『ミッドウェー(Midway)』2019 Roland Emmerich監督 米国万歳の映画と思いきや、意外や意外日本の大艦隊がかっこいい。

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Midway2019

客観評価:★★★★4つ
(僕的主観:★★★★4つ)

家の近くの映画館(AMC)で見てきました。語れるほど知識があるわけでもないので、印象のショートレヴュー。

一言でいうと、いってよかった。面白かった。映画としての出来は、さすがのローランド・エメリッヒ監督。そもそもミッドウェーが題材の時点で米国万歳で、完膚なまでに日本が叩きつぶされる物語だし、資本はメインが中国だしこの戦争で中国(蒋介石でしょうが・・・)と米国の関係を描くならば同盟国の友邦として描くのが当然になるので、日本人にとってあまり気持ちよくないはずになるはずと予想されるので、「だからこそ」見に行かなくちゃ!!!と(笑)。レアな体験を探して。最初は、さすがに日本公開はやんないかなーと思っていたので、これは見ておかないとと思って。結局、日本公開が決まったそうだけど。


MIDWAY trailer 2 (2019)

このサンクスギビングの休みで行ってきた。近くの席のおばあちゃんが、日本側の空母に、米艦爆隊が何度もぎりぎりで失敗するたびに、「当たってー」みたいにハラハラドキドキしていて、こんなに感情移入してもらえたら映画として感無量だろうなと思いました。とはいえ日本側でも見ている自分は、微妙な気分をになるところが、なかなか興味深い映画体験でした。いけてよかった。なんというかいつもより比較的高齢者が多かった気がするが、若者も多かったし、必ずしも白人ばかりでもなくて多様な人が見てたんで、やっぱりエメリッヒ監督の冒険活劇というかそういう『インディペンデントデイ』的なもので見に来ているのかなーと思った。

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ちなみにこの夏に日本で見た山崎貴監督の『アルキメデスの大戦』の大和轟沈のシーンもそうだったけど、現在のCG技術で見せられると、なんというか感無量。空母を軸とする大艦隊って、やっぱりスケールが違う。日本の空母赤木や加賀の映像ってやっぱりとんでもなくかっこいいよなーとしみじみ。あと、米爆撃部隊の、空母に雷撃するためにほぼ垂直降下で、弾幕が張られている中を突っ込んでいくシーンが何度も繰り返され、パイロットの視点で描かれるのだけれども、命知らずにしてもめちゃくちゃすぎて、こんなことしていたんだ、いやーなんというか、すげぇ勇気だよな、と感心。


あと豊川悦司さんの山本五十六長官、浅野忠信さんの山口多聞少将、國村隼さんの南雲忠一中将などなど、日本側がちゃんと日本語で丁寧に描かれているのが驚きだった。ローランド・エメリッヒさん、かなり調べ上げたし、決断したのだなぁと。そもそも中国資本メインなんだけど、意外に、日本を悪魔化するというか、ダメダメ、よわよわにする視点が少なくて驚いた。ここの場面ではいろいろあるけど、それは本筋じゃないし。結局のところ、『Tora! Tora! Tora!』でもそうなんですが、アメリカ軍をカッコよく強く描こうとすればするほど、日本がそれに値するくらい強かったと、物語力学上、描かざるをえなくなるので、そうなるんだろうなぁと。

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とはいえ、イアントールさんの『太平洋の試練 真珠湾からミッドウェイまで』に読んだときに、短期の状況では、日本海軍の太平洋での戦力差は少なく、実戦経験も含めて帝国海軍とは拮抗していたので、対等に戦争をしているので、戦争映画としては、見ごたえがあった。日本映画は、戦略上完全に負けてしまって戦力が壊滅してからの戦争を描くことが多いので、その場合は、ほとんど戦争しているというよりは、一方的に掃討されているだけなので、戦争映画とは言えないよなぁといつも思うので。

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米軍は、日本の通信をすべて解読していたのだが、それを信じる信じないは、最前線で決断するチェスター・ニミッツ大将が、情報の信ぴょう性を確認するために現場にプロセスを聞きに行くことや、真珠湾での諜報(インテリジェンス)の失敗を、ミッドウェーで生かそうと必死になっているくだりと、南雲中将の傲慢で情報を確認しない態度は、対照的だった。これは史実としても、命運を分けた点なので、こういうのがエンターテイメントになっているのは、時代が過ぎたのだなぁ、としみじみ。構造的には、真珠湾では奇襲でやられたけれども、ミッドウェーで奇襲をし返した、というドラマの構成ですね。

激動の昭和史 沖縄決戦


いやー個人的にはとても面白かった。ちなみに、日本と米国がちゃんと戦争をしているという意味では、クリントイーストウッドのこれおもいいと思うなぁ。おすすめ。

硫黄島からの手紙(字幕版)