『ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン』 宇野朴人著  安定した戦記モノで、マクロとミクロのバランスがとても良いです!

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン (電撃文庫)

評価:★★★★★5
(僕的主観:★★★★★5つマスターピース

まだ10巻までしか読んでいませんが、いや、いいですねこれ。紹介してもらってよかった。読んでいて幸せな時間を過ごしています。基本的には、戦記モノのライトノベルと考えてもらえればそれでしい。それ以上には思えないし、それ以上の仕掛けも感じません。でも戦記物として、とっても安定してて、なるほどアニメ化されるのがわかります。とても大好きです。すすめられてアニメからはいりましたが、瞬く間に11巻まで来ましたよ。



ちなみにこの後、大きいネタバレです。僕のブログは基本ネタバレなんですが、さすがにこれは大きいので、とりあえず。



えっとですね、アニメーションを見ていて、最初から思ってたんですが、もしかしてヤトリって死んじゃうのかなって思っていたんですよ。この絆の作り方と、彼女の在り方(=イグゼムの伝統を守る)と、帝国の崩壊を描いているマクロの流れからすると、彼女って、新選組みたいな感じが凄くして、ドマトゥルギー的には、そうなるよなぁ、、、と。でも、まさかライトノベルで、それはできないだろうと思っていたのですが、がっつり、そこ描きますよね。それを描いた後に、どこに持っていくかは、作者に課せられた大きなテーマで、彼女亡きあとどういう風にドラマトゥルギーを確保するかは、この作品を最終的に素晴らしいものにするかどうかの重要なポイントなんで、分析的には気になります。けれども、そういうこっちゃなくて、ヤトリというほとんどかなめのキャラクターをちゃんと、ドラマの在り方から、死なせてしまうのは、作者はちゃんとこの物語を神の視点から俯瞰して作っているんだなーと感心するんですよ。戦記もののポイントは、マクロとミクロのバランスなので、このテーマを作った時点で、これを描かなかったらおかしいんですよね。けどやっぱり、そはいっても、こんないい子を、、、、と胸に迫りましたよ。いや、死んでほしくなかったんですが、、、、。小説のでヤトリと主人公の子供時代の宝石箱のようなシーンは、たまらないですよね。逆算して悲劇に至るとわかるからこそ、あのシーンが、せつなく深くキラキラするんですよねぇ。


だからこれを真正面から描くということは、帝国の滅亡というマクロを、キャラクターのドラマトゥルギーと同じレベルで重要視しているからなんで、いやいい作品だな、と思うんですよ。だから、とても安定感がある。職人的な感じがするいい感じの小説家さんですね。『宇宙軍士官学校』とか『小さな国の救世主』(この二つとか、なんでアニメ化しないのかわからないと覆うぐらい渋い秀作)鷹見一幸さんを思い出します。でも、さっと、アニメ化しているのだから、それ以上の何かがあるってことなんでしょうねぇ。


僕のこの作品が、地味にいいなと心底思ったのは、マシュー・テトジリチくんですね。小説の挿絵でもアニメのキャラクターでも、はっきりいって脇役&ヤなやつにしかみえないじゃないですか。でも彼の地味な成長と、天才的な英雄を目の前に見せられながらも、対等であろうと悩み苦しみながらも、半歩づつ前に進んでいく姿は、こいつむちゃくちゃかっこいいじゃん!!と、胸が熱くなりました。

このブログでは、基本的に、物語の新しいパターンや構造を見つけたりしないと、なかなか高い評価はつけません。また、映画でも漫画でも何でも境界なく評価しているので、例えばハリウッド大作のみんなが見ているハイクオリティの作品と比較して、その時間を費やす価値があるか?という視点になるため、小説や漫画は、とても点が辛くなる。特に小説は敷居が高い(読むのに時間のコストがかかる)からです。そういった中では、僕の大好きでたまらないライトノベル群は、基本的に★3つを超えないんですよね。たいてい。★4以上は、他の人に、無理やりでも進める価値があるか?という視点の境界なんで。ということからすると、特に戦記モノとしての新しい視点があるわけでもなし、シリーズで長いので読む価値がどこまであるか?という風になると、評価が低くなってしまう、、、、「にもかかわらず(これがいいたかった!)」、とても面白かったです。安定した戦記ものの背景が構築されて良かったです。戦記モノ系が好きな人には、悪くないお薦めの作品ですねー。

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン (4) (電撃文庫)