEEDの新人類「コーディネイター」と遺伝子操作されていない通常の人類「ナチュラル」との対立とかを思い出します。

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まぁとにもかくにも、LDさんと話して、そうだよなーと思ったのは、この作品の終わらせ方。LDさんの好みとしては、最後の中佐との争いとかいらなかったんじゃないかな?と。物語を盛り上げるには、ああいうのは必要だというわかるんだけれども、LDさん曰く、人類銀河同盟、かっこいいやつらじゃないですか!!!なのに、なんとなく全体主義的で生活の自由がない悪者みたいなニュアンスになってしまうじゃないですか!!!それが僕には許せないんですよ!!!と、語気を荒あげてげておっしゃっていました。それ、僕も実は思ったんですよね。スターシード、、、人類の種子を、この銀河に大宇宙にばらまくという最大のSF的目的からすれば、「人類銀河同盟」と宇宙生命体「ヒディアーズ」の両者は、正しい結論に、自らの信じるところを追求して到達しているのであり、大戦争を継続しているにせよ、人類の種子を大宇宙に広げる観点からすれば、どちらの戦略も大成功を継続中なわけです。もしかしたら、宇宙でこの2者の対立が何千年と続かなければ、これほどの大発展や進化はなかったのではないかとさえ思えるほど。なので、それをミスリードして、なんとなくデザイナーズベイビーを軸とする目的に特化した全体主義的な人類社会の在り方が批判されているのは、納得いかんという感じです。彼らはギリギリの道を選んで、地球に帰る術すら失い、それでも、人型であることを追求し、生存戦略としてギリギリのラインで人類社会のあるべき姿を何とか維持しています。戦争の後背地として、ちゃんと帰るところや権利が回復される場所がつくられているところからも、凄くその切実な思いが感じられます。


けど、物語上、最後に敵を作って盛り上げるのは、必須ですし、あれで正しいのだとは思います。エンターテイメント的に。でも、そうすると、いかにも、人類銀河同盟が、ガルガンティアより、悪い感じになるじゃないですか。そんなことはない!!!と、LDさんと盛り上がったのでした。


あれ、、、えっと、スターシードの物語って、意味っていっていましたっけ?


なんか最近説明していないなーって思うんですが、人類の目的って究極的には何か?っていうSFの大きな問いです。


人類の目的は、人類という種を、全宇宙に広げていくことだ!!!という意味です。人類の種(=シード)を宇宙に広げるという意味で、スターシードと名付けています。別にこの時には、人類が、宇宙に広がるために、情報だけになったり、人類の今の在り方が変わったって、スターシードになるためなら何でもありだろうがぁぁぁ!!!というのが、この発想の基本です。SFでは、よく情報体になって、光情報でレーザーにして宇宙に飛ばすとかブラックホールにつっこませるとかの話になるんですが、どんなことになっても執念で、フロンティアを探して、そこに人類の足跡を残そうぜ!!!っていう人類の強いWillを考えて、この発想にたどり着きました。人類は何のために、存在しているのか?という答えは、とにかく宇宙に増えよ満ちよだぁぁぁ!!!ちゅーことです。


その観点からいうと、ガルガンティアの二つの人類種は、どっちにせよ、気合入っていますよね!!!


翠星のガルガンティア ~めぐる航路、遥か~ 後編<最終巻> [Blu-ray]