読了

二つの祖国〈上〉 (新潮文庫)二つの祖国〈上〉 (新潮文庫)
山崎 豊子

新潮社 1986-11
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ラストの衝撃に、胸が痛くなった。素晴らしい小説だった。同時に、二元論のはざまで、「一つの祖国のために生きること」ができないことが、いかに人間を苦しませ、行動力を鈍らせるか、の証左を見たような気がした。物語的にしているが、実際にはほぼモデルに近い人生を歩んだ人がいるようだしね。深く悩むことは、人の精神を深くするが、過度な悩みは、身を滅ぼす気もする。けど、、、強制収容所や原爆など、自分たちの間近な現実との連続性を見せつけられると、軽々に二元論に悩むなんて、上から目線のセリフは言えなくなるよ。自分の祖父の世代の話だもの。「この悲劇」が現実にあったことを考えると、自分の甘さや、生きていることの安楽さに、いろいろ思うところが生まれます。・・・・うん、でも、こういう本に出会えるから、生きているかいというものがあります。