『やがて君になる』 仲谷鳰著 加藤誠監督 侑が橙子を特別と認識しそうになると、目がさっと冷えるじゃないですか。。。これ、恐怖ですよ。

やがて君になる (1) (電撃コミックスNEXT)

評価:★★★★★5つ
(僕的主観:★★★★4つ)

昨日、アニメの11話を一気見した。1話くらい見ようと思ったんだけど、引き込まれて朝五時まで見てしまった(笑)。クリスマス・年末休暇だからこそできるこのてきとー感。最高です。明日仕事ないぜ!的な解放感がないと、違う世界の感受性にはなかなか入れないですからね。昨日最終回だったはずだけど、日本にいないのでまだ見れないのだー。

「特別」ということをどういうことか知っていく侑の内面的成長の過程と、橙子の過去のトラウマの話からの解放の話がリンクしていくのは、この物語の王道の類型で、ちゃんと大きなエンターテイメントの流れに乗っていて、にもかかわらず、他の部分がとても深く魅力的なこの作品は、最近の一押しです。

これが前回の僕の感想で、2017年の2月に書いていますね。アニメも、このラインに沿って完全に再現しており、さすがのシリーズ構成・脚本の花田十輝さんという感じです。『宇宙よりも遠い場所』でも、シリーズ構成・脚本やっているので、こういう少女の、青春の人間関係の繊細さを表現するが好きで得意な人なんですね。『響け! ユーフォニアム』でもシリーズ構成されていましたね。


が、、、、なんというか、漫画の原作の方は、僕は映画のようなシャープな美しさを岩井俊二的と言って、「そこ」の鮮やかな感じに、目がくらんでいたというか魅力を感じていたんです。。。が、漫画のその部分が鮮やかすぎたためか、アニメの方が昨今はもっと鮮やかになるしデザイン的になるのですが、そこはさほど感銘を受けませんでした。いや、めっちゃキレイなんですけど。不満足というのではなくて、対比の問題でしょうねぇ。で「背景の鮮やかさ」の感動が消えた分、そして12話まで一気に見たので、侑と橙子の関係性の「駆け引き」をずっと見てて、、、なんか、、、、橙子って、めちゃくちゃめんどくさい、と、なんか見ててしんどくなりました(笑)。いや、この場合は、二人のいちゃらぶを見ているわけなので、そのてーてー(尊い)感覚がずっと継続しているので、ほっこりするのはするんですが、、、燈子が女の子だから許されている感じがすごいして、、、、というのは、立ち位置的にもしこれが男性だったら、、、、と凄い考えてしまったんですよね。だって、燈子めっちゃくちゃ、卑怯でずるいことしているわけですよね(笑)。実質、佐伯沙弥香と小糸侑で二股とまではいわないけど、都合のいいところだけ利用している(=相手に内面は踏み込ませない)、振り回してる。それに、侑に関しては、意思の確認もなくいきなりキスはするは、体育倉庫で押し倒すはべろちゅーするわ、、、これってあきらかに「甘えている」というよりは「癒しを消費している道具扱い」ですよね。しかも本人は、それの自覚がある。「優しさを使いつくしてしまわないか、怖い」と言っているじゃないですか。それに、イチャイチャしてどんどん攻めてきたり、攻められると赤面したり凄いいちゃらぶを「楽しんで消費している」んだけど、一瞬で、侑が橙子の内面に入ろうとする(=橙子を特別と認識して好きと言いそうになると)、目が、さっと冷めるじゃないですか。。。これ、恐怖ですよ。。。。。いや、実際、すっと目にフォーカスして、瞳孔が開く演出とか、恐怖の何物でもなかったですよ。それを見てるとね、ようは、橙子って、他者を、ここでは一番は、侑をもてあそんで、道具として消費している形になるんですよね。。。。もちろん、理由もあるし、橙子自身の魅力的なので、それはそれで許されるのかもしれないですが・・・・・これ、男性だったら、ひどい男ですよ。とても共感できない(苦笑)。それに僕は、侑に感情移入しているんだろうと思うのですが、そうすると、あの瞳孔がキュッと開く瞬間とか、100年の恋も冷めるような感じで、一瞬で、自分を嫌いになるのがわかるわけじゃないですか。。。。これは恐怖ですよ。。。。なので、見ていて全編緊張する感じでした。でもまぁ、、恋愛ってそういう駆け引きがだいご味なのかもしれないなぁーと思いつつ。とはいいながら橙子くらいのスペックの高さとスクールカースト上位の人間が、マウントで「限定条件づけ」で猫のように甘えてきたら、、、これはこれで怖いよなぁ、、、と思う。麻薬みたいなもんでしょう。しかも確実に捨てられるのわかっている。。。。


といいつつ、小糸侑って、器でかいなーとしみじみ思う。いや、ぼくは橙子が男性だったらと考えるとなんてひどいことしているんだ、、、しかもマジいつ冷めるかわからない感じが、怖くて仕方がないんですが、、、、でもなんというか、本当にこの子は器がでかい、、、というかおおらかな子ですよね。鈍感というわけじゃない。ちゃんと細かい機微をすべてわかっているけど、、、あまり動じない。この子は、「特別に人が思えない」というのにふさわしい、感じがすごいします。普通、こういう「まだ恋を知らない感じの女の子」というのは、しょせんは「おこちゃま」だから、恋をしたらすぐ赤面して動揺する普通の女の子になるというような、男性目線の折り込みマウンティング(ある意味、馬鹿にしている視点ですが)で見えちゃうし、そういう造形で書かれるものだと思うのですが、、、、なんちゅーか、侑を魅力的な人間にしているのは、橙子にもてあそばれて、使い捨ての道具的に利用されているのに、たぶん、それでは動じない、汚れない、そしてそれを受け入れちゃう、包み込み返せちゃう、、やっぱり器というか甲斐性を感じるんだよねぇ。ああ、、、『マリア様がみてる』の祐巳ちゃんも、そういう子だったなー。そうかーーーやっぱり、成績とかスペックとかそういうことじゃなくて、内面の懐の深さとでもいう「器」ってあるんだよなーとしみじみ思う。侑じゃなければ、橙子のお姉さんのトラウマ問題に振り回されて心身消耗してしまっただろうと思う。人間には、器とか解消とか言うものが確実にあって、侑って、特に何ができるわけでもない、特質していないけど、重い石のような安定感は、これはこれですごい魅力なんだろうなーとしみじみ。特に、橙子のような精神的にあっぷあっぷの人にとっては、すごい価値がある相手なんだろうねぇ。


なので、いやーいいカップルなんだよねぇ。


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ななしのアステリズム 1巻 (デジタル版ガンガンコミックスONLINE)


個人的には、なんだかアニメと漫画の差には違和感があって、なんなんだろうと思ってなんですが、『

少し前にTwitterで、百合やBL的な話は好きなんだけど、最初からそれ前提となってしまうと、「そういう物語」として構えてみてしまうので、まだ「名前がつかない状態の感情」みたいな物語を見たいんだよなぁと、意味がわからないことをぶつぶつつぶツィートしてた時に紹介してもらったもの。

最近よく見ててそもそも百合やBL的な話は好きなんだけど、最初からそれ前提となってしまうと、「そういう物語」として構えてみてしまうので、まだ「名前がつかない状態の感情」みたいな物語を見たいといつも思うんですね。異性愛が、同性愛が、前提の世界に入って物語が進んでしまうと、何か「世の中にルールというか共有された常識」があるような安心感で話が進んでしまう。けれど、ほんとうは、そうじゃないですよね。もちろん「そうじゃない」から、実は物語なんて簡単にはじまらない。異性愛の世界だって、自分が好きになった人が、自分を好きになってくれるとは限らないわけですから。でも、そういう奇跡が僕は恋愛ものの醍醐味だと思うので、「そういうの」が見たいんだなーといつもしみじみ思うんですよ。そして、「名前のつかない感情」を丁寧に、具体的に深堀していくという意味では、要はキャラクターと関係性の描写がうまいということなんでしょうが、仲谷鳩さんの『やがて君になる』と小林キナさんの『ななしのアステリズム』ダントツに好きで、繰り返し繰り返し読んでいます。ちなみに、がっつり、百合とかBLが大前提の世界からスタートして、奥底まで行く話も好きなんですけどね、もちろん(笑)。

『ななしのアステリズム』の時にこう書いたんだけれども、漫画版では、僕は「名前のつかない感情」と思っているんですよね。けっこう、でぃーぷきす(笑)とかしているので、どう考えても百合の物語なんですが、それ以上に、「自分が何者であるかわからなくなったいる燈子が、自分自身になっていく」物語にウェイトを置いて感じていたみたいなんですけど。アニメになったら、ガチ、恋愛ものだな、、、それが前面に来ると、百合以外の何物でもなくなるので、そこは、最初ちょっとマインドチェンジするのに苦労したなぁ。でも数話見ていると、完全にテーマが一貫して構成されているので、全く違和感なくなって引き込まれたけど。ただ、アニメは、ガチ百合ものとして認識してた方がいいなぁ、と思った。構成とか表現はほぼ原作に忠実なのに、なんでこんなに印象が違うんだろう。


もう少し百合ものを自分がどう見ているのかとか、文脈を深堀するには、もっともっと量を見て考えないとだめだなーと思う。まだまだクンフー(=積み上げ・量をこなす)が足りないです。が、とにかく素晴らしい作品でした。


ちなみに、まだ単行本は、2019年春に7巻なので、6巻までしか出ていません。けれども、まぁ、侑と橙子の関係性については、最初にいった、

「特別」ということをどういうことか知っていく侑の内面的成長の過程と、橙子の過去のトラウマの話からの解放の話がリンクしていくのは、この物語の王道の類型で、ちゃんと大きなエンターテイメントの流れに乗っていて、にもかかわらず、他の部分がとても深く魅力的なこの作品は、最近の一押しです。

なので、橙子の過去のトラウマから解放されて「自分自身になる」ことができれば、侑を受け入れる準備はできるわけで、、、ここまでのやばい駆け引きを乗り切った器を見せた侑が、勝てないとは思えません(笑)。もちろん一波乱あるとは思いますが。この状況で受け入れない理由があまりないと思うんですよね。エンドとしては、もちろん、まだ、、、、という風に断るエンドもあり得ますが、でも、彼女以上の器に出会えるとは思えないなぁ。ここまで問題が、ちゃんと紐解かれていると、橙子が侑を受け入れる準備ができているわけで、阻む障害を感じません。マリみてココロコネクトで書いた時のように、本来は内面の闇と肉体関係の親和性がいいので、それがないと、表現としては不足するなーといつも思うのですが、、、やっぱね、橙子のべろちゅーのシーンがいいよね(笑)、あれで、その問題、雲散霧消した気がする。制限なくなったら、一気にこの二人進んじゃうよ(笑)。阻むものないんだもん。そう思えると、特に必要ないかなーと思えちゃう。うーん、こんなシーンだけで十分なんだ、、、と思った。。。これって、肉体的にもてあそんで、「相手を道具としてを消費している」ということがわかれば、物語としては一歩踏み込んでいるからなんだろうと思う。そこのピースが埋まっていないと、実は、ステップが先に進まないので、今までいろんな作品でもやもやしてたんだけど、これで十分なんだと感心したなー。うーん、そういう意味では、これはやっぱりとても新しいタイプの物語なんだなぁ。


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桜Trick 1 [Blu-ray]

桜Trick 1巻 桜Trick (まんがタイムKRコミックス)


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