人の絆を信じられない情報操作に長けた宣伝屋の心を変えられるのが、真の指導者の器

ディートは、、、、村上龍の愛と幻想の〜でいうところの、ゲッペルズ役を担った「ゼロ」という男がいて、、、彼なんだよな…。けど、こういった宣伝を中心とする幻想を増幅させたい人間は、そもそも目的と手段が入れ替わっている人が多くて、、、ディートは、手段が激しければ激しいほど美しいと思う人で、そこに人間の気持ちや理想が入ることを、そもそも信じていないんだろうねぇ・・・報道とかマスコミ関係の大衆の馬鹿さをよく見ている人にこの手の感覚の人が多い。ニヒリストなんだよね。 <06/22_18:39>


漫研チャットより


僕のブログを読んでくれている人は、たぶん僕が、村上龍の大ファンで、かつその中で現代日本を描いた三部作と僕が呼んでいるうちの一つで、狂おしいほど愛している大傑作『愛と幻想のファシズムをこよなく愛していることを知っていると思います(って知らないか(笑))。この作品は、同時代のクリエイターに凄まじい影響を与えた作品として知られ、さまざまな作品にその引用や痕跡を見出すことができるんですが、僕はこの作品の主人公の一人で、相田研介という男の軌跡がとても興味深くてとてもよく心に残っています。彼は、作中で、「ゼロ」と呼ばれ、ある雑誌を買収してそれを起点に密告の大システムと情報操作の仕組みを作りだし、ついには、現代のゲッペルスといわれるようなCIA長官と情報宣伝相を兼ねるような立場に上り詰めます。


まさにナチス・ドイツの情報宣伝相ゲッペルスのような男なのですが、僕はこの情報操作をして大衆を操る人間の心の虚無というテーマをいつも考えるのです。というのは、友人に巨大広告代理店(ってすぐどこかわかるな(笑))やマスコミの人間がたくさんいるのですが、、、、なんというか、彼らの大衆を豚と見る、物凄く・・・なんというか、信じられないほどウソに騙される大衆を軽蔑する気持ちの強さってのは、すごくて、、、昔は理想を信じていたやつでも、見事なくらいこの虚無感を持つようなんですね。それほど、マクロの高みから見た、大衆という存在は、軽蔑に値するいやなものらしく、、、、心が壊れて個々人間を「人間」と見なくなる傾向が強まるんみたいなんですね。たぶん、ゲッペルスやゼロこと相田研介は、この延長線上に肥大化した存在であろうと、思うのですが・・・・まさに、ディートハルトは、この系譜を受け継ぐキャラクター像なんですよね。


けどね、、、ふと思ったのですが、ゲッペルスも相田研介も、この手のキャラクターの類型は、大衆を豚とみて、結局は、その裏返して、「一人一人の人間を個人として見る」ということができなくなった、いわばマクロの化け物なわけです。そして、大衆を豚と見る姿勢は、本当は一人の人間を一人の価値ある存在としてみたいという裏返しでもあるんです。しかし・・・この類型のドラマツゥルギーには、最終的に自我崩壊か死ぬ以外に到達点はありません。個を個として見るということは、仮に求めても彼の存在の出発点や持っている技能からいって、それはそもそも不可能な要求なんですね。で、この類型の到達点は、だいたい悲劇で、虫けらのように死ぬ…。


けど、僕はふと思うのですが、では、成功したゲッペルスや相田研介って、どんな姿だろう?と夢想するわけです。


彼らは、個を個としては見れません。彼らの技能がそれを許しません。だから、彼ら情報宣伝屋に・・・・より激しい手段で、幻想を、今ある世界の姿を、大破壊してしまうような・・・・圧倒的なマクロの目標を、与え続ける指導者がいればいいのですよ。途中で、ミクロの大事さに気づくなんて言うような、セコイ小さい指導者ではなくて、ミクロの大事さなんて言うものも包含して、それより先の凄いものを見せつける指導者がいれば、実は、こういった宣伝屋は狂わないんじゃないか?って思うんです。


そういう「なにか」を見せてくれない限り、こういった宣伝屋は、自殺するか、より激しい手段を目指す奴を自分の上につけるために今いる指導者を暗殺するか、、、、、といったふうに、へんなあがき方をして、何がしたいのかよくわからないような行動をし始めてしまいます。僕は、思うんですが・・・僕はもうゲッペルスや相田研介の履歴や物語は何度も読み返して当たり前に感じるようになってしまって、、、、、その「次」を見せてくれるような、類型を破壊するようなものをディートハルトに見たいと思ってしまうんですよねー。それは、わがままかな・・・・。

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