『プロテスタンティズム 宗教改革から現代政治まで』 深井 智朗著 ドイツ(というかヨーロッパ)については勉強が足りなすぎる自分を再認識しました。

プロテスタンティズム - 宗教改革から現代政治まで (中公新書)

評価:★★★★4つ
(僕的主観:★★★★4つ)


ルター派プロテスタンティズムが、ドイツ建国の精神的な支柱になっていた、という部分が、凄く面白かった。


まずカルロゼンさんの『幼女戦記』を読んでいて、神のために!とか、帝国(ライヒ)のために!とか、皇帝陛下の御ために!というのが、なんでああいう風に言うんだろう!と疑問が思い浮かんだんです(笑)。僕は、これまで、ドイツやプロイセンの歴史にあまり詳しくなかったので、この言葉の意味がいまいちわかっていなかったんのかもしれない、とこの本を読んでふと思いました。というのは、大日本帝国について、「天皇陛下万歳」とか「大日本帝国万歳」という決めセリフ?がありますが、これの聖なる狂気というのは、わからないなりに、狂信的で、聖なるものを含んで、というような微妙なニュアンスは、わかるんです。なぜならば、帝国が形成される過程や、天皇という存在がどう変遷してきて、その後どうなるのかということも、自分の人生で体感しているので、「なんとなく」わかる。けど、なんというか、ああ云う聖なる狂気、全体主義的な狂信的な文脈にあわさって、それが正当化というか、ちゃんと意味を持ってきた「歴史の背景」が、あるので、もちろん自分の母国ということもあって、微妙に割り切れない感覚があるんですよ。割り切れないというのは、単純にネガティブに切って捨てられない、ああ、当時に生まれていれば、自分だって、それはそう思うし、そう叫ぶよなぁ、と。そして、歴史の積み上げがあるので、結果から断罪さえしなければ、当時にはポジティブさとネガティブさが、同時にあるはず、みたいな、歴史をちゃんと学ばないと、結果論からの逆算や、何もシンパシーがないイデオロギー的な感想になって、世界を見誤るなぁと思っていました。


幼女戦記 (1) (角川コミックス・エース)



んで、僕の内面に、神のために!とか、帝国(ライヒ)のために!とか、皇帝陛下の御ために!言葉って、ほとんど響かなかったんですよね。ずっと。なぜならば、知識がないから。歴史がわかっていないので、ネガティヴにさえならない。さすがに、ハイルヒットラーは、とてもネガティブになるんですが、その過去に当たるww1などの、ドイツやプロイセンの意識がさっぱりわからなかった。


その端緒が、凄いつかめた気がしました。


ようは、日本の天皇陛下万歳大日本帝国万歳と、ほぼ同じ感覚なんだ、ってことが。


ようは、ルター派の教会が、政治と結びつき、世俗世界の管理に深く浸透していった過去のドイツやプロイセンの長い長い積み上げがあって、この言葉は生まれている。


あ、えっとね、いつも不思議だなと思っていたのは、「神と、帝国と、皇帝陛下」って、一緒くたに忠誠の対象とするのは、少し変でしょう?。日本でいえば、「大日本帝国と、天皇陛下と、神様」が等符号で結ばれているのは、いろいろな社会工学的な欺瞞や理想、政治などの歴史過程を経て生まれているので、そういう背景がわからないで聞くと、???となるでしょう。だって、そもそも、神と人間であるはずの天皇がイコールで結ばれるのが、外から見れば?となる。だいぶ無理がある発想なんで(笑)。現人神(あらひとがみ)って、だいぶ意味不明でしょう?。もともとドイツのシステムを輸入したのは知っていたけど、具体的にどんなシステムなのか、というのが今回わかっていなかったんだんーと非常に納得した。


これ、領邦国家の領主(政治指導者)の宗教が、その地域の宗教を決めるというルールがあって、ルター派の教会が、日本の仏教の寺みたいに、戸籍や生活世界の支配のための、学校でもあり洗脳装置でもある、みたいな機能を数百年にわたって積み上げているからこそ、神様のことと、世俗の支配者のことが、文脈的に非常に重なりやすくなっているんだ。なので、「神と、帝国と、皇帝陛下」は、微妙に違うはずなのに、だいぶ重なって感じる意識が歴史的体積によってつくられている。


それ以外にも、アメリカのプロテスタンティズムとドイツのルター派プロテスタンティズムが、まるで違うものだったのは、目からうろこでした。考えてみれば当たり前なのですが、僕はアメリカの方ばかり見ていて、プロテスタンティズムというとアメリカのものしか頭になかったんですね。非常に気づきになりました。


この辺りは、レスター伯と、もっと突っ込んで話したいなー。と思う今日この頃。でもまぁ、読書すればするほど、自分の無知さに、驚きます。頑張って、いろいろ読もうとまた強く思う読書でした。


プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (岩波文庫)



十字架と三色旗――近代フランスにおける政教分離 (岩波現代文庫)