『軍バリ』 徴兵制という、差異ある人間を平等化するシステム

軍バリ! 1 (1) (ヤングマガジンコミックス)

評価:★★★★☆星4つ半(未完のため最終評価なし)
(僕的主観:★★★★★星5つ)


先日ルイさんとお話ししていて話題に出てきた漫画です。旧館の過去の記事を再掲します。韓国の若者の徴兵制をめぐる物語ですが、えらく構造が素晴らしいのと、徴兵制が持つ平等化機能をよくあらわしていて、涙が出そうになった素晴らしい作品です・・・お勧めです。けれども、続きは出ていないようですね・・・どうなったいるんだろう?。よくわかりませんが・・・もし絶版とか打ち切りであったら、物凄く悲しいです。誰か知っていたら教えてください。こんな素晴らしい物語ないのに・・・・(涙)。


さて、これを読むと、


徴兵制の素晴らしさを感じてしまいます。


韓国の高い政治意識は、ここからくるのだな。とりわけ、徴兵制が持つ、様々な差異を持つ人間を平等にしてしまう機能には、涙出るかっこよさでした。戦争がいいとはやはり言えないけれども、この圧倒的な社会的機能を、単純には無視できないな〜と思いました。物語としては、まだ完結していないので、評価しにくいですが・・・・非常にわかりやすく、そして非常にめずらしい世界をみせてくれるのは、センスオブワンダー。とてもいい作品です。

■どうしてブログは三日坊主になるの?
http://ameblo.jp/petronius/entry-10012411966.html


この話書いたときにラストにさらっとこんなコメントを書きました。


そしてこの話が、徴兵制復活へ進むことは、韓国の社会を分析すると、よくわかる。時代はすすんでいく。第一次世界大戦のあとのヨーロッパ同じ社会環境が日本に整いつつあること、最近感じます。

このさりげない最後の結論について、コメントで下記のような質問を受けました。 来ると思っていましたが(笑)。


でも、「社会に参加する動機を失う層が多発していること」が徴兵制の復活に繋がる、というのが良く分からなかったです。徴兵する事によって、強制的に社会の参加させるってこと?。単純に職業軍人だけでは立ち行かないから、徴兵制があるんだと思っていたんだけど・・・ 。豊かになればなるほど、わざわざ軍人という職業を選ぶ層も減ってくると思うし。


これ、たしかに僕の上の記事からじゃあわからないのだけれども、僕の書いている文章の核心は、常にこの社会分析の結論を大前提として いるので、詳しく説明してみたいと思います。 「これ」が理解できていないと、僕のいいいたいこと、、、とりわけ物語復興の希求と物語についての分析が意味をなしません。たぶん企 業とかでマーケティングをするときでも大前提の議論だと思います。


上記の記事の話は、二つの結論の組み合わせで、


(1)現代日本社会が、動機調達が困難社会である  


ж動機にはいろいろあるが、ここでいう「動機がある」というのは貧困等の物質的水準が欠乏している社会環境下では、ほとんどすべての 人間が物質的豊かさを求めて努力するのが正しいという上昇志向が共有される、という意味です。良く言われすぎるほどのマズローの欲求の五段階説ですね。

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(2)動機LESSな社会では、日常(=ただ生きていくこと)が退屈となり、退屈な日常からの脱出が社会のメインテーマとなる

このことを、もっとも主要なテーマとしてとらえている映画監督は、『アメリカンビューティー』という傑作を作ったサム・メンデスだと 思っています。 ちなみに、サムメンデス監督のこの2作は、とんでもなく素晴らしい作品なので、ぜひ見ることをお勧めします。僕が何を言っているかなんて、無駄に文字を費やすよりも、この作品を見れば一発で分かるはずです。


『JARHEDA ジャーヘッド』 サム・メンデス監督 ジェイク・ギレンボール主演
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この記事は、僕の社会分析のベースから導き出されるものの一つです。



さて、順番に説明してみましょう。


1)現代日本社会が、動機調達が困難社会である


これにはいくつかの視点があるが、


1)物質的水準のレベルが上がり、社会全体に富が広範行き渡るインフラが整うこと


2)インフラの整備により、コンビニエント(便利さ)が社会の重要な指標になること
жコンビニエントとは、必要性よりも時間の節約のほうが優先されること


3)インフラの整備とコンビニエントな社会環境の実現により、食べるために働く必要性がとても下がること


4)1)〜3)の結果として、価値観の多様化が発生し、その多様性を実現できる時間的金銭的余裕も生まれること


5)価値観が多様化するが、もともと価値を判断できるだけの個人は社会に多くはないため、衆愚が大量に発生して社会が不安定・不透明 になる(逆にいうと、それだけ自由で多様な社会でもある)
ж衆愚とは、古典ギリシアのポリスにおける民主政治が腐敗して独裁制を発生させる必然のメカ二ズム概念と同様に考えて欲しい


6)社会が多様性を許す環境下とは、逆に言うと、大きな物語・・・主軸となる価値観がない社会ともいえる。そこでは、常に新しい価値を生み出すイノヴェーションがないと社会が停滞するので、価値の創造が称揚される。が、そもそもほとんどの95%のパンピーには、価値を生み出す力がないので、心理的不毛感覚に陥って社会に参加する意欲を失う。社会に参加しなくても生きられる富とコンビニエントな環境は既に所与である。

6.5)この環境が、長期の不況に非常に弱いものであることは分かると思う。いったんできた社会構造はなかなか元に戻せないために、支えるだけのストックを超えた不況が訪れると南米型のポピュリズムが社会支配して、社会が不安定化し、治安が悪化する。


7)また資本主義社会(=機能論の分化が行き着いた社会)が行き着いた社会では、人間は、「その人自身」ではなくて、「社会的機能や 肩書き」でしか評価されない。機能ではなく、生の素の自分が認められない不毛感から、さらに社会退却が進む。


8)5)〜7)などの理由により、高い動機を前提に設計されている、近代社会の諸制度が揺らぎ始める。そのため、それに対する重要な 対応手段として、


A)高いモラリティーをともなった動機を持ったリーダーの創出(ようはエリートの養成・教育)


B)A)以外の層の人間に、最低限の社会参加を義務づける必要性とそれを作り出す仕組みづくり

が必要となる。 (2)は、『ジャーヘッド』に書いてあるので、またの機会に。


このために、徴兵制度という社会的機能が、圧倒的な効果をもつであることは、まず疑いようがありません。韓国が、高い高度成長で社会がバラバラになりそうになりながらも、高い共有感や、国家意識を維持していることは(そのマイナス面のとんでもない大きさも認めて上で)否定できない事実だと思います。必ずしも侵略の設備や兵制度を持たなくとも、社会のモラリティーを維持するために、徴兵制を持ち、世界最高度の防衛部隊を構築することは、必ずしも悪くないですよね。たとえば、スイスなんかも、国民皆兵制度ですよね。僕がここでいっているのは、スイスのイメージですね。スイスの国家モデルは、とても参考になるのです。ただし、日本のような1億の人口を超える大国がそれに合うかどうかは微妙ですが。


ちなみに、徴兵制の平等化メーカーとしての機能を僕が一番感じたのは、友人とのエピソードを除けば、司馬遼太郎の『この国のかたち』というエッセイだと思ったのですが、彼がある人に、自分は先任(先に任官している先輩というような意味)だと!自慢げにいわれたのだが、その人は、召集された人なので、少尉任官していた司馬さんよりも階級は低かったんだそうです。けど、よくよく考えてみると、その人は、日本の武士、華族の家柄を組む選良であって、なにも、軍隊にける任官の早い遅いなんか自慢にする必要性はないわけです。けど、司馬さんは、それを聞いて、この国の徴兵制度は、徹底的に人々の意識を平等化したんだな・・・と感心するというようなのがあったんです・・・細かいところは忘れて、こういう文脈だったかも忘れましたが、彼の小説や戦前の軍隊を描いた物語には、この感覚は何度も出てくるし、なによりも士官がすべて貴族であったロシア帝国との戦いでは、このことは、結構、大きな差になるんですよね。そんなことをも思い出だします。ちなみに、司馬さんの下記のエッセイは、超ド級の傑作だと思うので、機会があればぜひ。ちなみにいちおー断っておきますが、だからといって、僕が、徴兵制復活論者とか、思わないで下さいよ。すべては条件付けなので、僕は単純に政治的な意見を持ちません。また、やるなら行動で示すので、あまり意見は言いません。ただ、いま日本の社会状況は、教育や未来のヴィジョンを考えていくと、こういう大きな流れの中にあって、その流れからすると、条件づけられたもので徴兵制などのシステムが検討される可能性は、充分ありうるんだ、ということだけです。僕は、観察者ですから、そう思えるというだけです。

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・・・・ふと気付いたが、マンガのことを前ぜ紹介していない・・・(苦笑)。僕のブログっていつもこうだな(苦笑)。