『コンスタンティン』  フランシス・ローレンス監督  悪魔祓いモノは、連続で見るといろいろわかるものがある

コンスタンティン

評価:★★★星3つ
(僕的主観:★★★星3つ)


個人的には、つまらなかった。ただ、作品としては映像やアクションを見ても、なかなかのレベルなのではないかな。いってみれば、アメコミや欧米社会で人気の悪魔祓いモノの映画版といったところ。この手のテーマは、日本のマンガでも小説でも多い。キリスト教のあるところに根づくフォークロアの一種だと思うので、いまでは全世界的なテーマですね。


ちなみに、この手の「悪魔祓い」テーマは、トンデモ本新興宗教の教義に作成(笑)以外では、日本ではマンガやアニメーションのクリエイターたちに偏愛されています。ハリウッド映画では『ディアボロス』や『エクソシスト』なんかもそうですが、同じ感覚の持ち主のクリエイターが、米国では映画産業に流れ込み、日本では漫画やアニメーションに流れ込んでいるのだな、といつも感じます。ただし、これってキリスト教の素養とか、そういったものが背景んないと、実は重要なポイントが見落とされているような気もします。

ディアボロス

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それに、この手の作品は、オカルトまがいの悪魔祓い系の知識がないと、よく分からないのではないかな?と思う。実際、僕はほとんど意味が分からなかった(笑)。それでもまぁ見続けられるのは、やはり構成と脚本のテンポがハリウッドらしいからであろう。オカルトまがいの悪魔祓いが好きか、キアヌ・リーブスが好きな人が行く映画というのが結論。



■大天使ガブリエルの策謀


さて、そんな僕でも、おっ、これは興味深いなという設定があった。



以下ネタバレだが、



紙が支配する天国とサタンが支配する地獄があり、その中間に人間界はある。悪魔と神は、人間界をもてあそんで均衡を保っているが、あるときサタンの息子が、サタンを出し抜いて全世界を支配しようとする。その足がかりに、まず人間界に進入しようとするのだ。



悪魔の人間界侵略というコンセプトは、メジャーなもの。



卑近な例でも富樫義博さんの『幽遊白書』や萩原一至さんの『BASTARD!!―暗黒の破壊神』もそうだし、古くは聖書のヨハネ黙示録なんかも同じテーマだ。


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ただ人間界に進入するには、そもそも神と悪魔の二元的対立の均衡状態として世界がデザインされているのがキリスト教社会なので、その均衡を打ち破るには様々な条件があるというのが、一般的なパターン。このコンスタンチンでも、レイチェル・ワイズ演ずるドットソン姉妹(双子)を触媒にしなければならないし、運命の槍ロンギヌスの槍ですね)についたキリストの血もそれに必要、等々の困難な条件があります。



それに手をかすのは、というかこのルシファーの息子の反逆そのもの企画立案者は、大天使ガブリエルなんです。彼女(彼?)がこの策謀をする理由は、神から偏愛を受ける人間存在(赦しを乞えば救済されるという特権的な地位)を受けるには、人間はあまりに腐っている。人間が気高さを見せるのは、恐怖と対峙したときのみ。だから、悪魔により人間界を支配させ、その支配から生き残った気高き人間のみが神の恩寵を受けられるようにしようとするのです。


わかりますか?


これって、ハルマゲドン思想・終末思想そのもので、なによりも、米国のファンダメンタリストキリスト教原理主義者)の主張そのものなんです。米国のキリスト教右派の一番カルト寄りの思想は、人類の手でハルマゲドンを招来すれば、より早く、神の国が実現世売ると主張しています。この主張が、イスラエル建国とイスラエルへの闇の資金援助に大きな力を発揮しているというのも有名な話です。なんか、なるほどなーと思ってしまいました。