『北欧貴族と猛禽妻の雪国狩り暮らし』 江本 マシメサ著・あかねこ 画  ほのぼのとした夫婦のラブストーリー。穏やかな読後感を楽しみたい人におすすめ。

北欧貴族と猛禽妻の雪国狩り暮らし

客観評価:★★★☆3つ半
(僕的主観:★★★☆3つ半)

結局全部読んだ後で感じたことは、ほのぼのとして穏やかな話だったなぁというだけでそれ以上のものは特に何もなかった。同時に、特にケレン味がないせいで、夫婦の穏やかな愛が最後までクローズアップされていて、逆にそこが安心のクオリティといった感じでよかった。辺境の北欧貴族というか、北欧やアイスランドエスキモーとかあのあたりの生活ってのはこういうものなんだろうと思う。『狩って、採って、食べる! ただそれだけの、でも愛しき日々』という最後の締めのセリフは、いいねぇーと唸りました。伯爵とは名ばかりの、ほとんど狩猟生活をしているリツハルドくんと、その奥さんの元軍人の年上妻ジークのほのぼのとした狩猟生活で、一言でこう表して、それ以上でも以下でもないお話。それほど長くなく、さくっときれいに終わるのもいいと思う。僕はとても、穏やかな話で、ぐっと来ました。この絵と、この感じで読んでみたいと思わなければ、読まないほうがいいし、いいなと思うなら、読んでみると穏やかな気持ちになれると思います。僕は好きだなぁ。

とはいえ、意外に背景にある北欧貴族という設定はとても面白いと思う。『アナと雪の女王』でもそうなんですが、あれは、民衆と王族の距離がダイレクトで凄く近い関係であるという北欧の王家の在り方をしらないと、意外に、?になりやすい。僕はあの話がよくわからなくて、調べているうちに北欧の王族貴族の生活が、僕らが普通に考えるヨーロッパとかの王家の在り方とずいぶん違うことがわかって、ホーと唸ったのを覚えている。愛しき狩猟生活を的な設定は、様々なな物語であるのだが、それを北欧というところでクローズアップしたのは、興味深いなって思いますよ。考えてみると、日本からかなり遠い世界で、あまりなじみのないところがいいです。

本当は背景としてはもっと複雑な話には出来たんだろうけれどもそこをぶった切ってひたすら夫婦の愛情物語にしている所が胸がほんわかしてとても良かった。実際には、」たとえばジークは元軍人なわけで、あれほどの傑物だと、どれくらい悲惨な戦場を駆け抜けてきて、、、という過去の話トラウマ作りは物語を深めたり広める上でいくらでもできただろうし、上記で書いたような北欧の統治の在り方でもっとトラブルをマクロ的に描いて、、、とかにもいくらでもできたのだろうけど、そういうの一切なしで、ひたすらほのぼのいちゃラブな、穏やかな夫婦の愛を描き続けているところが作者らしいなーっ思いました。これ、ジークって、得をしたなと思うんですよ。彼女は、自分が大事だろうと思うもの、自分が幸せだろうと感じるであるものへの嗅覚が素晴らしいですね。よくあんな悪名高いリツくんのプロポーズを、ほとんど何も知らない状態で受けたなぁと思いますよ(笑)。でも、人生って、ああいう意味不明のチャンスを、がっと握れるかどうかで決まるわけですよね。
そういうもんです。

北欧貴族と猛禽妻の雪国狩り暮らし 4 そして愛しき日々