『ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンXI』  宇野朴人著 どのように人々の参加意思をつくりだしていくのだろうか?

ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミンXI<天鏡のアルデラミン> (電撃文庫)

評価:★★★★星4つ
(僕的主観:★★★★☆4つ半)

最新刊の11巻まで到達しました。うん、よかった。ああ、やっぱりこの物語も最前線の物語の一つなんだなって思った。シャミーユが何をしたいのか?がやっとわかってきた気がする。この巻の話は、とてもよかった。アルスラーン戦記で、アルスラーン奴隷解放をしたところ、ご主人様を殺した悪い奴め!と逆に奴隷に襲われた逸話は、僕はよく出すのですが、あれのもう一歩先に行っているんですよね。為政者のシャミーユは、もうそんなことわかっている。しかしながら、カトヴァーナ帝国は、皇帝制度、貴族制度、軍による統治に慣れた国民は、上から支配されるのに慣れきって、民衆に自分の力で統治する能力がほとんどないんですよね。ほぼ国が衰退する中で、それをどうにもできないところで皇帝になったシャミーユの課題は、究極そこ。こいれって、英雄人に任せる時代は終わったというか、英雄に任せる倫理的な卑怯さの告発が前提となった世界で、それでも衆愚になりやすい人々にどうすれば、参加意識を、自分たちが自分の主人だと思ってもらえるの?という話。これが個人の自覚や自己実現ではなく、帝室があり、皇帝専制とはいえ、内閣による統治が機能している世界で、どうそれを実現していくかのプロセスに迫っている。このあたりの作品って、あまりなかったから、やっぱりテーマ的に見て、最先端の作品なんだなーと感心した。こうした戦記物は、そもそも、3か国の設定にしないと、外交戦略にならず二元論的な殺し合いに堕してしまうので構造的に良くないと思っていたんですが、なるほど「これ」を深掘りしようとしているんですね、作者は。いやーいい着眼点です。ただ、一つだけ不満をというか僕の感覚では、ヤトリが死ななければならないほど、シャミーユがそこまで追い詰められなければならないほど、この国が腐敗してボロボロになっているかというと(実際はなっているんだろうけど…)そこまで思えないんですよね。そこがうまく表現しきれていないので、もう少し方法があったんじゃないか?という気がしてしまう。でもま、そのへんは、これだけのサーガになってしまえば、しょせん言ってもせんなきことかもしれないですが。とにかく、シャミーユは、この国をどこに導くのか?。この専制や軍の統治に慣れた国で、どうやって、主権の意識を民衆に喚起していくのか?何をするのか?はスゴイみものな気がします。


金の国 水の国 (フラワーコミックススペシャル)


ちなみに、国のマクロを見据えて、先の向かって、大きな手を打つという物語の中では、『金の国 水の国』がめっちゃよかった。久々に、ばっちり★5つ級でした。時間あればどこかで記事を。超おすすめです。


黄金の王 白銀の王 (角川文庫)


『黄金の王 白銀の王』 沢村 凛著 政治という物は、突きつければこういうものだと思う。けど、こんな厳しい仕事は、シンジくんじゃなくても、世界を救えても、ふつうはだれもやりたがらないんじゃないのか?
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20120126/p1

『瞳の中の大河』 沢村凛著 主人公アマヨクの悲しいまでに純粋な硬質さが、変わることができなくなった国を変えてゆく
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20111217/p7


このマクロを変えようと願った個人の地獄というか、悲惨さというか、無理さってのをこれでもかと描いたのは、沢村さんの作品群がいいですね。これも★5つ級の作品で、超おすすめです。



ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン (10) (電撃文庫)


あと、ちょっとすすめると、戦記物で、大傑作というと、やっぱり流血女神出伝シリーズですよね。これも素晴らしかった。


帝国の娘 上<帝国の娘> (角川文庫)