米最高裁でのBrett Kavanaugh氏の指名が意味するところ

トランプ大統領は、2018年7月9日に、連邦最高裁判事に、Brett Kavanaugh氏を指名した。米国の最高裁判事指名は、むしろ大統領が誰であるかよりも、この国の根本の市民生活を変える可能性があるので、かなり皆さん興味津々。特に、この数十年リベラル派の重要な判決が、覆っていないのですが、それが変わる可能性がある。たとえば、Roe v. Wade, 410 U.S. 113 (1973)/ロー対ウェイド事件、アメリカ合衆国憲法修正第14条で女性の堕胎の権利を認めていることを示した判例で、これによって女性の権利がかなり前に進んだ判決でした。こうした憲法の解釈が決まることなので、トランプ政権中の指名は、大注目なのです。カバノーさんが上院で承認されればリベラル派4人、保守派5人の構成になります。なので、ここ数十年で、最も保守派寄りになります。ちなみに、今回退任するアンソニーケネディ氏よりもはるかに高齢のリベラル派の筆頭であるルース・ギンズバーグ(Ruth Bader Ginsburg)、現在83歳かな?は、次の大統領選挙で民主党が勝つことを期待して、なかなか退任できない状況に追い込まれています。ちなみに、トランプ大統領が大嫌いで「トランプ氏は詐欺師。一貫性は全くなく、思いついたことをそのまま口に出す。どうしようもないうぬぼれ屋だ。」CNNでいって、謝罪している人です(笑)。

民主党のKamala Harrisさんが上記のように主張するのは、このカバノー氏の指名が、リベラルが基礎としてきた様々な60−70年代の遺産が、これによってどんどんひっくり返る可能性が出てきたからです。特にここでは、Roe v. Wadeがまずやり玉にあがる可能性が高いことを、指摘しています。民主党としては、トランプ大統領共和党の大統領を選ぶことは、女性の権利がはく奪される可能性があるのですよ、それでも女性は彼に投票しますか?(今回の場合は中間選挙ですが)ということが言いたいわけです。日本では、最高裁の影響力が市民生活の奥底までひっくり返ると感じる人は、あまりいないかもしれないのですが、アメリカの諸権利は、こうした憲法をめぐる戦いで一歩一歩獲得されてきているので、アメリカにおける市民運動は、ロー対ウェイド事件のような戦略目標を据えて行われることが多いように僕は思います。これこそが、人工的な国家における社会改良の手段。自分たちの手で運動で、法を通して社会を改良していく伝統は、さすがだなーとしみじみ思います。