『プラネテス』 (JAPAN2004‐05)谷口悟朗監督  タナベの新入社員奮闘記にフォーカスされている潔い切り捨てで、アニメでも傑作になることができた!さすが谷口監督!!

プラネテス Blu-ray Box 5.1ch Surround Edition

評価:★★★★☆星4つ半
(僕的主観:★★★★★5つ)

素晴らしかった。2日で、全部見切ってしまった(といってももう去年だけど)。谷口悟朗さんの作品は、全部見ようとずっと思っているので、やっと見れた。『無限のリヴァイアス』『プラネテス』『コードギアス 反逆のルルーシュ』は見たので、あとは『スクライド』『ガン×ソード』を見ないとな。


それにしても、いやはや、監督の才能というのは、あるんだなとしみじみ思いました。この作品は膨大な語り口はあるし、谷口さんの作家性を話すときりがないので、メインの感じたところだけ、に絞ってみます。漫画版とのいろいろな違いがあるけれども、アニメ版の方が、とてもすっきりとしている。それは、ハチマキの成長物語であり、タナベの新入社員奮闘記にフォーカスされていて、それ以外の深遠な要素を全部かなりか狂捨象した、思い切りの良さに、谷口監督の凄みを感じました。だって、幸村誠さんの「ここではないどこかへ」という衝動の深さテーマを軽くしているわけですから。ある意味、とても駄目な作品になりかねない決断だと思うんですよね。だからタナベやロックスミスの持っていたテーマが、ほとんど描かれていません。けれども、だからこそ流石、と思いました。


というのは、特にタナベの扱いがとても気になりました。というのは、アニメでは、この子は本当に普通の子になってしまっている。ただ単に、恋い恋している普通の女の子だし、彼女の言う愛というのは、正直言って、ほとんど深みがない。幸村誠が絵描こうとしていたアガペータナトスによっている深淵は、まったく描かれていません。でもね、僕はそれで正しいんだと思うんですよ。だって、漫画版のタナベのいう「会い」って意味わかりました?。何か深いことを言っているようで、判定はつかないのですが、少なくとも僕にはよくわかりませんでした。このテーマは、後に『ヴィンランド・サガ』のクヌートに引き継がれることになりますが、あそこまでいかないと、意味が全然わかりません。タナベを描いている時点では、はっきりわかっていなかっtらんじゃないかなぁ?と思うんです。読者に明確にわからないこういう部分を、バッサリ、切ってしまうところは、さすがだ、と唸りました。


けれども、それが故に、タナベは、本当にどこにでもいる普通の子になってしまいました。正義感が強くて、優しいだけの。そこに根拠も特にありません。父親と母親の話も描かれないので、根拠はアニメ版の方ではさらに全然わからないでしょう。しかも、連続で『甲鉄城のカバネリ』の美樹本さんのキャラくいたーの動くのなんか見たら、その差に愕然とするぐらいです。最初見た時、かわいくないなーって思いましたもん。顔も平凡で描かれているし、しかも中身も、ようは、空回りしている新入社員で、見ていてしんどい。


そうした、普通の子が、普通に前向きに頑張る新入社員奮闘記になっているんです。。。。それが、回を重ねてみてくると、びっくりするぐらいかわいく感じるようになっていくんですよ。このタナベっていう子は、フィーやハチマキなどの他の同僚に、とても好かれているのがわかるのんですが、それは、彼女が前向きだからですよね。その前向きさも、ずっと前向きというわけではなく、滑ったり転んだり、落ち込んだりしながらも、ちゃんと前にしなやかに戻れる前向きさ。幸せな家族で育ったことがうかがえる、安定した感じ。


・・・・・というようなキャラクターの実在感が、じわって出てくるんですよ。2004年のころの映像や演出は、今の時代と比べてもそれほどいいわけではありません。これって明らかに監督の脚本の力ですよね。タナベという人間が、実在感を持って描かれて演出されている。深淵なる魅力を持っていた、哲学的な深さのある漫画版の方の魅力をすべて、理解できないから切って捨てたにもかかわらず。いやーさすがだな、谷口監督と唸りました。この作品は、新入社員のお仕事物語になっていて、それがたまたま宇宙であった、という設定になっているんですよね。非常に、幸村誠の表現の中でわかるように作り替えられている。いやはや、見事だと唸りました。


プラネテス(1) (モーニングコミックス)