『マブラヴオルタネイティヴ』 吉宗鋼紀監督 その1 アージュ素晴らしいよっ! 人が戦う理由がすべて詰まっている!

マブラヴ オルタネイティヴ - PS Vita


評価:★★★★★5つ 傑作マスターピース
(僕的主観:★★★★★5つ傑作)

せっかくアージュのの公式放送で説明させていたので、過去の2007年7月の記事をリライトと再掲載。

その1 アージュ素晴らしいよっ! 人が戦う理由がすべて詰まっている!
http://petronius.hatenablog.com/entry/2020/04/10/130051
その2 日常と非日常の対比から生まれてくるキャラクターの本質
http://petronius.hatenablog.com/entry/2020/04/10/131345
その3 自意識の告発〜レイヤーごとにすべての次元でヘタレを叩き潰す
http://petronius.hatenablog.com/entry/2020/04/10/131924
その4 クーデター編は、日本のエンターテイメント史に残る傑作だ!
http://petronius.hatenablog.com/entry/2020/04/10/132238
その5 多選択肢の構造〜なんでも選べるというのは本当は虚偽なんだ!
http://petronius.hatenablog.com/entry/2020/04/10/133027
その6 冥夜があれほど気高く見えるわけ/虚偽問題に騙されるな!
http://petronius.hatenablog.com/entry/2020/04/10/135114
その7 夕呼博士の全体を俯瞰する視点〜真の支配者の孤独
http://petronius.hatenablog.com/entry/2020/04/10/141110
その8 あいとゆうきのおとぎなし〜多選択肢から唯一性へ
http://petronius.hatenablog.com/entry/2020/04/13/011540

いろいろ長くこれから記事を書くのだけれども、結論と僕が言いたいことをまずまとめておこう。


終結論。


マブラヴオルタネイティヴ 』はかなりの傑作です。僕的主観評価で、アージュは素晴らしい!。まさに「あいとゆうきのおとぎばなし」と銘打つにふさわしい。



以上。



いろいろ書きますが、いいたのはそれだけです(笑)。とにかく感動したよ。典雅の決裁者ペトロニウスの名にかけて(笑)です(=個人的なたわごとです)。これは第1級の物語であり、通常の批判を受け付けない(部分的に欠点はあってもトータルの質がもうその程度の批判を受け付けないレベル)ものです。これは明らかに世間の評価と本質の評価にギャップがある。


・・・・つーか、オープニングテーマとか、、、、感動しすぎです。ひさしぶりに、ああいうので燃えた!!。つか、影山ヒロノブ・・・?って、あのドラゴンボールの???。ああ青春時代の思い出の人だ(笑)。


マブラヴ オルタネイティヴ アバンムービー 「未来への咆哮」 - JAM Project


■全体の総評~前置き

この2007年の7-8月ほどの2カ月ほどかけて、アージュ作品の『マブラブ』と『マブラブオルタネイティヴ限定解除版(全年齢版のほうね)』を終了しました。まずこの作品をやるにあたって、思ったことは、①『君が望む永遠』②『マブラブ』③『マブラブオルタネイティヴ』この3作品(本当は『君がいた季節』も含まれるのだろうが見プレイなので除く/その後すべてやったよ!!!)をすべてひっくるめて一つの作品と考えなければいけないということ。最低限、②と③を同時にやらないとこの作品の持つ全体の演出意図が全く理解不能になっていまう。だから、もし興味を持った人がいたら、絶対のこの三作品をすべて同時に一気に(それは難しいほどの時間の長さだが)プレイすることをお勧めする。また難しいのかもしれないですが、僕のブログが完全ネタバレなので、まだプレイしている人は読まないでください。


君がいた季節 OP 「君がいた季節」 - 栗林みなみ


作品の評価としては、00年代を代表する傑作だと僕は断固思う(決断主義風)。しかも、その中でも最上位にランクされるべき作品です。たしかに、新規さ(=オリジナリティ)というい面では弱いかもしれない。同時代のモティーフのごった煮だし。そういう意味では、無批判に歴史に残る!とは言い難い。が、レベルを振り切れた偉大な作品であることには変わりがない。『三銃士』を書いデュマも当時の人気作品のパクリであったしね。同時代を経ていない人間がこれをやれば、そう思うであろう。(←2007年当時こんなこと言っている。2020年の今、もう歴史に残る傑作だよ!とペトロニウスは叫んでいます(笑))


タイミングやテレビ媒体という広範囲な影響を持った庵野秀明監督の『新世紀エヴァンゲリオン』と比較するのは、その影響力の差が巨大が故に少し躊躇していまいます。しかし、個人的な主観としては、この時の時代感覚を通して庵野監督が提示した主題の一つを、ほぼこの『マブラブオルタネイティヴ』で回答・回収されていた!って感じました。僕は作品以外の背景知識がほぼゼロですが、明確に庵野監督のメッセージに対する展開と回答という意識を感じます。原案・シナリオライター吉宗鋼紀氏は、絶対にそのことを意識していると思う。下手をすれば、パクリともいえるほどに見事なオマージュ。少なくとも、当時エヴァで不満に思った部分の過半がしっかり展開されている。(←このころ吉宗さんと会ったことなかったんだなーと感慨しきり)


内容的にもそうですし、同時にこれらの自意識の告発劇は、演出上どうしてもキャラクター(=主人公)の内面に劇が収斂ていって、「閉じてしまう」というセカイ系ジャンルといわれる特有の病がありました。それは別に日本の純文学の私小説伝統的なので、文句を言われる筋合もないとは思うのですが、これが大衆メディアに乗って若者の感性に広汎に広がっていく様は、確かに年長世代としては恐怖でしょう。なぜならば、私小説などの純文学の系譜は、その読み手が、限られた教養主義的成長を遂げた社会のエリート層であるという前提が70年代ごろまで長く続いていました。しかしそういった階層の差によるエートスや内的確信の度合いが激減して平均化した80~00年代の社会においては、そういった内的確信やエリートたる自意識の強さがない、もう少しわかりやすい言葉で言うと、二重思考ができない(メタとベタの差が峻別管理できない)一般層に広範に広がっている状況です。これが、教育効果として何と危険なことかは、たしかにわからないでもありません。しかしながら、ただメタに抽象的に文句を言うのではなく、物語でそういのを出してくれ!と叫ぶ岡田斗司夫さんや宮台真司さんの批判はわからないのでもないですが、、、、、批評は大事ですが、物語は時代の反映。そんな簡単に出てくるものでもありません。いうのは簡単ですから。文学の田山花袋の『蒲団』だって、当時僕が批評家なら、自意識に閉じこもってアホじゃねーか、帝国は戦争しているというのにっ!と怒ったでしょう(笑)。(いや、ほんとわ戦争しているからこそなんだけれどもね)

しかも、このジャンルの最高峰に位置しオリジネーターである『新世紀エヴァンゲリオン』にせよいまのところは、自意識に閉じるという脚本の終わり方をしていおり、この物語類型の物語として全うする終わり方を提示できていない。『涼宮ハルヒの憂鬱』でも『ラブひな』や『うる星やつら』でもいいのだが、かといって永遠の楽園に逃げ込む世界観が、ダイナミックな物語かといえばそうではないし、僕の評価基準である「ビルドゥングス(旅を通じた内的成長)」を促す物語であるか?という側面で言えば、それらはやはりポピュラリティー獲得の演出技法としては洗練されているものの、力不足の感を否定できない。いまのところ、こういったセカイ系の自意識の病に対する明確な回答はないんですよね。『デスノート』など、その解答をずらして、純粋なパワーゲームのみのテンションを描くというのが時代の流れですが、、、それは限界があると僕は思う。それは、絶対次に、では「そのパワーゲームを行うのはなぜか?」という問いが来てしまうから。理由もなくテンションばかりあげろなんて、絶対限界が来る。テンションや強度は問題をごまかして隠蔽する効果の方が強い。この流れはすぐに限界が来る気がします。


そんな中で、TYPEMOONの『Fate/StayNight』といいニトロプラスといい、このアージュといい・・・・この短い時期でのエロゲー分野への凄まじい才能の集中には驚くべきものがある。なかなか見事なアプローチを繰りかえしているように思える。僕は通常のエロゲーというものをやったことがほぼ皆無なので、これらの作品が、どれだけ通常の形式から外れているのかはわからない。だが、このあたりの時代的な雰囲気の反映とその解決への強い意思は、ジャンルの制限を逸脱するレベルにあると思う。とりわけ、このオルタの存在は、この世代の・・・たぶんいまの00年代後半にすると少し古いテーマ(前半のテーマ)の反復(このオルタの構想は01年らしい)を見事に展開して・・・というか展開しきっており、その意味で、一つの結論めいたものを感じる。少なくとも、エヴァンゲリオンの今度の映画版のできを見ない限りは、いまのところこの作品の射程距離が最も長い、と僕は思う。まっ、僕がそれほどサブカルチャーの世界をすべて知っているわけではないので、僕の主観による思い込みかもしれないけれどね。まーでも、いいのだ、それくらい感動したっ!ってことです。

マブラヴ オルタネイティヴ』発売より約4ヶ月が経過し、お陰様を持ちまして、これまでに18禁媒体のみならず、一般媒体に於いても紹介いただく機会を多数頂戴致しました。それに伴い、ブログを始めWeb上、弊社へのメールに於いて、非18禁バージョンの発売を希望されるユーザーの皆様が非常に多く、その声は日増しに大きくなるばかりです。

『友人や知り合いに勧めたいのですが、18禁というだけで敬遠されてしまう』
『すぐにでも仕事仲間にもプレイさせて一緒に盛り上がりたいが、今後の人間関係を考えると躊躇してしまう』
『雑誌のレビューを読み、おもしろそうなので興味を持ったが、中学生なので買えない。なんとかして欲しい』

http://www.muvluv.com/product00_muv_entrance.html

ちなみに06年に『マブラブオルタネイティヴ』が、発売されて『友人や知り合いに勧めたいのですが、18禁というだけで敬遠されてしまう』(笑)という強い圧力で全年齢版が出たのも、非常に頷けます。PS2版が発売された『Fate/StayNight』もそうですね。それはもうジャンルの出自・・・エロゲー分野から出てきたエロゲーであったという制約を、はるかに逸脱して飛び越えてしまっているのからなんだと思います。日本の現在の有名な監督がたくさん、日活ロマンポルノ出身だということともを思い出します。このへんは僕の信念とも一致していて気持ちいがいいです。どんなのものであれレッテル、レイティングすることによって、「ほんもの」というそのものの持つ本質を見失ってはいけない。本質が素晴らしいものは、どんな状況下にあったて、どんな外的要因に阻まれようと、世界に、社会に評価されるんだ!という確信です。



この作品は、①~③作品をすべてやらないと演出意図が切実に胸に突き刺さらないことや、ノベルゲーム特有の凄まじい尺の長さなどが壁になって、なかなか人口に膾炙しない・・・・もともとのエロゲーやヲタクユーザーを超えてプレイする人はそれほど拡大していないかもしれない。そこはとても残念だ。もっともっと世間に評価されてもいい作品だと思う。



さて話がずれたが、



しかし、このジャンルの最高峰に位置しオリジネーターである『新世紀エヴァンゲリオン』にせよいまのところは、自意識に閉じるという脚本の終わり方をしていおり、この物語類型の物語として全うする終わり方を提示できていない。



というからには、少なくとも『マブラブオルタネイティヴ』は、自意識の病を扱うセカイ系の類型を忠実である上に、非人類との殲滅戦というさらに典型的な「ラスボスがいない世界」での敵を設定する究極の脚本で、、、、、この設定は、何が善か悪かわからなくなるが故に、主人公が闘う動機を失いやすいというドラマツゥルギーの欠陥をもっている。もしくは、非人類相手という逃げになる。・・・・・・にもかかわらず、最後の最後まで、物語の整合性を放棄せず、内面に逃避することなく主人公・白銀武の成長(=ビルドゥングス・ロマン)を描ききっている、と僕は思っています。



なによりも演出意図が秀逸。この時代の雰囲気の本質である、「何が正しいことなのかわからなくなる」という動機が消失していく部分を、明快な論理性ですべて説明して主人公に体験させて地獄の底へたたき落とし、主人公のヘタレ度合いを徹底的に解体し、そのすべてを体験させた上で、にもかかわらず戦う意思を主人公に持たせる。単純に言い換えると、結局のところエヴァのシンジは逃げたのだが、タケルは最後まで逃げなかったということに尽きる。人類と自分と、そして最愛の女の子を救い・・・・・最終的には平和な日常を守り切った。ご都合主義といえども、骨太だ。もちろん、もっと世界自体の謎に踏み込んだハードSF的な展開があってもよかったのではないか、と思う部分がないわけでもない。しかし、90~00年代の自意識の病という病理を最も高い解決優先度の主題と置いたこの脚本で、ここまでメタ的にその主題を解体・反復したうえに物語のカタルシスを奪わないで、オチまで持っていく力技には、唸ります。少し言い方が微妙なのですが、オリジナリティが極まったという印象ではなく、よくぞこの世代の問題点やテーマをここまですべて統合して、大きな結論を導き出したその統合力に製作者集団のハイクオリティーさを感じます。いや凄い誠実ですよこの人たち。ここまで世の中に出ている疑問にすべて応えきろうとする気概は、称賛に値します。



ちなみに、この会社のリクルート欄には、

アージュで働いてみたい方、人生を必死に生きてみたい方、クリエイティブな意欲にあふれる方、お待ちしております。


非常に彼らの姿勢が明確で、おもわず微笑んでしまいました。そう、これは、必死(必ず死ぬ)という死を見つめた時の強い高揚感がある実存的な生き方を模索する姿勢がないとこの作品は描けないもの。むしろ、この作品志向を持つ集団が、そもそも『君の望む永遠』などの以前作品を作成した事実の方が驚愕だな。まぁ本質は、やはりかわらないけれどもね。たぶん、オルタのほうが、アージュの本質なのだろう。彼らは大きなミスを犯している。自分たちの本質と合わないファンを量産し続けすぎた。これではマーケッティング的にリピーター(反復購入者)を失いやすい。



さて次の記事からで、作品の詳細分析に移ります。


■参考

【#1】男が戦う理由がすべて詰まっている(成長物語の傑作)
www.youtube.com


【#2】庵野秀明監督
(TV版『新世紀エヴァンゲリオン』)の問いに唯一答えた物語
http://youtu.be/zefWo6NtSawwww.youtube.com


【#3〜4】
「全人類によるユーラシア奪還戦」という「戦争もの」としての魅力
www.youtube.com