『「世界史」講義 I古代・中世編: 教養に効く!人類5000年史』 出口治明著 ユーラシア大陸を一つのものとしてとらえる視点を!

「全世界史」講義 I古代・中世編: 教養に効く!人類5000年史

客観評価:★★★★★5つ
(僕的主観:★★★★★5つ)

最近出口治明さんの『仕事に効く教養としての世界史』そしてこの前『世界史講義』また『世界史の10人』という本を読んで行くことによって結構長い間この本を読んでいるんですけども、一言で言うとですね、意外にこれつまらないなあと、ずっと思っていたんですね。出口治明さん自体は非常に興味深くて尊敬している人なんで、様々な日系ビジネスとかですね、記事に出てるものなんかは、とても好きで、それを貪るように何度も読んでいるんですけども。これらのシリーズの本は、あまり面白くないなぁって思っていたんですよ。

人間の社会というものをよりよく理解するためには人類の歴史5000年史をひとつのものとして理解しなければいけないというのは、出口治明さんの主張のポイントなんですけれども、意外に、このこれらの本を読んでいてもですね、面白くない。そう思うんですね。それは何でか、と言うとですね、読んでみるとわかるんですけれども全体像を全部網羅しようとするあまりにですね、具体的に細く展開することがないんですね。なので歴史の面白みというところで言うと各国史の、たとえば日本史などのですが、非常に深く追求していくことにあると思います。たとえば、関ケ原の戦い徳川家康の心理とか。でも、全体像を語ろうともうと、そういう枝葉末節のことは省かなければならないんですね。なので、山川の教科書を読んでいるような形に感じてしまう。無味乾燥なんですね。

出口治明さん自体が非常に事実を重要視する形で書いているのも、それに拍車をかける。文学者ではないので、そんなに魅力的な個性的な文章を書くわけではないので、さらに無味乾燥になってしまう。と、いうふうに思っていたんですね。これは読んでいればそういう風に感じる人が多いのではないかなと思います。特に『全世界史講義』何て言うのは、そもそも世界史のベースの知識、様々な各国史の歴史に対する知識がない人間にとっては、なかなかそれ自体を具体的にイメージを持って豊かに読み解く力ってないと思うんです。もともと教養がないと、これらのことを楽しむことがなかなかできないではないかという風に感じます

しかしながらですね、これをですね、出口治明さんをとても尊敬しているので、とにかく全部読もうと、結構長い間、1年とかダラダラと繰り返し読んでいたんですけれども、そのうちに、あることがわかってきたんです。それはまず第一に、どうもこの人は歴史全体を見なければいけないという時に、何を見ているのかと言うと、ユーラシア大陸の歴史を一つの単体としてでも見ているということがわかってきたんです。これって東の端日本・中国と西の端ヨーロッパ、ここで起きていることを、そしてそれをつなげる間としての遊牧民中央アジアという風な形での歴史を「影響の連鎖」としてとらえているようなんです。ひとつの出来事起きたらそれかバタフライエフェクトではないですけれども東に西にインドに、様々な地理的な要因を超えてどのように展開していくのかという部分について非常に重要視している。だからトルコ系やモンゴルであるとか、遊牧民の文化と文明と国家というものが重要なポイントになっている。この部分が当然我々日本人にとってはほとんど知識がないものなので、そこの分が空白になっていて、横文字の名前ばっかりなんでよく分からなくなってしまうという事が一つ面白さを失ってる原因なんです。

でもキーとなる考え方が、ユーラシア大陸を、一つのものとして捉えているんですね。この考え方というのは、戦略論で言うときの、マッキンダーの考え方だと思ったんです。大きく人類の歴史というもの、人類の戦略というものを考えてる時に、どういうものの見方があるかと言うと、イギリスの政治家地理学者のハルフォードマッキンダー1861年〜1947年)なんですけれどもこの人の地政学の考え方なんだろうと思いんです。これは人類の歴史というのは人類の歴史はランドパワー大陸国家)とシーパワー(海洋国家)の戦いの歴史であり、20世紀以降はランドパワーの時代に入ると考えています。また東欧のをユーラシアの心臓部とし、これをハートランドという名前にしているんですけども、これをとったところが大陸の覇権を握るという考え方に基づいています。

マッキンダーの地政学ーデモクラシーの理想と現実

反対に海からの戦略を考えたのはアルフレッド・セイヤー・マハン1840年〜1994年)でアメリカ海軍の軍人で歴史家です。彼が書いたものは、日本人の我々にとってはですね非常に馴染みが深いものなんですね。それは大日本帝国アメリカそして大英帝国が有力に展開していて、海からユーラシア大陸をですね、包囲してしまうということを戦略の重要な目的としたものなんです。1890年に書いた『海上権力史論』というものが、それを展開しています。

人類ってのは大きな二つの視点で描かれることが多いんですけれども、我々日本人にとってはですね非常に分かりにくい。大陸国家の考え方、ハートランド争奪戦という形でユーラシア大陸を全体的に有機的には繋がっていくということに対しての感覚というのが、日本では非常に弱いんですね。なぜかと言うと日本が完全な海洋国家であること、海から大陸国家を封じ込めて、権力をどういう風に作り上げるのか、コントロールするのかということを徹底追及している国家だからと僕は思うんです。私もはそういう視点がほとんどなくてですね、特には自分が一生懸命勉強しているのっていうのはアメリカ史であったり日本史であったりとかするとで海の側からの視点に偏っているんですね。また今のフェイズが、米国の同盟を基軸とした海洋派遣構想の一部に組み込まれる時代を生きるのが現代日本人なので、大陸国家の考え方がさっぱり理解できない、というのもあると思います。


とにかく何がいいたいかというと、さすが出口さん!ということが、やっとわかってきたということ。山川の教科書のような感じがして歴史の魅力がわからないなーと思ったのですが、それはミクロの意味での歴史の魅力であって、歴史そのものの大枠の視点の構造変換を迫ろうとする時には、もう一度全体の情報力をインプットしなければならなかったんですね。それを全力で(笑)よんでいて、やっとつながってきました。やっぱりさすがは出口さんです。


世界史の10人





サピエンス全史 上下合本版 文明の構造と人類の幸福



世界史としての日本史 (小学館新書)