なぜ中国に戦争を仕掛けたのだろうか?

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■独立不羈の民を支配することの難しさ

ふとこの本や、浅田次郎さんの『珍妃の井戸』『中原の虹』を読み始めて、、、疑問に思ったことがある。


日本は、大日本帝国は、なぜ中国との全面戦争に踏み切ったのだろうか?


ということだ。いや、教科書的な公式回答が知りたいのではない。同時代的なメカニズムを知っても、それは歴史を知ったことにはならないと思うのだ。また調べれば、ある意見はたくさん出てくると思うけど、そんな時間もないし、僕は情報を知りたいのではなく、「心から納得して血と肉になるようなわかったがほしい」ので、テーマとなるべき命題を探しているので、ついに「ここ」に疑問が集約されてきている。

というのは、佐々木譲さんの『エトロフ発緊急電』『ベルリン飛行指令』の読んでいて、このころの日本と世界の情勢が、リンクし始めてきたのだが、僕の考え方の基本としてこの時代の倫理や戦略感覚からいって、侵略や植民地ち支配を“悪”とは考えない」という思考で物事を考えると、実際に、必ずしも、植民地や侵略が、即国の滅亡や戦略的悪手いわけではないのが分かってくる。とすると、どういう構造があれば、そういった運営がうまくいったのか?って事だ。

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ちなみに、大東亜戦争遂行中でも、たとえばインドなどは、大英帝国に支配されており、かつ日本から遠いという事情(=日本に攻められにくい)もありかなりの国民の根に至るまでの日本への支持が広汎になったように思える。だから1941年のマレー攻略の直前のシンガポールでは、華僑系のスパイが英軍側に、インド系のスパイは日本側にかなり依って活動している。これは、当時のインドの英雄だった、チャンドラ・ボースが日本を利用しようとかなり、日本に協力的な国際情勢の構図が出来上がっていた。また同時に、列強として中国に戦争を仕掛けている日本に対して、中華系の人間は、深く日本を憎んでいるという状況が出来上がっている。

このアジア全域での有形無形の中華系、いいかえれば華僑の日本への抵抗が、植民地を支配するヨーロッパ、アメリカ列強に、有利に働いたのは間違いない。逆にいえば、中国人の支持(=日本への憎しみと抵抗の裏返し)なくして、アジア圏での対日戦争遂行は、とても難しいものになったんではないか?って思うんだ。

こうして見ていると、そもそも、宗主国を持つ植民地というのは、その宗主国が変わっても、実は運営する方法はいくらでもあるんだよね。もともと国民がほとんど「独立による権益」を持っていない地域なわけだから。ところが、中国は違う。タイと並んで、一度も植民地になり下がったことはないし、そもそも国力的に、どこかの国を宗主国として仰がなければ近代化できないほどまずう国家でもダメな民族でもない。・・・そういう独立不羈の意識を持つ国家に、植民地的野望を持って・・・・それも全面戦争に至るような悪手を踏みきるというのは、なぜだったんだろう?って思うんですよ。いい悪いはともかく、琉球、台湾や朝鮮への侵略は、まだわからないでもない。というのは、少なくとも独力で国家を運営できていない状況にあるし、必ずしも日本が手をひいても、独力で近代化が進まなかったはずなので、踏み込み方としては戦略的な選択肢としてはわかるんです。朝鮮なんかは、かなりジレンマがあるところで、列強諸国による干渉が全くなければどうにかなったかもしれないが、地政学的にそんなことはありえないところだからねぇ。だから、一時耐えしのんで、後で独立をと合理的に考える人もたくさんいたわけで、、、しかし、中国・・・うーん、まだ歴史を細かくわかっていないかもしれないのだが、、、、ここに全面戦争に至ってしまう意味はなぁ・・・。中華民族との戦いは、かなり無理があるんだよねぇ。感覚だけど。

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というのは、日本がもう逃げ道がなかったとして、対米戦争(=事実上の国家と民族の破滅)に踏み切らざるを得ないところまで言ったとすれば、もう権益がどうのこーのではなくて、やっぱりどこで講和するというか外交上の手打ちをするか?って事と、アジア圏での欧米の活動を制限するってのが、重要な戦略目的になるんだよね。あと、国際的な道義上の宣伝戦術からいっても、中国や満州は、とても危ないカードなんだよねぇ。正直いま見ている感じでは、満州はまだ分かるんだ・・・というかアジア東北部からシベリアにかけての権益は、そもそも治安上の空白地帯なんで、なんとなくわかる。が・・・中華民族自体とことを構えて、、、、というのが、戦略上どうしても、わからないんだよなぁ。アメリカと戦うのはわかるよ。うん。アメリカは、見事に日本をいじめ抜いて、自分の世界戦略のために、いけにえにしきったよ。あれに対抗するのは、物凄く難しかったと思う。

ついに浅田次郎さんの本をも読み始めたし、江戸・明治期→大正・昭和初期→昭和後記→現代みたいなながれの大正・昭和の穴が埋まりつつあるんで、この辺をじっくりと追い続けますかって感じです。日本が、なぜ膨張政策にいたったかとか、そういう一時代の出来事のメカニズムではなく、数百年単位でその地域の持つ「本質」みたいなものが知りたいんです。

ちなみに、なぜ中国と日本が全面戦争に至ったか?ということを本質的に読み説くには、そもそも清朝中期から清朝末期の時代、西光緒帝の時代から西太后から、その近代化、明治維新と同じような王政復古体制の崩壊したことから張作霖や張学良などの軍閥の登場、そして共産党毛沢東への大きなが流れが解明されて納得できなければ、しょせんは、その時の同時代的な政治力学の話になってしまうだけで、そんな、誰にでもわかるような話が知りたいわけではない。

中華の大地、あの大陸に生きる易姓革命と天子(ティエンズ)の思想が、あの空間にどう展開して、どのような理想と現実のはざまの果てに、毛沢東共産国家として成立していったかの本質的な流れを考えないと、、、、ボロボロの国であるにもかかわらず、西洋列強や大日本帝国の野望をはねのけ、本家のソ連でさえ失敗した共産帝国主義国家(笑)などという理論をベースに、独力で時代の地球最大市場、アメリカ市場に変わる時代の市場までもっていったその「こと」の本質は分からないと思うんです。そういうものを感じたいんですよねー。

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