『才川夫妻の恋愛事情』兎山もなか著 ここまで「じらす」って男側の健気さと彼女への深い愛に感心しましたよ(苦笑)。

才川夫妻の恋愛事情 作者:兎山もなか
http://novel18.syosetu.com/n1346dh/

客観評価:★★★☆3つ半
(僕的主観:★★★★★5つ)

えがった。仕事で長時間電車に乗っていたのですが時間を忘れて全部読み切ってしまいました。久々にすごいよかった 特に才川君と花村さんの馴れ初めの話の回がすごい良くて、これは才川くんが 奥さんに初めて会って惚れた時の話を描いている話なんですが、あーこれは惚れるなというふうになんか思ってしみじみ思ってしまいました。まぁ書いてありますが、就活ラブは、ストックホルムシンドロームのようなもので、就職活動の非日常のドキドキと恋愛をまぜこぜにしているので、進路が決まると(たいてい望まない結果になる)たいてい、別れますよね。でも、結局どんな陳腐な出会いでも、出会いは出会いで、胸に刺さってしまうかどうかなんですよね。そして刺さったものを、奪い去って、絶対に話さなければ、幸せって続くんですよね。なかなかできないですが。そういう意味では、才川君、少し急ぎすぎですが、いやーいい決断力と押しだなーと感心します。


それにしても、もなかさん、この人、会話とか間合いの感じの表現が、とても上手いですね。花村さんのほんわかとした天然な感じがよく伝わってくる。それだけではなく、才川君が、彼女をどう眩しく見ているのかが、伝わってくる。


ずっと、ほんわかしっぱなしで、新婚当初とか付き合い始めのドキドキがずっと続いている感じで、堪能しました。この話にひきこまれて、凄い感動したのは、もちろん作者の兎山もなかさんが、とてもとても関係性の描写がうまいというのもありますが、自分の恋愛や愛を見る時の課題いというか問題意識(笑)に凄い沿っていたからでもあると思います。

えっとね、これを読んでいる時に、いろいろ思いついたので、、、こういう少女マンガを見る時に、僕の中ですっごく大きな見る視点って、なんだろう?って少しまとめてみました。それは、


「キラキラ」って、どこからきて、どこへいくんだろう?


というテーマです。うんとねーこれって、関係性を見る上で、そして少女漫画を見る上で、それから僕がテーマに見ている「家族」の変遷を見る上で、そして自分の恋愛や家族を考える上で、そのすべての主軸となるアイディアというか「ものの見方」なんです。


ロマンチックラブイデオロギー解体の視点で恋愛を描いた物語を眺めてみる(1) あなたにキラキラはありますか?
http://d.hatena.ne.jp/Gaius_Petronius/20130405/p1


ちなみに、結婚観について、結婚後の男女の関係性についての日米の差異を凄い感じた『Shall We ダンス?』は、ぜひとも日本版と米国版を比べてみてほしいです。これは断トツに、僕は、リチャード・ギアの解釈に感情移入しました。奥さんを、奥さん「その人」を好きな人は、こういう解釈にならざるを得ないはずだからです。この記事は自分でもすごい気に入っていて、なるほどこういう風に男女の関係性を考えるのかという、モノの考え方のヒントになると思うので、おすすめです。

Shall we ダンス? [DVD]

どこかのインタヴューでで主演のリチャード・ギアが、


「オリジナル版の周防監督の脚本は、完璧であって、リメイクにあたって変えるところはなかった。」


と云っていたが、まさにその通り。


演出の要である各キャラクターの動機(モチヴェーション)の解釈は、100%といっていいほど同じであり、そもそものオリジナル作品の脚本構造の完成度の高さが、リメイクされて(役者や状況を入れ替えて)初めて際立って理解できた。いい脚本は、シュチュエーションや役者を問わないのだな、と関心しきり。


しかし、ただ一点だけ、邦画と全く異なる解釈が為されている部分がある。


それは、リチャード・ギアスーザン・サランドンの夫婦関係の解釈だ。


これはリチャード・ギアも喧伝しており、結構有名な話だが、実際に映画を見ると日米の夫婦関係の違いを非常に強い形で見せられて、非常に興味深かった。これほど見事にツボが違うのは、たぶん米国における家庭・夫婦観と、ものすごく異なっているということだろう。異文化理解にも重要ポイントかもしれない。



Shall We ダンス?』 ピーター・チェルソム監督 妻への本当の愛情
http://ameblo.jp/petronius/entry-10076503891.html

Shall We Dance ?(初回限定版) [DVD]


昔どこだったか恋愛関係の記事で書いたことがあるんですが、一番いい恋とかHってどんな風にできるのかなあ?とつらつら考えていると、やっぱりも焦らして焦らして焦らしまくるのが一番いいんですね。というか、恋愛初期の初めてのHとか、初めて覚えたての頃とか、もうどっかドッカン、キラキラしているじゃないですか(笑)。動物のように。でも人は慣れて飽きて、落ち着いていく。この「最初の部分だけがいい」というと、次から次へと相手を変えていって。そして年老いて、その先にあるものに出会えずに人生が終わっていくという悲しい失敗をしてしまうのですが、まぁ、Hとか恋ってそういうものなので初期のステージが一番、新鮮でドキドキする。けど、なんというのかなー恋愛なんて3か月も付き合えば、3か月もヤれば飽きちゃうものなんですよ。少なくとも初期ステージのドキドキ感は失われる。だったら、この初期のドキドキを維持するためにどうすればいいのか?と考えると、それは寸止めの放置プレイなんですよね(笑)。要は、焦らす。つまり引き延ばすわけです。まぁ、初めてであった時とか、年若い頃は、野獣ですから、それは無理なんですけどねー(苦笑)。


えーと何だったっけなあ・・・・思い出した外薗昌也さんと別天荒人さんの『ガールフレンド』という作品の確か1巻と3巻の最後の章で書かれている美奈子と京一の話だったと思います。これ昔、記事で書いたんですけど、好きなんですよねー。この二人のシリーズは、結局まだ実際にはエッチを全然していないんですよね。ひたすら精神的な焦らしだけで、じわじわ話が進む。これ男の方が、それをすごい頑張って演出していて、女の子の方がなぜそんなことするのかよくわからないとジリジリ悶えるという『才川夫妻の恋愛事情』と構造的に全く同じですね。才川夫妻は、既に夫婦ですが、それゆえに、よく才川君我慢するなーと、その涙ぐましい努力と、鉄の意志に感心しましたよ。あんなかわいい奥さんが隣で寝てたら、我慢するのまず不可能だよ。別途を別々にとか、本当に、わかるよ、あれそうでもしないと我慢するの不可能。

この作品で、1巻の最後の章と3巻の最後の章で描かれている美奈子と京一の話が、凄いお気に入り。(あっちなみに、数話ずつで完結する形式です)

これわっ!!!

よくわかっていすぎるっ!!!。

すごいぜ京一っ!!!!。

そんなに若くて、既に放置プレイかよ!!!!(笑)。

実は、この二人のシリーズは、まだ実際のHシーンは全然ないんだよね。あくまで、精神的なじらしだけ(笑)。うーん、若いのに、わかっている(笑)。

というか、若くないと、ほんとうはできないことなのだが、これを、若くして理解できていたら人生かわっていたと思う(苦笑)。すげーうらやましい(笑)。たぶん、女性側も、男性側も、どっちの立場であっても、うらやましいなぁ〜。でも、この京一の自意識のあり方は、物凄くよくわかる・・・・おれって(笑)


■あらすじ
高校生活は楽しいんだけどなんだか満たされない感じで普通に生きていた美奈子は、同級生の京一というみんから変人扱いされているヲタクに、あるとき、マンガを貸してもらいます。

誰とも仲良くなる美奈子にとっては、別に、特に意識したわけではなく、ただ単に「おもしろそうだね」といったら貸してくれたので借りただけでした。彼女は、すっごくもてる美少女で、最初は、マンガや本ばかり読んでいる京一を最悪のキモオタクとか思っていました。

けど、その貸してくれた小説やマンガがすっごいおもしろくて、何度もいろいろ借りているうちに、京一ととても仲良くなっていきます。

ちなみに、このプロセスは、すごいわかるなー(笑)。

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ちなみに、そんな誰からも好かれる美少女の美奈子と付き合うようになった京一は・・・

**************


(以下美奈子の回想のセリフ)

「こいつは・・・・・私を抱かない・・・・!?


つきあいはじめて2ヶ月以上になるのに キスは一回だけで、それ以上は なし・・・


いつも突然・・・・・・・・・体に触ってくるだけで それ以上は何もしないのだ」

**************


触るといっても、指で背中を触る程度。

この、なぜ、彼女にHを求めないかの京一の理由が謎解きになって緊張感を与えるのですが、この理由がすごい!!!。すごいんだよ(笑)。


・・・・・・・・・・ほんとは、「ここ」の部分を、説明したくてしかたがないんだが(笑)。でもまーまだ読んでいない人もいるでしょう、辞めます。ただ、未知へ踏み出す感覚を、ペンディングするワザは見事です、ということだけ。


こういうちょっと痛くて、SEXに自意識が絡む話って好き。


これは、男性ではなくてむしろ女性の意見を聞いてみたい作品だ。



『ガールフレンド』 外薗 昌也:著/別天 荒人:画/自意識を描いた恋愛〜京一と美奈子
http://ameblo.jp/petronius/entry-10007236944.html

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これねこれ、男性の方、京一くんんが本当によくわかってますね。夫婦がダメになっていくプロセスは、飽きが大きいと思うんですよね。飽きに対して、なにをするかというロングスパンでの問題意識がなければ、通常のプロセスに飲み込まれていくものです。夫婦に限らないと思いますけど恋愛とかが駄目になっていく理由を言うのは飽きで、これをどうやって乗り越えられるのかというのが、凄い重要なことなんです。しかし、ここがなかなか難しいことだとは思うんですが、飽きに対して対抗するのに対して強度というかそれに対する方策として、激しいテンションを持ってこようというと考えるのが、通常の気づきなんですが、、、、、「ドキドキ」がどれくらい失われないかどうかが「どれだけ相手が本質的に好きかの指標」なんですが、仮に、本当に好きでも3年ぐらいの単位でも、どうしてもかなり摩耗してくる。どうやってこのドキドキの新鮮さを、言い換えればSEXの(うわっ即物的(笑))強度を保つかという風に考えると、より激しいHをって話になってしまいやすい。単純いわかりやすいし、論理的に具体的にその方向が見えやすいからですね。だから、飽きが来た夫婦(恋人でも同じですが)が、3 P に行ったりとかスワップ(相手交換)とか、そういうのに行きやすいんですね。『失楽園』とか浮気でも、その方向ですよね。ようは、新鮮な刺激がほしいという動物的な動き。この辺の文脈を突き詰めていくとキューブリック監督の『アイズ ワイド シャット』みたいな、意味のわからん話になりますが、この辺の「感覚」や「感触」は、このへんの倦怠感の不毛さ、摩耗した感覚を、日常のインプロヴィェーションが失われて、日常から脱出できない不毛をベースに考えると、よく理解できます。要は、対応策に強度を、より激しいものを求めているわけ。ちなみに、ニコールキッドマンのこの映画の最後の結論が「ファック」だったのは、夫婦が揉めたり倦怠期が訪れたら、とりあえずやっとけ!という結論なわけですよ。キューブリックもインタヴューでいったので、これまじです(笑)。


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とはいえね、この強度を求める方向というのは、悪手というか筋が悪いんですよ。3Pとかスワッピングとか野外プレイなっていたりとかって、その程度だったらまだいいのかもしれませんが、これもめちゃくちゃもっと行くとならどんなひどくなっていけるじゃないですが、、、暴力をサンプルに考えるとわかりやすいんですが、人生と同じですね、勝って、勝って、勝って戦って上昇すれば幸せになれるのか?と言うと、それは全然別のもうなったりまするもんですよね。幸せと勝つことは別物だからです。非常に難しいパラドックス。強度を求めるには、ひねりがないと、エスカレートするだけなんです。そして破局が訪れる。


ただし新婚とか付き合い始めという意味で考えるならば、この方法(=焦らし)は、最も良い方法だと思うんですね。まぁ、若い時はがっつくので、難しいんですが(笑)。で、この『才川夫妻の恋愛事情』が、特にいいなと思うのはこれもちょっとエッチな話なんで、セックスも含めて描かれているので、恋愛を描く少女漫画よりもの射程距離がすごい長くいいんですよね。やっぱり大人な立場としてはですね、こういうのいいなって思うんだよね。相手のことを好きな気持ちが背景にあってセックスをする時の恍惚感や幸せ感っていうのは、まあとんでもないものがあるんですけども、山のピークみたいなものがあって、飽きによって徐々に下がる。それをどうやって、その山の部分でキープするかっていう話なんですが、7年もキープする(笑)。才川君天才!と思いました(その我慢の凄さに茫然とします・・・・死ぬほど奥さんが好きなんだなぁ、、、と感心します。)。まぁ、これって、彼の不断の努力と、最初にそういう風にしないといけないという関係性の条件ができてしまったのが理由で、その意味で作者は、うまく作ったなーと思うんですよ。全部ちゃんと理由がある。この理由がないと、才川君、ただヘンタイのおっさん的思考になってしまう。これ、酸いも甘いも理解した、おっさんの思考だもん(笑)。


この状況を作り出すために裏で死ぬほど男性が苦労していて、死ぬほどあの彼女のことが好きすぎて、努力に努力を重ねて一切それを見せてないという構造になっている所は、非常に女性の視点の物語だなとおもいます。作者、女性なのかな?。おっさんの論理なんですが、少女漫画的な構造なんだとおもうんですよね。なので、答え合わせのように、花村さん押しての後に、才川君が「そういう行動をしなければならなかった涙ぐましい努力が描かれる。とてもとても男性に苦労をかける話です、これ(笑)。これだけ好きすぎてかわいい奥さんがいて、数か月に一回ぐらいのHしかしないなんて、、、、鉄どころからダイヤモンドの意志ですよ、これ。才川君、、、、お前、偉すぎ。


ちなみに重要な点なんですが、これほど「愛される」ような花村さんはどうやって出来上がったのか?というか、育ったのか?という点も、ちゃんと言及があるのは、僕はこの作者は、よくキャラクターの背景を感じ取っているなぁと感心しました。普通に生きていると、普通にしかは育ちません(笑)。でもあきらかに、花村さんの両親は、一瞬しか出てこないけど、頭おかしいですよね(笑)。これだけ愛情が深く深くありそうでありながら、凄いリベラル(=いい意味で頭がおかしい)ですよね。この両親って吉住渉さんの『ママレードボーイ』をすごく思い出しましたよ。

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そういえば、『ママレードボーイ』続きも出てますよねー♪。

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ここに言及がないと、たしかにほんわかしててかわいいんだけど、花村さんが、それほど才川君から眩しく見える理由が不明確になってしまいます。うーん、考えれば考えるほど素晴らしい。こういうの抽象的には、このシュチュエーションがいいというのは簡単いわかるんですが、具体的にどういう舞台で、どういう動機を持たせて、しかもミクロの関係性やキャラクター描くかって、凄く難しいんですよね。だって、これHな小説ですが、要はポルノ小説ですよね。最初から、花村さんは人妻なんで、やられまくっている描写が続きます。描写は描写なんで、それは即物的なもので、文脈的に、どうやってキラキラを「読み手にまで」感じさせるかはってのは、文才ですもん。それくらい、花村さんが初々しく魅力的に「描けなければいけない」わけで、それって難しいですよ。それに、実は結婚しているんだけれども、会社ではそれを隠すというシュチュエーションコメディまではよく思いつくんですが、隠すためにわざわざ同僚(同期)で、花村さんのことを好きすぎる、口説いているというシュチュエーションで、毎日毎日甘々に口説き続ける・・・・しかし、家に帰ると、冷たくて寸止めで、なかなかHしてくれないとか、、、、調教ものになっていて、、、、いやこのことかんがえだした、作者、偉すぎです。


凄い、楽しかったです。Hな小説ですが、即物的な気持ちよりも、なんかずっと愛あふれる感じがして、ほんわかしました。そうなんだよ、SEX含んでのこういうホンワカの愛が最高なんだよ!って凄い思います。これも家族愛や夫婦愛に足を踏み入れていて、にもかかわらず恋愛最初の新鮮味を構造的に持たせるとか、、、いやはやいいです。


才川夫妻の恋愛事情 7年じっくり調教されました


コミカライズされていますが、絵柄的には、僕はずっと、なぜか今村陽子さんを思い出していたので、僕のイメージは、そっちだなー。


彼女が俺を好きな理由 (ヤングキングコミックス)