『ゼロの使い魔』 15話 忘却の夢迷宮 ヤマグチノボル著 やっぱレモンちゃんでしょう?(笑)

ゼロの使い魔 15 (15) (MF文庫 J や 1-18)

評価:★★★☆星3つ半
(僕的主観:★★★☆星3つ半)


読了。もうどうでもいい話なんだが、買ってしまう(笑)。ルイズがかわえーわー。



「おいおい、レモンはねえよ。やっぱり。」


p255


いやーやっぱりレモンちゃんでしょう(笑)。・・・・あー、、これ、なんかすげーわかります(笑)。こういう風に、脳に虫が沸く感じって、うんうん、あるよねー。このルイズの流されっぷりに、ほんと、やばいです、燃えます(笑)。なんというか、この激甘なの、もう恥ずかしくて、見てらんなくて、みてしまいます(笑)。いやーこういう時ってのがいちばん最高な時かもしれないねー。好きな女の子が、明らかに自分のこと好きなんだけど、どうにも押し倒すチャンスがないって感じ。


ちなみに、ほんとくだらねー小説なんだけど、いやー王道のダイナミズム溢れるよね〜。いい小説なんだわ、これが。本質を全く外さないところが凄い。無能王ジョセフという男のストーリーも、まぁ陳腐ちゃあ陳腐なんだけど、うーん、なんというか本質をついた王道の悩みなんだよね。彼が、生きることの価値を完全に見失ってしまったのは、全てにおいて出来過ぎていた弟(=タバサのお父さんね)を殺してしまったからで、、、、殺してしまったが故に、彼は生きる価値を取り戻すすべもすべて失ってしまって、世界を滅ぼす虚無へとひた走ることになるんだよね。なんか、ものすごく現実でありそうな類型のドラマトゥルギーで、ぐっときたなぁ。ただ単に、彼は、弟が自分と同じように、何かに悔しがったり、悩んだりする姿を見たかっただけで、、、、それだけで、笑って弟に王位を譲るだけの度量があったくらいなのに・・・・そして、たぶん弟は、弟が故に王位が告げない苦しさを兄に見せたくなくて、120点満点の優等生を演じすぎて、、、、と、いやードラマな話だ。なんつーか、レモンちゃんとか激甘なのも素晴らしいのだが、こういう王道を外さない骨太の部分があるので、安心して読めるんだよなー。本当に読み捨てる話なんだが(苦笑)・・・いやーやっぱ買ってしまうよ。ヤマグチノボルさん、さすがです。自分では絶対こんないい話書けないので、えらそうな意見ですが、まぁ全巻ちゃんと定価で発売即買っているくらいの大ファンなんだから、これくらいいってもいいですよね?。



さて、前回の14話で、サイトが元の世界に戻る戻らない、というショートストーリーがあったんですが、これってまさに「再契約」の話ですよね。

王道はゼロ年代を超えて生きのこる/Something Orangeの海燕さん
http://d.hatena.ne.jp/kaien/20080924/p1

ゼロ年代における「契約から再契約へ」の想像力/ピアノ・ファイアいずみのさん
http://d.hatena.ne.jp/izumino/20080923/p1

この作品も、偶然に異世界に召還されて、美少女と始終一緒にいなければならない(寝る時も!)し、しかも世界を救う力とか手に入れちゃう普通のどこにでもいる男の子のヒラガサイトくんのお話しなんですが、この偶然手に入れた力とポジションで、ものごっつ物語の主人公のような素敵な目にあうのって、まさに「全能感」を満足させる異世界英雄モノのパターンですよね。僕はこの系統を、ナルシシズムの閉塞とか呼んで、いつも批判していたんですが、実はこれって、「再契約」という設定をするだけで、非常に物語上面白くかつ、いったん全能感に人を誘い込んでおいて、その全能感をもう一度獲得したいのならば、それ相応の努力と犠牲を払わないとだめなんだよ、という見事にナルシシズムの閉塞を回避できる。なるほどなー。というか、全能感の獲得(=偶然の契約)と、それをもう一度、ちゃんと本物にするための再契約というのは、物語をちゃんと素直に進めていけば、当然向かうべき道なんだよね。これって、別に作劇の技術というよりは、ドラマツゥルギーのエネルギーの自然に向かうところなのかもしれない。だって、ルイズとサイトの愛が本物かどうかってのは?、ルイズにしてみれば、自分が偶然読んだだけで、好きな人に無理をさせているだけではないのか?ってのは、常に付きまとうわけだし、それを回避して、その関係性を本物だと認めるには、再契約の・・・・つまりは、それが自らの意思で選びとったものだ!という儀式はぜったいに必要なわけだもの。・・・・ふむ・・・・契約と再契約のロジックで、異世界ファンタジーモノのナルシシズムの罠をどう回避しているか?という評価が簡単にできそうな気がしてきた。まぁぱっと思いつくのは、なんといっても小野不由美さんの十二国記だな。とりわけ『月の影 影の海』だなまさに。これは、異世界ファンタジーの契約と再契約がほぼ同時に重なって発生していると考えればいいんだろう。しかし、、、ふともったが、なぜわれわれ、作る側ではなく批評するような側に立つ人間は、再契約的なもの・・・・道徳というか倫理的に収束しないと、その作品は駄目だ、と思ってしまうのだろうか?。そもそも、ナルシシズム全開で、全能感を満たすことこそ、人々が求めていることならば、再契約なんかしなくてはいいのではないか?とか思うのだが、、、、この辺は、考慮の余地がありそうだ・・・・。

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小野 不由美

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