『クロの戦記』 サイトウアユム著 クロノくんが帝国を継ぐか建国するまでをちゃんと描いてほしいなー。

クロの戦記 1 (オーバーラップノベルス)

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評価:完結していないので未評価
(僕的主観:★★★☆3つ半)

少し前に好きで読み込んでいたなろうの小説って、ほとんど根こそぎと、というか軒並み商業化されていて、調べると驚く。これって、たぶん何も考えずに、ただ商業化されても、それなりに商売になるのでしょうね。ただ、なろうの、このようなweb小説の問題点は、完結に向かっての構造が設定されていないことが多くて、途中で停滞して終わってしまうことが多いことなんですよね。ほとんどすべてに近い作品が、そうした問題点を抱えていて、それを見極めないで商業化して、それってどうなんだろうと、思います。まぁ商売のチャンスは、逃さないのが重要なのもありますが、こういう場合の中身に対するポリシーは、結局中長期的にはその会社の浮き沈みに関係するよなぁと思います。だって、最初はよくてもそういう理念がないと、確実に生きずまるもの。短期と中長期は、違いロジックで動いているからね。


えっと、仕事が忙しすぎて、ほとんど現実逃避で、土曜日に寝込んでいた時に、過去の気に入ったなろうの小説を読み直していて、久しぶりに更新されてたので読みなおしちゃったんですよね。これ、基本的に構成がごちゃごちゃしてて読みにくい。なので、何度も読み直すって感じじゃないんですが、僕はどうも、ティリア皇女が好きなみたいで(笑)、彼女のシーンを読み直したくて、少し読み直してたんですよね。そこでリザードマンの兵士が、ボロボロになって主君であるクロノを守るために、最後の命をかけて前線に特攻するシーンが出てきたんですが、これが胸が熱くなったんで、ああこの作品のコアの部分は、この系統の作品尾重要なテーマなんだなぁと、思ったんですよね。命を懸けるリザードマンは、自分で自問自答するんです。なんで、おれは命を懸けているのか?。って。もともとクロノ(主人公)のいる帝国は、亜人を蔑み差別化して扱っていて、未来もろくにない貧困の生活を送っており、確かに、クロノは日本からの転生者なので、分け隔てなく亜人を扱うにせよ、しょせんは、それは、偶然その人が優しかったというだけにすぎない。けれども、以前の激戦の時に追い詰められた亜人に対して、何のために戦うのか?とクロノがしゃべったんですよね。セカイジンケンセンゲン。教育のない亜人たちには、それが何を意味するのかよくわからなかった。けれども、クロノがいつも示してきた、誰もが平等に生きられる社会、人間と亜人が差別されない世界。頑張れば、報われ、よりよい明日が見られる。その理想を垣間見てしまった。その理想があるかもしれないということに、自分は命を懸ける気になったんだ、、、、と内心、意識途切れる最後の思いを抱きながら、この兵士は死ぬんですよね。クロノ君自体も、自分の命令でバタバタ死んでいく、仲間に、強烈な共感を抱いていて、そこに対して強烈な責任と贖罪意識を持っている。正直言って、ぼくらが生きる2017年の現代は、この人権という建前が機能しなくなってきており、それによって語られる立て目によってむしばまれる現実に世界が飽き飽きしていることが、ポピュリズムによって噴出している時代なんですが、、、、逆にそうだからこそ、じゃあ、その「建前」の本義、起源ってなんだっけ?ということが、逆に問われ直す時でもあるんだろうと思うんですよね。その時に、こうしたファンタジーの世界の中での人種の、種族の違いって、まさにそのことをあからさまにするとてもいい題材なんですよね。『クロの戦記』自体は、僕は、小説としての出来は、もう一歩ほしいところではあるけれども、構造は、いいと思うんですよね。これ、究極は、クロノくんが、独立して新しい帝国を打ち立てるのが目的になり到達地点になるわけですよね。元皇位第一継承者で、事実上の簒奪をされたティリアを愛人として手元に置いているのも、筋的にいいですよね。感情がのるんだよね、やっぱりクロノの建前的な意識も、たぶん日本出身で、気が弱いからこそ、仲間を対等に見ちゃうと、責任意識が強くなっていってしまうんだろうねぇ。そして、虐げられた者たちが、生きようのない思いが結集していくというのも、どこかに出口があれば、ガーっとそこへ向かってしまう。これ、エルフとかドワーフとか、様々な種族を描くときには、絶対に隠れているテーマで、これを描き切った戦記モノって、今んところないんですよね。良い題材だなーと思います。でもなー。本当にそこまで行きつくのだろうか?という不安が読んでいてしちゃうんですよね。読者がそこまでついていくか?というのも。まぁ、わからないけれども。ライトノベルのというか、今のエンターテイメントのトレンドって、凄い勢いで変わっていくし深化していくので、よほどすさまじい筆力というか魅力がないと、テーマが貫徹する前に、そのテーマが陳腐化してしまう気がするんだよね。そこまでの勢いとスピードは感じないんだよなぁ。好きなんですが…。


でも、ティリア皇女、いいっすよ。こうプライド高いというか、ちゃんと皇女としてというか、為政者としての意識があるし戦略眼も素晴らしいのに、人間として基礎のところが、だいぶ残念なところが、可愛すぎる。軍学校で、圧倒的なエリートで、全然主人公のクロノくんからすれば高根の花だった関係を引きずっているのとかも、いいね!。うーん、クロノくんよりも、ハーレムを形成する女の子たちの内面の方の話のほうが、とっても面白いよね、この小説。フェイもエレナもとても覚悟があって本気でいいよ、人生に。まぁだから、話がごちゃごちゃしていても、面白いし、人気があるのだろうけれども。


クロの戦記II (オーバーラップノベルス)