『デセプション・ポイント』 ダンブラウン著 カブリエールアッシュのかわいさにノックダウン(笑) 

Deception PointDeception Point
Dan Brown

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デセプション・ポイント〈上〉 (角川文庫)デセプション・ポイント〈上〉 (角川文庫)
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デセプション・ポイント〈下〉 (角川文庫)デセプション・ポイント〈下〉 (角川文庫)
ダン ブラウン Dan Brown 越前 敏弥

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評価:★★★★☆星4つ半
(僕的主観:★★★★★星5つ)


ものすっごく面白かった。僕の中で、もうダンブラウンさんは、大御所級の扱いで、読んで絶対損しない小説家という地位が確立してしまっている。大好きです!!!!(といっても、英語でないから作者が見ることは絶対ないだろうが(笑))この作品の書評を書こうと思ったのだが、実は、下巻の訳者越前敏弥さんと、巽考之(慶応義塾大学教授・アメリカ文学専攻)さんのあとがきで、余すところ無く説明してあるので、実はあまり言うことがかったりする。このあとがきは秀逸だった。


□あらすじ(アマゾンより引用)

国家偵察局員レイチェルの仕事は、大統領へ提出する機密情報の分析。現在、ホワイトハウスは大統領選の渦中にあり、現職と争っている対立候補は、なんと彼女の父だった。選挙戦はNASAに膨大な予算を費す現政府を非難し、国民の支持を集めている父が有利に進めていた。そんなある日、レイチェルは直々に大統領から呼び出される。NASAが大発見をしたので、彼女の目で確かめてきて欲しいというのだ…。

□海外フィクションのおもしろさ

訳者のあとがきで、ダンブラウンの小説ではじめて海外フィクションの面白さを知った、という層がかなりいるというコメントがあった。なるほど、と思う。実は、僕は、トムクランシーとかこの手の作品は、全く読んだことがない。ジャックライアンシリーズなど、多分面白いものもあるのだろうな、と思いつつも、読めない。


聖戦の獅子〈上〉 (新潮文庫)聖戦の獅子〈上〉 (新潮文庫)
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それは、もともと英語を日本語に訳すると、どうしても文章が変になってしまう傾向が強いのですが、それがどうしても頭に入りにくくて、なかなか読む気が起きない、というのがあります。大好きなSFも、それが理由で数が読めない。そういう人いませんか?。ちなみに、そういう場合は、時間さえあればむしろ英語で読んだほうが、入り込みやすい。あくまでも時間があれば、だが。・・・・また、外国人の主人公は、キャラクターに萌え的に感情移入できない、しにくい、という部分もあります。この手の作品は、主人公の内面が深く描写されているものが少ない気がするのと、そもそも外国人と思うだけでリアリティが遠くなってしまう、というのがあるのではないか、と思っている。ちなみに、だからアーヴィングとかフィッツジェラルド、フォークナーなどの文学はよく読みやす衣です。内面の描写が深いものは、僕は得意のようです。


まぁ、食わず嫌いだけどさっ(笑)


何がいいたいかというと、海外フィクションを全然読んだことがない人が、導入に読んでかなりはまれるほど、わかりやすくて最高の導入本だ、ということがいいたいのです。



□組織そのものを等身大の人間の視点から見直す


「ダンブラウンの小説は、必ずしもスキャンダル好みというわけではなく、むしろタブー破りによって等身大の人間自体を、より精確にいえば現代アメリカ人そのものを生き生きと描き出そうとしているのだと思う。作品の展開がときに奇妙なまでに人間くさく、ハリウッド的とも呼べるほどにハッピーエンド後のみなのはそのせいかもしれない。(ために『天使と悪魔』と『デセプション・ポイント』のラストシーンをじっくり比べてみると良い)。

 神の子もローマ法王アメリカ大統領自身も、はたまたヒロシマの落とし子当人も、すべてわれわれと同じ人間自身なのだ、と割り切り、そこから手に汗握るスリル満点物語を紡ぎだす作者の手腕は、むしろすがすがしい。本書は、そんなブラウン文学のいちばんおいしい部分を、あますことなく味あわせてくれるはずだ。」

引用:慶応義塾大学教授・アメリカ文学専攻 巽考之


この巽さんのあとがきを、少々長いけど引用したのは、まさにこの部分が、ダンブラウンさんの素晴らしさの核心があるからだ。僕も、キャラクターに対して、内面までディープに追っているとはいい難いが、決して表層的であるという単純さでは説明のつかない生き生きした感じを受けるんです。


 そして、その「人間くささが描けている」という特徴が、さらに一歩踏み込むと、ローマ教皇でも、大統領でも、巨大機関の官僚でも--------どんな凄まじいマクロの役割を背負った人間であっても、「われわれと同じ人間に過ぎない!」という極めてドライな視点となる。ダンブラウンさんの素晴らしくバランスがあるな、と唸らせるのは、一般的に、マクロを描くとマクロにより過ぎてその人間が役割のシンボルにしか見えなくなってしまう。逆に、役割を無視して、人間中心で描きすぎると、個人を超えたマクロの指名を追っている人物を、ことさらに卑小に描いてしまう、ということが多い。ところが、彼は、そのバランスが見事に上手い。物語を描くときに、全体と個のどちら側に視点の重心をかけるのか?というのはとても大きな課題だ。こういうのは、歴史小説を描くときに、その作者のバランス力というものが非常に試される。それは、歴史的使命や巨大組織の使命を背負う個人というものを描くときに、何をテーマに小説を描くか?と考えるとわかる。たとえば、フランス革命でも明治維新でもなんでもいいのだが、革命そのものを描きたいのか?、そこに翻弄される個人の人生や葛藤が描きたいのか、というので小説の視点や味わいががらりと変わることがわかるはずだ。そして、これをバランスを取って描くのは非常に難しい。全体と個というのは、非常に対立しやすい概念だからだ。


 ダンブラウンさんのバランスの上手さは科学と宗教や、科学と政治などの極めてマクロなテーマをしているにもかかわらず、そのテーマの最先端で重責を担う組織のトップなどの個人を、生き生きと描けてしまう、という点で現れる。


 たとえば、この『デセプション・ポイント』の最大のテーマは、NASAアメリカ航空宇宙局)という超巨大官僚組織の存在の是非だ。結局は、この巨大組織の価値を、どう見なすか?ということが、大統領選の巨大な争点となっている。



 この組織が何のために設立されて、どんな巨大な使命感に支えられて、そして、どれほど複雑な利害関係にがんじがらめになった組織かは、なかなか一言では説明し得ない。その複雑怪奇な巨大組織の、設立の使命や問題点を、小説の中で極めてわかりやすく説明して、読者に感じさせてしまう。・・・・にもかかわらず、それが、ただ単に難しい説明をシンプルにしただけではなく、たとえばNRO(アメリカ国家偵察局)のウィリアム・ピカリング局長の個人的な思い・・・・娘がテロで死んだことを、、、、それは、情報機関の命ともいえるスパイ衛星の開発を、NASAの杜撰なロケット打ち上げで失敗させられたことに起因していて・・・・などの、個人的思いとともに、ほんとうにうまく物語の中に絡めてしまう。


 複雑な概念や入り組んだ現象を、人にわかりやすくストレートに伝えるためには、情念の力がいる。日本の教育機関が、何故あれほどまでにレベルが低いのかといわれれば、この「人にモノを伝える・叩き込む」には、感情とともに伝えないとダメだ、ということがわかっている教師がほとんどいないからだ。

 僕は、複雑な物事を人に伝えていくことに、エンターテイメントと物語りこそが一番向いていると思う。ただ、それには、熟練した、磨きぬかれた技術がいる。このダンブラウンさんの小説には、めずらしくもそれが、ある、と僕は思う。


 だから、等身大の人間を生き生きと描きながら、にもかかわらずそのキャラクター(登場人物)が所属する巨大組織の原点や複雑怪奇な問題点を、個人の葛藤の視点に還元して、手に汗握るエンターテイメントとしてダイレクトに読者に伝えることができるのだ。これは素晴らしい。



□薀蓄を土台として物語の世界へ


 上記が、長くなりすぎたので、さらっとかくと、つまりね、、、、薀蓄って、本質の物語(僕的な言い方で云うと骨太の物語)とリンクしていないと、ウザイだけで読むのがめんどくさくなるんですね。ところが、NASAの設立の意義(宇宙開発は軍需関連と表裏一体で、そこからNROなどの情報機関との権力争いが生じ、民間宇宙開発を進めたいロビイストNASAの解体をを狙い対立大統領候補に政治献金をする・・・・などなど)などの、普通読んでいたら、眠くなるようなことが、非常に見事に物語りに絡んできて、読むのが苦痛でないのですね。いや、むしろ、刺激的なほどだ。


 ともすれば、遠くなりがちな、巨大組織をシンプルに、等身大の人間の領域に還元し直せるその技術は、ほんとうに、素晴らしい。大好きだ!(笑)。



□ガブリエール・アッシュに胸がときめきます(笑)

どうでもいいことなのだが、僕は、圧倒的に登場人物の中では、ガブリエール・アッシュという次期大統領候補セジウィック・セクストンの個人秘書が、すげーかわいかった。彼女は、この作品お二人の主人公での片一方です。ストーリー上、ザック・ハーニー現役大統領の側につくレイチェルと、レイチェルの父親である対立候補セジウィック・セクストン上院議員の個人秘書のガブリエールの視点が、交互に変わるがわる映画的に転換していくことが、特徴です。



それで、読んでいて気づいたのだが、僕は、実は、黒人女優のハル・ベリーHalle Berry)の大ファンであってことが、よくわかった。映画『チョコレート』を見て以来、ずーっと気にはなっていたのだが、作中では、彼女の容姿は、ハルベリーに似ているという設定なのだ。その設定だけで、もう胸キュンなのに、それだけでなくて性格もうすげーーーかわいいんだよ、彼女(笑)。


僕は基本的に、外国人は、ほとんど同じ人間に見えないので、たとえば、洋物のAVとかはほとんど一切見れないのですが(笑)・・・・・つまり、外国の女優とかをキレイとかかわいいとかは、ほとんど思わないんですが、彼女は、めずらしく凄い好み。なんというか、キュートなんだよね。僕にして、本当にめずらしいので、それこそなんというか萌え萌えマンガの主人公に感情移入するような気分で、彼女の一挙一動に、ドキドキしていました(笑)。


大統領候補の上院議員に選挙のボランティアをしているうちに、一気に個人秘書にまで大抜擢されほどの知的さと野心の強さがありながらも、憧れていたセジウィックに迫られたら、おもわず体をあずけちゃったり(笑)するのだけど、悔やんで、すぐ辞表を提出したり(笑)。なんか強気なのか、弱気のかわからな素直な感じにメロメロでした。これだけの野心家でありながら、非常に人間くさく、悩んだり、落ち込んだり、がんばって彼のために!とか思ってみたり、ほんと、全体を通して読むとすっごい素直で、抜けてるんですよね(笑)。もう、かっわーいー(笑)。たまらなかった。



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□父と娘


・・・・ここで書くのがしんどくなった(笑)。またいつか(笑)。

□関連記事(旧館より)

映画版『ダ・ヴィンチ・コード』 米国的ハリウッド的なメディアミックス展開が悪い形で?  
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