2022 BNP Paribas Open 3回戦観戦 @カリフォルニア州リバーサイド郡コーアチェラ・バレー

本日は、毎の恒例のBNP Paribas Open/Indian Wells Masters。開催期は、2022年3月10日~20日で、本日は、3月13日の日曜日。今年で、もう6-7回目。3回戦。2021年は、決勝戦を子供たちと見に行った。スタジアム1以外は、すべて好きなように見て回れるDay Ground Ticketで。僕が住むオレンジカウンティから車で2時間ほど。リバーサイド郡コーアチェラ・バレー で、いわゆるパームスプリングスといわれるところ。南カリフォルニアの風景が極まったみたいな、青い空が美しいところ。

男子シングルスは、イギリスのCameron Norrie。女子シングルスは、スペインのPaula Badosaが優勝。チケットも高いし取れないし、と思っていたんですが、covid19の直後で、かなり厳しいワクチンパスポートによるチェックがあって、人があんまりいかないんじゃないかと思ったら案の定でした。ちなみに偏見ですが、パームスプリングスは、大金持ちのリタイアした白人の行くリゾートなので、共和党が多いと思うんですよね。きっときついマスク装着義務とか、ワクチン接種証明必須とか、腹立って避けるんじゃないかと思っていたんです。案の定でした。



それにしても、毎回生きながら、自分の人生で、ATP Tour Masters 1000の試合をこんなにたくさん見れるなんて、思いもよらなかったと感慨深い。高校生の頃の自分に言ったら、たまげると思う。NHKの夜中のウィンブルドンやフレンチオープンを見ながら雄たけびを上げていたころを思い出す。マスターズ100って、グランドスラムの直ぐ下だよ。USオープンも見に行ったし、なんというか、こんな年齢を重ねてから夢というか、夢というにもすでに忘れ去っていたことだったので、見れて本当にうれしい。しかも、自分の子供を連れていけるなんて、感無量。今回は、2試合見ました。

スタジアム6で、クロアチアマリン・チリッチ(Marin Čilić)VS セルビアのミオミル・ケツマノビッチ(Miomir Kecmanović)。

スタジアム1-2くらいの上位のスタジアムは、大きくてスター選手、シード選手が出るんですが、そのかわり、スタジアム5-6などの方は、席によっては触るほど手に届くぐらい狭いので、めちゃくちゃ臨場感があります。はじめて見に行った時に、錦織圭選手が手に届くところに座れて(ちなみにUSオープンでも目の前だった)こ、こんなに近くで見れるのかっておののきました。日本ではチケット高すぎて、一度も見ることなかったので、まさか海外で見るようになるとは、思いもよらなかったです。なので、近くに住んでいる人は、平日のシード外の試合ならば、とんでもなく近くで見れるのでお勧めです。でかいスタジアムの後ろの方とか、テレビで見るのと違った臨場感が味わえます。

チリッチで思い出すのは、2014年全米オープン男子シングルスで、テレビで物凄い盛り上がった。アメリカのテレビを見ながら、決勝戦で日本人の手にスプレイヤーを見るなんて思いもよらず、泣きそうでした。錦織圭とチリッチの決勝は忘れられない。ちなみに、Kecmanovićがまったく聞こえなかった、なんて読むんだろうって、ずっと悩んでいた。ロシア系?というかスラブ系の名前は、わからない。1stセットはチリッチがとったけど、逆転されて敗北。


スタジアム2で、カザフスタンのアレクサンダー・ブブリク(Alexander Bublik)VS アンディマレー(Andrew Murray)。


イギリスのアンディマレーは、めちゃくちゃ人気で、ワイルドカードでの出場だったけど、終始声援が凄かった。34歳で、だいぶ年だから、みたいなことまわりの人が喋っていて、40代後半の自分がすっげぇ年寄りなんだなって実感しました(苦笑)。

それにしても、何回見てても感動します。会社に入ってから機会もないし(日本ではそこまで人気ないですよね。大きな大会も少ないし)、15年以上全くテニスから遠ざかっていたけど、こんなに好きだったんだって驚いた。妻も、あなたはテニス好きだったんのね、驚いたってしきりに言う(笑)。自分の好きなものって、わからないものだなぁと思う。15年近く遠ざかっていたのに。


■ごはん

ここのハンバーガ高すぎる(苦笑)。まぁその変わり、めちゃくちゃおいしいんだけどね。

■優勝は、テイラー・フリッツ(Taylor Fritz)アメリカカリフォルニア出身!

賞金総額は、$1,231,245 (約1億4,160万円)。決勝ではラファエル・ナダル戦い6-3, 7-6(5)で勝利して、マスターズ1000初優勝でした。なにげにアメリカ人の優勝者は、凄く久しぶりらしい。

■大阪なおみ

ほんとうは、大阪なおみさんも見たかったんだけど、前の日にまさかの敗退。まだ調子が出ていないのかなーと思っていたんだけど、後でニュースを見て、人種差別的なヤジが飛んだそうで、あーインディアナウェルズだもんなぁって思ったんだけど、どうも前にもセリーナの件であったらしくて、やっぱりこの地域は、空こそ青くて美しいけど、そうなんだろうなぁとか思ってしまった。

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「正直なところ、以前にも罵声を浴びたことがあるけど、そのときはあまり気にならなかった。でも、ここで罵声を浴びせられたことで……。ビーナスとセリーナがここで罵声を浴びているビデオを見たの。見ていない人は見た方がいい。なぜだか分からないけど、頭の中に入ってきて何度も再生されて…」。

彼女の涙の理由は、2001年の同大会でウィリアムズ姉妹が直面した「人種差別的虐待」を思い起こさせたからだった。2001年のインディアンウェルズ大会でビーナス・ウィリアムズと父・リチャードが、セリーナ・ウィリアムズの決勝戦を見るために席に着くと、観客から大ブーイングを浴びせられた。発端はビーナスが準決勝を棄権したため。それはケガが原因だったが、リチャードは娘同士の対戦を阻止するため、試合を操作したとも言われたからだ。そして観客の怒りはセリーナに向けられ、セリーナがキム・クライシュターを破り優勝した後もヤジは続いた。その後、セリーナは勝利後も涙が止まらなくなりロッカーでずっと泣いていたとも語っている。両姉妹はこの大会をボイコットし、セリーナは2015年まで、ビーナスは2016年まで同大会に参戦しなかった。リチャードはアフリカ系アメリカ人への人権侵害だと吐露した。
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歴史を掘り下げてみよう~メカニズムを理解しようとすればロシアの行動の理由がよくわかる(4)


コテンラジオが素晴らしかった。こういう時こそ「俯瞰して見れる特権」を行使すべきというのは、とても共感。

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やはりキエフ公国の歴史からさかのぼらないと、この話ははじまらない。くわしくは、ラジオを聴くか歴史の本を読んでほしいのだけれども、ようは、ウクライナが独立した国であるか、それともロシアの一部であるかは、その「起源がどこにあるか?」で歴史解釈が対立しているという問題です。


ペトロニウスの雑感では、これはアメリカに住むようになって、視野が広がったせいか、いつも思うのですが、日本でこんなにおかしなことが!とか日本独自の問題だと思っていたことが、ほぼすべての国に似たようなことは、たくさんあるんだということ。日本でも、歴史認識が隣国と異なることで、もめにもめていますが、世界中の国が、多かれ少なかれこういう問題をたくさん持っているんだと、驚きました。考えてみれば当たり前ですよね。


あと、さまざまなニュースソースを追ったりすればするほど、「歴史にさかのぼって」「膨大な量を自分の中でため込まないと」意見なんか容易に言えっこないってこと。前にも書いたけど、とても良い機会なので、さまざまな情報に触れて、自分なりの東欧観やNATOソ連ロシア帝国の歴史を自分の中に作り出したいなと思っています。


少なくとも、6時間以上のコテンラジオで「一通り」流れと状況を押さえて、初めて「スタート地点に立つ」感じですね。僕は、個々から今はソ連の歴史やロシアの南オセチアチェチェン、ナゴルノカラバフ、アゼルバイジャンアルメニアなどを、調べています。最低限、プーチン大統領の戦略や経緯を、それなりに追わないと、理解すらできないので。本を読む前に、このあたりの歴史を、俺の世界史chでとりあえず、全部見て専門用語や流れを押さえて、いま本に入っています。


あと、ロシアの南下政策を見ないとなって思って、下記の本を読みなおし。


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■ネイションステイツを作る過程

ちなみに、僕が注目している点は、


ウクライナナショナリズムによるネイションステイツ(国民国家)の形成が行われているのでは?


という点を注目して見ている仮の仮説。コテンラジオの指摘で、なるほどと思ったのは、ソ連ロシア帝国は、帝国を一つにまとめるのが原理をなかなか見いだせていないという負の遺産を抱え続けているということ。それに対して、ウクライナ自体も、極端な汚職国家で、かつ「親ロシアはVS親EU派」に分裂している緩衝国家なので、国内が「まとまるのが難しく」て、大国に付け込まれて滅びる、もしくは支配されるという構造と歴史を持っている。ようは、支配されやすい国なんだよね。これに対して、侵略すれば、激しい痛みと犠牲を要求されるという「ナショナリズムの狂気(=一つにまとまって、怒り狂う)」が成立している国には、非常に口が出しにくくなる。ウクライナは、今回の契機に、これが進んでいるんじゃないかな?と感じるんですよね。

note.com

courrier.jp

これは、日本に置き換えると、明治建国のころにを考えればいい。

src-h.slav.hokudai.ac.jp



■逃げることと、国民国家を作ること

たとえばね、ナショナリズム民族自決において、重要なことは、


命を懸けて国を守ること


に尽きるんですよね。つまり、国の大義においては、個々人の命をよりも、大義(国家を守る)に価値がある形になる。ここで「ともに命を懸けた戦った人は、同胞」となるって、その命を懸けた同胞のことを、国民と呼ぶんですよね。19世紀から、このネイションステイツ(国民国家)の幻想を共有した兵士が、ムチャクチャ強いのは、既に常識中の常識。


また、こうした国家の有事------国民が命を捨てて戦わなければならないときには、重要なのは、一切の特権は関係ないってこと。だから、金持ちと貧乏人の、垣根が一気になくなる。もちろん、通常はあり得ない形で、金持ちのお金や特権が、命を懸けた叩く同胞に分配される------しないやつは、非国民として、叩かれる。だから、こういうのは許さないよね。

こういう背景のメカニズム------ウクライナナショナリズムの勃興と、ネイションステイツとして一体感が喚起されているときに、「逃げろ」なんていうのは、相当余計なお世話だと思う。

これを自分の国の歴史を顧みると、硫黄島などを連想するのは、まさにそうだよねって思います。戦略的に正しかったかどうかを超えて、ナショナリズムの幻想を貫かないと、侵略者や大国にいいように奴隷、属国扱いされるのは、歴史を見れば一目瞭然。なので、このあたりは、本当に、他人とか「当事者じゃない人々」が何か言うのは大きなお世話。


■3/25のゼレンスキー大統領の国会演説がどうなるか?~つまり日本の反応はどんなものか?

仮に今僕が立てている「ナショナリズムによるネイションステイツの成立」が進んでいる過程だとすれば-----というか、民族自決のこの概念を、世界中に反ロシアで呼びかける形になるはず。


これはこれで、とっても焚きつけるのがうまい、扇動者のゼレンスキーさんに対して、日本がどうふるまうか?。僕は、いろいろな人の反応を見ていて、ナイーブだなぁってすごく思います。ウクライナが侵略者と戦うから「正義の戦いなんだ!」みたいに吹き上がっている人は、それもまた脊髄反射なんだろうと思う。ただし、「それ」がこの場合、日本の国益、ナショナルインタレストと合致しているから、問題ないとは思うけど。ただ、なんというか最高の「現実を知るための問題」というか授業みたいなもん。歴史や現在の世界のパワーポリティクスの構造を分析しなければ、何言っているかわからなくて、、、、しかしながら、北方領土で領土紛争を抱える隣国といっても、今回は遠い東欧の出来後なので、「俯瞰的に物事を見れる特権」がある。にもかかわらず、西側、アメリカサイドの一員として、「日本として具体的にどう受け取るか?関わるか?」を考えなければならない。とても価値のある課題だと思う。

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■3/22時点での現状のペトロニウスの整理

・ロシアの歴史的な西側への恐怖、またNATOがロシアを包囲して刺激して追い詰めたのも事実

・ロシアの内在的論理から、今回の背景、メカニズムは非常に論理的で、何もおかしくない。プーチンが狂っているとか言いたいのは、まぅたくのミスリード

・西側の主権国家のコモンセンス(ウェストファリア体制) VS 帝国の論理は、常にぶつかりあるどちらかが正しいかは、一概には言えない。ロシアがプロパガンダで流す、コソボの「保護する責任」やイラクの件は、まったくロシアがやってきたことと同じという主張は、少なくともリーズナブル。ちなみに、RTはロシア放送。ロシア側の論理を知るには、これを聞いているととてもよくわかる。 

・西側(NATO)、米国が長期的マクロの「対話を全くせず」にロシアを追い詰めたことは事実

・しかしながら、メカニズム的にロシアが追い詰められた事実と、極端な侵略である「今回のやり方」がある敷居を超えているのも事実

・武力による国境線の変更は、力ある帝国は、さまざまな形で行うが、今回のウクライナ侵攻は、ロシアのこれまでのやり方としてはあまりに極端

・これだけクリアーな侵略であると、「国際世論」は、これを容認しきれない。たぶん、クリミアのケースが、ギリギリのラインだった。

・ただし、今回も、即決で事態を収拾できたら、各国は黙った可能性が高い。核を持った国の行動は止められない。

・しかしながら、ウクライナに時間を稼がれ、かつ情報戦で大義を失わせた状態では、ロシアとしては事実上落としどころを失って追い詰められた。


であれば、プーチン大統領の戦略としては、強い一貫性があって、メカニズム的にも凄い合理的。なので、今回のことはかなり必然、に思える。


しかしながら、これだけの「結果として国際世論の敵としてのロシア」というほぼ敗北に等しい追い詰められ方をしていることを考えると、何をプーチンは間違えたのか?。


いまのところのペトロニウスの仮説をかんげるのには、2つほど視点。これを見たいなと思っている。

ロシアの視点
1)なぜこれほどまでにロシア軍が弱かったのか?
(48時間以内の短期決戦でキーフを落とせればクリミア併合と同じ状況だったはず)。

ウクライナ側の視点
2)2014年のクリミア併合ではいいようにロシアに手玉に取られたウクライナが、なぜこのような国民国家意識の強い挙国一致体制をとれているのか?
世界最強レベルの呼び声高いロシア正規軍に対して、なぜ優勢を維持できているのか?
SNSなどの情報戦で、ロシアを圧倒しているのはなぜか?(2014年の時はボロ負けしたのに)

https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2015/12/post-4307_1.php


こんなことを考えながら、ニュースを見ています。

アメリカの参戦をさせたら勝ちのゲーム~ロシアのウクライナ侵攻(3)

2/24の侵攻から約三週間が過ぎた。本日は、3/17の木曜日。驚くべきことに、いまだ首都のキーフ(キエフ)は落ちていない。大方の予想と、加えてプーチン大統領自体の予想も短期決戦で勝負がついて、直ぐ首都をおさえられるだろうとの予測でこの戦争を踏み切ったであろうことが大体大方の見方として固まりつつある。しかしながら、なぜかの理由は、はっきりとしてはいないが、これが非常に遅れている。ウクライナ軍の抵抗が予想より厳しかったのか、ロシア軍が弱かったのか、このあたりは分析が進んでいる。しかしながら、首都のキーフが陥落せず、抵抗が継続されること------特に、ゼレンスキー大統領が死ぬ覚悟での不退転決意を示して首都に残り、戦うことを選択したことで、「世界(=アメリカと国際世論)を味方につける猶予時間を確保した」というのが3月17日現在の僕の理解だ。


だから注目すべきは、国際世論が、どのように「悪の侵略国ロシア&プーチン」という世論を形成して追い込んでいっているか?そのプロセスを注目してみている。これ今後の世界の戦争のやり方の基礎になることだと思う。ハイブリット戦争ですね。


ちなみに、下記のVox Mediaの動画は、ウクライナの第6代大統領ウォロディミル・ゼレンスキーさんのことがよくまとまってる。これを見ていると、めちゃくちゃ自撮り慣れすぎ。流石の元コメディアンだと思います。コメディアンというのは、アメリカでは、かなりポリティカルな発言をする仕事なのイメージがあるので、その流れからだと、政治家になるのはよくわかる。ヨーロッパでもそうなのかわからないが・・・。それにしても、表現能力が高い。悪くえば、扇動能力が高い。SNSや通信を使った情報戦が、けた違いにうまい。ヨーロッパ議会の演説で、通訳が涙ぐむとか、見たことない。あのシーンは、震撼しました。。演説で、空気をひっくり返した。この戦時に、こうした肝の据わった、宣伝にたけた大統領を持っていたことは、ウクライナにとって幸いだったのだろうと思う。もともとかなり日和見だったり、対立を煽ったりと、評価の低い大統領であったようだが、戦時に化けたといっていいでしょう。ナチスに対するイギリスのチャーチルに比較してよく語られます。

jp.reuters.com

Vox Mediaは、新興のヴァーティカルメディアで動画に強いところなので見やすいです。ちなみに、下のメディアバイアスの表はいつも参考にしているのですが、この位置づけだと「極左」の位置づけになりますね。僕もそこはかとないリベラル臭を感じます。こういう時は、FOXを同時に見るとバランスが取れます。英語しんどい、という人には、あっちゃんの動画も見事にタイミングを得ている。

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ちなみに、これを見てて、元アナウンサーにして福岡市長の高島宗一郎さんを、凄く連想した。メディアを使って、たくさんの人々に語りかけるスキルって、明らかに才能だし、訓練されたスキルでもあると思うんだよね。これからは、YouTuberのような人が、政治家になって、大統領なる日は近いなと思った。

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■白人だからシンパシーが強いのか?それとも、英語話者が多いからなのか?

ちなみに、この世界中のシンパシーを扇動する「国際世論形成」で、これまでシリアなど中東やアフリカでもっと人が死んでいるのに、なんで今回だけ?、人種差別だ!という話が多く出ている。

発言者は全員が白人であり、中には押し寄せるウクライナ難民を目の当たりにし、涙ぐみながらリポートする者もいた。人は自分と似た属性や環境にある他者に「まるで私みたい」と親近感や同情心を持つ。そうした人々の不幸が他人事に思えないだけでなく、「明日は我が身」の恐怖心も芽生えるからだ。逆に言えば、自分と「似ていない」人々の立場を思いやれない想像力の欠如の表れでもある。

 問題は、客観性を保つべきジャーナリストや政治家が我を忘れて「私たちと似た人々」「白人」「中流」「ヨーロッパ」を強調し、その比較として「シリア難民」「北アフリカ」「開発途上国」「第三世界」などを持ち出したことだ。背後には言うまでもなく無意識の強烈な人種差別がある。

僕自身は、個人的な感覚で、アメリカで毎日ニュースを見たり、こうしていろいろ情報を集めているときに、やはり「普通の人々が英語でインタヴューをガンガン受けているさま」がニュースで流れまくるのは、大きな差になる気がする。人種差別というよりも、そもそも「伝わりやすさ」「感情移入の度合い」がけた外れに違う。結局のところ人権という幻想は、西ヨーロッパや北米の形成している文明のパワーを根拠にしているので、この空間での中産階級の人々の共感をどれだけ買えるかのゲームなんだろうと僕は思う。世界の国際世論形成において、「英語を話すことで毎日の地獄を共感度合いが高く発信できる」ことは、こういった焦土作戦的な、抵抗戦には、重要なポイントになるのだろうと思う。それがないと、少なくともパワーのある、アメリカとEUにからは、無視されてしまう。そういう意味で考えたらこの戦略は、日本ではなかなか通用しない。日本で戦争中に、普通の人が英語で訴えまくるというのは、まだちょっと難しいかなぁと思う。

このインタヴューはとても興味深かった。というのは、国際世論形成において、自国のメディアをどれだけ支配できるか?というのは、北朝鮮、中国、ロシアを見ると重要なのがわかるのだが、インターネットに接続できる若い世代と、老人世代の分断が起きているんだよね。これも重要なファクターとして、覚えておかなければならないんだろうと思う。まったく同じことが、日本でも起きると思うので。構造は、どこの国も一緒だ。


■米議会への演説~米国をいかに参戦させるかのゲーム

3月16日は、朝から、米国議会でのゼレンスキー大統領のニュースばかりでした。朝起きたら、NBCをつけるんですが、ずっと特集でした。そのあとも、難民になった人々の、たくさんのインタビューなんだけど、ほとんど英語なんだよね。ウクライナの人々って、英語話す人が多いんだ。やはり、わかる言語で話されるとシンパシーが違う。国際発信力が桁違いなんだろうなと思いました。それにしても、やはり、個別の難民になって人々の話を聞いてると胸が痛すぎて、しんどい。

なんと言っても、大きな戦争は、米国をいかに参戦させるかのゲームのようなもの。第二次世界大戦から変わってないんだな、としみじみ思う。ソ連スターリン連合王国チャーチルが、ひたすらそればかり考えている日記というか資料が残っているのを見て、アメリカを動かしたら勝ちなんだという構造は、いまだ変わっていないんだなとしみじみ感じました。

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これらの演説は、ハイブリット戦争の-----新しい戦争のやり方の一つの大きな例として、人類史に残るものだと思うので、全文見ておくのをお勧めします。また、これからの、というか戦争の在り方自体が、「アメリカを引き込んだら価値」のゲームなんで、アメリカのリーダーを動かすのは、常に民意なんですよね。アメリカの文脈に、アメリカの中産階級ボリュームゾーンへいかに共感を訴えるかのゲームだと思えば、アメリカを学ぶこと、どんな文脈が言い方が、刺激になるのかを分析することは、最重要なことだと思うのです。日米同盟があっても、日本なんか属国レベルの国力差なんだから、最後は、アメリカの意思を動かすのは、アメリカの民意にいかに接続できるかってことなんです。

■日本の国会には?

そう考えると、ゼレンスキー大統領が、「真珠湾攻撃」にコメントしただけで吹きあがるのは、とても最悪の-----なんというか日本を悪い方向に追い込む最悪の動きです。「アメリカの共感を得る文脈」をいかに語れるかが重要な時に、自分たちのナルシシズムをで吹きあがることほど、危ないことはないからです。

僕はぜひとも日本国会伝絶してほしいと思っています。というのは、ヨーロッパ近代文明側、アメリカ側に立って「国際的な連帯を考えるとき」の、「分断を超えるメッセージ」の出し方のよい例になるから。僕は、どのみち日本が日米同盟から逃げられるとは思わないので、積極的にこれをできる限り対等にしていくこと(いまはまさに隷属ですからね)、いざとなったときに、日本の意思でアメリカの離反を食い止められるようなメカニズムを国に持っていることが大事だと思うんですよね。たとえば、安倍首相のアメリカの演説とか、オバマ大統領の広島訪問とか、アメリカとの絆を喚起する------多少損でも、共感と価値観を共有する存在として、ともに戦わないとだめだなとアメリカの民意を刺激する、できれば共振度の高い西ヨーロッパに対しても、そういったメッセージが、国民的な発想があるようになってほしいんですよね。

■ドイツ議会

この辺も興味深い。

アメリカの参戦をめぐる情報戦

このあたりのアメリカの参戦や共感を引き出すための、情報戦としてのメッセージの出し方を考えながらいろいろな情報を見ると、とても勉強になります。

ロシアのウクライナ侵攻における、ロシアの内在的論理って何なんだろう?(2)

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ここにBBCのシナリオが出ている。この戦争はどこで終わりが来るのだろうか?。個人的には、ヨーロッパに旅行に行こうと思っていたので、これでいっていいかなかなか予測しづらくなってしまって、困り果ててる。個人的には、長期化しそうな気配を感じる。物理的には、ウクライナ軍がロシア軍に勝てるはずもないので、ほぼロシア軍が勝つとは思う。しかしその「勝ち方」や「プロセスの長期化」で、統治は非常に難しくなるだろうから、「どこにプーチン政権としては落としどころを求めるか」が難しくなっている気がする。


さてさて、現在、3/7(PST)なんだけど-----つまり2/24の開戦から12日ぐらいかな?たったんですよね。個人的には、ウクライナのゼレンスキー大統領に対する英雄視というか、「悪の帝国ロシアに侵略された、無実のウクライナの人々を応援せよ!」という熱狂が、自分の中で少し収まってきたので(苦笑)、まったく逆の立場や、この立場に組みしない視線を探してみようという気分になってきた。何を考えるにも一方的な視点で物語をとらえるべきではなく、相手側の内在的論理を知らないと話にならないからです。

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ちなみに、自分のスタンスは明確です。国連加盟国は武力による威嚇や武力行使はしてはいけないという国連憲章第2条4項が、WW2以降の国際紛争のコモンセンスであったわけで、それを破ったロシアの責任は明確です。また、日本はアメリカの側に立つ国家なので、利害関係からも、ロシアに立つことはあり得ません。


と、その立場を明確にしたうえで、でも相手の内在的論理を知ろう!というのは、「そういう時にこそ」重要だと思うんです。


だから、なるべくロシアからの視点を探したい。ロシアの正義はどこにあって、こういう行動を起こしたのかが知りたい。僕は、プーチン大統領を狂人だとは、まったく思わないので、彼の決断に至った内在的論理を知りたい。


なので、いろいろ信用できそうと自分が感じる意見で、下記の河東哲夫、伊勢崎賢治両氏のインタヴューは素晴らしかった。視点が多角的かつ専門的。さすがのビデオニュースドットコムだなと感心。


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もう一つは、佐藤優さんの記事ですね。佐藤優さんと鈴木宗男さんは、僕はかなり日米同盟堅持の方針から逆側の多国間同盟を重視している人たちだと僕は思っているので、こういう時の補助線は、とてもいい。こ日本の国策の逆側に向かう視点なんで。かなり極論に振ってくれるので。また鈴木宗男さんは、もうあきらかに、北海道の利益を誘導するし、極端な意見の持ち主なので、この人のスタンスはいつも、意見の多様化とバランスをとるバランサー-----極論を見るのにとてもいいと思っています。また、日本のような巨大な国には、あきらかに世界の「空気」が支持することの真っ向反対とのパイプを維持する人は重要なので、思いっきりロシアの立場に立つ人がいるのは、良いことだと思います。


■河東哲夫さん

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伊勢崎賢治さん

thetokyopost.jp

ここで、日本人がしっかり認識すべきは、NATOはトリップワイヤー化を推し進めるにあたって、旧ソ連邦の国々に、「互恵性」を基調とするNATO地位協定と同じものを与えていることである。

日米地位協定の日本にはない、完全に法的に平等な地位協定によって、それら旧ソ連邦国の主権は、アメリNATO軍の「自由なき駐留」を支配しているのだ。

アメリカの同盟国を気取る日本人が夢想さえできない“高待遇”を旧敵国に与え、東方進出してきたのがアメリカ・NATOなのである。

中略

Japanification: A symptom of “buffer state syndrome” that is highly securitized to the extent of equalizing sovereignty abandonment and patriotism.

【日本化】大国が操る脅威の安全保障化に翻弄される緩衝国家に特有の症候群の一つであるが、国際法上はあり得ない、その大国への主権の放棄が、自国への愛国心に昇華する末期症状。

アメリカへの「依存」が、国内政局において、愛国心の発露となるケースは日本だけではない。しかし、「主権の放棄」がそうなるケースは日本しかない。日本は緩衝国家ではなくて、自分の意思のない緩衝“材”国家なのだ。

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ちなみに、この二人のインタヴューを聞いていて、「日本人としてこの戦争を見るときにどう見るべきか?」という国益の視点が強く伝わってきて、感心した。こういう国外の大戦争があったときに、どういう視点でものを見ればいいのかってのが、よくよく伝わってきた。いま、ウクライナ支援での熱狂している人は、なんというかナイーブな空気に感染されているなぁって、凄く思う。これが日本の国益にとって何を意味しているか?という冷徹な比較の視点が全然ない。極言すれば、日本の国益にかなえば、「ロシア側を支持する」というオプションだってあるかもしれないのだ。現在が、アメリカとの同盟に立っているから、国益的にウクライナを支援する方向が、まだましなだけであるだけだ。


一つは、河東哲夫さんが云っていることを僕的に拡大解釈、曲解すると、アメリカおよびNATO軍の旧ソ連の解体に伴う旧ソ連勢力圏とロシアへの圧力は、もう事実上目に見えない侵略といっても過言ではない部分で、ロシアのプーチンが暴発した理由には、この「つもり積もった静かな侵略」が、大ロシア帝国の復活を物語に生きているプーチン政権に対しての強烈な脅しになっていたということ。日本の真珠湾攻撃を例にとっているのが、とても分かりやすいメタファー。ABCD包囲網で、大日本帝国を締め上げ、「そうせざるを得ない方向」に持っていく国際世論作りのプロパガンダや隠れた静かな侵略は、欧州、米国の得意技なのだ。


忘れてはならないのは、この「静かな侵略」や「人権や平和といった国際世論のプロパガンダ熱狂で相手を絞め殺す」技術は、いつなんどき、日本に向けられるかわからないってことを、よくよく理解して置かなきゃならないと思うんですよね。日本は、一回やられているわけだし。なので、ウクライナ側に立つ正義に酔いしれてはいけない。「追い詰められた相手」に対してコミュニケーションの仲介をとるしたたかさがなければ、「次のターゲットが日本で会っても何にもおかしくない」というのを忘れてはならないと思うんですよ。正義に酔いしれる人は、熱狂の空気に飲まれやすい。


常に逆のことを考える、性格の悪さとしたたかさが、外交での平和には必要。


二つ目は、伊勢崎さんの視点は、記事のJapanification(日本化)にまとまっている。ようは、ウクライナの悲劇は、緩衝国家(Buffer state)としての悲劇なんですが、日本人は勘違いしていないか?ってこと。日本だって、大国ロシアと中国、そしてアメリカの間の緩衝国家なんだってことを。


同じ目にあう可能性は高い!となっている。


そうなった時には、どのような準備がされているか?という視点。日本とウクライナの違いは?------こう問えば、日本はアメリカとの強固な軍事同盟を結んでいるので、極論アメリカが守ってくれる、というのが大きな違いになる。しかしながら、日米安保条約の片務性や、日米基地協定などの、世界での相互比較をすると、日本の条件はほぼ奴隷国家のようなザルになっている。これをある程度対等な形に直していない、出来ないのにもかかわらず、本当に、大丈夫?と問うわけです。


ウクライナは速く降伏すべきか?

このへんの「早期降伏論」の意見は、日本国内の内在論理のぶつかり合いなんだろうと思います。ダイスケさんのコメントが的を射ている。早期降伏論から僕が感じるのは、イデオロギー臭なんですよね。宗教的信仰といってもいい。ようは憲法9条問題もそうですが、とにかく「人命がすべてに勝る」という発想は、WW2の日本での戦争被害、300万人以上の死者がもたらしたアレルギーだと思うんですよね。彼らの存在意義は、究極は、国家の暴走は許さないこと。すべての国家的な価値や大義よりも、人の命が優先順位が高いという発想なんですよね。これはこれでわかるロジックなんですが、だから、武器をすべて放棄すればいいという処方箋にたどり着く。このへんの宗教信仰的な「価値観」に抵触するので、ひたすら他国に対しても物言う形になるんでしょうね。この内容を評価する以前に、「現実を直視して事実を分析する」姿勢がない言論は、そもそも聞く価値がないとぼ僕は思います。宗教論争なんで。だから、この手の人々は、「歴史的経緯」や「具体的な背景」を無視して、極論をぶつけてくる気がします。こういう「歴史的経緯に対する不干渉」が、この手の人々の特徴で、絶対にまともに物事が解決しない人々の特徴だとも思います。現実を見ない信仰だからです。


佐藤優さん

すべての国連加盟国は武力行使に訴えてはいけないという国連憲章のルールを無視し、ウクライナに全面侵攻したロシアの行為は到底是認できるものではありません。ウクライナを国際社会が応援する気持ちは心情的によくわかりますし、ウクライナ軍も必死の抵抗を続けています。

しかし、残念ながらこの戦争はロシアが勝つことになるでしょう。

省略

相手が脅威であるときこそ、その内在的論理を知る必要がある


president.jp

president.jp

president.jp

鈴木宗男さんのポジションwのどう考えるか?

news.yahoo.co.jp



プーチン大統領の内在論理を追う

中田さん、いいなー。

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2022年2月24日(木)ロシアによるウクライナ侵攻(1)

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さすがに、これは歴史的イベントだろうと思い、コツコツ調べている。上の最初の1時間半は、ウクライナ動向についてLDさんと話したもの。今の気分が残っている。2014年3月のロシアによるクリミア併合以来、このような国境線の変更は、WW2以来の大きな出来事で、世界の歴史の流れを大きく変えることだと考えてきたので、これでダメ押し。新しい世界に突入したのだろうと思う。


2022年2月24日の木曜日にロシアがウクライナに侵攻開始。

僕はスタンスとしては、WW2以降の国境線を武力によって変えないという国際的なコモンセンスは、絶対だと思っているので、日本人としては全面否定以外はないと思っている。しかし、ロシアの「安全保障への恐怖から来る物語」は、日本も似ているのでこれを止める方法は、なかったかもしれないとは思う。とはいえ、専門家であるわけでもないし、利害関係もほとんどないので、こういう大規模イベントは、語彙と歴史を見る皮膚感覚を養う好機だと思っている。なので、こつこつ事態をモニターしてみている。

■小泉悠さん

こういう時に、基礎的な時代を理解するためには、自分が好きなかつ信頼できるソースをコツコツ追うのがいい。東京大学先端科学技術研究センター専任講師の小泉さんをそもロシアウォッチャーとして信頼してずっと追っているので、この人を追っている。過去のインタヴューで、北方領土問題について、めちゃめちゃわかりやすく説明していて、重層した複雑な歴史で簡単には理解できないと思っていたことが、スッと理解できて、自分の頭と言葉で積み上げている人はこんなにわかりやすく物事が説明できるのか、と驚いた。下記の著作も読んでいるしね。本では、ウクライナバルト三国などの国境問題もおっていて、全部ひっくるめると、ロシアの全体の戦略というか感覚がよく伝わってきて、本当に良かった。とにかく明快でわかりやすいのに、決してごまかしていない自分の言葉で練られ考えられた深みを感じる。

特に、下の5分のダイジェストは、いまが一体「何がイシュー」なのかが端的に詰まっている。

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歴史的には、ホロドモールによるロシアへの恐怖が深く、オレンジ革命、マイダン革命とステップを踏んでいるので、ここで市民によるゲリラ戦による徹底抗戦はわからなくない流れ。日本のWW2での本土決戦を、ガチでやっているということだ。

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本を読むと、目の前の現象だけではなく、「主権」の概念が、西側、自由主義陣営、西ヨーロッパの1648年のウェストファリア条約(Peace of Westphalia)を基礎とする考え方とまるで違うという原則と理論から説明していて、なるほどと唸ったのを覚えている。中国の歴史的背景から、冊封体制朝貢体制を知らなければ、「見ている世界が違う」「異なるゲームで交渉している」ことがわからなくて、何が問題になっているのかまるで理解できないままディスコミュニケーションに陥るものなのだなぁと、いろいろ本を読むうちにクリアーになっていったのだが、その時と同じようなセンスオブワンダーを感じた。というか、むしろ、世界の大国として独自で動けるプレイヤーである中国やロシアがまるでウェストファリア的な理解と異なる主権、外交理解をしているということは、人類史におけるコモンセンスが、決して、それが共通ではないこと示していて、全然わかっていないで歴史書とかを読んでいたのだなぁ、といやはや読んでいて勉強になった。

これ2019年の時の本の感想だけれども、この主権の概念の違いを、前提にしたいと、プーチン大統領が何を言っているのかが、ほとんどわからないと思う。

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■本土決戦のいま

さて、この記事を書いているのは、2/28でたぶんウクライナとロシアの会談は、破談していると思う。そうすると、ロシアの侵攻に対して、ウクライナによる本土決戦が継続くしているはず。かなりの軍事大国ウクライナといえども、実際のところは、ロシア軍に勝てるはずもない。じわじわと、キエフ(最近キーフと書くよね)に進軍していて、いつかは落ちると思う。基本的に、時間がたてば、ウクライナ、ロシアともに良い点と悪い点がある。実際軍事的には、どんなに抵抗しようと、占領地は増える。ロシアのアドバンテージは増えていく。

しかしながら、ウォロディミル・オレクサンドロヴィチ・ゼレンスキー大統領(ユダヤウクライナ人)は、この状態で、徹底抗戦を叫んで、それが機能している。もともととても好戦的で能力のないコメディアン上がりとの揶揄が多かった人だけど、時を得た感じがする。民主主義の生態が、まがりなりにも、自由を求めて市民を含めて本土決戦、徹底抗戦を叫ぶとなると、国際社会、とりわけアメリカ、西ヨーロッパサイドの支持が大きくなっていくのは必定。


国際社会の同情、そしてアクションを引き出す、「時間稼ぎ」が、本土決戦の効果としてある。



そしてEU加盟申請など、打てる手をガンガンうってきている。これが、どこに着地点を見出すか、が今注目されている。

映画などは、ほとんどプロパガンダで、一方の立場の物語に過ぎないことを自覚しつつも、たぶん実際にほとんど知識がないことを考えれば、下記の2つの映画はおすすめ。


■ロシアの考え方

ちなみに、ロシアの安全保障への恐怖を理解するのに、この解説は、うまいと思った。ロシアが、どれだけ安全保障的に被害者意識の物語を積み上げているかは、実際の被害の歴史をベースに語らないとだめだと思うので。

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■CNN10

僕は家族で、毎日CNN10を見ているので、この時のやつも毎日追っている。将来の参考資料として。

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チャールストン&サバンナ+フロリダ・キーウェスト&エヴァーグレース国立公園(4) チャールストンダウンタウンを散歩

■朝飯はグリッツ
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ミドルトンプレイスでの朝食は、なかなか美味しかった。普通のブレックファストでしたが、味がちゃんとしている。眺めがとても素敵。雨模様なのが残念ではあるが、それもまた風情。ちなみに、南部の名物料理ということで、grits(グリッツ)ですね。とうもろこしでできたお粥のようなものらしいです。最初なんだろう?っ思いながら食べたら、だいぶしょっぱい。語源は「粗末な食事」を意味するGryttにあるそうです。これもうほとんどお粥だと思うんですよね。かなりしょっぱかったけど、チーズとか色んなので味付けは変えられるんだろうと思う。

■ミドルトンの屋敷の中のツアーへ

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このツアーが最高でした。雨が降っていて、他に誰もいなくて、朝一番の回は、うちの家族のみだったので、ひたすら僕も子供たちも質問しまくって、なかなかの充実したツアーでした。財団に管理が移ったとはいえ、ミドルトン一族の個人のものなので、写真撮影はできなとのことで、残念でした。

驚きなのは、60-70年代くらいまでこの屋敷は、ミドルトン家の人が住んでいたっていう話。もう金持ちの桁が違いすぎて、やはり「裕福さ」って世代を超えて残るんだなぁって。このレベルの金持ちは、もう世襲貴族ですよね。そんなけた外れの財産を1-2代で作ったことを思うと、奴隷制度と交易の利潤の凄まじさを感じで背中が寒くなりました。もう一つは、南北戦争で南軍が負けた後、北軍がこのプランテーションになだれ込んできたときに、ほとんどの建物がヤンキー(Yankee)によって焼き討ちにあって焼失しましたという話。『風と共に去りぬ』(Gone with the Wind)で、アトランタ操車場の弾薬庫の炎上を強く連想した。様々なところで、ヤンキーがきたときに、この辺はすべて焼き討ちされたなどの階層が出てくるので、南北戦争のあとは深いんだ強く印象に残りました。

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それと、うちの子供たちは、現在ミドルスクールのエイスグレード(8年生)なのですが、歴史でアメリカ独立革命の部分を詳細に(なんでそこだけ!っていくくらい細かい)習っているのですが、出てくる名前が、初代コーンウォリス侯爵チャールズ・コーンウォリス(Charles Cornwallis)の降伏の話などが出てきて、めちゃ盛り上がっていました。子供たちも、こういう歴史の話が分かるようになったんだなぁとしみじみしました。コーンウォリスの降伏は、ヴァージニア州ヨークタウンの戦いですね。この辺は、アメリカの神話の基礎みたいなものなので、個々の有名な登場人物や地名は覚えていると、つながって胸がドキドキします。

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後、ちょっと驚きだったのが、ミドルトン一族に仕えた人たち関係者が、「同窓会」?見たいのをやっているんですよね。なるほど、なるほど、そういうのはあるだろうね、数百年続く貴族に使えているわけだから。ところが、驚いたのは、写真に「なんとか・ミドルトン」と書いてあるんですが、その人が、どう見ても黒人なんですよ。あ、これは、よく奴隷を白人の主人がレイプして子供を産ませていたりするケースが(家畜として当時扱っているんですよ…ひどすぎる)、それかなぁ?って思ったんですよね。有名な建国の父トーマス・ジェファーソンの愛人、奴隷、サリー・ヘミングスの話も思い出させます。

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でも、聞いてみたらどうも違うみたいなんですよね。当時、黒人奴隷が解放されたときに、名字がなかったんで、適当に名前をつけたんらしいんですよね。日本でも、明治維新で四民平等になったときに、適当に名字をつけたので、田んぼの中に住んでいるで田中さんという名前が多くなったとか、本当かどうか知りませんが、どういう話を聞いたことがあります。それと同じように、当時つかえていた主人の家の名前を使うケースがよくあったとか。それで面白いなと思ったのは、同窓会って、使用人たちなど関係者が集まって仲良くしているというのが書いてあって、、、、まぁ裏の背景はわからないのですが、『片喰と黄金』というマンガで、ゴールドラッシュのカリフォルニアにアイルランドから食い詰めていく物語があるんですが、異様に奴隷にやさしくしている白人農園主の矛盾を描いたエピソードがあったんですが、あそこなどは、そういうのがあってもおかしくないよなって、ちょっと不思議な感じがしました。ある程度、自立して中産階級になって、「過去の歴史を距離を置いてみよう」と思ったら、自分のルーツについて、いろいろ調べたり話し合ったりして、仲良くなれることもありうるよなぁと、驚きました。本当は豊かになって自立できたら、対等になれるはずなんで、すべてがキャンセルカルチャーなどの対決を煽る姿勢だけに収斂するのは、かなり社会の持続性を失わせるよなぁと思います。

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とはいえ、上のベクトルとは逆ですが、奴隷の悲惨さを扱った作品としては、この『マンディンゴ』(Mandingo)1975年が、一番残酷で苦しいです。なので、これを見ておくのをお勧めします。広島の原爆の記念館見る前に『はだしのゲン』読んでおくような感じです。どの辺まで究極に言ったら残酷でやばいかというのは抑えておきたいなと思います。まぁ、この凄みのある地獄の歴史を、前提にして離さないと、軽々しくなっちゃいますよね。

ダウンタウン
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この日は雨なので、本当は、どこかのプランテーションを見学するつもりだったけど、諦めてダウンタウンへ。雨がひどければ、ランチだけで良いと割り切っていました。降水確率100%だったので、そもそももう無理だなって。けれども、小雨になって、歩くのは、問題なかった。しっかし、12月ということで、異様に寒かった。しんどくなって、近くのスーパーマーケットで、もこもこフリースを買って、寒さを凌いでいました。いやーカリフォルニアも寒かったけど、こんな南部でもかなり寒いんだなってて驚いた。とりあえず、市の中の公営駐車場(駐車場はいろいろある)において、ふらふら家族で散歩。

■Poogans's Porchで昼食

www.poogansporch.com

南部料理をトライということで、妻が探してくれたお店に。FRIED GREEN TOMATOEが有名ということで、とりあえず有名どころを注文。

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FRIED GREEN TOMATOES
SHE-CRAB SOUP seasoned Blue Crab, Chives
POOGAN'S MONTE CRISTO
Smoked Ham, Swiss Cheese, Maple Syrup
Seasoned Blue Crab, Chives

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全体的に、悪くないって感じの評価。ただし、めちゃくちゃおいしいかというと、、、、。この後、サバンナでいったお店は、これアメリカ生活の中で、人生で一番うまいんじゃないか!と子供たちが叫んでたくらいおいしかったので、それと比較すると、うーむ、まぁまぁかな。

■街を歩く
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息子が大きい教会を見てみたい、というので、教会に。なんというか、自分は、大学生ぐらいの頃に、ヨーロッパを旅行しまくって、飽き飽きするほどみているので、それほど感銘を受けなかったんだが、子供たちはとても感心していたみたい。こういうゴシックとまでは行かないか、古いタイプの教会を見ると、ああ、ヨーロッパと地続きなんだなぁって感心する。

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カリフォルニアで、娘の保育園とか、色々な教会に遊びに行ったけど、基本的には近代建築なモダンなものが多くて、こういう歴史を感じることは全くなかったので、ああ東海岸は、やっぱり大英帝国の一部で、ヨーロッパとのつながりが深いのだなぁとしみじみしてする。Wayfares Chapel(ガラスの教会)とかね。ああいうのと比べると、めちゃヨーロッパの香りが凄いする。

Homepage · Wayfarers Chapel

こういうふうに思うのも、アメリカの東海岸をたくさん旅行して、そもそも若いときのヨーロッパの経験があるからなのかもしれない。子供たちはどうこの空間のつながりみたいなものを感じているのかは、わからないけど。やはり、旅はいい。

■市庁舎
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雨が降っているので、教会を見たら、もう帰ろうって話になっていました。下の娘が、まだ8歳なので、「せっかく来たのだから!」と、盛りだくさんにすると、まぁ、自分がアラフィフで体力が落ちたのもあって、後に疲労が残るので、無理はしないとなっているので、だいぶ淡白な感じになっている。ああ、そういう意味では、老いはきているのかもしれないなぁ。40代後半で老いなんて、笑っちゃうかも知れないけれども、、、、僕はバックパッカーが好きで、大学時代本当に世界中色々回ったけれども、当時の一番興奮して面白かったのは、地図もガイドも持たず、ふらっと行った都市で1週間くらい、毎日毎日、街を歩き回ることでした。地図は持っていかないけれども、もちろん現地調達はしますが(笑)。そうして、現地に地図を片手に、歩きまわっていると3−4日すると、頭の中に、身体の中に都市の構造や機能みたいなものが、うっすら出来上がってくるんですよね。これは、特に古い街だと、がちっと身体の中に構造がわかってくる。でもあの身体の中に、僕は「身体地理感覚」と呼んでいましたが、出来上がってくるのは、一人で黙々と、物凄い距離を歩いて、ホテルと駅や重要ポイントの体感距離が出来上がらないと感じれません。でも、、、それは、40代の前半で限界になりましたね。一つには、子供が小さかったので、あまり詰め込むと、数時間は抱っこしたりおんぶしないと、まわれないんですね。30代の後半くらいは、楽勝でしたが、40になるともう無理。ああ、あのバックパッカーのような都市散策は、もうできないのだろうなぁと少し残念い思います。まぁ、とはいえ、8歳にもなると、流石に抱っこをせがまなくなりますので、今回は意外に歩けた。全く無目的で、パイナップルの噴水でも見れれば十分と思っていたんですが、通り道に市庁舎があって、偶然、せっかくだから見てみようよ、ということで入りました。

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というくらい、偶然で適当だった上に、家族には、市庁舎なんかどこも同じでしょう、見ても仕方がないとごねられたんですが(笑)。チャールストンの南部の歴史の香りは、確かにプランテーションを見たので、僕の中ではかなり満足してしまったのですが、ダウンタウンも、なんか一つくらいはみてみようよって、説得して入りました。入口は、大したことなくて、みてもしょうがないじゃんと、みんなぶーぶー。


が、今回の旅行でベストとも言えるほど、素晴らしかったんです。この地下のダンジョンツアーが。そもそも、ダンジョンツーアーがあることすら知らず、下に行ったら偶然やっていただけでしたが。これは、自分「持っている」なって思いました。


■市庁舎ダンジョンツアー

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これは、市庁舎の地下に、地下室があって、そこは長い歴史があって、元々は両替所として使われていたり、イギリス軍がせめてチャールストンが占領された時には、犯罪者の牢獄にされたらしい。なのに、イギリス軍占領時に、この地下室の奥に弾薬を隠してあったりと、南部の歴史が色濃く反映しているんですね。それで、そのエピソードを、キュレイターなのか、ガイドの人が、説明してくれるんです。ディズニーランドのホーンテッドマンションみたいな感じって思えばいいんですが、これが最高でした。

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Old Exchange and Provost Dungeon

http://www.oldexchange.org/highlights

下記のサムター要塞の背景で説明したのですが、このあたりの歴史をちゃんと知っていると、いろいろなツアーの解説がどんどん重なっていってつながっていくので、めちゃくちゃ歴史が体感できます。

petronius.hatenablog.com


■市庁舎2階
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■奴隷市場

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globe.asahi.com

ナサニエル邸宅

Nathaniel-Russell House Museum Tours & Tickets | Charleston, SC

■パイナップル噴水(Pineapple Fountain)
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1990年のハリケーンヒューゴの後に建てられたものらしいですが、いや、うん、なんというか、ただの噴水だよね(笑)って感じでした。この近くに住んでいる人が見に来るにはよいランドマークスポットだとは思いますが、観光でわざわざ行くほどのものではないかなぁ。だってほら、チャールストンって歴史の町なので、やはり歴史をたどりたいところですよね。

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チャールストンからサヴァンナに向かう途中。約二時間のドライブ。ちょっと雨。州間高速道路95号線(Interstate 95、I-95)をまっすぐ。東海岸の大西洋を左手に。I95は、メイン州とフロリダを結ぶ東海岸の大動脈。

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僕は、カリフォルニアのオレンジカウンティに住んでいるし、日本でも東京や神奈川に住んでいるので、基本見る海って太平洋なんですよね。大西洋ってなじみが薄い。それを左手にずっと見ながらいると、なんだか、ふぉぉぉぉっえ感じがします。『パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち』でも『ヴィンランド・サガ』『ダンピアのおいしい冒険』でもなんでもいいですが、あそこで描かれるカリブ海とか大西洋って、見たこともない、どっか遠いところにあるファンタジーって感じだったんですが、こうやって眺めながら運転すると、そうかぁ、本当にあるんだなぁと感慨深い。「見なければわからない」とは言わないけれども、実際に見ると様々なものが有機的に心や体の中で結びつくので、異なる角度から見えるようになって、世界を甘受する力が少し上がるような気がする。あくまで気だけど(笑)。


アメリカの旅の醍醐味は--------アメリカに限らないかもしれないけれども、運転することだと思っている。アメリカ合衆国の特徴的な「差異」というのは、とにかく「空間の巨大さという大陸的なもの」が、一番にあがると思っている。とりわけ、狭い列島の繊細な空間に居住する日本人には、「この大陸的な感覚」「この風景の変化」というのが、ほとんど体感的に理解できない。これを体感するには、長距離(まわりのアメリカ人にとってはたぶんロスとサンフランシスコの運転をめちゃくちゃ長いとは思わない感じなんだよね・・・・)を運転してみると、よくよくわかるようになるのだ。僕は、西海岸と東海岸は、アメリカ合衆国に限れば、上から下まですべて運転したので、これは自分的にはラッキーだと思っている。内陸部も、それなりに運転しているので、いまアメリカの映画やドラマを見ると、ワンシーンのカットで、どこらへんか、どのような風景が続くかというのが、体感的にわかる。それによって、わかるものが全く違うので、とてもうれしい。

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先日、ジェーン・カンピオン監督、ベネディクト・カンバーバッチ主演の『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(The Power of the Dog)(2021)を見たんですが、1920年代のモンタナ州なんですよね。ここは、イエローストーン国立公園をいったときにかなりの距離を運転したんですが、映画のカットでは、ほんの何十秒や数分のカットでも、「その背後にどれだけの距離感を移動する日常があるか」ということが体感的に理解できないと、ここに住む人の身体感覚がわからない。まぁ僕は、映画やマンガなど物語が大好きで、それにくるまれて生涯を過ごしたいなと思っているので、「より物語を深く楽しむために」何が必要か?っていつも考えながら生きています。

■サバンナへ

Interstate 95を真っ直ぐ、南へ。低地湿地帯。沼地ばかり。ここら辺が、独立戦争当時のジェントリーたちで、大金持ちばかりって、信じられない。ちょっとチャールストンから山の方に行くと、もう原生林的など田舎感じ。すでにアメリカの東海岸は、大工業地帯の大都市がある地帯なのにもかかわらず、ちょっと来るまで郊外に行くと、鬱蒼とした森や低湿地帯が延々と続くさまは、日本では考えられない。日本は、名古屋の灌漑や、東京の江戸湾埋め立てなど、数百年、数千年かけて、人力で人が住める空間を、余すところなく利用しようとしているので、大都市のすぐ横に、そういう空き地みたいのは残らないのだ。でもアメリカは、たぶん、手を入れれば使える土地であっても、そんな手間、暇、金をかける余裕があれば、フロンティアなどさらに西の奥地に向かえばいいじゃないかって感じになって、最高においしい立地を使い尽くしたら、直ぐに奥地に開発が向かってしまったんだろうと思う。

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オレンジカウンティでは、シェブロンはよく見るものの、bp(旧ブリティッシュ・ペトロリアム :The British Petroleum Company plc)は、ほとんど見ないので、なんとなくうれしくなって写真を撮ってみる。つーかさ!、3.5ドルですよ!。オレンジカウンティでは、バイデン政権の政策とコロナによるサプライチェーンの分断でインフレが進んで、既に5ドルですから。カリフォルニアって、ほんとうにガソリン高いよなってしみじみ思う。

チャールストン&サバンナ+フロリダ・キーウェスト&エヴァーグレース国立公園(3)-2ミドルトンプレイス・プランテーション

■雨の中散策

雨でしたが、とりあえず正面玄関をさがして、次の日の邸宅内部のツアーの申し込みに。ツアー自体は、早い者勝ちだったので、予約できんなせんでしたが。ミドルトンプレイスを、散策。ちょっと引くくらい広くて美しい。サウスカロライナプランテーションと考えると、これが巨大な奴隷のシステム取引の富とと労働と証と考えると、12years slave やハリエットの映画を連想しちゃって、うわちやぁ〜という気になる。この巨大庭園、個人的には、浜離宮をなんだかとても連想した。人力で作られている、巨大な権力と富による庭園だからだろうか。

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学生の頃に行った、イギリス郊外の貴族の庭園を物凄く連想する。ヴァージニアのジョージワシントンのプランテーションのマウントバーノンも思い出す。これらか、イギリス帝国の一部で、かつイギリス貴族、もしくは、ジェントリーによって支配されていた植民地なんだって、強く連想する。彼らの意識には、明らかにイギリス帝国臣民、ジェントリーの生活様式があったんだろうなーってこれだけまわると、ほんとうにわかってくる。イギリスとのつながり深すぎだ。

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What is GENTRY? What does GENTRY mean? GENTRY meaning & definition - How to pronounce GENTRY - YouTube

ジェントリ - Wikipedia



浜離宮やイギリス庭園、マウントバーノンそれに

バージニア州アレクサンドリア(ここはシーフードがおいしいです!)近くのマウントバーノン(Mount Vernon)は、アメリカ合衆国初代大統領ジョージ・ワシントンプランテーションで、ほんと生涯ここで彼は人生を過ごしています。また彼の自伝を読むと、彼の自己認識が、「イギリス帝国臣民」であり「農園を経営する農園経営者」として自分を定義づけていて、新国家の基礎も、常にこの中産階級以上の独立自営農民による民主政体を前提としていました。建物は、新古典主義ジョージア調建築様式であり、ポトマック川の堤にあります。HPの遠景の動画を見るとわかりますが、凄い高台にポトマックリバーを望む農園主の邸宅で、この当時のヴァージニアの富裕さがどれほどのものかがうかがえます。しかし同時にワシントンの伝記を読むと、マウントバーノンのレベルの生活では、たぶん状富裕層の中では、かなり下の方の、生活するのにだいぶ才能と経営能力が必要な、いってみればカツカツな感じなんです。実際に行って、マウントバーノンを、歩き回ってください。「これ!!!!」で、ヴァージニアの富裕農民としては、貧しい方なんですよ・・・・。当時の農園主の巨大な権力とと見に、目がくらくらします。ただ中規模の農園を軌道に乗せようとしていたため、日本近世や近代の徳川幕府の庄屋や名主のような豪農富裕農民(渋沢栄一の家のような農業生産だけではなく技術者でも商社でもある総合の商売人経営者のイメージ)の当時の苦労が歩いていると随所に感じられます。新国家アメリカという共和国を軌道に乗せるためには、それを支える独立自営農民の富裕層が、「自分で独立独歩で食べていける経営モデル」を示さなければならなかったので、明らかにワシントンはロールモデルとしての農園経営を意識しています。なので原材料から、何とか付加価値をつけた産業を生み出して、イギリスの植民血(=原材料供給拠点)という性格から脱出しようと苦悩しています。
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なので当時のイギリスの新技術を次々に試して実験しています。綿花ではなく衣服を作る、デザインをする、色を染めるなどなど、付加価値をつけてよりサプライチェーン下流に行こうと四苦八苦です。「この感覚」「自己認識」によって南部の農園・プランテーションが経営されていることをわかっていると、この地域が大英帝国の「一部」であることが、まざまざとわかってきます。ここでいう近代的な新技術は、すべてヨーロッパからイギリスを通して(時にはフランスから直接)はいってきますので、子供をイギリスに留学させて人脈と学位をとるのは常識でした。また、農作物の「アメリカ国内での自給自足」と同時に「大英帝国のグローバルサプライチェーンの一部としての南部の農作物や綿花などの原材料」の利益がせめぎあっているのが、ワシントンの自伝の農園の財務表から読み取れます。

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www.mountvernon.org

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バージニア州シャーロッツビルにあるトーマス・ジェファーソンの邸宅Monticello(モンティチェロ)、これは世界遺産ですね、とも比較してみたいです。

https://www.monticello.org/

https://www.monticello.org/sites/default/files/inline-pdfs/FLBJapan.pdf

なんでヴァージニアの建国の父であるジョージ・ワシントンGeorge Washington 1732- 1799)とトーマス・ジェファーソン( Thomas Jefferson 1743-1826)の名前を出したかというと、ヘンリー・ミドルトン(Henry Middleton:1717年 - 1784年)、アーサー・ミドルトン(Arthur Middleton、1742年-1787)の親子は、この年代にドンピシャ同じで、同じ時空間に生きていた人だからです。アーサー・ミドルトンは、独立宣言にサインした「建国の父」ですよね。また同時に、彼がイギリスで教育を受けて学位をとっているのも注目です。アメリカ生まれの大金持ちは、「イギリス帝国臣民」としてのキャリアと人脈のために、高等教育はイギリスに留学のするのが当たり前だったのです。ミドルトンプレイスも、マウントバーノン、モンティチェロをバラバラに行くのではなく、一つの同じ時代の様式と文明として眺める姿勢があると、とても面白い。


■イギリスの宮廷社会との連続性を感じてみる大英帝国の一部としてのチャールストンの大プランテーション

イギリスの人の知り合いが、最近旅行に行ったそうなんですが、とても見知った風景で、ほっとすると言っていたので、へーと思ったんですよ。軽い感じだったんだけど、え?なんで、ほっとするのって、ひっかかっていて。散歩していて、たしかにイギリスの庭園を凄く連想するんですよね。学生のころ観光でいったロンドンの郊外の庭園とかを凄く連想する。やっぱり英帝国の一部、領土してみなとダメな空間なんだなぁとしみじみ思いました。

miyearnzzlabo.com

ちょっとずれるんですが、最近見た映画で、イギリス映画の『ベル ある伯爵令嬢の恋(BELLE)』を思い出しました。これは、イギリスで黒人奴隷制度がなくなるきっかけになった最高裁判事にあたるマンスフィールド伯爵の歴史的事件に関連する物語です。サマセット裁判とゾング号事件のことなんですが、細かいことは記事を読むかググってもらえればいいのですが、ベルってこの映画の主人公は実在の人なんですが、黒人なんですよね。でも、ずーとっ隠されててわからなかったんですが、実は、マンスフィールド伯爵家で育っているんですよね。しかも貴族の女性として。え?なんで?というのがずっとわからなかったんです。この絵の人です。普通、イギリス貴族の家の絵画にでてくる黒人は、奴隷で召使とかなんですが、この人、どうも真ん中の白人の少女と姉妹として育っているのですよね。え?なんで?という物語です。まぁ、ぶちゃけるマンスフィールド伯爵のマンスフィールドの甥っ子の娘なんですが、それを引き取って貴族女性として育てるんですね。ほとんど娘として、凄く愛して育てたようなのですが、そのマンスフィールド最高裁判事が、イギリスにおける黒人奴隷を認め否判決を出していくんですね。これ、ヨーロッパ世界における黒人奴隷の終止符への話と絡むので、ぜひ覚えておいて損はない歴史的実です。それ以上にロマンチックですよね。このベルという少女は、かなり優秀だったようで、マンスフィールド伯爵の私設秘書のようなものをして、相当かかわっているようなんですよ。


まあ、ちょっと脇道ですが、そんなこんなんを、いろいろ連想して、ほーと思いながら、子供たちと散歩していました。娘もちょうど映画をもいたばかりで、その話を一緒にしながら。


ちなみに、数々の映画の舞台になったHatfield House (ハットフィールド・ハウス)の写真とぜひとも比べてみてください。

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gardenstory.jp


www.mapple.net

浜離宮
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同じように浜離宮もちょっと思い出したんですよね。僕はここが好きで、銀座で働いていた時に、よくお昼に一人で散歩していたのですが、本当に素晴らしい庭園で。「恩賜公園」ですから、天皇陛下からのものですね。これはもともと徳川将軍家の庭園なのですが、潮の満ち引きとかもせっ益されている壮麗な庭園で、これを見ると、徳川将軍家の巨大な財力権力を実感できます。もちろんイギリス的なものとはテイストが違うのですが、なぜこれを連想したかというと、「ほぼ同じ時期に」、「人力」で公園を作ろうとすると、とてもに似通ったテイストになるんだ!と驚いたんですよね。

www.ambassadors-japan.com

浜離宮恩賜庭園|公園へ行こう!

いやー素晴らしい体験でした。繰り返しますが、コンセプトが、

コンセプトに戻ると、サウスカロライナチャールストン観光のコンセプトは、「プランテーションを経験したい!」でした。さらに奥を紐解けば、ヴィクター・フレミング監督の『風と共に去りぬ』(Gone with the Wind)1939の映画で描かれていた、滅び去ったアメリカ南部という「文明」を見たい!というものです。

ですので、そういう文脈で最高でした。


■ミドルトンプレイス

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マグノリア

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Magnolia Plantation and Gardens | Charleston, SC

■過去の旅行記
コロニアル・ウィリアムズバーグ (Colonial Williamsburg)に行ってきた!
https://petronius.hatenablog.com/entry/20120118/p1

サンディエゴ航空宇宙博物館(SDASM:San Diego Air & Space Museum)と林檎(アップルパイ)の古い町ジュリアン散策
https://petronius.hatenablog.com/entry/2021/11/30/044025

チャールストン&サバンナ+フロリダ・キーウェストエヴァーグレース国立公園(1)
https://petronius.hatenablog.com/entry/2022/01/08/093408

チャールストン&サバンナ+フロリダ・キーウェストエヴァーグレース国立公園(2)空母ヨークタウンとサムター要塞
https://petronius.hatenablog.com/entry/2022/01/10/064317

チャールストン&サバンナ+フロリダ・キーウェストエヴァーグレース国立公園(3)-1 ミドルトンプレイス・プランテーション
https://petronius.hatenablog.com/entry/2022/01/18/123318

チャールストン&サバンナ+フロリダ・キーウェストエヴァーグレース国立公園(3)-2ミドルトンプレイス・プランテーション

チャールストン&サバンナ+フロリダ・キーウェスト&エヴァーグレース国立公園(3)-1 ミドルトンプレイス・プランテーション

遠景。写真は、HPから。アシュレー川に臨んでいます。

■マウントプレザントから郊外のミドルトンプレイスまで車で移動


2日目は、マウントプレザントからサムター要塞に行って、夕方は、宿泊地のミドルトンプレイスに。車で約40分。プランテーションを体験したい!がコンセプトだったので、マグノリアとミドルトンプレイスのどちらに泊まろうか悩んだ。決め手は、特になし(笑)。

www.magnoliaplantation.com

もともとは次の日にマグノリアプランテーションのツアーに行こうとしていたのですが、翌日が雨の予報100%だったので、これは無理だと急遽やめました。うちの夫婦は、ウルトラ晴れ男晴れ女で、二人っきりで行く旅行では、雨が降ったことがなかったんですよね。若いころに新宿から上高地バスツアーに申し込んで、当日大雨で失敗しちゃったなーと話してたんですが、上高地についたとたん晴れて(なぜか急激に)、そして観光してバスに戻ってきた瞬間から雨が降り始めたので、うちの夫婦は、ずっと思っていたけど晴れ確率やばすぎると思ったいたのですが、子供がいるとこの確率が少し下がるようで(笑)、今回は完全に雨でした。ただ次の日、市内を観光したんですが、小雨で十分歩けたので、そういう意味では、やはり雨に苦しまないなぁと思いました。

Google mapの拡大や縮小してるとアガる。この記事は僕の私的日記なので、当時のGoogle mapをそのまま。マウントプレザントのチャールストンダウンタウンの都市部の雰囲気から、アシュリーリバーを内陸の郊外に進む感じでドライブ。雨模様なのが残念でしたが、どんどん田舎になっていく感じ。地図を見ていると、ここって東海岸なのかーって。しみじみ。風景が、田舎な感じがして、カリフォルニアのオレンジカウンティよりも平家が多い感じがする。髭みたいな感じの木がたくさんあるのが、南部っぽい。ヨークタウンの港もそうだけど、湿地というか低地なんだなぁと感じる。沼地をところどころに見る。かなり郊外に奥まったミドルトンプレイスに向かう。今日は、ここの中にある、コテージというかホテルで。5時ギリに着く。けれど、宿泊者なので、夜も公園を散策して良いらしい。といっても、ガチの真っ暗だから、怖くてあまり歩けなかったけど。この辺りは、アシュリー川の横で、巨大なプランテーションが集中している模様。運転して向かう途中に、マグノリアなどの他のプランテーションの観光地を多数見た。

■Spanish Moss(スパニッシュ・モス)

ちなみに、南部といえば、このスパニッシュ・モス。米南部独特の植物で、映画とかでもアイコンになっている気がする。このひげが出てきたら、ここは南部だって感じ。Moss(こけ)と言っているけど、パイナップル科の植物だそうで、Southern Live Oak、Bald Cypressなどの大きな木に乗っかっています。けれども寄生植物ではなくて、湿気のある空中の塵から養分をとっているそう。スパニッシュモスと沼地が出てきたら、アメリカ南部だ!と思うとよいです。ちなみに、この風景が最も印象的で有名なのは、映画『フォレストガンプ』の最初のベンチのシーンで有名なジョージアのサバンナ(Savannah)ですね。

www.smithsonianmag.com

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ちなみに、フォレストガンプは、ロードムービーでもあるし、アメリカ大陸中のアイコニックなポイントをめぐるので、これを軸に旅するのも楽しいと思います。アニメでは聖地巡礼はよく言われますが、映画の聖地巡礼も、軸を決めて「ここに行く!」と決めていくと、盛り上がると思います。ちなみに、2021年は、ペトロニウスは、Chippewa Square, Savannah, GAとMonument Valley, Utah and Arizonaに行きました。


さて、郊外のミドルトンプレイスに到着。我々は宿泊するので正面玄関ではなく、コテージ?の受付に。正面入り口と全然違うところなので、大丈夫か?と思いながら森の中を進むと出てきました。


■ザ イン アット ミドルトン プレイス

ペトロニウスは、旅行プランニング能力が低いので、奥さん(うちの奥さんは、めちゃめちゃ頭がいいの!)にお任せなのですが、よくぞ見つけてくれた!って感じで、うれしかったです。アメリカは、ナショナルパークの中のコテージとか、結構とんでもないところまで宿泊施設があったりするんですが、これがかなり予約が難しい。ずっと予約、埋まりっぱなしなので。モニュメントバレーにあるお部屋から絶景を眺めることができるビューホテル(The View Hotel)とか、泊まったときは衝撃でした。
monumentvalleyview.com
あれも、コロナでだいぶ予約が空きとかキャンセルとかでわちゃくちゃなところ、奥さんが毎日サイトに張り付いてとってくれたので、遠く海外から来るにはリスク高すぎて、なかなか難しいだろうなぁと思いました。でも、英語のサイトも含めてコツコツ探していると、こういうの出てきて、おうってなります。

www.theinnatmiddletonplace.com

水回りも悪くなく、設備も新しいとは言わないけれども、こぎれいでよい感じでした。窓を全開にすると正面のアシュリー川が望めるので、眺望も最高。なによりも、ふらっと、外に散歩に行けるのが、こういうのの贅沢ですね。うちも少し曇り模様でしたが、閉館後の夕暮れに、家族で内部を散歩していました。

息子は、本館(歴史的建造物)に泊まると思っていたみたいで、近代的コテージを見て、がっかりしていた。お前、ぜいたくすぎ(笑)。というのは、サッカーチームのチームメイトと、試合に行く時に(僕が運転してて)「最近どこか旅行行った?」といったら「フランスに行ったんだけど、お城(シャトー)に泊まったんだ!」といって、見せてくれた写真が、マジでガチのお城なの。こういうの普通に泊まれるんだ!(←無理)と、息子が感心してたから、その流れの連想だろうけど、うちはそこまでお金ありません(笑)。ちなみに、うちの息子のチームは、移民大国アメリカだけにいろんなバックグラウンドなんだけど、みんな金持ちなんだよなー。なぜか。毎年、みんな夏休み(アメリカは長くて3か月!)とかに自国に帰って、その後ヨーロッパとかでバカンスしてる人が多い。なんというか、うちとは次元が違うんだよなぁ、、、こういうのが、普通の中産階級ですって顔しているのって、マジかよ?って思うよ。


■ミドルトンプレイスとは?~ヘンリー・ミドルトンからはじまるミドルトン家に思いをはせる

さて、コンセプトに戻ると、サウスカロライナチャールストン観光のコンセプトは、「プランテーションを経験したい!」でした。さらに奥を紐解けば、ヴィクター・フレミング監督の『風と共に去りぬ』(Gone with the Wind)1939の映画で描かれていた、滅び去ったアメリカ南部という「文明」を見たい!というものです。

最初の植民地というと、マサチューセッツ州ボストン郊外のプリマスプランテーションが知られていますが、実際は、アメリカ最古の植民地は、現在のヴァージニア州ウィリアムズバーグ郊外のジェームズタウン(Jamestown)です。イギリスが北アメリカに建設した最初の永続的植民地。13年も前の1607年5月13日に、「スーザン・コンスタント号」「ゴッズスピード号」「ディスカバリー号」の三隻に分乗した104人が到着しています。この辺のイメージは、アメリカの神話となっているジョンスミスとポカホンタスの時代くらいですね。

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John Gadsby Chapmanによって描かれた絵が、ワシントンDCの連邦議事堂に飾られています。この絵画シリーズは、圧巻なので、なんとしても議事堂内部ツアーに行くのをお勧めします(予約とるのが大変ですが!)。これを見ないと、アメリカがローマ帝国・共和国をベースに建国された神話の国だってことが実感できないと思うんで。『ポカホンタスの洗礼』。このあたりの知識があると、最古のイギリス植民地の雰囲気がイメージできるでしょう。アメリカ建国の神話は、いってみれば、大英帝国のジェントリー・ジェントルマン、帝国貴族、なによりも白人の神話なので、現在のポリティカルコレクトネス論争の時は、真っ先に「攻撃の対象」になる物語類型です。けれども「オリジナル」を知らずして、その話をしても非常にバランスが悪いと思うんですよね。やはり、まずは、イギリス人、白人によるアメリカ建国の神話をちゃんと直視して、どういうものだったかを実感したうえで、次のステップ「どこが悪かったのか?」という解体のステップにいかないと、わけがわからなくなる。

さてさて、アシュリー川沿いの稲作農園プランテーションハウスですね。これは市内観光やいろいろなことを調べていくとわかるのですが、アメリカ最大の稲作の産地で米を輸出していた!というのは、驚きでした。この屋敷の祖先であるヘンリー・ミドルトンという大商人が「何をしてそんなに儲けたんですか?」とキュレイターの人にい聞いたんですが、僕はてっきり「西インド諸島の砂糖とか南部の綿花」のみだと思っていたんですが、メインは「米ですね」と言われて驚きました。この辺は、前の記事で説明しましたね。西アフリカの文化を、黒人奴隷が持ち込んだからです。

もともとこのプランテーションの始まりは、1730年に、プランタージョン・ウィリアムズがミドルトン・プレイスに家を建て始め、娘のメアリーが、 ヘンリー・ミドルトンと結婚したのがはじまりです。彼がこの場所を気に入って、イギリス庭師であるシムズを雇って、「バタフライレイクス」などクラシックなイギリス庭園に造成したようです。

ヘンリー・ミドルトン(Henry Middleton:1717年 - 1784年)がどういう人かというと、イギリスで法律を学んだ後、サウスカロライナで治安判事、植民地議会議員になって1774年の第一次大陸会議で第2代議長になったひとですね。仕事を息子に引き継いだので、アーサー・ミドルトン(Arthur Middleton、1742年-1787)は、アメリカ独立宣言と連合規約にサインしたいわゆる「建国の父」ですね。


ヘンリーの父親もサウスカロライナのガバナー代行をしているので、それの先は遡れなかったのですが、イギリス国王からチャーター(特許状)などをもらったイギリス帝国貴族か富裕なジェントリー(郷伸)だったのでしょう。当時、ミドルトン家はバークレー、コールトン、グランビルの3郡に農園を持つ大土地所有者だったそうです。ちなみに、この邸宅には、1960?か70年くらいまで、ミドルトン一族が住んでいたそうです。いまは財団に預けて博物館として公開しているが、一族はまだ市内に大邸宅を持っているようです。うひぃ-すごい。この広大な屋敷を、1970年代くらいまで維持してたとか、どんだけ金持ちなんだって思いますよね。

www.middletonplace.org

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■黒人奴隷による膨大な富の蓄積を思う~プランテーションを考えるときに黒人奴隷による労働力を無視しては語れない

この贅沢と広大な人力による大庭園が、黒人奴隷システムによることを思うと、なんというか。。。あとで言及するつもりの徳川将軍家による浜離宮もそうなんですが、いま見ても巨大で壮麗な大公園や空間を造成維持するために、そもそも近代的な重機などがない世界では、「人の手で作る」しかないわけです。いわゆるエジプトのピラミッドなわけですよね。それが世界史に類を見ない残酷な黒人奴隷システムで構築されていることを想像すると、、、、アメリカの神話自体は、アメリカ建国の物語ですから「かっこよく」て偉大なことなんですが、それが何によって支えられているかをこうして具体的なものを垣間見ると、うなります。過去の黒人奴隷に関係する映画は、


D・W・グリフィス監督『國民の創生』(The Birth of a Nation)1915年
リチャード・フライシャー監督『マンディンゴ』(Mandingo)1975年
クエンティン・タランティーノ監督『ジャンゴ 繋がれざる者』(Django Unchained)2012年
ティーブマックイーン監督『それでも夜は明ける』(12 Years a Slave)2013年
ネイト・パーカー監督『バース・オブ・ネイション』(The Birth of a Nation)2016年
ケイシー・レモンズ監督『ハリエット』(Harriet)2019年


この辺が、残酷で見ていられないくらい苦しいです。ちなみに、だいぶ子供たちには見せています。アメリカで人種差別を考えるときに、これらを知らないと歴史を聞いても、まったくイメージできなくなってしまうと思ったので。ほんとは、ドラマシリーズの『ルーツ(Roots)』が最高なんですが、これいまのところ配信とかで見れないので、見る方法がないんですよね。

もうすぐ(オバマさんがはじめて、トランプさんが差し止めて、バイデンさんが実行)20ドル紙幣になるハリエット・タブマン・デイヴィス(Harriet Tubman Davis)は、メリーランドからフィラデルフィアに逃げた逃亡黒人奴隷ですね。メリーランドは南部じゃないですが。あとは、マンガになっているハリエット・アンジェイコブズ『ある奴隷少女に起こった出来事』もおすすめです。僕は、異世界転生物のファンタジーが大好きなんですが、こういう「奴隷の残酷な現実」を見てしまうと、ファンタジーでも気軽に受け入れられなくなってしまいます。それほどに重い。

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しかしながら、南部を見る、アメリカを観光するにあたって、歴史を顧みるならば「建国の光の部分」と同時に、国の恥部としての闇の部分も同時に重ね合わせてみないと、まったく「見た」ということにならないと思っています。この素晴らしい南部のプランテーションの美しき生活、文化、建築、様式、富・・・・・『風と共に去りぬ』で描かれた南部という文明が何によって支えられていたのかは、ぜひとも感じながら見たいところです。そうしないと、黒人奴隷の生活の場所など、さまざまなスポットがありますが、「それがどういうルーツで、どういう現実で、どのような意味で後世の我々とつながっているか」が全く分からなくなってしまうので。

(3)-2に続く。

■過去の旅行記
コロニアル・ウィリアムズバーグ (Colonial Williamsburg)に行ってきた!
https://petronius.hatenablog.com/entry/20120118/p1

サンディエゴ航空宇宙博物館(SDASM:San Diego Air & Space Museum)と林檎(アップルパイ)の古い町ジュリアン散策
https://petronius.hatenablog.com/entry/2021/11/30/044025

チャールストン&サバンナ+フロリダ・キーウェストエヴァーグレース国立公園(1)
https://petronius.hatenablog.com/entry/2022/01/08/093408

チャールストン&サバンナ+フロリダ・キーウェストエヴァーグレース国立公園(2)空母ヨークタウンとサムター要塞
https://petronius.hatenablog.com/entry/2022/01/10/064317